安いだけの弁当は、結局食べ残されて高くつく
厚生労働省は「地域高齢者等の健康支援を推進する配食事業の栄養管理に関するガイドライン」を示しています。配食が単なる弁当宅配ではなく、高齢者の栄養状態を支える事業として位置づけられているためです。
ガイドラインが求めている主な点は次のとおりです。
「管理栄養士が献立を作っているか」は、最初に確認すべき項目です。
ガイドラインは事業者に守る義務を課すものではなく、あくまで指針です。そのため「沿っています」と名乗ることは誰でもでき、名乗っていない事業者が沿っていないとも限りません。確かめるには、次のように具体的に聞くのがいちばん早い方法です。
この4つに、その場ですらすら答えが返ってくるかどうかで、体制があるかどうかはおおよそ分かります。言葉に詰まる、あとで折り返すと言われる、という反応そのものが判断材料です。電話口の方が答えられないのは、社内で共有されていないということだからです。
配食サービスそのものの仕組みや、利用を始めるまでの流れは配食サービスの確認12項目にまとめています。この記事は、そこから一歩進んで事業者を横に並べて比べる段階のためのものです。
| 項目 | 見るところ |
|---|---|
| 1. 栄養管理 | 管理栄養士が献立を作成しているか。栄養成分が表示されているか |
| 2. 食事形態 | 普通食のほかに、やわらかい形態、きざみ、一口大、ムース食があるか |
| 3. 療養食 | エネルギー調整、たんぱく質調整に対応できるか |
| 4. アレルギー | 個別対応ができるか。表示は正確か(アレルギー表示) |
| 5. 手渡しか置き配か | 安否確認をするなら手渡しが必須 |
| 6. 異変時の連絡 | 応答がないとき、誰にどう連絡するか。事前に取り決めがあるか |
| 7. 配達時間 | 時間帯を指定できるか。幅はどれくらいか |
| 8. 頻度 | 週1回だけ、昼だけ、といった使い方ができるか |
| 9. 変更・休止 | いつまでに連絡すればよいか。長期の休止は可能か |
| 10. 契約 | 最低利用回数、解約条件、違約金の有無 |
| 11. 費用 | 1食あたりの金額、配達料、自治体助成の対象か |
| 12. 味 | 必ず試食する。続かない最大の理由は「口に合わない」 |
栄養成分が書いてあること自体は珍しくありません。見るべきなのは数字そのものより、どの数字が書かれていないかです。
| 項目 | 目安 | 書かれていないときに疑うこと |
|---|---|---|
| エネルギー | 1食400〜600kcal前後 | 量の設計をしていない可能性 |
| たんぱく質 | 1食15〜20g前後 | 主菜が小さく、副菜でかさを増している場合がある |
| 食塩相当量 | 1食2〜3g前後 | 味付けの基準を持っていない可能性 |
| 炭水化物・脂質 | 表示は任意 | 無くても問題にはならない |
3食すべてを配食にするのでなければ、1食の数字だけで良し悪しは決まりません。朝食と夕食がご家庭の食事なら、配食の1食は昼の1食ぶんです。医師や管理栄養士から1日あたりの指示が出ている場合は、その指示と照らして考えてください。エネルギーやたんぱく質、塩分の調整が必要な方は、対応できるかを先に聞き、対応食の栄養表示も見せてもらうことをおすすめします。
1食にどれだけ入っていればよいかの考え方は高齢者のお弁当の理想形にまとめています。
費用は1食あたりの金額だけでは比べられません。次の3つを足して、1か月あたりいくらになるかで比べてください。
契約書で読んでおきたいのは次の4か所です。
| 読むところ | 確かめること |
|---|---|
| 最低利用回数 | 週◯回以上といった縛りがあるか。下回ったときの扱い |
| 変更の締切 | 何日前まで、何時までに連絡すればよいか |
| 長期の休止 | 入院中に止められるか。休止中に費用が発生するか |
| 解約 | 何日前の連絡が必要か。違約金や、前払いぶんの返金があるか |
高齢の方の利用では、入院による長期の休止がいちばん起きやすい場面です。そのときに止められるか、費用が続くかは、契約前に必ず確かめてください。口頭の返事で済ませず、書面のどこに書いてあるかを指してもらうと確実です。
多くの市町村が、ひとり暮らしの高齢の方などを対象に配食の費用の一部を助成しています。助成には対象の事業者が決まっている場合があるため、事業者を決める前に調べる順番が大切です。
制度の中身は配食サービスの助成制度、介護保険と食事にまとめています。
ひとつめは「6. 異変時の連絡」です。安否確認を期待して配食を頼んでも、「応答がなかったときにどうするか」が決まっていなければ意味がありません。次を確認してください。
ふたつめは「9. 変更・休止」です。入院、家族の帰省、旅行。高齢者の生活には予定外の変更がつきものです。変更が何日前まで可能か、休止に費用がかかるかを、契約前に確かめてください。
やみくもに資料を集めても比べられません。次の順番で進めると、2週間ほどで決められます。
| 順番 | すること | 目安 |
|---|---|---|
| 1 | 市町村の窓口で助成の有無と指定事業者を確認する | 1日 |
| 2 | 候補を2〜3社に絞り、上の12項目を電話で聞く | 2〜3日 |
| 3 | 全社の無料試食を申し込む。同じ週にそろえる | 1週間 |
| 4 | ご本人に食べていただき、残った量と感想を見る | 試食当日 |
| 5 | 1か月あたりの費用を出して決める | 1日 |
試食は同じ週にそろえてください。時期が離れると体調や気候で食欲が変わり、味の差なのか体調の差なのか分からなくなります。また、比べるのはご家族ではなく召し上がるご本人です。ご家族の口に合うかどうかは、判断の材料になりません。
おいしいかどうかは、ご本人に聞けば分かります。ご家族が見るのは、そのまわりです。
食事形態が合っているかどうかも、試食のときに見ておきます。きざみ食とは?で寸法の目安を確かめてから、実物と見比べてください。
1食あたり数十円の差より、「食べきれるかどうか」のほうが重要です。
必ず試食してから決めてください。多くの事業者が無料試食を用意しています。1社だけでなく、2〜3社を比べるのが確実です。
ほかの事業者と比べていただいて構いません。ご本人が続けられるかどうかが、いちばん大切です。まずは試食からお申し込みください。
資料や電話で確かめられることには限りがあります。実際に始めてから見るべき点があります。
まず、食べきれているかです。残す量が多いなら、量が合っていないか、形が合っていないか、味が合っていないかのいずれかです。残っている中身を見れば、どれが原因かの見当がつきます。野菜だけ残る、肉だけ残る。それぞれ意味が違います。
次に、受け取り方です。玄関まで出られるか、置き配で困らないか、時間帯が生活に合っているか。中身が良くても、受け取れなければ続きません。手渡しか置き配かは、見守りの意味でも違いが出ます。
そして、本人がどう感じているかです。「まずい」と言わなくても、楽しみにしていないなら、長くは続きません。週に何回にするか、どのメニューを選ぶかを本人と一緒に決めると、続き方が変わります。
合わないと感じたら、事業者に伝えてください。量を減らす、形を変える、回数を変える。相談で解決することが多くあります。それでも合わなければ、別の事業者を試してかまいません。
始めてから1か月ほどの間に、確かめておくとよい点があります。
請求の内容です。実際に届いた回数と、請求されている金額が合っているか。休んだ日の扱い、休日の加算、配達料の有無。最初の請求書で確かめてください。
休みの連絡方法も、早いうちに確かめてください。いつまでに連絡すれば当日分を止められるか。入院や外出の予定があるとき、この期限を知らないと無駄が出ます。
そして、緊急のときの対応です。応答がなかった場合に、誰にどう連絡が入るか。離れて暮らす家族は、自分の連絡先が登録されているかを確かめてください。
助成を使っている場合は、更新の時期も確かめてください。年度ごとに申請が必要な自治体があります。手続きを忘れると、自己負担が増えます。
配食サービスを2〜3社比べるときに、何を聞き、どこを見るか。厚生労働省のガイドラインをふまえた12項目のチェックリストと、栄養表示の読み方、解約条件の確かめ方、自治体助成の調べ方、試食での見どころをまとめます。
高齢者の見守りの目的と種類を整理します。安否確認・生活支援・緊急通報の違い、公的なものと民間のもの、費用の目安までをまとめて解説します。
市区町村が行う高齢者向け配食サービスの助成について、対象者・金額・申請の流れを整理します。制度の名前が自治体ごとに違うことも説明します。
ハラル、ベジタリアン・ヴィーガン、精進料理など、アレルギー以外の理由による食の制限を整理します。高齢者施設や配食で対応を求めるときの伝え方も解説します。
介護保険や事業所探し、福祉用具の選び方は、同じ株式会社京谷商会が運営する情報サイトにまとめています。
介護の窓口(kaigoinfo.com)の記事。保険料・自己負担・使えるサービスの全体像を整理しています。
介護の窓口の記事。高齢者のことなら最初に相談できる公的な窓口です。
介護の窓口の記事。どの段階で誰に聞けばよいかを一覧にしています。