退院時に食事形態を引き継ぐ|配食のふれ愛 太子店 健康コラム

退院後に形態が戻ってしまう

入院中は嚥下の評価に基づいた食事が出ています。ところが退院すると、家庭では元の普通食に戻り、数週間後にむせや肺炎で再入院する。この流れは珍しくありません。

理由は単純で、指示が具体的な形で家庭に届いていないからです。「やわらかいものを」「刻んで」といった言葉だけでは、家では何をどうすればよいか決められません。

退院前に聞く5項目

  1. 食事形態のコード。「学会分類のコード何番か」を数字で聞く。用紙をもらう
  2. 水分のとろみの段階。薄い・中間・濃いのどれか。使っているとろみ剤の商品名と、1杯あたりの量
  3. 1食の量と、1日に必要なエネルギー・たんぱく質。数字で聞く
  4. 禁止・制限。塩分、たんぱく質、カリウム、水分の制限があるか。アレルギー
  5. 次にどうなったら受診するか。むせが増えた、熱が出た、体重が減った。どの時点で連絡するか

これらは入院中に聞くのがこつです。退院当日はばたばたして聞けません。退院が決まった時点で、病棟の看護師か管理栄養士に面談を申し込んでください。

誰に渡すか

相手渡すもの
家族全員形態のコード、とろみの段階、作り方の要点。冷蔵庫に貼る
ケアマネジャー退院時の指示書一式。担当者会議で共有される
配食事業者形態、制限、アレルギー
デイサービス・ショートステイ同上。食事の場面が別にある
かかりつけ医退院時サマリー。病院から送られるが、家族も内容を把握しておく

入院前と同じ事業者に戻る場合も、必ず伝え直してください。入院前の記録がそのまま生きていると、以前の形態で届きます。

家で再現するときの現実

病院と同じものを家で作るのは、率直に言って難しい作業です。次の順で現実的な線を引きます。

  1. いちばん危ない食品だけ確実に避ける。餅、こんにゃく、のり、パサつく肉など
  2. とろみは必ず守る。水分は誤嚥の最大の原因です。ここは崩さない
  3. 主菜だけでも形態を守る。肉・魚はやわらかく。副菜は多少の幅を許容する
  4. 1日1食は既製の介護食・配食に任せる。基準を満たしたものが確実に入ります

4番目は「手抜き」ではなく、確実に基準を満たす食事を1日のどこかに置くという設計です。全食を家庭で完璧にするより、現実的で安全です。

退院後1か月は変化を見る

退院直後は体力が戻っておらず、食べられる量も形態も変わっていきます。次を記録してください。

  • 体重(週1回)
  • 食べた割合(何割食べたか)
  • むせた回数
  • 熱、痰、だるさ

体調が上向けば形態を戻せることがあります。逆に落ちていれば早めに相談します。判断はケアマネジャーとかかりつけ医に委ねてください。

退院後の食事全般は退院後の食事管理をご覧ください。

病院食と家庭の食事は前提が違う

退院後に形が戻ってしまう背景には、病院と家庭の条件の差があります。この差を理解しておかないと、「同じようにやっているのに、うまくいかない」という状態になります。

病院では、管理栄養士が献立を組み、調理師が専用の機器で作り、看護師が姿勢を整え、必要なら言語聴覚士が付いています。一人の食事に、複数の専門職が関わっています。家庭では、これをすべて家族が担うことになります。同じ水準を求めるのは無理があります。

また、病院には時間の余裕があります。家庭では、食事の用意、介助、片づけの合間に、洗濯も掃除も買い物もあります。この現実を踏まえないと、最初の1週間で燃え尽きます。

だからこそ、退院前に「家で何が続けられるか」を具体的に決めておく必要があります。病院の形をそのまま持ち帰るのではなく、家庭でできる形に翻訳する作業が要ります。この翻訳を誰かがやらないと、現場任せになり、結果として元の食事に戻ります。

実物を見て、写真に撮っておく

言葉だけの引き継ぎは、必ず食い違います。「やわらかめ」「きざみ」「とろみをつけて」といった表現は、人によって思い浮かべるものが違います。

最も確実なのは、実物を見ることです。退院前に、本人が食べている病院食を実際に見せてもらってください。面会の時間を食事の時間に合わせれば、見ることができます。どれくらいのやわらかさか、どれくらいの大きさか、汁気はどうか。目で見れば一度で分かります。

そして、写真に撮ってください。許可を取ったうえで、主食、主菜、副菜、汁もの、それぞれを撮っておく。家で作るときに見比べられます。記憶だけでは再現できません。

とろみの濃さは、特に写真だけでは伝わりません。スプーンですくって落とす様子を、動画で撮らせてもらってください。落ちる速さで濃さが分かります。とろみの段階はとろみ食の付け方にまとめています。

使っている製品名も控えてください。とろみ剤の商品名と、水100ミリリットルあたり何グラムか。これが分かれば、同じものを買って同じ濃さが作れます。製品によって必要な量が違うため、名前が分からないと再現できません。

家で作れる範囲に落とし込む

病院食をそのまま家で作ろうとすると続きません。同じ結果を、簡単な方法で出す工夫が要ります。

まず、市販の介護食を土台にしてください。やわらかさの段階が表示されたレトルト食品が、スーパーや薬局で買えます。この主菜に、家で作った副菜を1品足す。すべてを手作りにする必要はありません。

次に、家族の食事から取り分ける形を作ります。煮物を家族用と本人用に分け、本人用だけ長く煮る、あるいは取り分けてからミキサーにかける。別々に作るのではなく、途中まで一緒に作れば、手間が半分になります。

そして、作り置きと冷凍です。やわらかく煮たものを小分けにして冷凍しておけば、忙しい日は温めるだけで済みます。週末に3日分作るという形にすると、平日が楽になります。

配食サービスも選択肢です。やわらかさの段階を選べる事業者があります。1日1食でも任せられれば、そのぶんの余力が生まれます。退院直後の一番大変な時期に、これが効きます。選び方は配食サービスの確認12項目にまとめています。

姿勢と環境も引き継ぐ

引き継ぐべきものは、食事の形だけではありません。姿勢と環境も、病院では整えられていました。

病院のベッドは、角度が細かく変えられます。「30度で食べていた」と言われても、家のベッドやソファでは同じ角度が作れないことがあります。どういう姿勢だったのかを、写真に撮っておいてください。

椅子で食べる場合は、足の裏が床につくこと、背もたれで支えられること、テーブルの高さが合っていることを確かめてください。足がぶらついていると、体が安定せず、飲み込みが不安定になります。足台を置くだけで解決する場合が多くあります。

食後の姿勢も引き継いでください。食べてすぐ横になると、逆流して誤嚥します。病院では、食後30分から1時間は起きた姿勢を保つよう指導されているはずです。家でも同じにしてください。

そして、使っていた道具です。特別なスプーン、コップ、皿を使っていたなら、同じものを用意してください。病院で使っていたものの商品名を聞いておけば、退院までに買えます。姿勢の整え方は食事の姿勢にまとめています。

相談できる相手を退院前に確保する

退院すると、それまで毎日いた専門職がいなくなります。困ったときに誰に聞くかを、退院前に決めておいてください。

介護保険を使っている方なら、ケアマネジャーが窓口です。退院前のカンファレンスにケアマネジャーが入っていれば、食事の指示もそこで共有されます。入っていない場合は、病院の相談員に依頼してください。

訪問の管理栄養士に来てもらえる場合があります。医師の指示があれば、家に来て、実際の食卓を見ながら助言してもらえる仕組みがあります。使えるかどうかを、退院前に相談員に確かめてください。

飲み込みについては、訪問リハビリで言語聴覚士に関わってもらえる場合があります。むせが増える、熱が出る、食べる量が減る。こうした変化があったときに、すぐ相談できる相手がいることが重要です。

そして、かかりつけ医です。退院後の主治医が誰になるかを、必ず確かめてください。病院の主治医が引き続き診るのか、地域の医師に引き継ぐのか。ここが曖昧なまま退院すると、体調が変わったときに行き先が分からなくなります。

戻ってしまったときにどうするか

準備をしても、形が戻ってしまうことはあります。責める話ではありません。戻ったことに早く気づいて、立て直すことが大事です。

気づくためのしるしがあります。むせが増えた、食後に痰が増えた、食事に時間がかかるようになった、微熱が続く、元気がない。これらは、いまの食事が合っていないことを示しています。

体重も見てください。形が合わずに食べられていない場合、まず体重が落ちます。週に1回量って記録しておけば、変化が数字で見えます。

そして、戻ってしまった理由を確かめてください。手間がかかりすぎた、材料が手に入らない、本人が嫌がった、家族が方法を分かっていない。理由によって対処が違います。手間の問題なら市販品と配食で解決しますし、本人が嫌がるなら味と見た目の問題かもしれません。

一度戻したものを、また整えるのは可能です。「一度失敗したからもう無理」ではありません。ケアマネジャーに現状を伝えて、支援の内容を組み直してもらってください。退院直後に組んだ計画が、1か月後の実態に合っていないことは、よくあることです。

退院前カンファレンスで確認すること

退院前に、病院の職員と在宅の支援者が集まって話し合う場が設けられることがあります。ここで食事の話を必ず出してください。

この場に、ケアマネジャー、訪問看護、訪問リハビリ、そして家族が入ります。食事の形について、この場で決まったことが、そのまま在宅の計画に反映されます。言わなければ、話題にならないまま終わることがあります。

確かめるべきことを挙げます。いま出している食事の形と段階の名前。とろみの製品名と濃さ。1食あたりの量と、1日に必要なエネルギーとたんぱく質の目安。食べさせてはいけないものがあるか。姿勢と食後の過ごし方。

そして、家で用意できるかどうかを、その場で正直に伝えてください。「できます」と答えたものの、実際にはできなかったというのが最も困る事態です。難しいと伝えれば、市販品や配食を含めた代わりの方法が検討されます。

カンファレンスが設けられない場合は、病院の相談員に依頼してください。「退院後の食事のことで相談したい」と伝えれば、管理栄養士や言語聴覚士から説明を受けられる場合があります。退院してから聞くより、退院前に聞くほうがはるかに確実です。

食事形態を、その日の状態に合わせて選べます

配食のふれ愛 太子店では、普通食のほかに、やわらかく仕上げた小町食・きざみ・一口大・ムース食をご用意しています。同じ献立を形だけ変えてお届けできるため、ご家族と同じものを召し上がれます。どの形が合うか分からないときは、まず無料試食でお試しください。

メニュー詳細を見る 無料試食を申し込む

関連用語

ケアマネジャー

介護保険のケアプランを作り、サービス事業者との調整を担う専門職です。

介護食

かむ力・飲み込む力に合わせて形や硬さを調整した食事の総称です。

嚥下障害

飲み込みがうまくいかない状態。むせや口の中の残留が目印になります。

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