口腔ケアの手順|配食のふれ愛 太子店 健康コラム

口の細菌が肺に入る

誤嚥性肺炎は、食べ物が気管に入ることだけで起きるのではありません。唾液と一緒に口の中の細菌が肺へ入ることが大きな原因です。寝ている間の無自覚な誤嚥(不顕性誤嚥)でも起こります。

だから、口の中の細菌を減らすこと自体が肺炎の予防になります。実際、介護施設で口腔ケアを徹底した群では肺炎の発症が減ったという研究が国内で報告されています。食べていない方(経管栄養の方)にも口腔ケアは必要です。

道具をそろえる

道具使いどころ
歯ブラシ(毛はやわらかめ、ヘッドは小さめ)歯と歯ぐきの境目
タフトブラシ(毛束が1つ)最後の奥歯、歯並びの悪いところ
舌ブラシ、またはやわらかいスポンジ舌の表面
スポンジブラシ(口腔ケア用)頬の内側、上あご、汚れの回収
保湿ジェル口が乾いている方。ケアの前に塗って汚れをふやかす
ガーグルベースン、またはコップとタオル吐き出す受け皿

歯みがき剤は使わないか、ごく少量にします。泡が立つと磨けたつもりになり、うがいの回数も増えて誤嚥の機会が増えます。発泡剤の入っていないジェルタイプが向いています。

順番

  1. 座らせる。可能なら座位。ベッドなら30度以上に起こし、あごを引く。食事の姿勢と同じ考え方です
  2. 口を湿らせる。乾いたままこすると粘膜が傷つきます。水か保湿ジェルで湿らせ、30秒ほど待つ
  3. 汚れをふやかす。上あごや舌にこびりついた汚れを、無理にはがさない
  4. 外側から磨く。前歯の表→奥歯の外側→内側の順。小刻みに動かす
  5. 頬の内側・上あご・舌を拭う。スポンジブラシを奥から手前へ。奥へ押し込まない
  6. 回収する。汚れを外に出す。うがいが難しければ、スポンジで拭き取る
  7. 保湿する。仕上げにジェルを薄く塗る

5番目の「奥から手前へ」は必ず守ってください。手前から奥へ動かすと、汚れを喉に送り込むことになります。

うがいができない方

飲み込みが弱く、うがいの水で むせてしまう方には、次の方法を使います。

  • スポンジ拭き取り法:水を含ませたスポンジブラシで拭き、別のコップで絞る。これを繰り返す
  • ガーゼ拭き:指にガーゼを巻いて拭う(噛まれないよう注意。開口器がある場合は使う)
  • 横向きにする:ベッドで顔を横に向け、水が喉へ落ちないようにする

いずれも「水を入れない」のが基本です。口の中の水は、そのまま誤嚥の原因になります。

いつやるか、誰に頼るか

回数は毎食後と就寝前が理想ですが、全部は難しいことが多いはずです。優先順位をつけるなら就寝前です。寝ている間は唾液が減り、細菌が増えます。

自分たちだけで難しい場合は、次の支援があります。

  • 訪問歯科診療:歯科医師・歯科衛生士が自宅に来ます。医療保険(一部介護保険)
  • 居宅療養管理指導:介護保険。歯科衛生士による口腔ケアの指導
  • 訪問介護:身体介護のなかで口腔ケアが行われます

入れ歯の手入れは義歯の手入れで扱っています。かむ力の維持は口腔ケアの手順をご覧ください。

口の中を清潔にすることが肺を守る

口腔ケアは、口の中をきれいにするためだけの行為ではありません。高齢の方にとっては、肺炎を防ぐための手立てです。

口の中には多くの細菌がいます。健康な方なら問題になりませんが、飲み込む力が落ちている方の場合、唾液と一緒にこの細菌が気管に入り、肺炎を起こすことがあります。とくに、寝ているあいだに少しずつ流れ込むことが知られており、本人も周囲も気づきません。

だから、口の中の細菌の数を減らしておくことに意味があります。口腔ケアを行うことで、肺炎が減ることが分かっています。食べていない方、経管栄養を受けている方でも、口腔ケアは必要です。むしろ、口を使っていない方のほうが唾液が減り、細菌が増えやすくなります。

そして、口の中がきれいだと、味が分かるようになり、食欲も戻ります。汚れた口で食事をしても、おいしく感じません。食べる力を保つことと、肺を守ることの両方に効くのが、口腔ケアです。

道具をそろえる

口腔ケアに使う道具は、その方の状態によって変わります。歯ブラシだけでは足りないことが多くあります。

歯がある方には、やわらかめの歯ブラシです。毛先が広がったものは交換してください。歯と歯ぐきのあいだを磨くため、小さめのヘッドが扱いやすくなります。握力が弱い方には、持ち手が太いものや、電動のものが使えます。

歯がない方、入れ歯の方にも、口の中の清掃は必要です。舌、頬の内側、上あご。ここに汚れがたまります。スポンジブラシ、口腔ケア用のウェットティッシュ、舌ブラシを使います。歯がないから何もしなくてよい、というのは誤りです。

口が乾いている方には、保湿剤を使います。ジェル状のものや、スプレー状のものがあります。乾いた口を無理にこすると、粘膜が傷つきます。先に湿らせてから、汚れをふやかして取るのが正しい順番です。

そのほか、うがい受け、ガーゼ、コップ、手袋、ライト。口の中は暗いので、ライトがあるかどうかで見え方が変わります。スマートフォンのライトでも構いません。何も見えないまま手探りで行うと、汚れが残ります。

手順と、うがいができない方への対応

手順の基本は、湿らせる、汚れを落とす、取り除く、仕上げる、の4段階です。

まず、口の中を湿らせます。水やジェルで潤してから始めることで、粘膜を傷つけずに汚れを落とせます。次に、歯と歯ぐき、舌、頬の内側、上あごの順で汚れを落とします。力を入れずに、小刻みに動かします。強くこすると出血し、痛みで次から嫌がられます。

落とした汚れは、必ず取り除いてください。ここが最も大事な段階です。汚れを浮かせただけで飲み込ませてしまうと、かえって危険になります。うがいができる方は うがいを、できない方はスポンジブラシやガーゼで拭き取ります。吸引ができる環境なら、吸い取ります。

うがいができない方の場合は、水を使いすぎないことが大事です。大量の水は、そのまま誤嚥につながります。湿らせたスポンジブラシで拭き取り、そのつどブラシを別の容器の水ですすぐという形で進めます。姿勢は、できるだけ上体を起こし、顔をやや下向きにしてください。上を向いた状態で行うと、水が のどへ流れます。

最後に、保湿剤を薄く塗って仕上げます。口が乾いた状態で終わると、次までに汚れがこびりつきます。

いつ、どれくらいの頻度でやるか

基本は、毎食後と寝る前です。ただし、すべての方にこの頻度が実行できるとは限りません。優先順位をつけてください。

最も大事なのは、寝る前です。寝ているあいだに唾液が減り、細菌が増えます。その状態で誤嚥すると肺炎につながります。1日1回しかできないなら、寝る前にしてください。

次に大事なのが、朝起きたときです。寝ているあいだに増えた細菌を、朝食の前に減らしておくことに意味があります。朝食後より、朝食前のほうが優先されます。

食べていない方、経管栄養の方も、1日2回以上は必要です。口を使っていないぶん、唾液による自浄が働かず、汚れがたまります。「食べていないからきれいなはず」というのは逆です。

そして、続けられる形にしてください。完璧を目指して負担が重くなると、途切れます。短くても毎日続けるほうが、時々丁寧にやるより効きます。時間がないときは、寝る前の1回だけでも欠かさないでください。

嫌がられたときにどうするか

口腔ケアを嫌がる方は少なくありません。口の中に手を入れられることは、誰にとっても不快です。無理に押し込むと、次から拒否が強くなります。

まず、痛みがないかを疑ってください。歯がしみる、口内炎がある、入れ歯が当たっている、歯ぐきが腫れている。痛みがあれば嫌がって当然です。歯科の診察を受けてください。訪問での歯科診療を行っている地域もあります。

次に、やり方を見直します。急に口に手を入れていないか。強くこすっていないか。水が多すぎないか。まず頬の外側から触れて、口の周りをほぐしてから始めると、受け入れやすくなります。

そして、声かけです。何をするかを伝えてから始める。終わりが見えるように「あと少しです」と伝える。終わったら「きれいになりました」と伝える。黙って作業されるのは、誰にとっても不安です。

認知の機能が落ちている方の場合、道具を見せてから始める、鏡を見せる、自分で持ってもらうといった方法が効くことがあります。どうしても難しいときは、時間帯を変える、担当を変える、1回にやる範囲を減らすといった工夫をしてください。全部を1回で終わらせようとしないことです。

専門職に頼れる場面

口腔ケアは、家族だけで抱える必要はありません。専門職の支援を受けられます。

まず、歯科です。通院が難しい方には、訪問での歯科診療があります。虫歯や歯周病の治療だけでなく、入れ歯の調整、口腔ケアの指導も受けられます。介護保険や医療保険が使えます。かかりつけ医かケアマネジャーに相談してください。

次に、歯科衛生士による口腔ケアです。専門的な清掃を定期的に受けることで、家庭でのケアだけでは取りきれない汚れを落とせます。やり方を家族が教わることもできます。

訪問看護でも、口腔ケアが行われます。飲み込みの状態を含めて見てもらえるので、食事の形についても相談できます。

そして、入れ歯が合わないまま使い続けている方は、必ず調整を受けてください。合わない入れ歯は、噛めないだけでなく、粘膜を傷つけ、痛みで食事量を落とします。詳しくは入れ歯の手入れにまとめています。放置している期間が長いほど、口の中の形が変わって調整が難しくなります。

歯科につなぐ判断

毎日のケアで対応できる範囲と、専門の手が必要な範囲があります。この線引きを知っておいてください。

次のような場合は、歯科に相談してください。歯ぐきから血が出る状態が続く、歯がぐらついている、義歯が当たって痛い、口内炎が治らない、口の中に白い膜のようなものが付いている、口臭が強くなった。いずれも、歯ブラシで解決する問題ではありません。

また、こびりついた汚れは、家庭のケアでは落としきれません。長く口から食べていない方、口が乾いている方では、硬くこびりついた汚れが付くことがあります。無理にはがそうとすると出血し、そこから感染します。専門の器具で除去してもらってください。

通院が難しい場合は、訪問の歯科があります。歯科医師と歯科衛生士が家や施設に来て、治療とケアを行う仕組みです。介護保険や医療保険が使えます。ケアマネジャーか地域包括支援センターに聞けば、対応している歯科を教えてもらえます。

そして、定期的に見てもらうことをお勧めします。口の中の状態は、飲み込む力と直結しており、肺炎の起こりやすさにも関わります。問題が起きてから駆け込むより、月に1回でも見てもらうほうが、結果として手間も費用も少なくなります。

食事形態を、その日の状態に合わせて選べます

配食のふれ愛 太子店では、普通食のほかに、やわらかく仕上げた小町食・きざみ・一口大・ムース食をご用意しています。同じ献立を形だけ変えてお届けできるため、ご家族と同じものを召し上がれます。どの形が合うか分からないときは、まず無料試食でお試しください。

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関連用語

誤嚥性肺炎

食べ物や唾液が気管に入って起きる肺炎。高齢者の肺炎の多くを占めます。

嚥下障害

飲み込みがうまくいかない状態。むせや口の中の残留が目印になります。

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