表示は「書いてあること」より「書かなくてよいこと」を知ってから読む
日本の食品表示法では、アレルギーを起こしやすい原材料を2段階で扱っています。表示が義務づけられている「特定原材料」8品目と、表示が推奨されているだけの「特定原材料に準ずるもの」20品目です。合わせて28品目、以前の言い方では「29品目」と呼ばれることもあります。
| 区分 | 品目 | 表示 |
|---|---|---|
| 特定原材料(8品目) | えび・かに・くるみ・小麦・そば・卵・乳・落花生(ピーナッツ) | 義務 |
| 準ずるもの(20品目) | アーモンド・あわび・いか・いくら・オレンジ・カシューナッツ・キウイフルーツ・牛肉・ごま・さけ・さば・大豆・鶏肉・バナナ・豚肉・まつたけ・もも・やまいも・りんご・ゼラチン | 推奨 |
くるみは2023年に推奨から義務へ格上げされ、2025年3月末までの経過措置を経て完全に義務化されました。古い資料には「特定原材料7品目」と書かれています。手元の表を見るときは、まず作られた年を確かめてください。
逆に言えば、20品目のほうは書かれていなくても違反ではありません。ごま・大豆・やまいもなど、和食の惣菜に高い頻度で入るものが推奨側に並んでいます。表示だけを頼りにせず、製造者に直接確かめる余地を残しておくことが大切です。
表示のしかたには2つの形があります。どちらも法律上は正しい書き方です。
一括表示の弁当で「大豆」とだけ書かれていた場合、しょうゆなのか豆腐なのか、揚げ油なのかは読み取れません。しょうゆの大豆は問題なくても豆腐は避けたい、という方には情報が足りないということです。迷ったら「どの料理に入っていますか」と聞くのが最短です。
「本品製造工場では卵を含む製品を製造しています」という一文を見たことがあると思います。これは注意喚起表示と呼ばれ、意図的に使ってはいないが混入の可能性が完全には否定できない、という意味です。
ここで注意したいのが、「入っているかもしれません」という可能性表示は認められていないという点です。検査で確認できないまま「かもしれない」と書くことは表示違反にあたります。したがって、表示に何も書かれていない=絶対に入っていない、とは言い切れません。重い症状が出る方ほど、製造ラインの状況まで確かめる必要があります。
混入がどう起きるかはコンタミネーション(意図しない混入)で詳しく扱っています。
| 形態 | アレルギー表示 | 確かめ方 |
|---|---|---|
| 包装された加工食品 | 義務(8品目) | 原材料欄を読む |
| 店内で対面販売する惣菜・パン | 義務なし | 店員に聞く |
| 飲食店の料理 | 義務なし | 注文時に伝える |
| 配食サービスの弁当 | 義務なし(事業者の対応による) | 献立表と使用アレルゲン一覧を確認する |
配食は法律上の表示義務の外にあります。だからこそ、事業者が自主的にどこまで開示しているかが選ぶときの基準になります。献立表に使用アレルゲンが記載されているか、月単位で事前に受け取れるか、変更があったときに連絡が来るかを確かめてください。
配食のふれ愛 太子店では、ご注文時にアレルギーを登録し、日々の献立に含まれるアレルゲンを記載した献立表を事前にお渡ししています。詳しくはよくある質問「アレルギー表示はどうなっていますか」もご覧ください。
原材料名の欄は、使った重さの多い順に並んでいます。上のほうにあるものほど量が多いという決まりです。ただしアレルギー表示はこの並び順とは関係なく、量が少なくても書かれます。ごく微量の香料や色素でも、特定原材料であれば表示されます。
読む順番を決めておくと見落としが減ります。
スラッシュより後ろは添加物です。「乳化剤(大豆由来)」のように、添加物側にもアレルゲンの由来が書かれます。スラッシュの後ろを読み飛ばす癖がつくと、ここで見落とします。
表示に使ってよい言葉には幅があります。同じものを指しているのに字面が違うため、慣れないうちは見落としやすいところです。
| アレルゲン | 表示に出てくる書き方 |
|---|---|
| 卵 | 玉子、たまご、鶏卵、あひる卵、うずら卵、卵白、卵黄、マヨネーズ、オボアルブミン |
| 乳 | ミルク、バター、バターオイル、チーズ、アイスクリーム、生クリーム、脱脂粉乳、カゼイン、ホエイ、乳糖 |
| 小麦 | こむぎ、コムギ、小麦粉、強力粉、薄力粉、麩、パン粉、グルテン |
| えび | 海老、エビ、シュリンプ、プロウン、小えび、さくらえび、干しえび |
| かに | 蟹、カニ、ずわいがに、たらばがに、わたりがに |
逆に、名前に食材が入っているのに中身が違うものもあります。「たまごボーロ」に卵は入りますが、「かに風味かまぼこ」にかには使われていないことが多く、代わりにすけとうだらが使われています。それでも風味づけにかにエキスが入る場合があるため、原材料名で確かめる必要があります。名前だけで判断しないでください。
配食の献立表では、料理ごとにアレルゲンが並びます。市販品の表示とは見るところが少し違います。
該当する品目に印が付いている日は、その料理だけ差し替えられるかを事業者に聞いてください。1品の差し替えで済むことがほとんどで、その日を丸ごと休む必要はありません。
表示は「入っているか」を答えますが、「どれくらい入っているか」「どう作られたか」までは答えません。判断に迷ったら、次のように具体的に聞いてください。
答えられないと言われたら、それは答えです。分からないまま提供する事業者より、分からないと言える事業者のほうが安全です。その日は別の料理を選んでください。
28品目のうち8品目だけが義務になっているのは、その8つが特別に危険だからではありません。国内で実際に起きた症例の集計をもとに、発症する人の数が多いもの、あるいは症状が重くなった例が報告されているものが選ばれています。数年ごとに全国の医療機関からの報告が集計され、その結果を受けて見直されます。くるみが2023年に推奨から義務へ移ったのも、この集計で報告数が伸びたためです。
つまりこの区分は、医学的な危険度の順位ではなく、行政が事業者に負担を課してよいと判断した線引きです。推奨の20品目に入っているからといって、症状が軽いという意味にはなりません。ご本人にとって重い反応が出るものであれば、義務か推奨かは関係ありません。表示に頼りきらず、事業者に直接確かめる習慣を持ってください。
この線引きを知っておくと、表示の読み方が変わります。義務の8品目については「書かれていなければ入っていない」と考えてよいのに対し、推奨の20品目については「書かれていなくても入っている可能性がある」と考える必要があります。大豆やごまを避けている方が、原材料名だけを見て安心してしまう事故は、この違いを知らないために起きます。
アレルギー表示の義務がかかるのは、あらかじめ包装された加工食品です。工場で作られ、袋や箱に入って店に並ぶものがこれにあたります。裏の表示を読めば分かるのは、この形のものだけです。
一方、その場で作って売るものには表示の義務がありません。飲食店の料理、対面で量り売りする総菜、店内で焼いたパン、注文を受けてから詰める弁当は、法律上は表示しなくてよいことになっています。表示が出ているとしても、それは事業者が自主的に出しているものです。だからこそ、その内容の正確さは事業者の姿勢によって差が出ます。
高齢の方の食事では、この「表示義務のない領域」を使う場面が多くなります。総菜、弁当、配食、施設の食事、通所先の昼食。いずれも裏の表示は付いていません。ここでは書かれたものを読むのではなく、聞いて確かめることが唯一の方法になります。裏の表示を読む習慣がある方ほど、この切り替えが必要です。
配食を選ぶときは、献立表にアレルゲンの欄があるかどうかを最初に見てください。義務ではないのに欄を設けている事業者は、そのぶん原材料を把握しているということです。欄が無い、あるいは「詳細はお問い合わせください」としか書かれていない事業者は、把握そのものをしていない可能性があります。
「本品製造工場では◯◯を含む製品を製造しています」という注意書きは、法律で定められた表示ではなく、事業者が任意で付けているものです。書き方も決まっていないため、同じ程度の混入の可能性でも、書く事業者と書かない事業者がいます。注意書きが無いことは、混入が無いことの証明にはなりません。
この注意書きをどう扱うかは、ご本人の反応の強さによって変わります。ごく微量で強い症状が出る方は避けるほうが安全ですし、これまで加工食品で症状が出たことのない方が一律に避けると、食べられるものが極端に減ります。どこで線を引くかは主治医と決めることで、家族が独自に決める話ではありません。受診のときに、この注意書きの実物を持っていって相談してください。
表示を読むことは、慣れるまでは時間がかかりますが、慣れると数秒で終わります。読む順番を決めておくと早くなります。まず原材料欄の最後にある「(一部に〇〇を含む)」の一括表示を見ます。ここに避けたいものがなければ、次に原材料を一つずつ見ます。これで大半の確認が終わります。
読み慣れるまでの近道は、同じ商品を繰り返し買うことです。一度確かめた商品であれば、次からは確認が要りません。安心して使える商品を10品目ほど決めてしまえば、日々の買いものはほとんど確認なしで済みます。ただし、年に1度は読み直してください。製造元が原材料を変えることがあります。
それでも判断がつかないときは、製造元に問い合わせてください。多くの企業が問い合わせ窓口を設けており、電話かウェブの入力フォームで答えてもらえます。聞くときは、商品名と、パッケージに印字された賞味期限か製造所固有記号を伝えます。同じ商品名でも工場によって配合が違うことがあるためです。
そして、包装のない食品には表示の義務がないことを、常に頭に置いてください。総菜の量り売り、パン屋のパン、飲食店の料理、施設の食事、配食。これらは表示では守れないため、聞いて確かめるしかありません。表示が読めるのは、包装された加工食品だけです。この線引きを知っておくと、どこで気をつけるべきかがはっきりします。伝え方はアレルギーの伝え方にまとめています。
食物アレルギーの仕組み、義務表示8品目+推奨21品目の一覧、高齢者の後天性アレルギー、配食サービスにおける安全管理体制を解説します。
調理器具・揚げ油・製造ラインを通じたアレルゲンの混入を、家庭と配食のそれぞれの場面で整理します。ゼロにできない前提でどう線を引くかを解説します。
アレルギー情報は伝わらなければ意味がありません。配食事業者・介護施設・病院・ケアマネジャーへ、それぞれ何をどの形で伝えるべきかを整理します。
卵アレルギーで避けるべき食品と、意外なところに入っている卵を整理します。加熱による抗原性の変化、代替食材、卵を除いたときの栄養の埋め方まで管理栄養士が解説します。
落花生と木の実(くるみ・カシューナッツ・アーモンド)は別のアレルギーです。交差反応の起きやすさ、和食に入る場面、くるみが義務表示になった経緯を解説します。
小麦アレルギーはパンや麺を避けるだけでは足りません。しょうゆ・みそ・カレールウ・練り製品に入る小麦と、米粉での置き換え方を管理栄養士が解説します。
介護保険や事業所探し、福祉用具の選び方は、同じ株式会社京谷商会が運営する情報サイトにまとめています。
介護の窓口(kaigoinfo.com)の記事。どこに何を相談すればよいかを窓口別に整理しています。
介護の窓口の記事。持病やアレルギーを把握してくれる医師がいると、緊急時の判断が早くなります。