高齢者の食事と栄養に関する用語解説
とろみ食とは、とろみ調整食品(とろみ剤)を使って液体や食事にとろみをつけた飲食物のことです。水やお茶、味噌汁、スープなどのさらさらした液体は、嚥下障害のある方にとって最も誤嚥しやすい形態です。とろみをつけることで液体の流れるスピードが遅くなり、飲み込むタイミングを取りやすくなるため、気管への流入を防ぐことができます。
とろみの濃度は、日本摂食嚥下リハビリテーション学会の基準で3段階に分けられています。「薄いとろみ」はフレンチドレッシング程度で、スプーンを傾けるとすっと流れ落ちます。「中間のとろみ」はとんかつソース程度で、スプーンを傾けるとゆっくり流れます。「濃いとろみ」はケチャップ程度で、スプーンを傾けても形状が保たれます。嚥下機能の低下度合いに応じて適切な濃度が選択されます。
市販のとろみ調整食品は、主にキサンタンガム系の増粘多糖類を主成分としています。かつての片栗粉やコーンスターチによるとろみ付けと異なり、現在のとろみ剤は温度に関係なく使用でき、時間が経っても粘度が安定する特徴があります。冷たい飲み物にもすぐにとろみがつき、透明度が高いため見た目にもほとんど変化がありません。ただし、入れすぎるとべたつきが増し、かえって飲み込みにくくなるため、製品の説明書に記載された使用量を守ることが大切です。
とろみをつける対象は飲み物だけではありません。味噌汁やスープの具材にもとろみがあると食べやすくなります。おかずにあんをかけることもとろみ食の一種であり、きざみ食にとろみあんをかけることで、口の中でまとまりやすくなり誤嚥リスクを軽減できます。
高齢者の誤嚥事故の多くは、実は食べ物よりも「水分」で起きています。水やお茶はのどを一瞬で通過するため、嚥下反射のタイミングが遅れがちな高齢者は気管を閉じる前に液体が入り込んでしまいます。特に脳卒中後遺症やパーキンソン病などの神経疾患がある方は、嚥下反射の遅延が顕著であり、水分にとろみをつけることが誤嚥性肺炎の予防に直結します。
一方で、とろみをつけると「おいしくない」「飲みにくい」と感じて水分摂取量が減少し、脱水症状を引き起こすリスクがあります。特に夏場は深刻な問題です。本人の好みを尊重しながら、適切なとろみ濃度を探ることが重要です。ゼリー状の水分補給飲料を活用する、果汁やだしで風味をつけるなどの工夫で、飲みやすさを改善できます。とろみの濃度は「できるだけ薄いとろみ」が原則であり、必要以上に濃くしないことがポイントです。
「とろみをつけてください」と言われても、どのくらいか分からないというご相談をよくいただきます。 目安は薄い・中間・濃いの3段階です (日本摂食嚥下リハビリテーション学会の嚥下調整食分類2021による区分)。 道具がなくても、スプーンを傾けたときの落ち方で見分けられます。
| 段階 | スプーンを傾けると | ストローでは | 見た目のたとえ |
|---|---|---|---|
| 段階1 薄いとろみ | すっと流れ落ちる。跡がほとんど残らない | 問題なく吸える | とろみに気づかないくらい |
| 段階2 中間のとろみ | とろとろと流れ、少し跡が残る | 吸うのに力が要る | ポタージュくらい |
| 段階3 濃いとろみ | 形が保たれ、流れ落ちない | 吸えない | ジャムをゆるめたくらい |
どの段階にするかは、ご本人の飲み込む力によって決まります。 自己判断で決めず、かかりつけ医・歯科医・言語聴覚士に見てもらってください。 入院や通院の際に「とろみは何段階ですか」と一度聞いておくと、 ご家庭でも当店でも同じ濃さに合わせられます。
いちばん多い誤りがこれです。心配なあまり濃くしすぎると、 のどに残って、あとから気管に流れ込みます。 飲み込んだつもりでも咽頭に貼りついたままになり、 次に息を吸ったときに入ってしまう。とろみを濃くしたのに むせるようになった、という場合はたいていこれです。
濃すぎることには、ほかにも困りごとが伴います。
| 濃すぎると起きること | なぜ困るのか |
|---|---|
| のどに残る | あとから気管に入る。むせない誤嚥になることもあります |
| 飲む量が減る | おいしくないので水分をとらなくなり、脱水に近づきます |
| 薬が飲みにくい | 薬が包まれて溶けず、効きが変わることがあります |
水分が減るのは見落とされがちです。とろみをつけた飲みものは 飲んだ量が分かりにくく、ご本人も進んで口にしません。 1日にどれだけ飲めたかを、コップの数で数えておくことをおすすめします (高齢者の脱水を防ぐ)。
市販のとろみ剤(とろみ調整食品)は、粉を入れてかき混ぜるだけですが、 入れ方でうまくいかないことがあります。
| つまずくところ | どうするか |
|---|---|
| ダマになる | 粉を先に入れず、かき混ぜながら少しずつ振り入れる。できたダマは取り除かず作り直します |
| あとから濃くなる | とろみは2〜3分かけて固まります。すぐ足さず、待ってから確かめてください |
| 牛乳・栄養補助飲料でつきにくい | ものによって固まる速さが違います。同じ量でも薄くなるので、時間を置いて見ます |
| 味噌汁につけたい | 具を先に取り分け、汁だけにとろみをつけます。具が入ったままだと濃さがばらつきます |
| 冷めると濃くなる | 温かいうちに合わせた濃さは、冷めると濃くなります。飲む温度で確かめてください |
味噌汁のご相談は特に多くいただきます。 汁と具が別々にのどへ向かうため、汁ものは最もむせやすいものです。 具は刻んで汁にとろみをつけ、ひとまとまりで飲み込める形にすると落ち着きます。
配食のふれ愛では、とろみが必要な方へのご対応として、おかずにあんかけ仕立てのメニューを多く取り入れています。また、汁物や飲み物へのとろみ付けについてのアドバイスも行っています。配達時にご利用者様の食事の様子を伺い、「飲み物でむせることが増えた」などのお声があれば、ケアマネジャーやご家族と連携して食事形態の見直しをご提案しています。お体の状態に合わせた最適な食事をお届けするため、お気軽にご相談ください。
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