高齢者が気をつけたい低栄養とその対策|配食のふれ愛 太子店 健康コラム

低栄養とは — 定義と判断基準

低栄養とは、体に必要なエネルギーやたんぱく質などの栄養素が慢性的に不足している状態を指します。厚生労働省の「国民健康・栄養調査」によると、65歳以上の高齢者の約16.8%(男性12.4%、女性20.7%)が低栄養傾向にあるとされ、年齢が上がるほどその割合は高くなります。

低栄養は「痩せている人だけの問題」と思われがちですが、標準体重に見える方でも筋肉量が減少し脂肪で置き換わっている「サルコペニア肥満」のように、体重だけでは判断できないケースがあります。

低栄養の判断指標

指標低栄養の目安備考
BMI20未満高齢者では21.5以上を維持することが推奨
血清アルブミン値3.5g/dL未満栄養状態を反映するたんぱく質の指標
体重減少率6ヶ月で5%以上意図しない体重減少は低栄養の重要なサイン
ヘモグロビン値11g/dL未満栄養性貧血の指標
食事摂取量通常の75%以下2週間以上続く場合はリスク大

これらの指標を定期的な健康診断で確認することが、低栄養の早期発見につながります。

低栄養のリスク因子 — なぜ高齢者は低栄養になりやすいのか

高齢者が低栄養に陥る原因は一つではなく、複数の要因が重なって進行します。

身体的要因

  • 咀嚼・嚥下機能の低下:歯の喪失や入れ歯の不具合、飲み込む力の低下により、食べられるものが制限される
  • 消化吸収機能の低下:胃酸の分泌が減り、栄養素の吸収効率が低下する。特にビタミンB12や鉄、カルシウムが吸収されにくくなる
  • 味覚・嗅覚の変化:加齢に伴い味蕾の数が減少し、食事の美味しさを感じにくくなる。これが食欲低下の一因に
  • 慢性疾患の影響:糖尿病、腎臓病、がん、うつ病などの疾患が食欲や栄養吸収に影響する

社会的・心理的要因

  • 一人暮らし:孤食による食欲の低下、調理の面倒さによる欠食や偏食
  • 経済的問題:年金生活での食費の節約が、食事の質と量の低下につながる
  • うつ・意欲の低下:配偶者との死別や社会的孤立による意欲低下が食欲に直結する
  • 多剤服用(ポリファーマシー):複数の薬の副作用で食欲不振、味覚障害、消化器症状が出ることがある

MNA-SF — 簡易栄養状態スクリーニング

低栄養の早期発見に最も広く使われているスクリーニングツールがMNA-SF(Mini Nutritional Assessment-Short Form)です。6つの質問に答えるだけで、約5分で栄養状態のリスク評価ができます。

MNA-SFの評価項目

項目内容
A. 食事量の減少過去3ヶ月間に食事量が減ったか
B. 体重減少過去3ヶ月間に体重が減ったか
C. 自力歩行寝たきりか、車いすか、自力で歩けるか
D. 精神的ストレス・急性疾患過去3ヶ月間にストレスや急性疾患があったか
E. 神経・精神的問題うつ状態や認知症があるか
F1. BMI体格指数(BMI=体重kg÷身長m÷身長m)

合計スコアは最大14点で、12〜14点が正常、8〜11点が低栄養のおそれあり、0〜7点が低栄養と判定されます。定期的にセルフチェックを行い、11点以下であれば医療機関や管理栄養士に相談しましょう。

低栄養を予防・改善する食事戦略

低栄養の予防と改善は、日々の食事の工夫で十分に実現可能です。以下の5つの戦略を実践しましょう。

戦略1:たんぱく質を毎食確保する

低栄養予防の最重要課題は、十分なたんぱく質の摂取です。高齢者の推奨量は体重1kgあたり1.0〜1.2g。体重50kgの方なら1日50〜60gが目安です。肉・魚・卵・大豆製品・乳製品を毎食1品以上取り入れましょう。

戦略2:食事回数と間食で摂取量を増やす

1回の食事量が少ない場合は、3食に加えて間食(10時・15時)を設けて1日5回の食事機会をつくります。間食にはヨーグルト、チーズ、バナナ、カステラなど、エネルギーとたんぱく質が摂れるものを選びましょう。

戦略3:エネルギー密度を上げる

食が細い方は、少ない量でも高いエネルギーを摂取する工夫が必要です。

  • 料理にオリーブオイルやバターを少量加える(大さじ1で約100kcal)
  • ごはんに卵やしらすを混ぜる
  • 味噌汁に油揚げや豆腐を多めに入れる
  • 市販の栄養補助食品(高カロリーゼリーなど)を活用する

戦略4:食べやすい食事形態を選ぶ

噛む力や飲み込む力が低下している場合は、無理をせず食事形態を調整します。食べにくさが原因で食事量が減っているケースは非常に多く、形態を変えるだけで摂取量が改善することがあります。

戦略5:フレイルの悪循環を断ち切る

低栄養はフレイル(虚弱)と密接に関連し、互いに悪化させ合う悪循環を形成します。この悪循環を断ち切るには、食事の改善だけでなく、適度な運動(散歩や座ったままの体操)と社会参加(デイサービスや地域活動)を組み合わせることが効果的です。

厚生労働省は「食べて、動いて、つながる」をフレイル予防の3本柱として推奨しています。食事は最も基本的な柱であり、その改善が他の2つの改善にもつながります。

まず疑うべき原因を順に確かめる

食べないのには、理由があります。

「食欲がない」で片づけないでください。その裏に、原因があります。順に確かめてください。

口の中を見てください。歯が痛い、入れ歯が合わない、口内炎がある、乾いている。本人が言い出しにくい部分です。

そして、飲んでいる薬を確かめてください。食欲に関わる薬があります。お薬手帳を医師に見せてください。

お通じの状態も関わります。便秘が続くと、食べられなくなります。ここが原因のことがあります。

気持ちの落ち込みが隠れている

見落とされやすい原因です。

配偶者を亡くした後、一人になった後。食べる量が落ちることがあります。時期に心当たりがないか、振り返ってください。

そして、外出が減り、人と会わなくなると、気持ちが沈みます。そこから食欲が落ちます。食事だけの問題ではありません。

眠れない、意欲がわかない、何をしても楽しくない。こうした訴えがあれば、相談してください。食事の指導だけでは戻りません。

誰かと食べる機会をつくってください。一人で食べ続けると、量が減ります。週に一度でも違います。

朝を確保する

最も抜けやすい一食です。

一食抜くと、その分は取り返せません。昼と夜で補えません。一日の合計がそのまま減ります。

そして、朝に体をつくる材料を入れると、一日の使われ方が変わります。卵、ヨーグルト、豆乳、納豆。手をかけなくても足せます。

前の晩に用意しておいてください。朝は出すだけにしてください。手間があると、やめてしまいます。

パンとお茶だけになっていないか、確かめてください。一週間書き出すと、見えます。頭では気づけません。

一口に入る量を増やす

量が食べられない方への考え方です。

同じ一口に、より多くの栄養を入れてください。これが密度を上げるということです。かさを増やさずに、中身を濃くします。

油を使ってください。少量で、多くの力になります。炒める、和える、かける。

そして、粉や種類を足してください。きな粉、粉チーズ、ごま、練りごま。味も変わり、飽きません。

汁物を、具だくさんにしてください。同じ一杯でも、入る量が変わります。手間も増えません。

間食を役立てる

三食にこだわらないでください。

一度に食べられないなら、回数を分けてください。五回に分ける形もあります。合計で足りていれば構いません。

そして、間食を、栄養のあるものにしてください。ヨーグルト、チーズ、豆乳、バナナ、アイス。お菓子だけでは足りません。

栄養を補う飲料も使えます。少量で、必要なものが入っています。薬局や店で手に入ります。

ただし、間食で満腹になって、食事が入らなくなる場合があります。時間を調整してください。様子を見ながら進めてください。

好きなものから始める

栄養の計算より、先にすることがあります。

まったく食べない状態が続くほうが、危険です。まず何か口に入れることを優先してください。内容はその次です。

そして、好きなものなら食べられることがあります。甘いもの、麺類、決まった一品。そこから広げてください。

昔よく食べていたものを出してみてください。記憶と結びついたものは、食べられることがあります。試す価値があります。

食べられるようになったら、少しずつ内容を整えてください。順序を間違えないでください。正しさより、続くことが先です。

食事の場を整える

環境で、量が変わります。

誰かと食べると、量が増えます。これは多くの方に当てはまります。話しながらだと、時間もかかります。

そして、テレビを消して、食事に向き合う形にしてください。気が散ると、途中でやめます。逆に、寂しさが理由なら、つけたほうが良い場合もあります。

器を替えてください。大きな器に少量だと、寂しく見えます。小さめの器に盛ると、食べ切れます。

食べ切れた、という感覚が、次につながります。残す前提の量を出さないでください。足りなければ、おかわりしてください。

体を動かすことと合わせる

食べるための準備でもあります。

動かないと、お腹が空きません。食べる量が減ります。悪い方に回ります。

そして、筋肉が落ちると、動けなくなります。さらに食べなくなります。この輪を、どこかで断つ必要があります。

座っている時間を減らしてください。立つ、歩く、家事をする。激しい運動は要りません。

どこまで動いてよいかは、医師や理学療法士に確かめてください。痛みがある方は、無理をしないでください。合った方法があります。

数字で確かめる

感覚では分かりません。

体重を、週に一度測ってください。同じ曜日、同じ時間に。紙に書いて並べてください。

そして、減り続けているなら、足りていません。受診してください。ほかの原因がある場合もあります。

血液の検査でも、栄養の状態が分かります。受診のときに相談してください。数字で示されると、判断できます。

記録を持っていってください。言葉で説明するより、正確に伝わります。助言も具体的になります。

一人で抱えずに相談する

最後に、相談先の話です。

管理栄養士に相談できます。今の食事内容を見せると、具体的な助言が得られます。一般論では足りません。

そして、介護保険を使っている方は、ケアマネジャーに相談してください。使える仕組みがあります。組み合わせられます。

地域包括支援センターも、最初の窓口になります。介護保険を使っていなくても相談できます。住んでいる市町村にあります。

作るのが負担なら、届けてもらう形も使えます。栄養の整った食事が、毎日続けられます。安否の確認も兼ねられます。

責めないことが遠回りに見えて早い

最後に、支える側への注意です。

「食べないと駄目でしょう」と言われ続けると、食卓が苦痛の場になります。本人は、食べられないことを一番よく分かっています。言われるほど、追い詰められます。

そして、隠すようになります。食べたふりをする、捨てる。そうなると、状態が見えなくなります。

量ではなく、体重の数字で確かめてください。事実だけを共有し、評価を加えないでください。本人が自分で判断できます。

食べられない原因が見つかれば、その多くは手が打てます。責めるより、原因を探すほうが早く進みます。そのために、医師や管理栄養士がいます。

家で確かめられる、3つの目印

低栄養は血液検査で分かりますが、検査を待たなくても 家で確かめられる目印が3つあります。 どれか1つでも当てはまれば、相談してよい状態です。

見るもの当てはまる目安測り方
体重の減り方1か月で5%/3か月で7.5%/6か月で10%以上50kgの方なら半年で5kg。意図せず減ったぶんだけを数える
BMI20を下回る(65歳以上は21.5〜24.9が目標)体重kg ÷(身長m×身長m)
ふくらはぎの太さ男性34cm・女性33cm未満/指で囲んで隙間ができるいちばん太いところ。体重計が無くても分かる

「痩せてきたけれど、もともと細いから」で見送られることがとても多いのですが、 問題は太さではなく、減っているという動きのほうです。 もとが細い方ほど、減ったときに残りがありません。

原因を、順に外していきます

低栄養は結果であって、原因ではありません。 「食べましょう」と言うだけでは動きません。 上から順に外していくと、たいていどこかで止まります。

確かめる順見るところあてはまるときは
1. 口入れ歯が合っているか、痛みがないか、乾いていないか入れ歯の手入れ口腔ケアの手順
2. 飲み込みむせる、時間がかかる、食後に声がかすれる嚥下食とは?
3. 薬最近増えた薬はないか。吐き気・口の乾き・味覚の変化主治医・薬剤師へ。自己判断で止めない
4. お通じ便秘でお腹が張っていないか便秘を防ぐ食事
5. 気持ち楽しみが減った、眠れない、人と会わなくなった受診。うつは食欲から現れることがある
6. 環境買い物に行けるか、作れるか、一人で食べていないか買い物に行けなくなったら一人暮らしの食事
7. 病気ここまでで当たらない。発熱・痛み・血便がある受診。甲状腺・がん・感染が隠れていることがある

順番に意味があります。1〜4はその場で手が打てて、効果が早いからです。 病気を疑う前に、口と薬とお通じを外してください。 栄養の相談は保険で受けられます(栄養ケア・マネジメント)。 当店では、少量でも栄養が入る形と、飲み込みに合わせた形をご用意しています。

配食のふれ愛の低栄養予防への取り組み

配食のふれ愛では、管理栄養士が監修した栄養バランスのとれた食事を毎日お届けすることで、低栄養予防を日常の中で実現しています。1食あたりたんぱく質約20g、エネルギー約500kcalを確保し、肉・魚・卵・大豆を日替わりでバランスよく提供。食が細い方には少量でも栄養を摂れるメニューの工夫もいたします。毎日の配達時には体調確認も行い、食欲の変化や体重減少の兆候も早期にキャッチします。

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関連用語

低栄養

必要な栄養素やエネルギーが慢性的に不足した状態。筋力低下・免疫力低下・骨折リスク増大を招く。

BMI(体格指数)

体重と身長から算出する肥満度の指標。高齢者は21.5以上の維持が推奨される。

フレイル

身体的・精神的・社会的機能が低下した虚弱状態。低栄養はフレイルの主要な原因の一つ。

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