つなぎ・衣・ソース。卵は「卵の形」をしていないところに入っている
卵アレルギーの難しさは、卵焼きや目玉焼きを避けるだけでは足りないところにあります。日本の惣菜では、卵はつなぎ・衣・乳化剤・照り出しという4つの役割で広く使われています。
| 役割 | 入っている料理 |
|---|---|
| つなぎ | ハンバーグ、つくね、肉団子、しんじょ、コロッケ、練り製品(はんぺん・かまぼこ) |
| 衣 | 天ぷら、フライ、ピカタ、かき揚げ |
| 乳化剤 | マヨネーズ、タルタルソース、ドレッシング、アイスクリーム |
| 照り・仕上げ | 菓子パンの表面、伊達巻、茶碗蒸し、親子丼、かきたま汁 |
加えて、原材料名に「卵」の字が出てこない表記があります。卵白リゾチーム(風邪薬や一部の食品に使われる)、卵殻カルシウム、アルブミン、マヨネーズそのものなどです。このうち卵殻カルシウムは焼成したものであれば通常は問題になりませんが、未焼成のものは卵白タンパクが残ります。判断に迷うものは自己判断で決めず、主治医に確かめてください。
卵白の主要なアレルゲンであるオボムコイドは熱に強く、加熱してもほとんど分解しません。一方、オボアルブミンは加熱で構造が変わり、反応が弱まることがあります。このため、固ゆで卵は食べられるが半熟や生卵では症状が出るという方が一定数います。
ただしこれは個人差が大きく、「加熱すれば大丈夫」と一般化できるものではありません。どこまで食べられるかは、必ず医師の指示にしたがってください。配食では加熱の程度を食べる側で調整できないため、「加熱卵なら可」の方も、注文時にその条件をそのまま伝えてください。
卵1個(Mサイズ約50g)にはたんぱく質が約6g含まれ、ビタミンA・D・B12・葉酸・鉄・セレンなどをまとめて摂れる食材です。高齢者が卵を完全に除去すると、たんぱく質とビタミンDが同時に落ちやすくなります。
| 卵から得ていたもの | 代わりになる食材 |
|---|---|
| たんぱく質 | 魚(鮭・さば)、鶏むね肉、豆腐、高野豆腐 |
| ビタミンD | 鮭、さんま、しらす、干ししいたけ |
| ビタミンB12 | あさり、さば、牛レバー |
| つなぎの代用 | すりおろした山いも、片栗粉、豆腐、パン粉と牛乳 |
やまいもは28品目のうち「準ずるもの」に含まれます。別のアレルギーがある場合は片栗粉に置き換えてください。
配食では、卵を含むおかずをそのまま抜くと、その分だけたんぱく質とエネルギーが減ります。抜くのではなく差し替えることが原則です。配食のふれ愛 太子店では、卵を含む日は代替のおかずへの差し替えをご相談いただけます。
詳しい対応はよくある質問「卵アレルギーに対応できますか」をご覧ください。除去によって栄養が落ちる問題は除去食と低栄養で扱っています。
原材料名に「卵」と書かれていないのに卵が入っていることがあります。表示のうえでは正しい書き方なので、言い換えのほうを覚えておくのが早道です。
| 表示に出る言葉 | 中身 |
|---|---|
| マヨネーズ | 卵黄または全卵。ドレッシングやタルタルにも入る |
| オボアルブミン、リゾチーム | 卵白由来の成分。薬や飲料に入ることがある |
| 卵殻カルシウム | 殻由来。たんぱく質はほぼ残らないが、表示は必要 |
| 練り製品のつなぎ | かまぼこ、はんぺん、さつま揚げに卵白が入ることがある |
| 洋菓子・パンの照り | 焼き上げ前に卵を塗る。原材料名に出ることもある |
「鶏卵」ではなく「うずら卵」と書かれていても同じ扱いです。中華丼や八宝菜に入っているうずら卵は、見た目が小さいぶん見落とされやすいところです。
洋菓子やパンは分かりやすいのですが、和食のほうが見落としが起きます。日常の献立で卵が入りやすいのは次のところです。
このうち「彩り」は取り除きやすい一方で、「つなぎ」と「衣」は取り除けません。盛りつけの段階で外せるかどうかで、対応の難しさが変わります。ご家庭で作るときも、外せる位置に置くようにすると融通が利きます。
卵はつなぎとして便利なので、抜くとまとまりにくくなります。代わりになるものを覚えておくと、献立の幅が狭まりません。
| 用途 | 代わりになるもの | 目安 |
|---|---|---|
| ハンバーグ・つくねのつなぎ | すりおろした長いも、絹ごし豆腐、片栗粉 | 卵1個ぶんに対して長いも大さじ2ほど |
| 衣 | 水溶き片栗粉、米粉のバッター | 粉と水を1対1 |
| 茶碗蒸しのような口あたり | 豆乳と寒天で寄せる | 豆乳200mlに寒天0.5g |
| 彩り | かぼちゃのそぼろ、パプリカ、コーン | 盛りつけで足す |
とろみをつけてまとめる考え方はとろみ食とは?にも通じます。噛む力が落ちている方は、卵を抜いた結果としてぱさつきが増えることがあるので、あんをかけて口の中でまとまるようにしてください。
普段の食事より、行事食のほうが事故が起きやすい傾向があります。作る人が普段と違う、量が多い、彩りを足す、という条件が重なるためです。
行事の日は、取り分ける前に別の皿へ確保しておくのが確実です。大皿に箸が何度も入ると、そのたびに混入する余地が生まれます。施設や集まりに参加するときは、事前に献立を確かめ、必要なら弁当を持参してよいかを聞いておいてください。
長年ふつうに食べてきた卵で、あるときから不調が出るようになる方がいます。この場合、まず考えるのはアレルギー以外の原因です。加齢とともに消化の力が落ちると、脂の多い料理やゆで卵が胃にもたれます。これは免疫の反応ではないので、量を減らす、調理法を変える、といった手当てで済むことがあります。
一方で、口のまわりのかゆみ、じんましん、息苦しさ、腹痛や下痢が食後まもなく出るなら、アレルギーの可能性を考える段階です。高齢の方では症状の出方が典型から外れることがあり、「なんとなく気分が悪い」「急にだるくなった」といった形で現れることがあります。これを年齢のせいと片づけてしまうと、原因にたどりつくのが遅れます。
心当たりがあるときは、いつ・何を・どれくらい食べて・何分後にどうなったかを書き留めてください。記録が3回ぶんそろうと、医師が判断しやすくなります。自己判断で卵を完全にやめてしまうと、あとから検査をしても結果がはっきりしないことがあるため、やめる前に受診するのが順番として正しいやり方です。
卵は、少ない量で質のよいたんぱく質が取れる食材です。1個で約6gのたんぱく質があり、値段も手ごろで、やわらかく調理できます。高齢の方の食事でこれを失う影響は小さくありません。抜いたぶんを別のもので埋めないと、そのまま摂取量が減ります。
1食あたり15〜20gのたんぱく質を目安にすると、卵1個ぶんの6gは3分の1近くを占めます。これを埋めるには、豆腐なら半丁、白身魚なら小さめの切り身1切れ、鶏ささみなら1本ぶんが必要です。「卵を抜いた」だけで終わらせず、「代わりに何を足したか」まで決めてください。
とくに気をつけたいのは朝食です。卵料理を朝の定番にしていた方が卵をやめると、朝がご飯と汁物と漬物だけになりがちです。1日のうち朝はたんぱく質が最も不足しやすい時間帯なので、納豆、豆腐の味噌汁、しらす、ツナ缶といった手のかからないものを一品足す形にしてください。詳しくは低栄養とその対策にまとめています。
体重は月に1回、同じ条件で量って記録してください。半年で2〜3kg落ちているなら、除去のしかたを見直す時期です。数字が残っていれば、管理栄養士に相談したときの話が早くなります。
ご家庭でご本人が調理するのであれば、除去はまだ守りやすいものです。難しくなるのは、作る人と食べる人が分かれたときです。デイサービスの昼食、ショートステイ、入院、配食、家族の交代介護。関わる人が増えるほど、伝達のどこかで抜け落ちます。
抜け落ちを防ぐには、口頭ではなく紙にすることが基本です。「卵アレルギー」とだけ書かれた紙では足りません。加熱したものは食べられるのか、つなぎ程度なら問題ないのか、症状が出たらどう対応するのか、誰に連絡するのか。ここまで書いてあって初めて、初めて対応する人でも動けます。
その紙は冷蔵庫の扉、介護用のファイル、ケアマネジャーの手元の3か所に置いてください。1か所だけだと、その場にいない人には届きません。内容が変わったときは3か所すべてを差し替えます。古い紙が1枚残っていると、そちらが読まれることがあります。伝え方の具体はアレルギーの伝え方にまとめました。
卵は、和食でも洋食でも登場する回数が多い食材です。抜くと、献立の型がいくつも使えなくなります。玉子焼き、茶碗蒸し、親子丼、オムレツ、卵とじ。朝食の定番が消えるため、朝がいちばん困ります。
朝食の代わりの型を先に決めておいてください。ごはんと焼き魚とみそ汁と納豆。あるいは、ごはんとしらすと豆腐のみそ汁。パン食を続けたいなら、卵を使っていないパンを見つけて、ハムやチーズ、豆乳のスープと合わせます。型が3つあれば、朝食に悩まなくなります。
つなぎとしての卵を抜くと、ハンバーグやつくねがまとまりにくくなります。代わりに使えるのは、すりおろしたいも、片栗粉、パン粉と水、豆腐です。とくに豆腐を混ぜると、まとまるうえにやわらかくなり、噛む力が落ちた方でも食べやすくなります。卵を抜くことが、かえって食べやすさにつながる場面もあります。
市販品では、卵不使用のマヨネーズ風調味料が手に入ります。これがあると、サラダ、ポテトサラダ、和えものの幅が戻ります。菓子についても、卵不使用のものが増えています。せんべい、おかき、蒸しパン、ようかんなど、和菓子には卵を使わないものが多くあります。
そして、卵を抜いたぶんのたんぱく質を必ず埋めてください。卵1個で約6gです。朝食から卵が消えたなら、納豆1パックか豆腐半丁を足す。この計算をしておかないと、気づかないうちに1日のたんぱく質が10g近く減ります。
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