落花生は豆、くるみは木の実。同じ「ナッツ」でも中身が違う
まぎらわしいのですが、落花生(ピーナッツ)はマメ科の植物で、土の中で実ります。くるみ・アーモンド・カシューナッツ・ピスタチオ・マカダミアは樹木になる木の実です。植物としての系統が違うため、落花生に反応する方が木の実にも反応するとは限りませんし、その逆もあります。
ただし木の実どうしでは交差反応が起きやすく、特にくるみとペカンナッツ、カシューナッツとピスタチオはタンパク構造が近いことが知られています。片方で症状が出た場合、もう片方も避けるのが安全側の判断です。
くるみは長く「特定原材料に準ずるもの」(推奨表示)でしたが、消費者庁の全国実態調査で症例数が急増したことを受け、2023年に特定原材料へ格上げされました。経過措置は2025年3月末で終わり、現在は表示が義務です。
増えた背景には、パン・菓子・シリアルへのくるみの使用が広がったことがあります。健康志向でナッツを取り入れる商品が増え、それまで口にする機会が少なかった人にも曝露の機会が生まれた形です。
なお、アーモンド・カシューナッツ・マカダミアはいまも推奨表示のままです。書かれていないことがあるので、パン・菓子・和え物は原材料欄だけで判断しないでください。
| 料理 | 入りうるもの |
|---|---|
| 白和え・ごま和え | ピーナッツバターやくるみを加える地域・店がある |
| くるみゆべし・くるみ餅 | くるみ |
| 担々麺・棒棒鶏 | ピーナッツペースト |
| カレー・エスニック料理 | カシューナッツペーストでとろみを付ける |
| パン・シリアル・グラノーラ | くるみ、アーモンド |
| アーモンドプードル入りの菓子 | アーモンド(見た目では分からない) |
高齢者向けの食事では、噛みにくさからナッツをそのまま出す機会は多くありません。むしろペースト状にして料理に溶け込んでいる形で入ることが問題になります。
ナッツ類はビタミンDこそ含みませんが、ビタミンE・マグネシウム・不飽和脂肪酸の供給源です。除去する場合は次のもので補います。
配食での対応はよくある質問「ナッツアレルギーに対応できますか」をご覧ください。
木の実のアレルギーで難しいのは、種類ごとに反応が違うことです。くるみは駄目でもアーモンドは食べられる、という方がいます。逆に、くるみとペカンのように植物として近いものは、一方に反応すればもう一方にも反応することが多くあります。
| 近い関係にあるもの | 組み合わせ |
|---|---|
| くるみ / ペカンナッツ | 両方に反応することが多い |
| カシューナッツ / ピスタチオ | 両方に反応することが多い |
| 落花生 / 木の実全般 | 落花生は豆類。木の実とは別だが、両方持つ方もいる |
| アーモンド / 桃・さくらんぼ | ばら科として近い。口腔アレルギー症候群と重なることがある |
「ナッツ全部を避ける」という決め方は、安全ではありますが食べられるものを必要以上に減らします。どこまで避けるかは検査と主治医の判断で決めてください。
洋菓子は分かりやすいのですが、日常の総菜や和食にも木の実は入ります。原材料名を読む習慣がないと見落とします。
総菜売り場の量り売りは表示の義務がありません。同じトングを使い回すので、隣の惣菜から粒が移ることもあります。反応が強い方は、量り売りではなく包装された製品を選んでください。
木の実は、体によい脂質とビタミンE、マグネシウム、亜鉛を含む食材です。健康のために毎日食べていた方が避けることになると、そのぶんが抜けます。ただし木の実は高エネルギーなので、抜いたからといって直ちに栄養が崩れるわけではありません。
気にするならミネラルのほうです。亜鉛は味覚や傷の治りに関わり、高齢の方で不足しやすい栄養素です。木の実を避けるなら、かき、赤身の肉、レバー、大豆製品で埋めてください。マグネシウムは大豆製品、海藻、玄米から取れます。
脂質については、青魚、オリーブ油、なたね油で代わりになります。木の実がなければ健康を保てない、ということはありません。避けることを不安に思う必要はなく、抜けた栄養だけを別のもので埋めれば十分です。
くるみは2023年に推奨から義務へ移り、2025年3月末までの経過措置を経て完全に義務化されました。これによって、包装された加工食品ではくるみの有無が確実に分かるようになりました。
変わったのは、古い在庫や古い資料との食い違いです。経過措置の期間中に作られた製品には、くるみの表示がないものが残っている可能性があります。また手元の資料が「特定原材料7品目」「8品目」のどちらで書かれているかで、内容が変わります。アレルギーの説明資料を配っている施設は、作った年を確かめて差し替えてください。
一方で、その場で作るものには相変わらず表示の義務がありません。飲食店、総菜の量り売り、施設の食事、配食。ここでは義務化の効果が及ばないため、聞いて確かめる必要があります。表示の仕組み全体はアレルギー表示の読み方にまとめています。
木の実を避ける方が最もつまずくのが、いただきものです。ご近所からのお裾分け、法事の引き出物、旅行の土産。これらは包装が簡素で、原材料の表示がないことがあります。表示があっても、小さく畳まれた紙の裏に印刷されていて読みにくいことがあります。
洋菓子は木の実が入る前提で見てください。クッキー、パウンドケーキ、フィナンシェ、ヌガー、チョコレート。生地に練り込まれると見た目では分かりません。和菓子も安心できません。くるみゆべし、ピーナッツ入りのおこし、ごまと落花生を混ぜた菓子など、地域の銘菓に木の実が使われることがあります。
高齢の方の場合、いただきものを断りにくいという事情があります。せっかくの好意を無下にできず、その場で一口だけ食べてしまう。これが実際によく起きます。断ることを本人だけに任せず、家族が代わりに受け取って、あとで確かめるという流れを作っておいてください。「うちの母は木の実が駄目でして」と一言添えれば、贈る側も次から気をつけてくれます。
施設のおやつも同じです。行事のときに出る菓子は、日常の献立表に載らないことがあります。誕生日会、季節の行事、家族会。こうした場面でどんな菓子が出るかを、前もって聞いておいてください。
表示を読むときに困るのが、種類を特定しない書き方です。「ナッツ」「ミックスナッツ」「植物性たんぱく」といった記載では、何が入っているかが分かりません。義務表示の対象は落花生とくるみ、推奨表示の対象はアーモンド、カシューナッツ、マカダミアナッツで、それ以外の木の実には表示の決まりがありません。
つまり、ピスタチオ、ヘーゼルナッツ、松の実、ペカンナッツなどは、書かれていなくても入っている可能性があります。反応する木の実が推奨表示の対象外である場合、表示だけでは守りきれません。この場合は、製造元に問い合わせるのが確実です。
問い合わせるときは、商品名と、パッケージに印字された製造所固有記号または賞味期限を伝えると話が早くなります。同じ商品名でも工場によって配合が違うことがあるためです。返事は口頭より、メールなど残る形でもらってください。担当者が替わったときに、また一から聞き直さずに済みます。
なお、落花生とくるみは義務表示なので、包装された加工食品であれば確実に分かります。この2つだけが原因であれば、表示を読む習慣をつけるだけでかなり守れます。自分がどの木の実に反応するのかを検査ではっきりさせておくと、避ける範囲が現実的な大きさに収まります。くわしくはアレルギー表示の読み方を参照してください。
木の実を避けることは、日本の食生活ではそれほど大きな制約になりません。主食にも主菜にも使われないためです。困るのは間食と洋菓子、そして中華や洋食の一部に限られます。
間食の代わりになるものを決めておくと、日々の判断が楽になります。せんべい、おかき、蒸しパン、ヨーグルト、果物、いも類。いずれも原材料が単純で、確かめやすい食品です。高齢の方にとって間食は、1日の栄養を補う大事な機会です。木の実を避けることで間食そのものが減ると、そのぶんのエネルギーとたんぱく質が抜けます。
ナッツをやめたぶんの脂質については、青魚とオリーブ油、なたね油で十分に埋まります。むしろ、ナッツを健康のために毎日食べていた方が避けることになった場合、そのぶんのエネルギーが減って体重が落ちることがあります。1日20gのミックスナッツは約120kcalです。抜いたなら、その120kcalをどこかで足してください。
また、木の実を避ける方が、ごまも一緒に避けているケースを見かけます。ごまは推奨表示の対象ですが、木の実とは別のアレルゲンです。ごまに反応しないのであれば、避ける必要はありません。ごまはカルシウムと鉄を含み、和食の味付けに使いやすい食材です。必要のない除去を広げないことも、栄養を守る手立ての一つです。
家族の一人が避けているとき、他の家族も同じものを食べないほうがよいのか。この判断で悩む家庭が多くあります。
症状が強く出る方の場合は、家庭に持ち込まないという選択が現実的です。同じ調理台、同じ食器、同じ手で扱われるかぎり、混入を完全には防げません。家の中を安全な場所にしておくと、外での緊張が減ります。
症状が軽い場合や、接触では出ない場合は、家族が食べても差し支えないことが多くあります。ただし、食べたあとの手洗いと歯みがき、食器の分別は必要です。どこまで必要かは、医師に確かめてください。
そして、子や孫が来たときが最も危ないと言われます。持ってきた菓子、開けたままの袋、こぼれた欠片。訪ねてくる側に、あらかじめ伝えておいてください。悪気のない土産が事故の原因になります。
家族が我慢を強いられていると感じると、関係が悪くなります。外では食べてよいことにする、別の場所で保管する、といった折り合いのつけ方があります。全員が無理なく続けられる形を、話し合って決めてください。
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