「たんぱく質を控えて」と言われていたのに、今度は「しっかり摂って」
透析導入前(保存期)の食事は、残っている腎機能を守るためにたんぱく質を制限します。ところが透析が始まると、目的が変わります。
そのため、たんぱく質はむしろしっかり摂る方針に変わります。体重1kgあたり0.9〜1.2gが目安です。高齢者の慢性腎臓病(CKD)と食事療法と混同しないでください。
| 項目 | 目安 | 要点 |
|---|---|---|
| エネルギー | 体重1kgあたり30〜35kcal | 不足するとたんぱく質が燃やされる |
| たんぱく質 | 体重1kgあたり0.9〜1.2g | しっかり摂る。ただしリンに注意 |
| 塩分 | 1日6g未満 | のどが渇き、水分が増える原因になる |
| 水分 | 透析間の体重増加で管理 | 中1日で体重の3%、中2日で5%以内が目安 |
| カリウム・リン | 検査値による | 高すぎると危険。個別の指示に従う |
数値はあくまで一般的な目安です。透析の条件、残存腎機能、体格によって指示は変わります。担当の管理栄養士の指示が優先します。
カリウムが高いと不整脈や心停止を招くため、最も注意が要ります。カリウムは水に溶けるので、調理で減らせます。
最後の項目は見落とされがちで、危険です。減塩調味料の成分表示を必ず確かめてください。
リンが高い状態が続くと、血管の石灰化や骨の異常につながります。
| リンが多い | 比較的少ない |
|---|---|
| 加工食品全般(ハム、ソーセージ、練り物、インスタント麺) | 生の肉・魚 |
| 乳製品(牛乳、チーズ、ヨーグルト) | — |
| 小魚、レバー、卵黄 | 卵白 |
| ナッツ、大豆製品(多め) | — |
| コーラなど(リン酸塩) | 水、麦茶 |
とくに加工食品に添加されるリン酸塩は吸収率が高く(9割以上)、注意が要ります。同じリン量でも、天然の食品より体に入りやすいのです。「リン酸塩」「かんすい」「pH調整剤」の表示を見る習慣をつけてください。
リン吸着薬が処方されている場合は、食事の直前か食事中に飲むことが重要です。食後に飲んでも効きません。
透析と透析の間の体重増加が、水分の摂りすぎの指標になります。増えすぎると、心臓に負担がかかり、透析中の血圧低下も起きます。
減塩の実際は高齢者の高血圧と食事をご覧ください。
制限が多いため、結果として食事量が落ち、低栄養になる方が少なくありません。透析患者では、栄養状態が予後に直結します。
「食べてはいけないもの」を数えるより、「食べられるものを、しっかり食べる」方向で組み立ててください。迷ったら透析施設の管理栄養士に相談を。栄養指導は保険で受けられます。
透析を始める前の段階では、たんぱく質を控えるよう指導されてきた方が多くいます。ところが透析が始まると、方針が逆になります。透析のたびにアミノ酸が抜けていくため、しっかり取らないと体が痩せていきます。
目安は、体重1kgあたり0.9〜1.2gです。体重50kgなら45〜60gになります。これは健康な方と同じか、やや多めの量です。保存期の指導を続けていると、この量に届きません。
実際の献立に置き換えると、毎食に主菜を1品欠かさないことになります。朝に卵か納豆か豆腐、昼に魚か肉を1品、夜に魚か肉を1品。「朝はパンと茶だけ」という食べ方をしていると、まず足りません。
ここで難しいのが、たんぱく質を多く含む食品には、リンも多く含まれるという点です。この兼ね合いが、透析中の食事をややこしくしています。たんぱく質を減らしてリンを下げるのは間違いで、正しくはリンの吸着薬を指示どおりに飲みながら、たんぱく質を確保するという形です。食事だけで両立させようとすると、必ずどちらかが崩れます。方針は必ず主治医と栄養士に確かめてください。
カリウムは水に溶けるため、調理のしかたで減らせます。この工夫を知っているかどうかで、食べられる野菜の幅が変わります。
基本は、切って、水にさらして、ゆでこぼすことです。野菜は小さく切るほど表面積が増え、カリウムが出やすくなります。丸ごとゆでるのと、薄切りにしてゆでるのでは、減る量が大きく違います。ゆで汁は必ず捨ててください。ゆで汁を使った煮物では、減らした意味がなくなります。
いも類は、皮をむいて薄切りにし、水にさらしてからゆでます。葉物は、ゆでてから水にさらし、しっかり絞ります。根菜も薄切りにしてゆでこぼします。生野菜のサラダは、この工程が入らないため、量に気をつける必要があります。
カリウムが多い食品を挙げます。いも類、豆類、生の果物、ドライフルーツ、青汁、野菜ジュース、干し柿、バナナ、アボカド、海藻、そして減塩の調味料。減塩しょうゆや減塩の塩には、塩の代わりにカリウムが使われていることがあります。塩分を減らそうとして、カリウムを増やしてしまうことがあるので、原材料を確かめてください。
果物は缶詰を使うと、シロップにカリウムが溶け出しているため、実だけを食べれば量を抑えられます。ただし、シロップは飲まないでください。量については、血液検査の結果を見ながら主治医と決めてください。
リンは、たんぱく質を含む食品に広く含まれます。しかし、同じリンでも吸収されやすさが違います。ここを知っておくと、減らすところが絞れます。
吸収されやすいのは、加工食品に添加物として使われているリンです。ハム、ソーセージ、練り製品、インスタント麺、加工チーズ、清涼飲料水、缶コーヒー、菓子パン。これらのリンは、ほぼ全部が吸収されます。減らすなら、まずここです。
一方、肉、魚、卵、大豆製品に含まれるリンは、吸収される割合が低くなります。つまり、加工食品を減らして、素材から作った料理に切り替えることが、たんぱく質を保ちながらリンを減らす方法になります。
乳製品もリンが多い食品です。牛乳、ヨーグルト、チーズ。カルシウムのために取りたくなりますが、量については指示に従ってください。小魚も、骨ごと食べるとリンが多くなります。
そして、リンの吸着薬を飲んでいる方は、飲み方が結果を左右します。食事と一緒に、あるいは食事の直前直後に飲むよう指示されているのは、食べたもののリンを捕まえるためです。食後しばらくしてから飲んでも効きません。飲み忘れが続くと、数値が下がりません。食卓に置いておく、外食のときは持ち歩くといった工夫をしてください。
透析のあいだに体重がどれだけ増えるかは、水分と塩分の取り方で決まります。増えすぎると、透析のときに一度に引く量が増え、体に負担がかかります。
水分の管理で見落とされやすいのが、飲みもの以外から入る水分です。汁もの、おかゆ、麺類のつゆ、果物、ゼリー、豆腐、野菜の煮物。汁ものを1杯やめるだけで、150〜200mLが減ります。麺類を食べるときにつゆを飲み干すと、そこだけで300mL以上入ります。
そして、塩分を減らすことが水分の管理につながります。塩分を取ればのどが渇き、飲む量が増えるためです。「水を我慢する」より「塩を減らす」ほうが、実行しやすく、続きます。のどの渇きを我慢し続けるのは、精神的にこたえます。
のどの渇きを紛らわす工夫もあります。氷を口に含む、うがいをする、レモンや酸味のあるものを少し口に入れる、飴をなめる、口の中を潤すジェルを使う。口の乾きが強い方は、歯科や訪問看護師に相談すると、口腔ケアの方法を教えてもらえます。
体重は毎日、同じ条件で量ってください。透析と透析のあいだの増え方が分かると、何をしたときに増えるかが見えてきます。記録を持って栄養士に相談すれば、具体的な調整ができます。
透析を受けている方の食事は、制限の話が中心になりがちです。しかし、制限を守った結果として食べる量が落ち、体重が減っていくなら、それは失敗です。
透析を受けている方にとって、栄養状態は生活の質と直結します。筋肉が落ちれば動けなくなり、免疫が落ちれば感染しやすくなります。数値を守ることと、体を保つことは、どちらも必要で、片方だけでは意味がありません。
体重が減ってきたとき、食事が制限だらけになっていないかを見直してください。カリウムを気にして野菜と果物を一切食べない、リンを気にして たんぱく質を減らす、水分を気にして食事量まで減らす。こうした行きすぎが積み重なると、食べられるものがほとんどなくなります。
迷ったときは、栄養士に相談してください。透析を受けている医療機関には管理栄養士がいることが多く、定期的に相談できます。1週間ぶんの実際の食事内容と、体重の記録を持っていってください。「気をつけています」だけでは、どこを直せばよいかが決まりません。
作る負担が重いときは、透析食に対応した配食や、宅配の冷凍食品を使う方法もあります。栄養成分が示されているものであれば、管理がしやすくなります。事業者の比べ方は配食サービスの確認12項目にまとめています。
制限の多い食事だからといって、外で食べる機会をすべて諦める必要はありません。頻度と、その日の組み立てで調整できます。
外食の日は、その前後の食事で調整します。塩分の多い食事をした日は、翌日を薄味にする。水分が多くなった日は、次の食事の汁ものをやめる。1食ごとに完璧を目指すより、数日単位で釣り合いを取るほうが現実的です。
選び方のこつもあります。麺類はつゆを残す。汁ものは頼まない。漬物は残す。たれやソースは、かけずに付けて食べる。これだけで塩分がかなり変わります。加工食品が中心のメニューより、焼き魚や焼き肉など素材そのものの料理を選ぶと、リンも抑えられます。
行事の席では、周囲に伝えておくと楽になります。「透析を受けているので、食べられないものがあります」と言っておけば、勧められて困ることがなくなります。黙って残すと心配されますが、理由が分かっていれば気にされません。
そして、たまの外食で数値が動いたとしても、そこで自分を責めないでください。続けられる形でなければ、管理そのものが続きません。厳しくしすぎて食事が苦痛になるより、たまの楽しみを残しながら日常を整えるほうが、長い目で見て良い結果になります。調整のしかたは、主治医と栄養士に相談して決めてください。
慢性腎臓病(CKD)のステージ分類(G1〜G5)と、ステージ別のたんぱく質・カリウム・リン制限、透析期の食事管理を管理栄養士が解説します。
高齢者の高血圧の特徴と食事での管理法。DASH食、減塩のコツ、カリウム摂取、血圧を上げない献立の工夫を管理栄養士が解説。南河内地域の高齢者に向けた実践的な減塩メニューを紹介します。
塩分を減らすのが難しいときに、カリウムを増やすという方法があります。ナトカリ比の考え方と、腎機能が低い方の注意点を解説します。
介護保険や事業所探し、福祉用具の選び方は、同じ株式会社京谷商会が運営する情報サイトにまとめています。
介護の窓口(kaigoinfo.com)の記事。持病がある方ほど、窓口を1つにしておく意味があります。
介護の窓口の記事。通院が難しくなったときの医療の形を説明しています。
介護の窓口の記事。飲み合わせと減薬の相談先を整理しています。