食事の姿勢|配食のふれ愛 太子店 健康コラム

なぜ姿勢でむせが変わるのか

飲み込むとき、食べ物は喉の奥で気管と食道の分かれ道を通ります。あごが上を向いていると、気管の入り口が開いた状態になり、食べ物が気管に入りやすくなります。逆に、あごを軽く引くと気管の入り口が狭まり、食道側へ流れやすくなります。

これは献立を変えるより早く、費用もかからず、その日から効く工夫です。誤嚥性肺炎を防ぐうえで、最初に確かめる点です。

椅子に座って食べるとき

部位整え方
足の裏床にぴったり着ける。届かなければ足台を置く
ひざ90度に曲がる高さの椅子にする
背中背もたれに着ける。深く腰かける
テーブルの高さひじが自然に乗る高さ。おへそからみぞおちの間
あご軽く引く。うなずくくらいの角度
体とテーブルの距離こぶし1つ分

見落とされやすいのが足の裏です。足が浮いていると体が安定せず、飲み込むときに力が入りません。座布団を重ねる、電話帳を置く、といった簡単な足台でも効果があります。

車いすで食べるとき

車いすは移動のための道具で、長く座って食事をする形にはなっていません。可能であれば普通の椅子に移ってください。

やむを得ず車いすのまま食べる場合は、次を守ります。

  • フットレストから足を下ろし、床か足台に着ける
  • 深く腰かけ直す(前にずり落ちた姿勢だとあごが上がります)
  • クッションで背中と骨盤を支える
  • テーブルは車いすのひじ掛けが入る高さにする

ベッドで食べるとき

ベッド上での食事は、背上げの角度が要点になります。

角度向く状態注意
30度座位が保てない、介助で食べる重力で食道に流れやすい。誤嚥のリスクは下がるが、自分では食べにくい
45〜60度ある程度自分で食べられる体がずり落ちやすい。ひざを軽く上げて支える
90度座位が保てる椅子に移れるなら椅子のほうがよい

どの角度でも共通するのは「あごを引く」ことです。枕やクッションで後頭部を支え、あごが上を向かないようにします。角度の指示は、担当のリハビリ職や医師から出ていればそれに従ってください。

食後30分は横にならない

食後すぐ横になると、胃の内容物が食道へ逆流し、それを誤嚥することがあります。食後30分は上半身を起こしたままにしてください。ベッドなら背上げを保つ、椅子なら座ったままお茶を飲む、といった形です。

この時間を口腔ケアに使うと一石二鳥になります。口腔ケアの手順をご覧ください。

足の裏が床につくかどうかで変わる

食事の姿勢というと、上半身の話だと思われがちですが、実際に効くのは足元です。足の裏が床についていないと、体が安定しません。体が安定しないと、飲み込むときに使う力が入らず、むせやすくなります。

椅子が高すぎると、足が浮きます。とくに小柄な方や、既製の椅子を使っている場合に起こります。足が浮いた状態では、体が前後に揺れ、その揺れを止めるために体幹に力が入り続けます。食事に集中できません。

解決は簡単で、足台を置くだけです。専用のものを買わなくても、電話帳、木の板、雑誌を束ねたもの、踏み台で足ります。ひざが90度に曲がり、足の裏全体が乗る高さにしてください。爪先だけが触れている状態では意味がありません。

逆に椅子が低すぎると、立ち上がりにくく、姿勢も崩れます。座面にクッションを置いて高さを調整してください。座る高さ、テーブルの高さ、足台の3つを合わせることが、姿勢を整える基本です。この調整に費用はほとんどかかりませんが、効果は大きく出ます。

あごの角度が誤嚥を左右する

飲み込むときのあごの角度は、むせるかどうかに直結します。あごが上を向いていると、のどが一直線になり、食べものが気管に入りやすくなります。あごを軽く引いた状態が、最も安全な形です。

あごが上がってしまう原因を挙げます。テーブルが高すぎる。介助する人が立ったまま上から食べさせている。ベッドの背を上げすぎて頭が後ろに倒れている。枕が低すぎる。目線の高さにテレビがある。いずれも、本人の意思ではなく環境によってあごが上がっています。

とくに、介助する人が立ったまま食べさせるのは避けてください。上から差し出されると、受け取るために自然に上を向きます。介助する人は必ず座り、本人と同じか、やや低い目線から差し出してください。これだけで誤嚥の危険が下がります。

ベッドで食べる場合は、頭の後ろに枕やクッションを入れて、あごが軽く引ける角度を作ります。背上げの角度だけを気にして、頭の位置を見ていないことが多くあります。背を起こしても、頭が後ろに反っていれば意味がありません。訪問看護師や理学療法士に一度見てもらうと、その方に合った角度が分かります。

テーブルの高さと距離

テーブルが合っていないと、姿勢が崩れます。高すぎれば肩が上がり、腕が疲れ、あごが上がります。低すぎれば前かがみになり、腹部が圧迫されて食べる量が減ります。

目安は、座った状態でひじが軽く曲がり、前腕がテーブルに自然に乗る高さです。おへその高さから、みぞおちの少し下あたりが目安になります。テーブルの高さを変えられない場合は、椅子の座面をクッションで調整してください。

距離も大事です。体とテーブルのあいだが空きすぎると、手を伸ばすことになり、こぼれます。こぼすのが嫌で食べるのをやめる方がいるので、これは量に直結します。おなかがテーブルに軽く触れるくらいまで近づけてください。

車いすの場合は、アームレストがテーブルに当たって近づけないことがあります。アームレストが外せる車いす、あるいは高さを変えられるテーブルを使うと解決します。車いす用のテーブルを取り付ける方法もあります。福祉用具の相談窓口で確かめてください。

体が傾く方への支え方

片側に麻痺がある方、体幹の力が落ちている方は、座っているうちに体が傾いていきます。傾いた状態では、飲み込みが安全に行えません。

支え方の基本は、隙間を埋めることです。体と椅子の背もたれ、体と ひじ掛けのあいだにできる隙間に、クッションやタオルを丸めたものを詰めます。体を押して起こすのではなく、傾く先を埋めて支えるという考え方です。

背中全体を支えることも効きます。背もたれと背中のあいだが空いていると、体が後ろに倒れ、あごが上がります。腰の後ろにクッションを入れて、骨盤を立てると、上半身が自然に起きます。骨盤が後ろに倒れていると、何をしても上半身は起きません。

ひじを置ける場所を作ることも大事です。ひじが宙に浮いていると、腕の重みで体が引っ張られます。テーブルにひじが乗るようにするだけで、体が安定します。

姿勢の調整は、その方の体の状態によって答えが変わります。理学療法士、作業療法士、訪問看護師に一度見てもらい、その方に合った形を写真に撮っておくと、誰が介助しても同じ姿勢を作れます。家族と職員で姿勢がばらつくことが、事故のもとになります。

食事の環境そのものを整える

姿勢と並んで、食事の環境も飲み込みに影響します。集中できない環境では、食べることに意識が向かず、むせやすくなります。

まず、テレビを消すか、音量を下げてください。気が散ると、噛むことと飲み込むことの手順が乱れます。とくに認知の機能が落ちている方では、影響が大きく出ます。

次に、明るさです。手元が暗いと、何を食べているのかが分からず、食べる意欲が落ちます。高齢の方は、若い方より多くの明るさを必要とします。食卓の上を明るくするだけで、食べる量が増えることがあります。

そして、食器と食卓の色です。白い皿に白いごはんでは、輪郭が分かりにくくなります。皿と食べものの色に差をつけると、見分けやすくなります。柄の多いテーブルクロスも、食べものが見づらくなる原因になります。

音とにおいも関係します。厨房の音がうるさい、隣で強いにおいがする。こうした環境は、食欲を落とします。落ち着いて座れる場所を確保することが、姿勢の調整と同じくらい効きます。

姿勢を直しても むせるとき

姿勢を整えることは、むせを減らすうえで最初にやるべきことですが、それだけで解決しないこともあります。姿勢を直してもむせが続く場合は、次の段階に進んでください。

まず、食べものの形を見直します。水分でむせるのか、固形物でむせるのか、それとも両方か。水分でむせるなら、とろみをつけることで解決することがあります。付け方はとろみ食の付け方にまとめています。固形物でむせるなら、大きさやまとまりやすさを見直します。

次に、専門職による評価です。かかりつけ医に伝えれば、飲み込みの検査や、言語聴覚士による評価につないでもらえます。自己流で形を変えると、かえって危険になることがあります。たとえば、細かく刻んだだけの食事は、口の中でばらけて、むしろ誤嚥しやすくなる場合があります。

そして、体調と薬も確かめてください。眠気を起こす薬、口を乾かす薬は、飲み込みを悪くします。また、風邪をひいている、疲れている、といったときは一時的に飲み込みが悪くなります。

熱が出た、痰が増えた、食欲が落ちた。これらは誤嚥が起きているサインかもしれません。高齢の方では、はっきりむせないまま誤嚥していることがあります。様子を見ずに受診してください。

姿勢が崩れる原因を先に取り除く

正しい姿勢を教えても、10分後には崩れているということがよくあります。崩れる原因が残っているからです。原因を取り除かないかぎり、直しても直しても戻ります。

最も多いのは、椅子とテーブルの高さが合っていないことです。テーブルが高すぎると肩が上がり、低すぎると前かがみになります。肘を90度に曲げたときに、前腕が自然に載る高さが目安です。合わないなら、椅子の座面にクッションを敷く、テーブルの脚に高さ調整の部品を付ける、といった対処ができます。

次に、足が床についていないことです。足が浮いていると、体を支える土台が失われ、上半身が不安定になります。足台や踏み台を置くだけで、上半身の安定が変わります。数百円の踏み台で解決することが多くあります。

そして、麻痺や体の傾きがある場合です。放っておくと、必ず弱い側へ倒れていきます。クッション、丸めたタオル、ひじ掛けで支えてください。倒れてから直すのではなく、倒れないように先に支えておくのが正解です。

疲れも原因になります。食事の後半に崩れるなら、体力の問題です。途中で座り直す、休憩を挟む、食事の時間を短くして回数を増やす。姿勢を直すことだけでは解決しません。

食事形態を、その日の状態に合わせて選べます

配食のふれ愛 太子店では、普通食のほかに、やわらかく仕上げた小町食・きざみ・一口大・ムース食をご用意しています。同じ献立を形だけ変えてお届けできるため、ご家族と同じものを召し上がれます。どの形が合うか分からないときは、まず無料試食でお試しください。

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