「お腹が空かない」の前に、生活が乱れている
高齢になると、食事の時間が不規則になりやすくなります。
結果として、朝食を抜く、昼と夕が近づく、夜中に菓子を食べる、といった形になります。1日2食では、必要な栄養量に届きません。
高齢者では、まとめて食べても栄養が生かされません。
食べられない方は、3食にこだわらず回数を増やす方法もあります(分けて食べる)。
最後の項目は実際に効果があります。「12時に届く」という予定があるだけで、それに合わせて生活が動き始めます。
朝食を抜くと、次のことが起きます。
朝食は簡単でいいのです。次の程度で構いません。
重要なのは、たんぱく質を朝にも入れることです。卵1個、納豆1パック、牛乳1杯。どれかがあれば形になります。
夜中の間食が増えている場合、次を確認してください。
やめさせるより、日中に食べられる形を作るほうが効きます。頭ごなしに禁止しても、隠れて食べるようになるだけです。
食事の時間を決めても、それだけでは定着しません。1日全体の流れの中に組み込む必要があります。
まず、起きる時間です。起きる時間が毎日違えば、食事の時間も定まりません。起きたらカーテンを開け、光を浴びる。この習慣が、体の時計を整えます。
次に、日中の活動です。体を動かしていない日は、お腹が空きません。散歩、家事、体操、外出。何でもかまいませんが、動く時間があることで、食事の時間に食欲が出ます。
そして、人と会う予定です。デイサービスに通う日、家族が来る日、配達が来る日。予定があると、その前後に生活の区切りが生まれます。予定のない日が続くと、リズムが崩れます。
寝る時間も関係します。夜更かしをすれば朝起きられず、朝食が抜けます。昼寝が長すぎると、夜眠れず、翌日が崩れます。食事の話をしているつもりで、実は睡眠の話であることが少なくありません。
一人暮らしでは、リズムを作る手がかりが少なくなります。意識的に作り出す必要があります。
最も効くのは、外からの予定を入れることです。配食が届く時間、デイサービスの日、通院の日、訪問の予定。他人が関わる予定は、自分だけの予定と違って動かせません。だからこそ、リズムの支えになります。
配食は、この点で大きな役割を果たします。決まった時間に届くことで、食事の時間が自動的に決まります。届いたら食べる、という形にすれば、時間を意識する必要すらありません。
電話の約束も有効です。毎日決まった時間に家族が電話する。その時間が生活の区切りになり、前後の行動が定まります。
そして、テレビやラジオの番組を目印にする方法があります。「この番組が始まったら昼食」という決め方は、時計を見るより自然に定着します。長年の習慣として、すでにそうしている方も多くいます。
一度崩れたリズムを戻すには、順番があります。全部を一度に直そうとすると失敗します。
まず、朝を固定してください。起きる時間と朝食の時間だけを、まず決める。朝が決まれば、その日の残りは自然に整いやすくなります。逆に、夜から直そうとしてもうまくいきません。
次に、朝の光を浴びてください。起きてすぐカーテンを開け、できれば外に出る。光が体の時計を動かします。室内にこもったままでは、時間だけ決めても体がついてきません。
そして、昼寝を短くしてください。午後3時までに、30分以内。夕方に長く眠ると、夜が崩れ、翌朝も崩れます。ここを直すだけで、全体が整うことがあります。
戻すには時間がかかります。数日で戻るものではありません。2週間ほど続けて、ようやく体が慣れます。途中でうまくいかない日があっても、翌日また同じ時間に起きる。それだけを守ってください。
入院、体調不良、けが。こうした時期には、リズムが必ず崩れます。この扱い方を知っておいてください。
崩れている時期に、無理に整えようとしないでください。体力が落ちているときは、休むことが優先です。食べられる時間に、食べられるものを食べる。この時期はそれで十分です。
ただし、水分だけは確保してください。食事が取れなくても、水分が取れていれば持ちこたえられます。脱水は、高齢の方では急速に悪化します。
そして、回復してきたら、少しずつ戻してください。まず起きる時間、次に朝食、そして日中の活動。一度に元に戻そうとすると、疲れて逆戻りします。
入院から戻ったときは、特に注意が要ります。病院では時間が完全に管理されているため、家に戻ると急に手がかりを失います。退院の直後は、家族が意識的に時間を作ってください。ここで崩れると、その後の回復に響きます。
デイサービスや短期の入所を使っている場合、通う日と通わない日でリズムが変わります。この差をどう扱うかが課題になります。
通う日は、時間が管理されています。決まった時間に食事が出て、活動があり、入浴があります。この日はリズムが保たれます。
問題は、通わない日です。予定がなく、一日中家にいると、起きる時間も食べる時間も崩れます。週2回通っている方なら、残りの5日をどうするかが重要になります。
通わない日にも予定を入れてください。配食の配達、家族の電話、買い物、近所への散歩。小さな予定でかまいません。一つあるだけで、その日の流れが決まります。
そして、通う日と通わない日で食べる量が違わないかを見てください。通う日はしっかり食べ、通わない日はほとんど食べていない。この差が大きい方が実際にいます。1週間全体で足りているかを確かめてください。
認知の機能に変化が出てくると、時間の感覚そのものが不確かになります。この場合の対処は、通常とは異なります。
時計を見て行動することが難しくなります。「12時になったら食べる」という指示が機能しません。時間ではなく、出来事を手がかりにしてください。テレビの番組、配達のチャイム、電話。
食べたことを忘れる場合があります。食べた直後に「食べていない」と言うことがあります。否定せず、軽いものを出す、片づけを一緒にして食べたことを示す、といった対応が取られます。責めても解決しません。
逆に、食べたと思い込んで食べない場合もあります。この場合は、量が確保できているかを確かめる必要があります。本人の申告ではなく、実際に出した量と残った量で判断してください。
そして、環境を毎日同じにしてください。同じ場所、同じ器、同じ時間、同じ順番。変化が少ないほど、混乱が減ります。良かれと思って変化をつけると、かえって食べられなくなることがあります。
ここまで規則正しい食事を前提に述べてきましたが、その方の状態によっては、この前提を外すべき場合があります。
一度にたくさん食べられない方には、回数を増やすほうが向きます。1日3食にこだわると、1食あたりの量が足りず、合計が不足します。5回から6回に分けたほうが、無理なく入ります。
この場合も、時間を決めることは有効です。回数が増えても、だらだら食べるのではなく、時間を決めてください。いつも中途半端に満腹だと、どの食事も進みません。
そして、食欲が出る時間帯に合わせてください。朝に力が出る方、夕方に食欲が出る方。一般的な時間割より、その方の実際の様子に合わせるほうが結果が出ます。
どの形が合うかは、体重と食べる量で判断してください。整った時間割を守れていても、体重が落ちているなら、その形は合っていません。形式より結果を見てください。回数を増やす考え方は分割食にまとめています。
リズムの崩れは、多くの場合まず朝食から始まります。ここを守れるかどうかが、その日全体を決めます。
朝食を抜くと、前日の夕食から昼食まで、非常に長い時間食べないことになります。この間、体は筋肉を分解してエネルギーを作ります。高齢の方では、この積み重ねが筋肉の減少に直結します。
そして、朝食を抜くと、1日の合計が確実に減ります。昼と夜で取り戻せる量には限りがあります。一度に食べられる量が減っている方では、なおさら取り戻せません。
抜く理由を確かめてください。食欲がない、起きるのが遅い、用意が面倒、前日の夕食が遅かった。理由によって対処が変わります。夕食が遅いなら、そちらを早めるほうが効きます。
用意が面倒という理由なら、簡単な形にしてください。牛乳とバナナ、ヨーグルトとパン、栄養補助のドリンク。調理しない形でかまいません。食べないよりはるかに良いのです。
夜中に起きて食べる方がいます。これ自体が悪いわけではありませんが、背景を確かめる必要があります。
夕食が早すぎる、あるいは量が少ない場合は、単純に空腹です。この場合は、夕食の時間を遅らせるか、寝る前に軽く食べる形にすれば解決します。牛乳やヨーグルトなら、逆流の心配も比較的少なくて済みます。
眠れないから食べるという場合もあります。この場合、食べても根本は解決しません。日中の活動、朝の光、昼寝の長さを見直すほうが効きます。
認知の機能の変化が背景にある場合もあります。時間が分からなくなっている、食べたことを忘れている。この場合は、責めても改善しません。夜間に手の届く場所に安全なものを置いておく、という現実的な対応が取られます。
そして、危険な面もあります。夜中に一人で台所に立てば、転倒や火の危険があります。横になった直後に食べれば、逆流して誤嚥することもあります。頻繁に起きているなら、医師かケアマネジャーに相談してください。
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