高齢者の脱水予防と正しい水分補給|配食のふれ愛 太子店 健康コラム

高齢者はなぜ脱水になりやすいのか

脱水とは、体内の水分量が正常値を下回った状態です。軽度でもめまい・倦怠感・頭痛を引き起こし、重度になると意識障害や腎不全、最悪の場合は死亡に至ることもある深刻な状態です。

高齢者は以下の理由から、特に脱水のリスクが高くなっています。

高齢者の脱水リスク要因

  • 体内水分量の減少:成人では体重の約60%が水分ですが、高齢者では約50%にまで低下します。体重60kgの方であれば、若い頃より約6リットルも体内の水分が少ないことになります。そのぶん、わずかな水分喪失でも脱水症状が現れやすくなります
  • 口渇感の低下:加齢に伴い、脳の口渇中枢の感受性が低下します。体が水分を必要としていても「のどが渇いた」と感じにくくなるため、意識的に水分を摂らない限り、慢性的な軽度脱水に陥りやすくなります
  • 腎臓の濃縮能低下:加齢により腎臓の尿を濃縮する能力が低下し、薄い尿が大量に作られます。その結果、水分の喪失量が増加します
  • 薬の影響:利尿剤(高血圧治療薬)の服用は尿量を増やし、水分喪失を促進します。下剤の常用も腸管からの水分喪失を増やします
  • トイレの心配:夜間のトイレ回数を減らしたい、外出先でトイレに行きたくないという理由から、意図的に水分摂取を控える高齢者が少なくありません

1日に必要な水分量と水分バランス

人間の体は毎日約2,500mLの水分を失っています。これは尿(約1,500mL)、便(約100mL)、呼気と皮膚からの蒸発(不感蒸泄:約900mL)の合計です。夏場や運動時はこれに発汗が加わります。

水分の摂取源

摂取源おおよその量割合
飲料水(お茶・水・その他の飲み物)約1,200mL約50%
食事に含まれる水分約1,000mL約40%
代謝水(栄養素の代謝で生成)約300mL約10%

つまり、1日に飲み物として約1,200mL(コップ6〜8杯程度)の水分を摂取する必要があります。ただし、食事量が少ない高齢者は食事からの水分摂取が減るため、飲料水でより多くの水分を補う必要があります。

効果的な水分補給のタイミング

「のどが渇いてから飲む」のでは遅すぎます。のどの渇きを感じる前に、時間を決めて定期的に水分を摂る「時間飲み」の習慣をつけることが大切です。

1日の水分補給スケジュール(目安)

タイミング水分量ポイント
起床時200mL睡眠中に失われた水分を補給。常温の水がおすすめ
朝食時200mL味噌汁やお茶で食事と一緒に
午前10時150mLお茶の時間に。おやつと一緒に
昼食時200mL汁物を1品つけると効果的
午後3時150mL午後のおやつタイムに。麦茶や牛乳も良い
夕食時200mL味噌汁やスープで水分補給
入浴前100mL入浴中の発汗に備えて
就寝前100mL夜間の脱水を防ぐ(飲みすぎは夜間頻尿の原因に)

合計で約1,300mL。食事からの水分と合わせて、1日の必要量をカバーできます。

注意すべき飲み物

  • カフェイン飲料:コーヒー・緑茶・紅茶にはカフェインの利尿作用があるため、水分補給の主力にはしない方がよい。1日2〜3杯程度に留めましょう
  • アルコール:アルコールには強い利尿作用があり、飲んだ量以上の水分が排泄されます。水分補給にはなりません
  • 糖分の多い飲料:ジュースやスポーツドリンクを常飲すると、カロリーの過剰摂取や血糖値の上昇につながります

食事からの水分摂取 — 汁物の力

1日の水分の約40%は食事から摂取されています。特に高齢者にとって、汁物(味噌汁・スープ・すまし汁)は最も効果的な食事からの水分補給源です。

汁物のメリット

  • 水分+ナトリウムの同時補給:味噌汁1杯で約200mLの水分と約1.5gの塩分を同時に摂取。発汗で失われた電解質も補えます
  • カリウムの補給:具材に野菜・いも・海藻を使うことで、カリウムも効率よく摂取できます
  • 栄養素の吸収:水に溶け出したビタミンやミネラルも汁ごと摂取できるため、栄養の無駄がありません
  • 体を温める効果:温かい汁物は胃腸の血流を改善し、消化吸収を助けます。夏場でも冷房で体が冷えがちな高齢者には効果的です

水分が多い食品

汁物以外にも、水分含有量の高い食品を意識的に取り入れましょう。

  • 果物:すいか(90%)、みかん(86%)、りんご(84%)
  • 野菜:きゅうり(95%)、トマト(94%)、レタス(96%)
  • 豆腐:水分含有量約88%。冷や奴は夏場の手軽な水分補給食品
  • ゼリー:水分約80%。飲み込みやすく、食欲のない時にも食べやすい

脱水のサインを見逃さない

以下の症状が見られたら、脱水が進行している可能性があります。すぐに水分補給を行い、改善しない場合は医療機関を受診してください。

  • 口の中や唇が乾いている
  • 皮膚をつまんで戻りが遅い(ツルゴール反応の低下)
  • 尿の色が濃い、尿の量が少ない
  • めまい・立ちくらみがある
  • いつもより元気がない、ぼんやりしている
  • 血圧が普段より低い

冬こそ足りなくなる

暑い時期だけの問題ではありません。

寒くなると、喉の渇きを感じにくくなります。飲む量が自然に減ります。本人に自覚がありません。

そして、暖房をつけると、空気が乾きます。息をするだけで、水分が出ていきます。気づかないうちに減ります。

厚着をして汗をかいていることもあります。下着が湿っていないか、確かめてください。本人は暑さを感じていない場合があります。

温かい飲み物なら、冬でも続けられます。白湯、番茶、スープ。体も温まります。

トイレを嫌って控える問題

最も多い理由が、これです。

夜中に起きたくない、外出先で困りたくない。だから飲まない、という方がいます。気持ちは分かりますが、危険です。

そして、失敗したくないという気持ちも、控える方向に働きます。本人が言い出しにくい部分です。周囲が察してください。

飲む時間を、前半に寄せる方法があります。朝から夕方までに多めに飲み、夜は控えめにする。夜中の回数が減ります。

トイレに行きやすい環境にすることも、対策になります。夜の廊下を明るくする、近くに手すりをつける。行きやすければ、控えなくなります。

まとめて飲まず、こまめに

一度に飲んでも、体に残りません。

大量に飲むと、そのまま出ていきます。少しずつ、回数を分けてください。そのほうが体に留まります。

そして、一度にたくさん飲むのは、体への負担にもなります。心臓や腎臓に持病がある方は、特に注意が要ります。医師の指示を守ってください。

手元に置いておくことが、最も効きます。いつも座る場所のそばに、コップを置いてください。取りに行く手間があると、飲まなくなります。

目に見える容器を使ってください。どれだけ飲んだかが分かります。一日分を入れておく方法もあります。

食事から取る分を軽視しない

飲み物だけで足りるわけではありません。

食事の量が減ると、そのぶん水分も減ります。食べない日は、飲む量を増やす必要があります。ここが見落とされます。

そして、ご飯やお粥にも、水分が含まれます。パンだけの食事より、粥のほうが取れます。形で変わります。

果物にも多く含まれます。みかん、いちご、梨、すいか。季節のものを取り入れてください。

ゼリーや、とろみのある形も使えます。飲み込みにくい方には、こちらのほうが安全です。水よりむせにくくなります。

飲み込みにくい方の水分

ここは特に注意が要ります。

水は、最もむせやすい飲み物です。さらさらしていて、速く流れます。飲み込むのが間に合いません。

とろみをつけると、ゆっくり流れます。むせにくくなります。どの濃さにするかは、指示を受けてください。

そして、濃くしすぎないでください。飲みにくくなり、量が減ります。適した濃さがあります。

判断は、言語聴覚士や医師に確かめてください。家族の判断で決めないでください。詰まらせる危険があります。

体調を崩したときの対応

失われる量が急に増える場面です。

熱が出たとき、下痢が続くとき、吐いたとき。普段より多く失われます。飲む量を増やしてください。

そして、こういうときほど、飲む気力が落ちます。悪い方に回ります。周囲が声をかけてください。

飲めない状態が続くなら、受診してください。点滴が必要な場合があります。家で粘らないでください。

塩分も一緒に失われます。水だけでは戻りません。どうすればよいかは、医師に確かめてください。

薬との関係

飲んでいる薬によって、事情が変わります。

水分を出す働きのある薬があります。飲んでいる方は、失われる量が増えます。医師の指示を確かめてください。

そして、逆に、水分を制限されている方もいます。心臓や腎臓の状態によります。この記事の一般的な話より、指示が優先されます。

自己判断で増やしたり減らしたりしないでください。体に負担がかかります。必ず医師に確かめてください。

お薬手帳を、受診のときに持っていってください。飲んでいるものが正確に伝わります。忘れないでください。

周囲が気づける形をつくる

本人だけでは分かりません。

飲んだ量を、紙に書いてください。一日にどれだけ飲んだかが見えます。頭では覚えていられません。

そして、ペットボトルを使う方法があります。一日分を一本にして、朝から減らしていく。残っていれば、足りていないと分かります。

訪問する事業者にも、伝えておいてください。気づいた変化を知らせてもらえる形にしてください。訪問介護、通所、配食。

離れて暮らす家族は、電話で聞いてください。「水を飲んでいる」と答えても、量は分かりません。具体的に聞いてください。

認知の面で判断が難しい方

最も対応が難しい場面です。

飲んだことを忘れる、渇きを訴えられない。本人からの申告が当てになりません。周囲が管理する必要があります。

そして、勧めても飲まないことがあります。無理に飲ませると、むせます。好みのものを探してください。

甘い飲み物なら飲む、という方もいます。糖の量に指示がある方は、確かめてください。ない方なら、飲めるものを優先してください。

ゼリーや果物なら口にする場合もあります。形を変えると、受け入れられることがあります。一つの方法で諦めないでください。

迷ったら受診する

最後に、判断の目安です。

ぼんやりしている、応答が鈍い、いつもと様子が違う。これらが見えたら、様子を見ないでください。すぐに連絡してください。

そして、尿の回数や色も手がかりになります。回数が減った、色が濃い。受診のときに伝えてください。

高齢の方では、進みが速くなることがあります。朝は元気でも、夕方に変わることがあります。早めに動いてください。

迷ったときは、連絡してください。何もなければ、それで構いません。遅れるほうが困ります。

一日の流れに組み込む

最後に、続けるための具体的な形をお伝えします。

「気づいたときに飲む」では、忘れます。行動と結びつけてください。起きたとき、薬を飲むとき、食事の前後、お風呂の前後、寝る前。

この区切りごとに一杯ずつ飲むだけで、一日の量はかなり確保できます。意識しなくても積み上がる形にしてください。意志の力に頼ると続きません。

そして、家族が声をかけるときも、この区切りを使ってください。「水を飲んで」ではなく「薬と一緒に飲んで」と言うほうが、行動に移りやすくなります。言い方ひとつで変わります。

どれくらい飲めばよいかは、体の状態で変わります。心臓や腎臓に持病のある方は、必ず医師の指示を確かめてください。この記事の一般的な話より、指示が優先されます。

脱水を見つける、5つの目印

高齢の方は「のどが渇いた」と言いません。 感じにくくなっているうえ、遠慮もあります。 言葉ではなく体を見てください。

見るところ脱水のときの様子
口の中舌が乾いて、しゃべりにくそう。舌の表面に唾液の照りが無い
脇の下指を入れても乾いている(ふつうは湿っている)
手の甲の皮膚つまんで離しても、しわがすぐ戻らない
尿色が濃い。回数が減った。半日以上出ていない
様子いつもよりぼんやりしている。急に元気がない。眠ってばかりいる

いちばん見落とされるのが最後の1つです。 高齢の方の脱水は、まず「なんとなく元気がない」という形で出ます。 認知症が進んだ、年のせい、と受け取られて、そのまま数日たつことがあります。 急に様子が変わったら、まず水分を疑ってください。

水・お茶・スポーツドリンク・経口補水液の使い分け

飲みものなら何でも同じ、ではありません。 失っているものが水だけなのか、塩分も一緒なのかで選ぶものが変わります。

向いている場面気をつけること
水・麦茶ふだんの水分補給。いちばん基本汗を大量にかいたあと、これだけだと塩分が薄まる
味噌汁・スープ食事から水分と塩分を一緒に取る塩分制限のある方は回数を決める
スポーツドリンク汗をかいたあと。飲みやすい糖分が多い。糖尿病の方は主治医に確かめる
経口補水液下痢・嘔吐・発熱のとき。脱水を疑うとき塩分が多い。心臓・腎臓の病気がある方は指示を受けてから
コーヒー・紅茶・緑茶楽しみとして飲めば水分にはなるが、これだけに頼らない
ビール・日本酒水分としては数えない飲んだぶん以上に尿として出ていく

飲みものが進まない方には、食べる水分が効きます。 ゼリー、茶碗蒸し、雑炊、果物、アイス。とろみを付けると飲み込みやすくなる方もいます (水分にとろみを付ける)。 当店の献立に汁物を必ず添えているのは、 食事のたびに150ml前後の水分が確実に入るからです。 心臓や腎臓の病気で水分制限がある方は、上の話より主治医の指示が優先します (心臓病と食事)。

毎日のお弁当で水分・栄養を同時補給

配食のふれ愛のお弁当は、味噌汁やスープなどの汁物付き。水分とナトリウム・カリウムなどの電解質を食事と一緒に補給できます。配達時にはスタッフがお声がけをしますので、一人暮らしの方の見守りにもつながります。

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関連用語

脱水

体内の水分が正常値を下回った状態。高齢者は自覚症状なく進行しやすく、注意が必要です。

ナトリウム

体液バランスを調節するミネラル。汗とともに失われるため、発汗時は補給が必要です。

カリウム

細胞内液の電解質バランスを保つミネラル。野菜・果物・いも類に多く含まれます。

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