一度言った、では届かない。書いて、渡して、更新する
アレルギーの事故は、知らなかったから起きるより伝わっていたはずのものが伝わっていなかったために起きます。担当者が替わる、シフトが替わる、厨房と受付が別、という場面ではとくにそうです。
対策は単純で、紙かデータで残し、関係先すべてに同じものを渡すことです。伝える内容は次の5点にまとまります。
3つ目と5つ目が抜けている情報が非常に多く、受け取った側が判断に困ります。コンタミネーションまで避けるべきかどうかは、対応の可否を分ける決定的な情報です。
| 相手 | 渡すもの | いつ |
|---|---|---|
| 配食事業者 | アレルギー一覧、避ける程度、緊急連絡先 | 申込時。変わったらその都度 |
| 介護施設・デイサービス | 同上+医師の指示書があれば写し | 契約時と、行事食の予定が出たとき |
| 病院(入院時) | お薬手帳+アレルギー一覧 | 入院手続きのとき |
| ケアマネジャー | アレルギー一覧 | ケアプラン作成時。担当者会議で共有される |
| 家族・親族 | アレルギー一覧、エピペンの場所 | 集まりの前。行事食で事故が起きやすい |
介護保険のサービスを使っている方は、ケアマネジャーに伝えておくと、サービス担当者会議を通じて関係事業者へ一度に共有されます。これが最も効率のよい経路です。
冷蔵庫に貼る、救急情報キットに入れる、という前提で1枚にまとめておくと、緊急時にも使えます。書く項目は次のとおりです。
多くの市区町村では、こうした情報を筒に入れて冷蔵庫に保管する救急医療情報キットを無料で配っています。太子町を含む配達エリアの各自治体でも取り扱いがあります。地域包括支援センターに問い合わせてください。
配食のふれ愛 太子店では、お申し込み時にアレルギーの内容を伺い、顧客情報として登録します。厨房の調理指示と配達時の確認票の両方に反映されるため、担当者が替わっても情報が引き継がれます。
内容が変わったときは、お電話またはLINEでお知らせください。よくある質問「アレルギーの内容が変わったときは」もご覧ください。
口で伝えると、聞き手によって受け取り方が変わります。紙にして渡すことが、いちばん確実で、いちばん早い方法です。次の項目を1枚にまとめてください。
| 項目 | 書き方の例 |
|---|---|
| 本人の名前 | フルネーム。似た名前の方がいる施設では特に重要 |
| 避けるもの | 「卵(加熱したものも不可)」のように、範囲まで書く |
| 食べられる範囲 | 「少量の加熱卵は可」など、医師の指示があれば書く |
| 出る症状 | 「じんましん」「のどが締まる」など、実際に出たもの |
| 過去の重い発作 | いつ、何で、どうなったか |
| 常備薬 | 薬の名前と置き場所。自己注射薬の有無 |
| 緊急連絡先 | 家族2名とかかりつけ医。日中つながる番号 |
「食べられる範囲」を書くのを忘れないでください。これを書かないと、受け取った側は安全側に倒して、必要以上に除去します。食べられるものまで奪われると、栄養が偏ります。
同じ紙を全員に渡せばよいわけではありません。相手によって必要な情報が違います。
薬局に伝えるのは見落とされがちです。一部の薬には卵や乳由来の成分が使われています。お薬手帳の目立つところに書いておいてください。
受け取る側の事情も知っておくと、伝わり方が変わります。施設の厨房は、複数の方の食事を同時に作っています。「卵は駄目です」とだけ言われても、どこまで対応すればよいか判断できません。
次のように具体化すると、対応が決まりやすくなります。
そして「対応が難しい日は、事前に教えてください」と付け加えてください。断れる余地を残しておかないと、無理な対応が事故につながります。持ち込みで対応する、その日は別のものにする、といった逃げ道を一緒に決めておくのが安全です。
1度渡して終わりにすると、内容が古くなります。診断が変わった、食べられる範囲が広がった、薬が変わった。こうした変化が伝わらないままだと、必要のない除去が続きます。
更新のきっかけを決めておいてください。
紙には作成日を入れてください。日付のない紙は、いつのものか分からず、現場で信用されません。「2026年8月現在」と書いておくだけで、受け取る側の扱いが変わります。
また、症状が出たときの記録を残しておくと、次の受診で役に立ちます。何を、何時に、どれくらい食べて、何分後に何が起きたか。この4つだけで十分です。記録が3回ぶんたまると、原因の絞り込みが進みます。
病院や施設に入るとき、食事の話は入所の手続きに紛れて後回しになりがちです。しかし、ここで伝え損ねると、初日から危険な状態になります。
伝えるべき相手は3か所です。1つめが窓口の担当者、2つめが看護師または介護職員、3つめが厨房です。窓口に言ったから厨房に伝わっている、とは限りません。紙を複数枚用意して、それぞれに渡してください。「厨房の方にもお渡しいただけますか」と一言添えると確実です。
入院の場合は、食事だけでなく検査や治療にも関わります。造影剤や一部の薬には、卵や乳の成分が使われることがあります。飲み込みの検査で使う食品にも、アレルゲンが含まれる場合があります。「食事の話」ではなく「アレルギーの話」として伝えてください。
ショートステイのように短い利用でも同じです。数日だからと省略すると、そこで事故が起きます。むしろ短い利用のほうが、職員が本人のことを知らないぶん、危険は高くなります。
高齢の方の場合、いずれ本人が自分で伝えられなくなる可能性があります。認知の機能が落ちたとき、体調を崩したとき、救急搬送されたとき。そのときに情報が残っていなければ、誰も守れません。
備えは3段階です。1つめは、本人が身につけるものです。財布やお薬手帳に、アレルギーを書いたカードを入れておきます。救急隊は、財布とお薬手帳を探します。ここに入っていれば見つかります。
2つめは、家族が持つ控えです。同じ内容を、家族2名以上が持っておきます。1人だけが把握している状態は危険です。その人が連絡のつかない場所にいるとき、情報が途切れます。
3つめは、関わる事業者が持つ控えです。ケアマネジャー、デイサービス、配食事業者、かかりつけ医。それぞれに渡しておけば、どこかから情報が出てきます。1か所に集めるのではなく、複数に散らしておくのが、この場合は正しいやり方です。
そして、いちばん大事なのは、内容が同じであることです。渡した先ごとに書いてあることが違うと、かえって混乱します。もとになる紙を1枚決めて、それを複製して配る。更新するときは、配った先すべてに配り直す。この手間を惜しむと、古い情報が現場に残ります。
伝えることと同じくらい難しいのが、その場で断ることです。とくに高齢の方は、勧められた食べものを断ることを申し訳なく感じます。近所の方からのお裾分け、法事の席、久しぶりに会った親戚。こうした場面で、一口だけ口にしてしまう。これが実際によく起きる事故の形です。
断りやすくする工夫があります。1つめは、理由を先に短く言うことです。「医者に止められていまして」と一言添えれば、多くの方は引き下がります。好き嫌いと区別してもらうために、この一言が効きます。
2つめは、代わりに受け取ることです。「あとでいただきます」と言って持ち帰り、家で確かめる。その場で断らずに済み、贈った側の気持ちも損ないません。持ち帰ったものは、家族が原材料を確かめてから渡してください。
3つめは、家族が代わりに断ることです。ご本人が言いにくい場面では、そばにいる家族が「母は卵が食べられないんです」と言うほうが角が立ちません。行事の席では、家族が先回りして伝えておくのがいちばん確実です。
そして、繰り返し会う相手には、一度きちんと伝えておいてください。近所の方、親戚、通っている施設の職員。1度伝えておけば、次から気をつけてもらえます。毎回断るより、最初に一度伝えるほうが、お互いに楽になります。
伝えたつもりでも、伝わっていないことがあります。渡して終わりにせず、届いているかを確かめてください。
紙を渡したら、誰が受け取ったかを控えてください。「相談員に渡した」だけでは、厨房まで届いていないことがあります。誰から誰へ渡るのかを聞いて、最終的に調理する人まで届いているかを確かめてください。
そして、実際の食事を見てください。届いた食事、出された食事が、伝えた内容と合っているか。初回は必ず確かめてください。ここで食い違いが見つかることがあります。
職員が替わる時期にも注意が要ります。担当が替わると、引き継がれていないことがあります。年度の変わり目、担当が替わったと聞いたとき。そのたびに、改めて伝え直してください。
そして、本人の身につけておく方法もあります。財布やかばんに入れておくカード、身につける札。本人が伝えられない状態になったときに、これが役立ちます。救急の場面では、周囲がこれを見て判断します。
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