青魚に豊富なEPA・DHAは、血液をサラサラにし、認知症予防にも効果が期待される必須脂肪酸です。魚の種類別含有量から調理のコツまでご紹介します。
EPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)は、魚の脂に豊富に含まれるオメガ3系脂肪酸の一種です。人間の体内ではほとんど合成できないため、食事から摂取する必要がある「必須脂肪酸」に分類されます。
日本人を対象とした大規模研究「JPHC研究」では、魚を多く食べる人ほど心筋梗塞の発症リスクが低いことが明らかになっています。魚を週5回以上食べるグループは、週1回未満のグループと比べて心筋梗塞の発症リスクが約40%低減したと報告されています。
厚生労働省はEPAとDHAを合わせて1日1g(1,000mg)以上の摂取を推奨しています。これは刺身なら約1人前、焼き魚なら約1切れで達成できる量です。
| 魚の種類 | EPA | DHA | 合計 |
|---|---|---|---|
| まいわし | 1,381mg | 1,136mg | 2,517mg |
| さんま | 844mg | 1,398mg | 2,242mg |
| ぶり | 899mg | 1,785mg | 2,684mg |
| さば | 690mg | 970mg | 1,660mg |
| 鮭 | 492mg | 820mg | 1,312mg |
| まぐろ(赤身) | 27mg | 115mg | 142mg |
| あじ | 408mg | 748mg | 1,156mg |
いわし、さんま、ぶりなどの青魚に特に豊富です。まぐろでも赤身よりトロの部分にはDHAが多く含まれています。
厚生労働省の目標量を達成するには、週3〜4回、1回80〜100g程度の魚を食べることが目安です。毎日でなくても、週の半分程度の夕食を魚料理にするだけで十分な量のEPA・DHAを確保できます。
缶詰も優秀な供給源です。さばの水煮缶やいわしの缶詰は、骨まで食べられるためたんぱく質やカルシウムも同時に摂れる理想的な食品です。
EPA・DHAは脂に含まれるため、調理法によって摂取できる量が大きく変わります。
| 調理法 | EPA・DHA残存率 | ポイント |
|---|---|---|
| 刺身(生) | 100% | 最も効率よく摂取できる |
| 煮魚 | 約80〜90% | 煮汁ごと食べれば流出分も回収 |
| 蒸し魚 | 約85〜90% | 脂の流出が少なく高齢者に食べやすい |
| 焼き魚 | 約70〜80% | 脂が落ちるため刺身より減少 |
| 揚げ物 | 約50〜60% | 高温で酸化しやすい |
煮魚や蒸し魚が最もおすすめです。煮汁にはEPA・DHAが溶け出しているため、煮汁ごと食べることで効率よく摂取できます。焼き魚の場合でも、大根おろしやレモンを添えて出てきた脂ごと食べると良いでしょう。
魚の缶詰は加熱加工されていますが、密閉状態で加工されるためEPA・DHAの損失は最小限です。さばの水煮缶(1缶190g)には約3,600mgものEPA・DHAが含まれており、3日分の目標量をカバーできます。汁にも栄養が溶け出しているため、料理に活用するのがおすすめです。
高齢者にとって魚は食べやすい食材ですが、さらに食べやすくする工夫があります。
魚が苦手な方は、えごま油やアマニ油からα-リノレン酸を摂取する方法もあります。α-リノレン酸は体内でEPA・DHAに一部変換されますが、変換率は5〜10%程度と低いため、可能であれば魚から直接摂取するのが最も効率的です。
体に良いと分かっていても、食べる回数が落ちていく理由があります。
下ごしらえと後片づけに手間がかかります。においが残る、焼き網の掃除が面倒、骨を取るのが大変。この積み重ねで、肉に流れます。
そして、一人分を買うと割高になります。一尾を買っても食べきれず、余らせることになります。結果として、買わなくなります。
骨が怖い、という理由も大きくあります。喉に刺さった経験があると、避けるようになります。飲み込む力が落ちている方は、特に慎重になります。
これらは、選び方と調理法で解決できます。意欲の問題ではありません。手間を減らす形を作ってください。
骨が理由で避けているなら、そこを外してください。
缶詰は、骨まで食べられる形に加工されています。調理の手間もなく、保存もききます。買い物に出られない日の備えにもなります。
そして、骨を取り除いた切り身が売られています。冷凍のものなら、必要な分だけ使えます。一人分でも無駄が出ません。
すり身にした形や、練った製品もあります。骨がなく、やわらかく、飲み込みやすい形です。ただし、塩分が多いものがあるので、量には注意してください。
飲み込む力に不安がある方は、専門職に相談してください。合う形を確かめてください。骨のあるものは、危険につながることがあります。
最も現実的な選択肢です。使い方を知っておいてください。
汁にも成分が溶け出しています。捨てずに使うと、取れる量が増えます。汁物や炊き込みに使う方法があります。
ただし、汁には塩分も含まれます。調整が必要な方は、量に注意してください。汁を控える場合は、その分だけ取れる量も減ります。
そのまま食べる以外にも、使い道があります。ほぐして和える、野菜と煮る、汁物に入れる、ごはんに混ぜる。調理の手間がほとんどかかりません。
常温で長く保存できます。災害への備えとしても役立ちます。定期的に使って、入れ替えてください。
同じ魚でも、調理のしかたで違いが出ます。
成分は脂に含まれるため、脂が落ちると一緒に失われます。焼くと脂が落ち、揚げると衣に移ります。この分だけ、取れる量が減ります。
煮る形なら、汁ごと食べられます。溶け出した分も一緒に取れます。煮汁を残さない献立が向いています。
そして、蒸す形も向いています。脂が落ちにくく、やわらかく仕上がります。飲み込みやすさの面でも利点があります。
ただし、食べやすさが最優先です。取れる量を気にして、食べにくい形にしないでください。食べられる形で続けることが第一です。
どちらか一方に寄せる考え方は、勧められません。
肉と魚では、含まれる栄養が異なります。魚に多いものもあれば、肉に多いものもあります。両方を取る形が基本になります。
そして、魚だけにすると、体をつくる材料が不足しやすくなります。一食あたりの量が少なくなりがちです。肉のほうが量を取りやすい面があります。
一週間の中で、両方が入る形にしてください。魚を何回、肉を何回と決めておくと続きます。厳密でなくて構いません。
卵と大豆製品も、同じ役割を果たします。四つを回す形にすると、偏りが減ります。毎食どれかが入っていれば十分です。
血液に関わる薬を飲んでいる方は、確かめてください。
血を固まりにくくする薬を飲んでいる場合、注意が必要なことがあります。成分の取り方について、医師の指示がある場合があります。自己判断で補助食品を始めないでください。
そして、錠剤や液体の補助食品は、食事とは量が違います。食事から取る分は、通常は問題になりません。問題になるのは、濃縮された形のものです。
使うなら、必ず主治医か薬剤師に確かめてください。お薬手帳を持って相談してください。ほかの薬との組み合わせも見てもらえます。
手術の予定がある方も、伝えてください。事前に中止するよう指示される場合があります。忘れずに申告してください。
種類によって、注意点があります。
体の大きな魚には、特定の物質が蓄積しやすいことが知られています。一般の成人では、通常の食べ方で問題になることは少ないとされています。ただし、極端に偏った食べ方は避けてください。
種類を分散させる形が、無難な進め方です。同じ魚ばかりを毎日食べる形にしないでください。いろいろな種類を回してください。
小型の魚は、この点でも扱いやすくなります。骨まで食べられるものが多く、値段も落ち着いています。常備しやすい形です。
心配があるときは、かかりつけの医師に相談してください。状態によって、注意点が異なる場合があります。
数字にとらわれすぎないでください。
目安は、あくまで平均的な考え方です。守れない週があっても、問題ではありません。続けることのほうが大事です。
そして、毎日少しずつでも構いません。汁物に入れる、和え物に混ぜる、ごはんにかける。一品として構えなくてよい形もあります。
逆に、まとめて食べる週があっても構いません。体は、日単位で厳密に管理していません。月単位で見て、偏っていなければ十分です。
数えるより、置いておくことです。缶詰と冷凍の切り身を切らさない。それだけで、回数は自然に増えます。
続けるには、手に入る形にしておく必要があります。
冷凍の切り身は、一切れずつ包装されたものが便利です。必要な分だけ取り出せます。一人分でも無駄が出ません。
そして、買ってきた生の魚は、その日に使わないなら冷凍してください。一切れずつ包んで冷凍すると、使いやすくなります。下味をつけてから冷凍する方法もあります。
缶詰は、常に数個置いておいてください。買い物に出られない日、体調の悪い日の備えになります。賞味の期限を確かめて、入れ替えてください。
買い物が負担になっている方は、届けてもらう形も使えます。魚を使った献立が定期的に入ります。調理も保存も要りません。
最後に、位置づけをはっきりさせておきます。
特定の食品だけで、病気を防げるわけではありません。食事全体、動く量、眠り、受診。これらが組み合わさって、体の状態が決まります。
そして、効果には個人差があります。研究で示されていることも、すべての人に当てはまるとは限りません。断定した情報には、注意してください。
薬をやめて食品で対処しようとしないでください。治療の代わりにはなりません。医師の指示に従ってください。
それでも、魚を食卓に戻すことには意味があります。食材の種類が広がり、栄養の偏りが減ります。まず、缶詰を一つ買ってくることから始めてください。
ひとまとめに語られますが、体の中での持ち場が違います。 どちらも青魚に含まれ、体内でEPAの一部はDHAに変わります。
| EPA(エイコサペンタエン酸) | DHA(ドコサヘキサエン酸) | |
|---|---|---|
| 主な持ち場 | 血液と血管 | 脳と目の網膜 |
| 働き | 血液を固まりにくくする、中性脂肪を下げる、炎症を抑える | 神経細胞の膜の材料になる。網膜に多く集まる |
| 多い魚 | いわし、さば | まぐろ(脂身)、ぶり、さんま |
「どちらを摂ればよいか」と訊かれますが、分けて考える必要はありません。 青魚を食べれば両方入ります。厚生労働省の食事摂取基準では、 n-3系脂肪酸として65歳以上で1日2.1〜2.2gが目安量です。 いわし1尾、さば半切れでおおむね届きます。 脂質全体の組み立ては脂質のバランスで扱っています。
「魚は体によいと分かっているが、焼くのが面倒で骨が怖い」という声をよく伺います。 そこで缶詰です。さば水煮缶は100gあたりEPA約930mg・DHA約1,300mgで、 生のさばと変わらないどころか上回ります。缶詰は丸ごと詰めて加熱するので、 脂が落ちないからです。
当店の献立でも、青魚は週に2〜3回入れています。 骨が心配な方には骨取りの切り身を使い、 噛む力が落ちている方にはほぐしてあんをかける形にしています (やわらかく調理するこつ)。
「青魚を毎日食べても大丈夫か」という質問をいただきます。 気をつける点は3つだけです。
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