迷ったら呼ぶ。立たせないことが、その場でできる最大のこと
アレルギー反応が複数の臓器に同時に、急速に現れた状態をアナフィラキシーと呼びます。皮膚だけ、お腹だけ、ではなく、皮膚と呼吸、あるいは皮膚と血圧のように広がっていくのが特徴です。血圧低下や意識障害を伴うものはアナフィラキシーショックと呼ばれ、命にかかわります。
この記事は救急対応の一般的な考え方を整理したものです。治療方針は主治医の指示が優先します。エピペン(アドレナリン自己注射薬)を処方されている方は、処方時の指導どおりに使ってください。
| 場所 | 現れ方 |
|---|---|
| 皮膚 | じんましん、赤み、かゆみ、唇やまぶたの腫れ |
| 口・喉 | 喉の締め付け感、声がかすれる、飲み込みにくい |
| 呼吸 | ゼーゼーする、息苦しい、咳が止まらない |
| 消化器 | 強い腹痛、繰り返す嘔吐、下痢 |
| 循環・意識 | 顔色が白い、冷や汗、ぐったりする、呼びかけへの反応が鈍い |
高齢者では皮膚症状が出ないことがあります。「じんましんが出ていないからアレルギーではない」と考えないでください。食後に急にぐったりした、顔色が悪い、呼びかけへの反応が鈍い、というだけでも十分に疑う理由になります。
判断に迷うときは、大阪府を含む多くの地域で救急安心センター(♯7119)に相談できます。ただし呼吸が苦しい・意識がはっきりしない場合は、相談せずに119番してください。
症状がいったん治まっても、数時間後にぶり返す(二相性反応)ことがあります。自宅で様子を見るのではなく、必ず受診してください。
回復後は、原因を特定するために受診し、次のことを記録に残します。
特定できたアレルゲンは、配食・施設・病院への伝え方のとおりに関係先へ共有してください。ケアマネジャーがついている方は、ケアプランの担当者会議でも共有されます。
アナフィラキシーかどうかの見分けは、症状の数ではなくどこに出ているかで決まります。皮膚だけなら軽い反応ですが、呼吸・循環・意識のどれかに及んだ時点で、緊急の状態です。
| 場所 | 危険な症状 |
|---|---|
| 呼吸 | のどが締まる、声がかすれる、犬が吠えるような咳、ゼーゼー、息苦しい |
| 循環 | 顔が青白い、唇が紫、脈が弱い、めまい、立てない |
| 意識 | ぐったりする、呼びかけへの反応が鈍い、失禁 |
| 消化器 | 繰り返す嘔吐、強い腹痛 |
高齢の方では、じんましんが出ないまま循環の症状だけが出ることがあります。「食後に急にぐったりした」「立てなくなった」は、年齢のせいではなくアナフィラキシーの可能性があります。皮膚に何も出ていないことを理由に除外しないでください。
迷う時間が命に関わります。順番を決めておいてください。
5番は徹底してください。「トイレに行きたい」と言われて歩かせたことで急変した例が報告されています。横になったまま待たせてください。
電話がつながったら、次の順で伝えます。慌てると抜けるので、紙に書いて冷蔵庫に貼っておくと確実です。
血圧の薬を飲んでいる方は、それを必ず伝えてください。種類によっては、治療の効き方が変わります。高齢の方では複数の薬を飲んでいることが多いので、お薬手帳ごと救急車に持ち込むのが確実です。
起きてから考えることは、まず間に合いません。次の4つを、家族と施設で先に決めておいてください。
アドレナリン自己注射薬が処方されている場合は、本人だけでなく周囲の人が使い方を知っている必要があります。いざというとき、本人は自分で打てないことがあるためです。練習用の器具が用意されているので、家族や職員で一度触っておいてください。
そして、起きたあとの見直しを飛ばさないでください。原因が特定できなければ、同じことが繰り返されます。何を食べたかの記録が残っていれば、医師が原因を絞り込めます。日ごろの記録のつけ方はアレルギーの伝え方にまとめています。
アナフィラキシーには、いったん治まってから数時間後にもう一度症状が出ることがあります。1回目が治まったことで安心し、家に帰ってから2回目が起きる。これが最も危険な流れです。
そのため、症状が出た日は医療機関で経過を見てもらうのが原則です。救急車を呼んだあとに症状が落ち着いても、そのまま帰らないでください。「もう大丈夫そうだから」と搬送を断ることは、避けてください。判断は医師に任せます。
自宅で様子を見ることになった場合は、その晩はご本人を一人にしないでください。寝ているあいだに症状が出ると、気づかれません。同じ部屋で休むか、声が届く距離にいてください。夜間に呼吸が苦しそう、呼びかけへの反応が鈍いといった変化があれば、迷わず救急に電話します。
翌日以降も、数日は体を強く動かさないほうが安全です。運動が症状を呼び戻すことがあります。入浴も、長湯や熱い湯は避けてください。血のめぐりが急に変わることが引き金になります。
いざというとき、その場にいる人が正しく動けるかどうかは、事前に紙があるかどうかで決まります。頭で覚えていても、目の前で人が倒れると手順は飛びます。
紙に書くのは次の内容です。本人の名前と、避けているもの。症状が出たときにどこを見るか(呼吸・循環・意識)。やることの順番(食事を止める、119番、寝かせて足を高く、立たせない)。薬の場所と使い方。連絡先。この5つを、A4で1枚に収めます。2枚になると、緊急時には読まれません。
置き場所は、台所と、本人の部屋と、職員の詰め所です。冷蔵庫の扉に貼るのが最も見つけやすい方法です。施設であれば、厨房と各フロアの両方に置きます。
そして、年に1度は読み合わせをしてください。手順を声に出して確かめるだけで、実際の動きが変わります。職員が入れ替わる施設では、新しい人が入るたびに確かめる仕組みが要ります。紙があっても、読んだことのない人にとっては無いのと同じです。
合わせて、本人の情報が古くなっていないかも見直してください。連絡先が変わっている、かかりつけが替わっている、薬が変わっている。こうしたずれは、緊急時に効いてきます。情報のまとめ方と更新の決め方はアレルギーの伝え方にまとめています。
症状が治まって落ち着いたあと、必ずやることがあります。何が原因だったかを突き止めることです。これを飛ばすと、同じことが繰り返されます。
思い出すべきことを挙げます。その日、何時に、何を食べたか。ふだんと違うものはあったか。いただきもの、外食、新しい商品、行事の食事。誰かに勧められて口にしたものはなかったか。食後に体を動かしたか、酒を飲んだか、疲れていたか、薬を飲んだか。
思い出せるうちに書いてください。数日たつと細部が消えます。食べた料理の写真が残っていれば、それも役に立ちます。包装が捨てられていなければ、原材料の表示を写真に撮っておいてください。
そして、この記録を持って受診します。検査だけでは原因が絞りきれないことが多く、そのときに手がかりになるのが記録です。原因が分かれば、次から避けられます。分からないままだと、何を避ければよいかも決められません。
合わせて、その日の献立を作った側にも伝えてください。施設や配食であれば、どこで混入が起きたのかを一緒に確かめる必要があります。責める話ではなく、次を防ぐための確認です。原因が分からないまま利用を続けるのが、いちばん危険です。
症状が出たときに、家族が最も迷うのが「救急車を呼ぶほどかどうか」です。この迷いが、対応を遅らせます。
迷った時点で呼んでよい、と決めておいてください。呼ばずに様子を見て手遅れになるほうが、はるかに重大です。結果として軽く済んだとしても、それは責められることではありません。
判断の助けになる仕組みもあります。救急車を呼ぶか迷ったときに相談できる電話の窓口が、多くの地域にあります。番号を電話機のそばに貼っておいてください。ただし、呼吸が苦しい、意識がはっきりしない、といった場合は相談せず、すぐ119番です。
そして、電話をつなげば、指令員が到着まで何をすべきかを教えてくれます。切らずに、指示を聞きながら対応してください。一人で介護している場合は、スピーカーにして両手を空けてください。
呼んだあとにやることも決めておいてください。玄関の鍵を開ける、明かりをつける、家族に連絡する、薬とお薬手帳を出しておく。紙に書いて貼っておけば、慌てていても順に動けます。
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