塩を減らせないなら、出す側を増やすという手がある
カリウムには、腎臓からナトリウム(塩分)の排出を促す働きがあります。つまり、塩分を減らすのと、カリウムを増やすのは、同じ方向に効きます。
近年は「ナトカリ比(尿中ナトリウム/カリウム比)」という指標が使われるようになりました。この比が低いほど血圧が低く、脳卒中や心疾患が少ないことが分かっています。
実務的な意味は大きく、減塩がどうしても続かない方でも、カリウムを増やす側からなら取り組めることがあります。
| 食品 | カリウム(100gあたり) |
|---|---|
| 切り干し大根(乾) | 約3,500mg |
| ひじき(乾) | 約6,400mg |
| アボカド | 約590mg |
| ほうれん草(生) | 約690mg |
| 里いも | 約640mg |
| 大豆(ゆで) | 約570mg |
| バナナ | 約360mg |
| じゃがいも | 約410mg |
| トマト | 約210mg |
| 牛乳 | 約150mg |
野菜・いも・豆・果物・海藻・乳製品。つまり和食の副菜そのものです。1日350gの野菜を満たせば、カリウムはおおむね足ります。
カリウムは水に溶けるため、調理法で大きく変わります。血圧のためにカリウムを摂りたい方は、逃さない調理を選んでください。
ただし、味噌汁を増やすと塩分も増えます。だしを濃くして味噌を減らすのが両立の方法です。詳しくは高齢者の高血圧と食事をご覧ください。
ここが最も重要です。腎臓の働きが落ちている方では、カリウムが体外へ排出されず血中にたまります。高カリウム血症は不整脈や心停止を引き起こす危険な状態です。
次に当てはまる方は、カリウムを増やす前に必ず主治医に確認してください。
「減塩しお」「やさしお」などの代替塩には、ナトリウムの代わりにカリウムが入っています。健康な方には有用ですが、上記に当てはまる方には危険です。成分表示を必ず確認してください。
これらが出たら受診してください。自覚症状が出るときには、すでにかなり高くなっています。該当する方は、定期的な血液検査を欠かさないでください。
この栄養素の役割は、単独で語るより、塩分との関係で見たほうが分かりやすくなります。
日本の食事は、もともと塩分が多くなりやすい形をしています。みそ、しょうゆ、漬物、干物、練り製品。これらは日常的に使われており、意識しないと量が増えます。
塩分を減らすことは重要ですが、味が落ちて食べる量まで減ってしまうと、本末転倒です。高齢の方では、食べる量の確保のほうが優先される場合があります。厳しく減らすことだけを目標にしないでください。
この栄養素を多く含む食品を増やすことは、減塩を補う一つの方法として位置づけられます。ただし、含む食品を増やせば塩分を気にしなくてよい、という意味ではありません。両方を並行して見る必要があります。
そして、どこまで減らすべきかは、その方の状態によります。血圧、腎臓の働き、心臓の状態、飲んでいる薬。主治医の指示がある場合は、それに従ってください。
多く含む食品を知っていても、毎日の食卓に置き換えられなければ意味がありません。使いやすい形を挙げます。
いも類は、扱いやすい食品です。じゃがいも、さつまいも、里いも。やわらかく調理でき、主食にも副菜にもなります。ただし、ゆでこぼすと逃げるため、蒸す、汁ごと食べる形が向いています。
果物は、そのまま食べられるのが利点です。バナナ、キウイ、みかん。皮をむくだけで食べられます。ただし、量を食べすぎると糖分が増えるため、1日1個から2個程度が目安になります。
豆類と大豆製品も、豊富に含みます。納豆、豆腐、煮豆。やわらかく、そのまま食べられます。たんぱく質も同時に取れるため、二重の意味で有効です。
そして、汁ものです。野菜を煮た汁ごと食べれば、逃げた分も取り込めます。味噌汁の具を増やす、というだけでも効果があります。ただし、味噌の量は増やさないでください。
この栄養素については、腎臓の状態によって、方針が完全に逆になります。ここを間違えると危険です。
腎臓は、余った分を尿として排出します。働きが落ちていると、排出しきれずに体の中にたまります。この状態は、心臓の動きに影響し、命に関わることがあります。
だからこそ、腎臓の病気がある方は、多く含む食品を制限するよう指示されます。一般向けの「積極的に取りましょう」という情報を、そのまま当てはめないでください。この点は、繰り返し確かめておくべき事柄です。
自分の腎臓の働きは、血液の検査で分かります。健康診断や定期の受診で測られている項目です。数値の意味が分からなければ、医師に聞いてください。
そして、薬にも関係があります。血圧の薬の一部には、この栄養素を体にとどめる作用のものがあります。その場合、多く含む食品を増やすと、体の中の量が上がりすぎることがあります。飲んでいる薬を医師と確かめてください。
この栄養素は水に溶けるため、調理の方法によって残る量が大きく変わります。目的によって使い分けてください。
増やしたい場合は、汁ごと食べる調理を選んでください。蒸す、電子レンジで加熱する、汁ものにする。ゆでこぼすと、かなりの量が湯に逃げます。
逆に、制限が必要な方の場合は、この性質を利用できます。細かく切ってから水にさらす、たっぷりの湯でゆでてから湯を捨てる。これで、含まれる量を減らせます。腎臓の病気がある方に、この調理法が指導されます。
ただし、ゆでこぼすと他の栄養素も一緒に失われます。そして、味も落ちます。必要のない方が、念のためにこの調理を行う必要はありません。
どちらの方針が自分に当てはまるかを、まず確かめてください。「体に良いから増やす」「念のため減らす」という自己判断が、最も危険です。検査の数値と医師の指示にもとづいて決めてください。
体の中の量が多すぎたり少なすぎたりしたときの症状は、分かりにくいものです。自覚に頼らないでください。
不足したときには、脱力、だるさ、足のつりなどが現れるとされます。しかし、これらは他の多くの原因でも起こります。脱水、薬の作用、他の栄養素の不足。区別は自分ではつきません。
多すぎるときには、しびれ、脱力、不整脈などが現れるとされます。ただし、はっきりした症状が出ないまま危険な水準に達することがあります。これが、この栄養素の恐ろしい点です。
血液の検査で確かめるしかありません。腎臓の働きが落ちている方、利尿薬を飲んでいる方、下痢や嘔吐が続いた方は、とくに確かめる必要があります。
そして、下痢や嘔吐が続いたときは注意が要ります。体の中から急速に失われることがあります。高齢の方では、脱水と重なって危険な状態になることがあります。長引くなら受診してください。
食品だけを見ていると、見落とすものがあります。体の中の量に影響する要因を挙げます。
まず、薬です。利尿薬は、尿と一緒にこの栄養素を排出します。逆に、体にとどめる作用の薬もあります。どちらを飲んでいるかで、食事の考え方が変わります。
次に、減塩のための代替品です。塩分を減らすための調味料の中に、この成分を使ったものがあります。腎臓の働きが落ちている方が使うと、危険な場合があります。表示を確かめてください。
そして、サプリメントです。含まれているものがあります。複数の製品を同時に使うと、思わぬ量になることがあります。使っているものは、すべて医師と薬剤師に伝えてください。
下痢、嘔吐、大量の発汗も影響します。夏場に汗をかいたあと、体調を崩して下痢が続いたあと。こうした時期は、体の中の量が変動しやすくなります。水分だけでなく、失われたものを補う視点が要ります。
自分で献立を決められない場面では、伝えることが対策になります。どう伝えるかを整理しておきます。
制限が必要な方の場合、必ず事前に伝えてください。医師からの指示書があれば、それを渡すのが最も確実です。口頭で「控えめに」と伝えても、程度が伝わりません。数値で示されているなら、その数値を伝えてください。
対応できる事業者と、できない事業者があります。できないと言われたら、無理に頼まないでください。受けてもらっても守られなければ、危険です。対応している事業者を探すか、別の方法を考えてください。
逆に、増やしたい方の場合は、野菜と果物が十分に入っているかを見てください。配食の献立表には、使われている食材が書かれていることがあります。足りないと感じるなら、家で1品足す形で補えます。
そして、実際に届いたものを確かめてください。伝えた内容と合っているか、初回は必ず見てください。ここで食い違いが見つかることがあります。事業者の確かめ方は配食サービスの確認12項目にまとめています。
ここまで細かく述べてきましたが、日常の食事で厳密な計算をする必要はありません。
制限の指示が出ていない方であれば、野菜と果物と豆を、毎日ふつうに食べていれば足ります。1食ごとに計算する必要はありません。
制限の指示が出ている方の場合も、管理栄養士から具体的な形で説明を受けているはずです。数値ではなく、「この食品はこれくらいまで」という形で教えてもらってください。そのほうが実行できます。
そして、細かく気にしすぎて食べる量が落ちることのほうが、高齢の方にとっては大きな問題です。制限を守ることと、必要な量を食べることの両立が求められます。どちらを優先すべきかは、医師と管理栄養士に確かめてください。
迷ったときは、自己判断で減らさないでください。減らしすぎることにも害があります。指示の範囲を超えて制限している方が実際にいます。定期的に、いまの方針でよいかを確かめてください。
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