主食を抜くと、たんぱく質が筋肉に使われなくなる
糖質制限が話題になり、ごはんを減らす方が増えました。しかし高齢者では、主食を減らすことが直接的な害になります。
やせている高齢者に糖質制限は勧められません。血糖の管理が必要な方も、主治医と管理栄養士の指示のもとで行ってください。
| 今 | 替える先 | ねらい |
|---|---|---|
| 白米 | 白米+大麦(もち麦)1割、雑穀米、五分づき米 | 食物繊維、マグネシウム、ビタミンB群が増える |
| 食パン | 全粒粉パン、ライ麦パン | 同上 |
| うどん | そば | そばはルチンとたんぱく質を含む |
| 菓子パン | おにぎり、サンドイッチ | 糖質と脂質の同時摂取を避ける |
| 清涼飲料 | 水、麦茶 | 液体の糖は最も血糖を上げます |
いきなり玄米にしないでください。消化しにくく、噛む力が落ちた方には負担です。白米に大麦を1〜2割混ぜるところから始めるのが現実的です。
同じものを食べても、順番で血糖の上がり方が変わります。
食物繊維が先にあると糖の吸収が緩やかになり、たんぱく質が先にあると腸のホルモンが働いて血糖の上昇が抑えられます。
ただし、高齢者ではこれを厳格にやりすぎないでください。ごはんが最後になると、その頃には満腹または疲れて食べられず、結果としてエネルギー不足になることがあります。「野菜から先に一口」くらいで十分です。
炊いたごはんを冷やすと、でんぷんの一部がレジスタントスターチという消化されにくい形に変わります。これは食物繊維に近い働きをし、腸内細菌のえさになります。
ただし高齢者では、冷たいものは飲み込みにくく、食欲も落ちます。お腹を冷やすことも避けたい。無理に冷やごはんにする必要はありません。腸内細菌への働きかけは、水溶性食物繊維で十分に足ります。
1食あたりの主食の目安は、ごはん茶碗1杯(150g前後)です。活動量が少ない方でも、減らすなら1割程度まで。
食事量が落ちている方は、むしろ分食で回数を増やしてください。血糖値スパイク、高齢者の血糖値スパイクを防ぐ食べ方もあわせてご覧ください。
糖質を減らす食べ方が広く知られるようになりました。しかし、高齢の方がそのまま真似ることには危険があります。
主食を減らすと、エネルギーが足りなくなります。足りない分は、体が筋肉を分解して補うと言われています。つまり、たんぱく質を十分に食べていても、エネルギーが足りていなければ筋肉は減っていきます。
高齢の方にとって、筋肉が減ることは深刻です。立ち上がれなくなる、歩けなくなる、転びやすくなる。そこから寝たきりにつながる流れは、実際によく見られるものです。
そして、主食を減らすと、食事全体の量が減ります。おかずだけをたくさん食べられる方は、多くありません。結果として、総量が落ち、痩せていきます。
血糖の指示が出ている方は、医師と管理栄養士の指示に従ってください。ただし、指示が出ていないのに、自主的に主食を抜いている方が実際にいます。いまのやり方が自分に必要かどうかを、一度確かめてください。
量を減らすのではなく、内容を替えるという考え方が現実的です。
白米に雑穀や押し麦を混ぜる。炊き方は変わらず、量も減りません。それでいて、内容は変わります。いきなり全部を替えず、少量から始めてください。
パンなら、全粒の粉が入ったものを選ぶ。ただし、硬いものは噛みにくく、口の中でぱさつきます。飲み込みに不安がある方には向きません。無理に替える必要はありません。
いも類を主食の一部にするという方法もあります。さつまいも、じゃがいも、里いも。やわらかく、甘みがあり、食べやすい部類です。ただし、こちらもエネルギー源であることに変わりはありません。
そして、替えられない事情があるなら、無理をしないでください。白米が食べやすくて量が入るなら、それが最善という場合があります。内容より、量が確保されることのほうが優先される段階があります。
同じものを食べても、順番によって体への入り方が変わると言われています。手間のかからない方法です。
野菜や汁ものを先に、主食を後に。この順番にすることで、血糖の上がり方が穏やかになるとされています。買うものも作るものも変わらず、順番を変えるだけです。
ただし、食が細い方には勧められない場合があります。先に野菜で腹が満たされ、主菜と主食が残るためです。体重が落ちている方では、たんぱく質とエネルギーを先に取るほうが優先されます。
そして、よく噛んで、時間をかけて食べることにも意味があるとされています。ただし、高齢の方では食事に時間がかかりすぎると疲れてしまいます。30分を大きく超えるようなら、量や形を見直してください。
順番や噛み方にこだわりすぎて、食事が窮屈になるのは避けてください。続けられる範囲で取り入れる、という程度で十分です。
菓子や甘い飲み物をどう扱うかは、高齢の方の食生活でよく問題になります。
まず、菓子が食事の代わりになっている場合は、見直しが必要です。菓子パン、せんべい、甘い飲み物で1食を済ませる。これが続くと、たんぱく質も野菜も入らなくなります。
一方で、食が細い方にとって、甘いものはエネルギー源になります。食べられるものが限られている段階では、菓子でも口に入るほうが良い場合があります。状態によって判断が変わります。
血糖の指示が出ている方は、医師と管理栄養士の指示に従ってください。自己判断で「少しなら大丈夫」と決めないでください。逆に、必要以上に厳しくして食事量が落ちるのも問題です。
そして、楽しみを取り上げないでください。食べる楽しみは、生活の質に直結します。量と回数を決めて、続けられる形にするほうが現実的です。
調理と保存の工夫が、内容に影響することがあります。
炊いたごはんを冷ますと、でんぷんの一部が変化し、消化されにくい形になると言われています。この形は、腸の細菌のえさになるとされています。おにぎり、冷たいごはん、寿司飯といった形で取り入れられます。
ただし、温め直すと元に戻る部分があるとされています。効果を期待しすぎず、そういう性質があるという程度に理解してください。冷たいごはんが苦手な方に無理をさせる必要はありません。
衛生の面では注意が要ります。炊いたごはんを常温で長く置くと、食中毒の原因になります。高齢の方は、食中毒で重くなりやすい立場にあります。冷蔵か冷凍で保存してください。
作り置きは、調理の負担を減らす方法として有用です。ただし、日持ちの目安を守り、においや見た目に変化があれば捨ててください。もったいないという気持ちが、健康を損なうことがあります。
主食は毎日食べるものだけに、形が合っていないと食事全体に影響します。
ごはんが硬くて食べにくい場合、水を多めにして炊く、やわらかめのごはんにする。それだけで、食べる量が戻ることがあります。おかゆにする前に、試す価値があります。
おかゆは、水分が多くエネルギーが薄くなります。同じ茶碗1杯でも、ごはんの半分程度になると言われています。おかゆにする場合は、おかずでエネルギーを補う必要があります。
パンは、ぱさついて口の中に張り付くことがあります。牛乳やスープに浸す、フレンチトーストにする。この形にすれば、飲み込みやすくなります。
麺類は、すすり込むときにむせやすい食品です。短く切る、とろみのある汁にする。形については嚥下食の分類にまとめています。
糖尿病で食事の指示を受けている方は、この記事の一般的な内容より、指示が優先されます。
指示の内容は、その方の状態、薬、体格、活動量によって決まります。一般向けの情報を自分で当てはめると、量が合わなくなります。とくに、薬を使っている方では危険です。
そして、高齢の方では、厳しくしすぎることの害が指摘されています。血糖が下がりすぎると、ふらつき、転倒、意識の低下につながります。目標をどこに置くかは、年齢や状態によって変わります。
食事の量を自己判断で減らさないでください。薬の量と食事の量は、組み合わせで決まっています。片方だけを変えると、釣り合いが崩れます。
疑問があれば、次の受診で聞いてください。「いまの食事のままでよいか」を確かめるだけでも意味があります。何年も前の指示のまま続けている方が、実際にいます。
細かい話が続きましたが、判断の目安は単純です。
月に一度、体重を測ってください。落ちていれば、量が足りていません。増えているなら、内容を見直す余地があります。この一つの数字が、多くを教えてくれます。
半年で2キロから3キロ落ちているなら、注意が必要です。本人に自覚がないことが多く、周囲が気づかないと進みます。服がゆるくなった、指輪が回るようになった。こうした変化も手がかりです。
そして、落ちている場合は、主食を減らさないでください。むしろ、食べやすい形で量を確保することが優先です。糖質を気にするのは、その後の話です。
体重が落ち続ける場合は、食事の問題だけとは限りません。病気が隠れていることがあります。受診して調べてもらってください。
主食を整えようとしても、作るのが負担であれば続きません。負担を減らす方法を挙げます。
まとめて炊いて、1食分ずつ冷凍する。解凍すれば、炊きたてに近い状態で食べられます。毎回炊く必要がなくなり、量の調整もしやすくなります。
包装された米飯も選択肢です。常温で保存でき、加熱するだけで食べられます。雑穀入りや、やわらかめの製品もあります。
そして、作ること自体が難しくなってきた場合は、外部の力を使ってください。配食を使えば、主食も含めて一食分が届きます。無理に自炊を続けて食事の回数が減るより、確実です。
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