サラダ油をやめるだけで、比率は大きく動く
体内で作れない必須脂肪酸には、n-3系(オメガ3)とn-6系(オメガ6)があります。どちらも必要ですが、体内で同じ酵素を取り合うため、比率が重要になります。
| n-3系 | n-6系 | |
|---|---|---|
| 主な種類 | α-リノレン酸、EPA・DHA | リノール酸、アラキドン酸 |
| 食品 | 青魚、えごま油、あまに油、くるみ、大豆 | サラダ油、ごま油、コーン油、マヨネーズ、加工食品、菓子 |
| 体内での働き | 炎症を抑える方向 | 炎症を起こす方向(必要な働きでもある) |
| 望ましい比率 | n-6:n-3=4:1程度とされる | |
| 実際の日本人 | おおむね10:1前後。n-6が多すぎる | |
n-3を増やそうとして高価な油を買う前に、n-6を減らすほうが効率的です。日本人のn-6摂取源は次のとおりです。
揚げ物の回数を週2回までにする。これだけで比率は動きます。
| 油 | 主成分 | 使い方 |
|---|---|---|
| オリーブ油 | n-9系(オレイン酸) | 炒め物・加熱に。酸化しにくい |
| なたね油(キャノーラ) | n-9系+n-6系 | 加熱に使える |
| えごま油・あまに油 | n-3系(α-リノレン酸) | 加熱厳禁。そのままかける |
| ごま油 | n-6系 | 香りづけに少量 |
| サラダ油 | n-6系 | 減らす対象 |
| バター | 飽和脂肪酸 | 少量。LDLが高い方は控えめに |
えごま油とあまに油は加熱すると酸化して逆効果になります。味噌汁に垂らす、納豆に混ぜる、ドレッシングにする、といった使い方をしてください。開封後は冷蔵庫で保管し、1〜2か月で使いきります。
α-リノレン酸(えごま油など)は体内でEPA・DHAに変換されますが、変換率は数%程度と低いとされています。EPA・DHAを直接摂るなら魚です。
魚は調理が面倒という理由で敬遠されがちですが、缶詰を大根と煮る、味噌汁に入れるだけでも十分です。
高齢者では、油を減らしすぎるとエネルギーが足りなくなります。油は1gで9kcalあり、少量で栄養を確保できる貴重な手段です。
やせている方、食が細い方は、減らすのではなく質を替えてください。脂質異常症の管理は脂質異常症の食事、青魚の詳細は青魚とEPA・DHAをご覧ください。
油は控えるもの、という考え方が広く行き渡っています。しかし、高齢の方では、これが逆に働くことがあります。
油は、少ない量で多くのエネルギーが取れる材料です。食が細くなった方にとって、これは大きな利点になります。同じ茶碗1杯の量でも、油を少し使うだけで取れるエネルギーが変わります。
体重が落ちている方が油を避けると、状況は悪くなる一方です。筋肉が減り、動けなくなり、さらに食べられなくなる。この流れに入ると、戻すのに時間がかかります。
そして、油に溶ける栄養素の吸収にも関わります。緑黄色野菜を食べていても、油がなければ十分に取り込めないとされています。野菜だけを増やして油を抜く食事は、効率が良くありません。
血液の検査で指摘を受けている方は、医師の指示に従ってください。ただし、指示が出ていないのに自主的に極端な制限をしている方が、実際にいます。いまの制限が自分に必要かどうかを、一度確かめてください。
魚が良いと分かっていても、続けられなければ意味がありません。負担を減らす方法があります。
缶詰が最も現実的です。さば、いわし、さけ。調理の必要がなく、骨までやわらかく、日持ちします。そのまま食べる、汁ごと使う、野菜と和える。手間がほとんどかかりません。値段も安定しています。
次に、切り身の冷凍です。買ってきて小分けにして冷凍しておけば、必要な分だけ使えます。買い物の回数を減らせます。
焼き魚は、煙と後片づけが負担になります。煮る、蒸す、電子レンジで加熱する。この形なら、やわらかく仕上がり、片づけも楽になります。飲み込みに不安がある方にも向いています。
そして、毎日食べる必要はありません。週に2回から3回で十分とされています。毎日と言われると負担ですが、この程度なら続けられます。
種類の話は複雑ですが、家庭で実行することは単純です。
まず、いま使っている油を1種類確かめてください。多くの家庭では、揚げ物や炒め物に使う油が1本あるだけです。これを見直すだけで、日常に入ってくる内容が変わります。
そして、油を変えるより、揚げ物と加工食品を減らすほうが早いとされています。スナック菓子、インスタント麺、市販の揚げ物、菓子パン。これらには油が多く含まれており、量が積み上がります。
高価な油に替える必要はありません。特定の油を大量に取ることに意味はなく、油はいずれもエネルギーが高い材料です。「体に良い油だから多く使う」という使い方は、正しくありません。
油は時間が経つと変質します。開封したら早めに使い切り、光と熱を避けて保存してください。古い油は、においで分かることがあります。
油には、食べやすくするという役割もあります。この点は見落とされがちです。
ぱさついた食材は、飲み込みにくいものです。油を加えると、まとまりが出て、口の中で移動しやすくなります。マヨネーズで和える、油をかける、油で炒める。この工夫で、食べやすさが変わります。
そして、少量でエネルギーが取れるため、量を食べられない方に向いています。おかゆに油を少し混ぜる、ポタージュに生クリームを足す。見た目の量を増やさずに、内容を濃くできます。
ただし、脂質の消化に問題がある方では、負担になることがあります。胆のうを取った方、膵臓に病気がある方。該当する場合は、医師に確かめてください。
食事の形については嚥下食の分類にまとめています。形を整えることと、内容を濃くすることは、両立できます。
魚に含まれる成分を抽出した製品があります。使う前に知っておくべき点があります。
まず、魚そのものには、この成分以外にも多くのものが含まれています。たんぱく質、ビタミン、ミネラル。抽出物では、これらは取れません。食事の代わりにはならないということです。
そして、血液を固まりにくくする作用が指摘されています。同じ作用の薬を飲んでいる方、手術を予定している方は、注意が必要です。必ず医師と薬剤師に伝えてください。
製品によって、含まれる量に差があります。複数の製品を併用すると、思わぬ量になります。表示を確かめてください。
魚がどうしても食べられない場合には、選択肢になります。その場合も、医師に相談してから始めてください。まずは缶詰など、食べやすい形を試してからでも遅くありません。
血液の検査で脂質に関する指摘を受けたとき、食事だけで考えないでください。
数値には、体質の影響が大きく関わります。食事を厳しくしても下がらない方がいます。この場合、薬による治療が検討されます。食事の工夫だけで抱え込まないでください。
そして、高齢の方では、数値をどこまで下げるべきかの考え方が、若い方とは異なる場合があります。厳しい制限によって食事の量が減り、痩せてしまうほうが問題になることがあります。主治医の判断を仰いでください。
体を動かすことも数値に関わります。散歩、体操、家事。食事だけを変えるより、両方を組み合わせるほうが結果につながるとされています。
指摘を受けたら、まず医師に「自分はどこまで気をつけるべきか」を聞いてください。一般向けの情報を自分で当てはめると、必要以上に厳しくしてしまうことがあります。
油の内容を整えようとするとき、最も効果があるのは、加工食品の量を見直すことです。
スナック菓子、菓子パン、インスタント麺、市販の揚げ物。これらは、油と塩と糖が同時に多く含まれています。減らせば、複数の問題が同時に軽くなります。
ただし、一人暮らしの方では、これらが食事の中心になっていることがあります。調理の負担がなく、日持ちし、安いという理由があります。頭ごなしに否定しても、代わりがなければ変わりません。
代わりになるものを用意することが先です。缶詰、レトルト、冷凍食品、配食。手間がかからず、内容がまともなものは、いくらでもあります。
離れて暮らす家族が確かめるなら、台所と冷蔵庫を見てください。何を食べているかは、そこに表れます。本人に聞くより確実です。
ここまでの内容を、日常で実行できる形にまとめます。
一つめは、魚を週に2回から3回食べることです。缶詰で構いません。これだけで、この記事の内容の中心は実行できています。
二つめは、加工食品と揚げ物の回数を減らすことです。油の種類を選ぶより、こちらのほうが効きます。毎日食べているものが一つでも減れば、意味があります。
三つめは、油を怖がりすぎないことです。とくに食が細い方では、適度に使うことが助けになります。制限が必要かどうかは、医師に確かめてください。
この3つ以外は、覚えなくても構いません。細かい理屈より、続けられることのほうが結果につながります。迷ったときは、管理栄養士かかかりつけ医に相談してください。
自分で作らない日の食事も、日常の一部です。避けるのではなく、選び方を持っておいてください。
定食の形になっているものを選ぶと、内容が整いやすくなります。主食、主菜、副菜がそろっている献立は、それだけで偏りが小さくなります。丼ものや麺類だけで済ませる日が続くと、たんぱく質も野菜も不足します。
魚の献立がある日は、それを選ぶ価値があります。煮魚、焼き魚、刺身。自宅では手間がかかるものほど、外で食べる意味があります。配食でも、魚の日が週に何回あるかは確かめられます。
揚げ物が続いていると感じたら、翌日は控える。1食ごとに完璧を目指す必要はなく、数日単位で釣り合っていれば十分です。この考え方のほうが、長く続けられます。
そして、食べる量が確保されていることが前提です。内容を気にして食べる量が減るのでは、本末転倒になります。まず食べる、そのうえで内容を整える。この順番を守ってください。
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