75歳以上の約15〜20%が低栄養傾向にあるとされています。筋力低下・免疫力低下・骨折リスクの増大を招く低栄養の早期発見と予防法を解説します。
低栄養とは、体に必要なエネルギーやたんぱく質などの栄養素が慢性的に不足している状態を指します。厚生労働省の「国民健康・栄養調査」によると、65歳以上の高齢者の約16.8%(男性12.4%、女性20.7%)が低栄養傾向にあるとされ、年齢が上がるほどその割合は高くなります。
低栄養は「痩せている人だけの問題」と思われがちですが、標準体重に見える方でも筋肉量が減少し脂肪で置き換わっている「サルコペニア肥満」のように、体重だけでは判断できないケースがあります。
| 指標 | 低栄養の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| BMI | 20未満 | 高齢者では21.5以上を維持することが推奨 |
| 血清アルブミン値 | 3.5g/dL未満 | 栄養状態を反映するたんぱく質の指標 |
| 体重減少率 | 6ヶ月で5%以上 | 意図しない体重減少は低栄養の重要なサイン |
| ヘモグロビン値 | 11g/dL未満 | 栄養性貧血の指標 |
| 食事摂取量 | 通常の75%以下 | 2週間以上続く場合はリスク大 |
これらの指標を定期的な健康診断で確認することが、低栄養の早期発見につながります。
高齢者が低栄養に陥る原因は一つではなく、複数の要因が重なって進行します。
低栄養の早期発見に最も広く使われているスクリーニングツールがMNA-SF(Mini Nutritional Assessment-Short Form)です。6つの質問に答えるだけで、約5分で栄養状態のリスク評価ができます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| A. 食事量の減少 | 過去3ヶ月間に食事量が減ったか |
| B. 体重減少 | 過去3ヶ月間に体重が減ったか |
| C. 自力歩行 | 寝たきりか、車いすか、自力で歩けるか |
| D. 精神的ストレス・急性疾患 | 過去3ヶ月間にストレスや急性疾患があったか |
| E. 神経・精神的問題 | うつ状態や認知症があるか |
| F1. BMI | 体格指数(BMI=体重kg÷身長m÷身長m) |
合計スコアは最大14点で、12〜14点が正常、8〜11点が低栄養のおそれあり、0〜7点が低栄養と判定されます。定期的にセルフチェックを行い、11点以下であれば医療機関や管理栄養士に相談しましょう。
低栄養の予防と改善は、日々の食事の工夫で十分に実現可能です。以下の5つの戦略を実践しましょう。
低栄養予防の最重要課題は、十分なたんぱく質の摂取です。高齢者の推奨量は体重1kgあたり1.0〜1.2g。体重50kgの方なら1日50〜60gが目安です。肉・魚・卵・大豆製品・乳製品を毎食1品以上取り入れましょう。
1回の食事量が少ない場合は、3食に加えて間食(10時・15時)を設けて1日5回の食事機会をつくります。間食にはヨーグルト、チーズ、バナナ、カステラなど、エネルギーとたんぱく質が摂れるものを選びましょう。
食が細い方は、少ない量でも高いエネルギーを摂取する工夫が必要です。
噛む力や飲み込む力が低下している場合は、無理をせず食事形態を調整します。食べにくさが原因で食事量が減っているケースは非常に多く、形態を変えるだけで摂取量が改善することがあります。
低栄養はフレイル(虚弱)と密接に関連し、互いに悪化させ合う悪循環を形成します。この悪循環を断ち切るには、食事の改善だけでなく、適度な運動(散歩や座ったままの体操)と社会参加(デイサービスや地域活動)を組み合わせることが効果的です。
厚生労働省は「食べて、動いて、つながる」をフレイル予防の3本柱として推奨しています。食事は最も基本的な柱であり、その改善が他の2つの改善にもつながります。
食べないのには、理由があります。
「食欲がない」で片づけないでください。その裏に、原因があります。順に確かめてください。
口の中を見てください。歯が痛い、入れ歯が合わない、口内炎がある、乾いている。本人が言い出しにくい部分です。
そして、飲んでいる薬を確かめてください。食欲に関わる薬があります。お薬手帳を医師に見せてください。
お通じの状態も関わります。便秘が続くと、食べられなくなります。ここが原因のことがあります。
見落とされやすい原因です。
配偶者を亡くした後、一人になった後。食べる量が落ちることがあります。時期に心当たりがないか、振り返ってください。
そして、外出が減り、人と会わなくなると、気持ちが沈みます。そこから食欲が落ちます。食事だけの問題ではありません。
眠れない、意欲がわかない、何をしても楽しくない。こうした訴えがあれば、相談してください。食事の指導だけでは戻りません。
誰かと食べる機会をつくってください。一人で食べ続けると、量が減ります。週に一度でも違います。
最も抜けやすい一食です。
一食抜くと、その分は取り返せません。昼と夜で補えません。一日の合計がそのまま減ります。
そして、朝に体をつくる材料を入れると、一日の使われ方が変わります。卵、ヨーグルト、豆乳、納豆。手をかけなくても足せます。
前の晩に用意しておいてください。朝は出すだけにしてください。手間があると、やめてしまいます。
パンとお茶だけになっていないか、確かめてください。一週間書き出すと、見えます。頭では気づけません。
量が食べられない方への考え方です。
同じ一口に、より多くの栄養を入れてください。これが密度を上げるということです。かさを増やさずに、中身を濃くします。
油を使ってください。少量で、多くの力になります。炒める、和える、かける。
そして、粉や種類を足してください。きな粉、粉チーズ、ごま、練りごま。味も変わり、飽きません。
汁物を、具だくさんにしてください。同じ一杯でも、入る量が変わります。手間も増えません。
三食にこだわらないでください。
一度に食べられないなら、回数を分けてください。五回に分ける形もあります。合計で足りていれば構いません。
そして、間食を、栄養のあるものにしてください。ヨーグルト、チーズ、豆乳、バナナ、アイス。お菓子だけでは足りません。
栄養を補う飲料も使えます。少量で、必要なものが入っています。薬局や店で手に入ります。
ただし、間食で満腹になって、食事が入らなくなる場合があります。時間を調整してください。様子を見ながら進めてください。
栄養の計算より、先にすることがあります。
まったく食べない状態が続くほうが、危険です。まず何か口に入れることを優先してください。内容はその次です。
そして、好きなものなら食べられることがあります。甘いもの、麺類、決まった一品。そこから広げてください。
昔よく食べていたものを出してみてください。記憶と結びついたものは、食べられることがあります。試す価値があります。
食べられるようになったら、少しずつ内容を整えてください。順序を間違えないでください。正しさより、続くことが先です。
環境で、量が変わります。
誰かと食べると、量が増えます。これは多くの方に当てはまります。話しながらだと、時間もかかります。
そして、テレビを消して、食事に向き合う形にしてください。気が散ると、途中でやめます。逆に、寂しさが理由なら、つけたほうが良い場合もあります。
器を替えてください。大きな器に少量だと、寂しく見えます。小さめの器に盛ると、食べ切れます。
食べ切れた、という感覚が、次につながります。残す前提の量を出さないでください。足りなければ、おかわりしてください。
食べるための準備でもあります。
動かないと、お腹が空きません。食べる量が減ります。悪い方に回ります。
そして、筋肉が落ちると、動けなくなります。さらに食べなくなります。この輪を、どこかで断つ必要があります。
座っている時間を減らしてください。立つ、歩く、家事をする。激しい運動は要りません。
どこまで動いてよいかは、医師や理学療法士に確かめてください。痛みがある方は、無理をしないでください。合った方法があります。
感覚では分かりません。
体重を、週に一度測ってください。同じ曜日、同じ時間に。紙に書いて並べてください。
そして、減り続けているなら、足りていません。受診してください。ほかの原因がある場合もあります。
血液の検査でも、栄養の状態が分かります。受診のときに相談してください。数字で示されると、判断できます。
記録を持っていってください。言葉で説明するより、正確に伝わります。助言も具体的になります。
最後に、相談先の話です。
管理栄養士に相談できます。今の食事内容を見せると、具体的な助言が得られます。一般論では足りません。
そして、介護保険を使っている方は、ケアマネジャーに相談してください。使える仕組みがあります。組み合わせられます。
地域包括支援センターも、最初の窓口になります。介護保険を使っていなくても相談できます。住んでいる市町村にあります。
作るのが負担なら、届けてもらう形も使えます。栄養の整った食事が、毎日続けられます。安否の確認も兼ねられます。
最後に、支える側への注意です。
「食べないと駄目でしょう」と言われ続けると、食卓が苦痛の場になります。本人は、食べられないことを一番よく分かっています。言われるほど、追い詰められます。
そして、隠すようになります。食べたふりをする、捨てる。そうなると、状態が見えなくなります。
量ではなく、体重の数字で確かめてください。事実だけを共有し、評価を加えないでください。本人が自分で判断できます。
食べられない原因が見つかれば、その多くは手が打てます。責めるより、原因を探すほうが早く進みます。そのために、医師や管理栄養士がいます。
低栄養は血液検査で分かりますが、検査を待たなくても 家で確かめられる目印が3つあります。 どれか1つでも当てはまれば、相談してよい状態です。
| 見るもの | 当てはまる目安 | 測り方 |
|---|---|---|
| 体重の減り方 | 1か月で5%/3か月で7.5%/6か月で10%以上 | 50kgの方なら半年で5kg。意図せず減ったぶんだけを数える |
| BMI | 20を下回る(65歳以上は21.5〜24.9が目標) | 体重kg ÷(身長m×身長m) |
| ふくらはぎの太さ | 男性34cm・女性33cm未満/指で囲んで隙間ができる | いちばん太いところ。体重計が無くても分かる |
「痩せてきたけれど、もともと細いから」で見送られることがとても多いのですが、 問題は太さではなく、減っているという動きのほうです。 もとが細い方ほど、減ったときに残りがありません。
低栄養は結果であって、原因ではありません。 「食べましょう」と言うだけでは動きません。 上から順に外していくと、たいていどこかで止まります。
| 確かめる順 | 見るところ | あてはまるときは |
|---|---|---|
| 1. 口 | 入れ歯が合っているか、痛みがないか、乾いていないか | 入れ歯の手入れ/口腔ケアの手順 |
| 2. 飲み込み | むせる、時間がかかる、食後に声がかすれる | 嚥下食とは? |
| 3. 薬 | 最近増えた薬はないか。吐き気・口の乾き・味覚の変化 | 主治医・薬剤師へ。自己判断で止めない |
| 4. お通じ | 便秘でお腹が張っていないか | 便秘を防ぐ食事 |
| 5. 気持ち | 楽しみが減った、眠れない、人と会わなくなった | 受診。うつは食欲から現れることがある |
| 6. 環境 | 買い物に行けるか、作れるか、一人で食べていないか | 買い物に行けなくなったら/一人暮らしの食事 |
| 7. 病気 | ここまでで当たらない。発熱・痛み・血便がある | 受診。甲状腺・がん・感染が隠れていることがある |
順番に意味があります。1〜4はその場で手が打てて、効果が早いからです。 病気を疑う前に、口と薬とお通じを外してください。 栄養の相談は保険で受けられます(栄養ケア・マネジメント)。 当店では、少量でも栄養が入る形と、飲み込みに合わせた形をご用意しています。
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