災害への備え|配食のふれ愛 太子店 健康コラム

一般の非常食では足りない

市販の非常食セットは、健康な成人を想定して作られています。高齢者、とくに噛む力や飲み込む力が落ちた方には、次の問題が起きます。

  • 乾パン、アルファ米、カンパンが硬すぎて食べられない
  • 水がないと戻せない。水の確保が前提になっている
  • 塩分が高い。高血圧、腎臓病、心不全の方には負担
  • たんぱく質がほとんど入っていない。炭水化物中心
  • 容器が開けられない。握力、指先の力
  • とろみ剤が入っていない。飲み込みに不安がある方は水すら危険

「備えてある」ことと「食べられる」ことは別です。一度、実際に食べてみてください。

高齢者の家に置くもの

分類具体例理由
水1人1日3L × 3日分以上最優先。脱水は高齢者で急速に進みます
主食レトルトのおかゆ、パックご飯、パンの缶詰そのまま、または温めるだけで食べられる
たんぱく質鯖缶、鮭缶、ツナ缶、大豆水煮、レトルトの煮物、魚肉ソーセージここが抜けやすい
やわらかいもの市販の介護食(ユニバーサルデザインフード)レトルト形態を落とした方でも食べられる
栄養補助栄養補助飲料、ゼリー飲料食欲がなくても入る
飲み込みの補助とろみ剤、とろみつき飲料使っている方は必須。断水時も使える
果物・野菜果物の缶詰、野菜ジュース、乾燥野菜ビタミンと食物繊維。便秘対策にも
甘いもの羊羹、ビスケット、飴糖分補給。気持ちを保つ意味もあります
療養食減塩・低たんぱくのレトルト制限のある方は普段のものを多めに

食品以外で、忘れやすいもの

  • 常備薬(最低1週間分)と、お薬手帳のコピー。これが最重要です
  • 予備の入れ歯、入れ歯洗浄剤、洗浄用の容器
  • 口腔ケア用のウェットティッシュ・スポンジブラシ。断水時に歯磨きができないと誤嚥性肺炎の危険が上がります
  • 紙皿、割り箸、ラップ(皿にかぶせて洗い物を減らす)
  • 缶切り、はさみ(プルタブでない缶に注意)
  • カセットコンロとボンベ
  • 大人用おむつ、パッド
  • 眼鏡、補聴器の電池
  • 懐中電灯、乾電池、携帯ラジオ

停電・断水のとき

停電時:

  • 冷蔵庫は開けない。閉めたままなら数時間は保ちます
  • 冷凍庫のものから先に食べる
  • 夏は室温が急上昇します。熱中症に注意(夏の水分と食事)
  • 冬は低体温症に注意。温かい飲み物、重ね着

断水時:

  • 皿にラップをかけて使い、洗い物を出さない
  • ウェットティッシュで口腔ケア
  • 水を節約しようとして飲水を減らさない。これが最も危険です

ローリングストック

特別な非常食を買い込んで押し入れにしまうと、期限を切らして捨てることになります。普段食べているものを少し多めに買い、古いものから食べて買い足す方式にしてください。

  • 普段のレトルト・缶詰を1週間分多めに置く
  • 古いものから使う(棚の手前に古いものを)
  • 使った分を買い足す
  • 年に2回、日を決めて中身を点検する(防災の日、正月など)

これなら、備蓄が常に「食べ慣れたもの」になります。災害時に慣れないものを食べるストレスも減ります。

離れて暮らす家族ができること

  • 帰省したときに備蓄を点検する(本人任せにしない)
  • 実際に開けて食べてみる。開けられるか、食べられるかを確認
  • 薬の残数と、お薬手帳の写真を撮っておく
  • 避難所の場所と、そこまでの経路を一緒に確認する
  • 安否確認の方法を決めておく(緊急時の連絡体制)
  • 市区町村の避難行動要支援者名簿への登録を検討する

最後の名簿は、災害時に自治体や自治会が優先的に安否を確認するための仕組みです。ひとり暮らしや要介護の方は、地域包括支援センターか市区町村の防災担当に相談してください。

何日分を、どこに置くか

備蓄の量については、最低3日分、できれば1週間分と言われています。ただし、高齢の方の家では、量よりも置き方のほうが問題になります。

まず、取り出せる場所に置いてください。押し入れの奥、階段の上、高い棚。こうした場所に置いた備蓄は、いざというときに取り出せません。足腰が弱っている方が、揺れたあとの散らかった家の中で、高いところの箱を下ろすことはできません。腰の高さから下、扉を開ければ見える場所が原則です。

次に、分けて置いてください。一か所にまとめると、その部屋に入れなくなったときに全部が使えなくなります。台所に3日分、寝室に2日分、というように分散させておくと、どこか一か所が使えなくても残ります。寝室に置いた分は、夜間に何かあったときに手が届きます。

そして、重いものを高い場所に置かないでください。水のケースが落ちてくれば大けがになります。飲料水は床置きが基本です。ケースのまま床に置き、その上に軽いものを積むという順にしてください。

置き場所が決まったら、家族と共有してください。離れて暮らす家族が、電話で「あの棚の下から2段目に水がある」と伝えられる状態にしておくことに意味があります。本人が混乱しているときに、電話越しに案内できます。

食べ慣れたものを備える

備蓄の失敗で最も多いのが、いざというときに食べられないものを備えてしまうことです。非常時こそ、食べ慣れたものが役に立ちます。

味の濃いもの、香辛料の効いたもの、硬いものは、高齢の方には向きません。非常食として売られているものの多くは、若い人や働く人を想定して作られています。塩分が高く、噛みごたえがあり、量が多い。これをそのまま備えても、食べられずに残ります。

普段食べているレトルトや缶詰を、多めに買っておくほうが確実です。おかゆ、汁もの、煮物の缶詰、魚の缶詰、豆腐の常温保存できるもの。普段から食べているものなら、味も量も分かっており、非常時にも受け入れられます。

やわらかさが必要な方には、その形の備蓄が要ります。介護用として売られているレトルトの多くは、常温で長く保存できます。普段使っているものを、少し多めに置いておくという考え方で足ります。とろみ剤も忘れずに備えてください。断水の状況では、飲み込みの負担が増えます。

そして、水分です。高齢の方は脱水になりやすく、非常時には特に危険が高まります。飲料水のほか、水分の多いゼリー、果物の缶詰、野菜の汁を備えておくと、水だけでは取れない栄養と水分が同時に確保できます。

薬と医療の備えを一緒に考える

食料の備蓄だけを整えても、薬が切れれば命に関わります。食と薬をひとまとめに考えてください。

常用している薬は、可能な範囲で余裕を持って手元に置いてください。ただし、処方の日数には決まりがあり、勝手に多く持つことはできません。災害への備えとして相談すれば、対応してもらえる場合があります。主治医か薬剤師に聞いてください。

そして、お薬手帳を持ち出せるようにしておいてください。避難先で薬を処方してもらうとき、何を飲んでいるかが分かることが決定的に重要です。写真に撮って家族の電話にも入れておくと、手帳を持ち出せなくても伝えられます。

食事に制限がある方は、その内容も書いて備えてください。アレルギー、飲み込みの状態、避けている食品。避難所では、配られたものをそのまま食べることになります。伝えられなければ、危険なものが出されます。

医療の機器を使っている方は、電源の確保が課題になります。停電のときにどうするかを、事前に事業者や医療機関と確かめておいてください。これは食料の備蓄より優先度の高い準備です。

避難所での食事という現実

備蓄は家にとどまることを前提にしていますが、避難所に行く可能性もあります。そこでの食事の実態を知っておいてください。

避難所で配られる食事は、多くの場合、おにぎり、パン、弁当です。硬い、冷たい、水分が少ない、量が多い。高齢の方にとって食べにくいものが並びます。やわらかい食事や、量の調整が必要な方への対応は、すぐには整いません。

だからこそ、避難するときに持ち出す分を用意しておいてください。数食分の、その方が食べられる形のものを、袋にまとめておく。非常持ち出し袋に、必ず食事の分を入れてください。

そして、避難所に着いたら、食事に配慮が必要なことを伝えてください。言わなければ、配慮されません。紙に書いたものを持っていくと、混乱のなかでも確実に伝わります。

福祉避難所という仕組みがある地域があります。介護が必要な方が優先的に受け入れられる場所です。どこにあるか、どうすれば行けるかを、事前に市町村に確かめておいてください。当日に調べても間に合いません。

入れ替えを続ける仕組み

備蓄で最も難しいのは、備えることではなく、続けることです。買って置いたまま期限が切れている家庭が非常に多くあります。

期限切れを防ぐには、普段から食べて買い足す形にするのが確実です。多めに買い、古いものから食べ、食べた分だけ買い足す。特別なことをせずに、備蓄が入れ替わり続けます。

この形にするには、普段食べているものを備蓄にすることが前提になります。特別な非常食を備えると、食べる機会がないため入れ替わりません。備蓄用と普段用を分けないという発想が要ります。

それでも、確認の日を決めておいてください。年に2回、季節の変わり目に見るという形が続きやすいものです。防災の日や、家族が集まる時期に合わせるのもよい方法です。

高齢の方が一人で管理するのは難しいことがあります。離れて暮らす家族が、帰省したときに確かめる、あるいは電話で一緒に確かめるという形にしてください。本人任せにすると、期限が切れたまま何年も置かれることになります。

普段の暮らしとつなげて考える

災害への備えを特別なこととして扱うと、続きません。普段の暮らしの延長として組み込んでください。

配食を利用している方は、事業者に非常時の対応を確かめておいてください。災害のときに配達が止まるのか、代わりの手段があるのか。止まる前提で、その分の備蓄を用意しておく必要があります。

そして、普段から冷凍庫にある程度の食べものを入れておくことも備えになります。停電しても、開けなければ庫内はしばらく保ちます。ただし、長引けば使えなくなるため、常温で保存できるものと組み合わせてください。

調理の手段も考えてください。電気が止まればレンジも炊飯器も使えません。ガスが止まればコンロも使えません。温めずに食べられるもの、水を使わずに食べられるものを、備蓄のなかに入れておいてください。

そして、近所との関わりが最大の備えになります。一人暮らしの高齢の方が、災害のときに誰にも気づかれないという事態が繰り返されています。自治会、民生委員、地域包括支援センター。日頃からつながりを持っておくことが、どんな備蓄よりも効きます。

家族が離れている場合の備え

離れて暮らす家族が、災害のときにできることは限られます。だからこそ、事前の準備で差がつきます。

まず、連絡の手段を決めておいてください。災害のときは電話がつながりにくくなります。災害用の伝言サービス、電子メール、通信アプリなど、複数の手段を用意し、使い方を本人と練習しておいてください。

次に、地域の連絡先を控えておいてください。近所の方、民生委員、ケアマネジャー、通っている事業所。本人と連絡が取れないときに、代わりに様子を見てもらえる相手を知っておくことが重要です。

そして、備蓄の中身と置き場所を共有してください。電話で「あそこに水がある」と案内できる状態にしておく。本人が慌てているときに、落ち着いて指示できる家族の存在は大きな支えになります。

備蓄を家族が送るという方法もあります。帰省の回数が少ない場合、通販で直接送れば、重いものを本人が運ばずに済みます。年に2回、水と食料を送る日を決めておくと、入れ替えの仕組みにもなります。

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関連用語

介護食

かむ力・飲み込む力に合わせて形や硬さを調整した食事の総称です。

とろみ食

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脱水症

体内の水分と電解質が不足した状態。高齢者は喉の渇きを感じにくく気づきが遅れます。

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食べ物や唾液が気管に入って起きる肺炎。高齢者の肺炎の多くを占めます。

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