健康診断では正常でも、食後に血糖値が急上昇する「血糖値スパイク」。隠れ糖尿病ともいわれるこの現象を、食べ方の工夫で防ぐ方法を解説します。
血糖値スパイクとは、食後に血糖値が急激に上昇(140mg/dL以上)し、その後インスリンの大量分泌によって急降下する現象です。空腹時の血糖値は正常範囲にあるため、通常の健康診断では見つかりにくいことから「隠れ糖尿病」とも呼ばれます。
日本人の約1,400万人に血糖値スパイクがあると推定されており、特に高齢者はインスリンの分泌速度が遅くなるため、食後の血糖値が上がりやすい傾向があります。
食後の急激な血糖値変動は、血管の内壁を傷つけ、動脈硬化を進行させます。これは糖尿病の有無にかかわらず起こります。具体的には以下のリスクが報告されています。
血糖値スパイクを防ぐ最も簡単で効果的な方法が、食べる順番を変えることです。関西電力医学研究所などの研究で、食べる順番が食後血糖値に大きく影響することが実証されています。
| 順番 | 食材 | 理由 |
|---|---|---|
| 1番目 | 野菜・海藻・きのこ | 食物繊維が糖質の吸収速度を遅くし、血糖値の急上昇を抑制 |
| 2番目 | 肉・魚・卵・大豆 | たんぱく質と脂質がインクレチン(消化管ホルモン)を分泌させ、胃の排出速度を遅くする |
| 3番目 | ごはん・パン・麺類 | 先に摂取した食物繊維とたんぱく質のおかげで、糖質の吸収がゆるやかになる |
この「ベジファースト」の食べ方で、食後の血糖値ピークを約30〜40%抑えられるという研究結果があります。また、よく噛んでゆっくり食べること(1口30回以上が目安)も重要で、早食いは血糖値を急上昇させる大きな要因です。
食事開始から満腹感を感じるまで約20分かかります。早食いをすると、満腹感が来る前に食べすぎてしまい、結果として血糖値が大きく上がります。高齢者は噛む力の低下から食事が早くなりがちですが、やわらかく調理した食材をゆっくり味わって食べる習慣をつけましょう。
GI(グリセミック・インデックス)値は、食品が血糖値を上げるスピードを数値化したもので、ブドウ糖を100とした相対値です。GI値が低い食品ほど、血糖値の上昇がゆるやかです。
| 高GI(70以上) | 中GI(56〜69) | 低GI(55以下) |
|---|---|---|
| 白米(84) | 玄米(62) | 大麦・もち麦(50) |
| 食パン(91) | ライ麦パン(58) | 全粒粉パン(50) |
| じゃがいも(90) | さつまいも(63) | 大豆(15) |
| せんべい(89) | バナナ(62) | りんご(36) |
白米を玄米や雑穀米に置き換える、パンを全粒粉パンに変えるといった工夫で、食後血糖値の上昇を抑えることができます。ただし、高齢者の場合は消化しにくい玄米よりも、白米に大麦やもち麦を少量混ぜる方法が現実的です。
食後15〜30分に10〜15分程度の軽い散歩をすると、筋肉がブドウ糖を取り込むため、血糖値のピークを約20%抑えられるという報告があります。激しい運動は必要ありません。食卓を片づける、庭に出る、家の中を歩くといった軽い活動で十分です。
血糖値スパイクを防ぐための食習慣は、特別なことではありません。毎日の食事の中で以下のポイントを意識することで、血管を守り、カロリーコントロールにもつながります。
配食サービスは栄養士が計算した献立で、糖質量・食物繊維量が適切に管理されています。特に糖質カロリー調整食は、血糖値が気になる方に最適な食事設計です。
本人が気づいていないことが、この問題の難しいところです。
食後の一時的な上がり方は、症状として表れないことが多くあります。いつもの検査では見つからない場合があります。空腹時の数値だけでは分かりません。
そして、食後に強い眠気が出る、だるくなる。これが合図になっていることがあります。年齢のせいだと考えて、見過ごされます。
気になるときは、医師に相談してください。食後の状態を確かめる検査があります。自己判断で機器を買う前に、相談してください。
健康診断の結果を、続けて見てください。一回の数値より、推移が重要です。結果は捨てずに残してください。
減らすつもりが、逆に働く場面があります。
朝を抜くと、昼食のあとの上がり方が大きくなることがあります。空腹の時間が長いほど、その後の振れ幅が大きくなります。回数を減らすことが、必ずしも有利ではありません。
そして、高齢の方では、抜くことで全体の栄養が不足します。体重が減り、筋肉が落ちます。この害のほうが大きくなることがあります。
三食を守るほうが、状態は安定します。朝は簡単なもので構いません。ごはんと味噌汁、卵か納豆。それで十分です。
薬を使っている方は、抜くと低血糖の危険があります。自己判断で食事を抜かないでください。主治医の指示に従ってください。
手間もお金もかからない方法です。
早く食べると、短時間で多くが体に入ります。ゆっくり食べれば、同じ量でも入り方がなだらかになります。順番と同じくらい、速さが効きます。
そして、噛む回数が増えると、満腹を感じやすくなります。食べすぎを防ぐ効果もあります。一石二鳥です。
箸を置く習慣をつけてください。一口ごとに置くだけで、速さが変わります。意識しなくても、時間がかかるようになります。
ただし、噛む力が落ちている方は、無理をしないでください。硬いものを避けて、量が減るほうが問題です。やわらかい形で、時間をかけてください。
座り続けないことが、そのまま効きます。
食後に体を動かすと、入ったものが使われます。激しい運動である必要はありません。片づけをする、庭に出る、それだけでも構いません。
そして、食後すぐに横になる習慣は、見直してください。逆流の原因にもなります。座った姿勢を保つほうが、体にとって有利です。
散歩ができるなら、食後の時間帯を選んでください。15分から20分程度で構いません。毎日続けられる長さにしてください。
足腰に不安がある方は、座ったままできる動きもあります。足踏み、足首の上下、立ち座り。無理に歩こうとして転倒するほうが危険です。
食事だけを見ていると、抜けます。
甘い飲み物は、液体であるぶん、速く体に入ります。固形物より影響が大きくなります。本人は食事だと思っていません。
そして、日に何本も飲んでいることがあります。缶やペットボトルの本数を、数えてみてください。本人は把握していないことが多くあります。
スポーツ用の飲料も、糖分を含みます。体調が悪いときに勧められることがありますが、常用するものではありません。用途を分けてください。
お茶や水に替えるだけで、大きく変わることがあります。まずここから見直してください。費用も減ります。
やめさせるより、置き換えるほうが続きます。
菓子を完全に断つと、我慢が破れたときに大量に取ることになります。置き換えるほうが現実的です。ヨーグルト、チーズ、ナッツ、ゆで卵。
そして、食べる時間を決めてください。だらだらと食べ続ける形が、最も不利になります。三時のお茶の時間、というように決めてください。
果物は、量を決めてください。体に良いという理由で、無制限に食べる方がいます。一日の目安を、医師か管理栄養士に確かめてください。
そして、食事を減らして間食を増やす形は避けてください。栄養が偏り、体をつくる材料が不足します。食事が土台です。
高齢の方では、この点に注意が要ります。
ごはんを大きく減らすと、体を動かす燃料が不足します。体をつくる材料が燃料として使われ、筋肉が落ちます。体重が減っている方は、特に注意してください。
減らすより、種類と食べ方を工夫してください。よく噛む、順番を意識する、食後に動く。これらのほうが、無理なく続きます。
そして、体重の動きを見てください。減り続けているなら、控えすぎです。週に一度、同じ条件で測ってください。
指示を受けている方は、その指示が優先されます。自己判断で増減しないでください。受診のときに、実際に食べている量を伝えてください。
作る手間が、そのまま内容に響きます。
菓子パンや麺だけで済ませる日が増えます。これが、最も起こりやすい崩れ方です。手間がかからず、保存もきくためです。
そして、野菜と主菜が抜けます。この二つが抜けると、食後の状態も、栄養の面も不利になります。ここを補う形を作ってください。
手間の少ない材料を常備してください。缶詰、豆腐、卵、納豆、冷凍の野菜。置いておくだけで、一品足せます。
そして、届けてもらう形も使えます。主食、主菜、副菜がそろった形で届きます。作らずに、一食分の内容が確保できます。
数字を一人で解釈しないでください。
基準の範囲は、年齢や状態によって変わることがあります。高齢の方では、若い方と同じ基準を当てはめない考え方があります。主治医に確かめてください。
そして、一回の数値だけで判断しないでください。体調や、その日の食事の影響を受けます。推移を見ることが重要です。
結果は、捨てずに残してください。時間の流れが見えると、判断ができます。受診のときに持っていってください。
気になる点は、その場で聞いてください。「この数字は何を意味するのか」。分からないまま帰らないでください。
続けられる形にすることが、最も大事です。
すべてを守ろうとすると、続きません。破れたときに、全部やめてしまいます。できることから始めてください。
まず、甘い飲み物をお茶に替えてください。これだけで、変わる方がいます。費用もかかりません。
次に、箸を一口ごとに置いてください。速さが変わります。意識しなくても、時間がかかるようになります。
そして、食後に座り続けないでください。立って片づける、それだけで構いません。三つとも、今日から始められます。
健診や受診で糖尿病を指摘されたあと、 いきなり細かい計算を始める方がいますが、続きません。 最初に決めるのは3つだけです。
この3つが身についてから、食べる順番やGI値の話に進んでください。 主食の質については糖質の質を選ぶにまとめています。 体重が気になる方は高齢者の体重管理も合わせてご覧ください。
受診のたびに聞かされるHbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)は、 過去1〜2か月の血糖の平均を映した数字です。 測ったその日の食事では動かないので、日々の積み重ねが出ます。
ここで知っておいていただきたいのは、 高齢者の目標値は若い方より緩いということです。 日本老年医学会と日本糖尿病学会が定めた目標では、 認知機能とADLが保たれていて、低血糖を起こしやすい薬(インスリン、SU薬など)を 使っていない方で7.0%未満。 そうした薬を使っている75歳以上では8.0%未満で、下限が7.0%です。
下限があるのがこの目標の要点です。 「低いほどよい」ではありません。下げすぎのほうが危ないからです。
高齢の方の低血糖は、若い方と出方が違います。 冷や汗・動悸・手のふるえといった分かりやすい前ぶれが出ないまま、 いきなり「ぼんやりする」「ろれつが回らない」「ふらつく」という形で現れます。 認知症や脳梗塞と間違えられ、そのまま見過ごされることがあります。
厳しく管理するほど良い、という考え方は高齢の方には当てはまりません。 食事を楽しめて、低血糖を起こさず、体重が保てているなら、 数値が少し高めでも十分です。持病が重なっている方は 高齢者の高血圧と食事、 高齢者の慢性腎臓病(CKD)と食事療法も合わせてご覧ください。 当店にはエネルギーと糖質を抑えたカロリー調整食があり、 毎日の献立にエネルギーと食塩相当量を表示しています。
インスリンの分泌や働きが低下し、血糖値が慢性的に高くなる疾患。日本の高齢者の約5人に1人が該当します。
消化されにくい食品成分。糖質の吸収を遅らせ、腸内環境を整える働きがあり、血糖値対策の要です。
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