夜中に咳が出る。実は胃から上がってきているのかもしれない
胃の内容物が食道へ逆流すると、胸やけ、げっぷ、のどの違和感、声のかすれ、就寝中の咳といった症状が出ます。高齢者に多いのには理由があります。
そして重要な点として、逆流したものを誤嚥すると肺炎になります。誤嚥性肺炎を繰り返す方の背景に、逆流が隠れていることがあります。
| 食品 | なぜ |
|---|---|
| 脂っこいもの(揚げ物、脂身、生クリーム) | 胃の滞在時間が長く、括約筋を緩める |
| チョコレート、ミント | 括約筋を緩める作用がある |
| コーヒー、濃い緑茶 | 胃酸の分泌を促す |
| 柑橘、トマト、酢の物 | 酸が刺激になる |
| 唐辛子など刺激物 | 粘膜を刺激する |
| 炭酸飲料 | 胃が膨らみ、逆流しやすくなる |
| アルコール | 括約筋を緩め、胃酸を増やす |
| 甘いもの全般 | 胃の運動を鈍らせる |
ただし、すべてを一律に禁止する必要はありません。何で症状が出るかは人によって違います。1〜2週間、食べたものと症状を記録して、自分の引き金を見つけてください。
就寝中の逆流には、姿勢が効きます。
「つかえる」「体重が減る」は、逆流以外の病気を疑う理由になります。自己判断で市販薬を続けず、消化器内科を受診してください。
逆流を減らすうえで、何を食べるかより効くのが、いつ、どれだけ、どう食べるかです。ここを組み直すと、薬を増やさずに楽になることがあります。
まず、1回の量を減らして回数を増やします。胃に入る量が多いほど、内側の圧が上がって逆流しやすくなります。1日3食を、3食プラス軽い間食2回に分けるだけで、1回あたりの量が減ります。高齢の方の場合、この分け方は栄養を取るうえでも都合がよくなります。一度にたくさん食べられない方でも、回数を増やせば1日の合計が確保できます。
次に、食べる速さです。急いで食べると空気を一緒に飲み込み、胃が張ります。一口ごとに箸を置く、汁ものを挟む、会話しながら食べる。こうした工夫で自然に遅くなります。
そして、食後すぐに横にならないことです。少なくとも2〜3時間は起きて過ごしてください。夕食が遅くなる方は、夕方に主食を食べて、夜は軽く済ませるという分け方に変えると解決します。「夕食を早める」が難しければ、「夕食を分ける」で代用できます。
食後に前かがみになる作業も避けてください。庭仕事、掃除、靴の脱ぎ履き。腹部が圧迫されると逆流します。食後1時間は、座って過ごすのが安全です。
食事を整えても良くならないとき、別のところに原因があることがあります。見落とされやすいものを挙げます。
1つめが体重です。おなかまわりに脂肪がつくと、腹部の圧が上がり、胃の内容物が押し上げられます。数kg落とすだけで症状が軽くなる方がいます。ただし、高齢の方の減量は筋肉まで落ちやすいため、自己流でやらず、主治医に相談してから始めてください。
2つめが服装です。ベルト、コルセット、補正下着、きつめのズボン。腹部を締めるものは、それだけで逆流を増やします。腰痛でコルセットを使っている方が、食後だけ緩めるようにしたら症状が減った、という例があります。
3つめが薬です。一部の薬は、胃と食道のあいだの締まりを緩める方向に働きます。血圧の薬、気管支の薬、骨の薬、精神科の薬などが関わることがあります。ただし、自分でやめないでください。お薬手帳を持って受診し、逆流の症状があることを伝えたうえで、医師に判断してもらいます。
4つめが姿勢です。背中が丸くなると、腹部が圧迫されます。高齢の方では姿勢の変化が進んでいることが多く、これが逆流の一因になります。食事のときに背もたれを使って上体を起こす、クッションで支える。こうした工夫で楽になることがあります。
そして、症状が長く続く場合や、飲み込みにくい、体重が落ちる、便が黒いといったときは、逆流だけの問題ではない可能性があります。様子を見ずに受診してください。
控えたほうがよい食品を並べられても、では何を食べればよいのかが分からなければ、食事そのものが細ります。置き換えの形を示します。
脂の多い料理を減らすなら、揚げるより煮る、焼く、蒸すに替えます。とんかつを豚のしゃぶしゃぶに、天ぷらを煮びたしに、から揚げを蒸し鶏に。同じ食材でも、調理法を変えるだけで胃にとどまる時間が短くなります。胃に長くとどまるほど、逆流の機会が増えます。
酸味の強いものが つらい方は、酢のものやかんきつ類を減らし、だしの旨味で味を作ります。トマトも刺激になることがあるため、生のトマトより加熱したものにすると楽な場合があります。香辛料は、こしょうやとうがらしを控えめにして、しょうが、ねぎ、しそ、みょうがなど香りで補います。
甘いものも影響します。チョコレート、洋菓子、生クリームは、脂と糖の両方を含むため負担が大きくなります。おやつを和菓子や果物に替えると、量を減らさずに負担が下がります。
飲みものでは、炭酸、コーヒー、濃い茶、酒が代表です。すべてやめる必要はありませんが、症状が強い時期は控えめにしてください。症状が落ち着いてから、少しずつ戻して自分の限度を確かめるという進め方であれば、食事の楽しみを保てます。
逆流の症状は、夜に強く出ることが多くあります。横になると、胃と食道の高さが同じになり、内容物が上がりやすくなるためです。夜の過ごし方を整えると、症状がまとまって減ることがあります。
まず、寝る3時間前には食べ終えてください。難しければ、夜遅い食事を軽くします。おかゆ、うどん、豆腐、白身魚など、消化に時間のかからないものにすると負担が減ります。
次に、上半身を少し高くして寝ます。枕を高くするだけでは首が曲がるだけで効果が出ません。肩から上を斜めに持ち上げる形にするのが正しいやり方です。ベッドなら、頭側の脚の下に本や板を入れて10〜15cmほど傾けます。布団なら、折りたたんだ座布団を肩の下から入れて傾斜を作ります。介護用ベッドを使っている方は、背上げの機能をわずかに上げた状態で寝ると楽になります。
寝る向きも関係します。左を下にして横向きに寝ると、胃の形の関係で逆流しにくくなるとされています。試してみて楽なほうを選んでください。
そして、夜間に強い胸やけで目が覚める、咳き込む、声がかすれる、といったことが続く場合は、放置しないでください。眠りが妨げられ続けると、日中の食欲と活動量まで落ちます。症状が続くときは受診して、薬を含めた対応を相談してください。
食べ方と姿勢を整え、薬も飲んでいるのに症状が続く場合は、別の要因を疑う段階です。
まず、噛む力と唾液の量です。唾液には、食道に上がってきた酸を洗い流す働きがあります。高齢の方は唾液が減りやすく、薬の影響でさらに減ることがあります。口が乾く方は、そのことを医師に伝えてください。口の乾きは、逆流の症状を長引かせる要因になります。
次に、便秘です。おなかが張った状態が続くと、腹部の圧が上がって逆流しやすくなります。便通を整えることで胸やけが軽くなる方がいます。
そして、症状の原因が逆流ではない可能性です。胸の症状は、心臓の病気でも出ます。締めつけられるような痛み、動いたときに強くなる痛み、冷や汗をともなうもの。これらは胸やけと思い込まず、すぐに受診してください。
飲み込みにくさが出てきた、体重が落ちてきた、便が黒い、吐いたものに血が混じる。こうした症状があるときも、様子を見てはいけません。逆流性食道炎の症状と重なる病気があります。市販薬でしのぎ続けると、見つかるのが遅れます。
症状の記録を取っておくと、受診のときに役立ちます。いつ、どんなときに、どれくらい続くか。食後か、夜間か、動いたときか。この3点だけでも、医師の判断が変わります。
高齢の方では、はっきりした症状が出ないまま逆流が起きていることがあります。この点を知っておいてください。
胸やけや酸っぱいものが上がる感覚を、感じにくくなっている方がいます。症状がないから問題がないとは限りません。とくに、認知の機能が落ちている方では、感じていても伝えられないことがあります。
周囲が気づけるしるしがあります。夜に咳き込む、朝に声がかすれている、食後に不機嫌になる、食事を嫌がるようになった、原因の分からない熱が繰り返す。これらは、逆流が背景にある可能性があります。
逆流したものが気管に入ると、肺炎になります。高齢の方の肺炎の背景に、夜間の逆流があることが少なくありません。食事中にむせていなくても、寝ているあいだに起きていることがあります。
思い当たることがあれば、医師に相談してください。食後の姿勢と寝るときの姿勢を整えるだけで、改善することがあります。寝る前の食事を控える、上半身を少し高くして寝る。手間のかからない対策から試せます。
自分で食べられない方、寝ている時間が長い方では、逆流の危険がさらに高くなります。介助する側が知っておくべき点があります。
まず、食後すぐに横にしないでください。食べ終わってから最低でも30分、できれば1時間は、上半身を起こした姿勢を保ってください。ベッドで食べた場合も、そのまま倒さないでください。介助の予定を組むときに、この時間をあらかじめ確保しておく必要があります。
次に、寝るときの姿勢です。上半身を10度から30度ほど高くすると、逆流が減ると言われています。枕を重ねるだけでは首が曲がるだけで効果がありません。ベッドの背を上げるか、上半身全体が傾くように支えてください。
そして、経管栄養を受けている方でも、逆流は起こります。注入の速さ、注入中と注入後の姿勢、1回の量。これらの条件で変わります。むせる、痰が増える、熱が出るといった変化があれば、看護師や医師に相談してください。
おむつ交換や体位の変更のタイミングも見直してください。食後すぐに体を大きく動かすと、逆流を誘います。食事の時間と、他のケアの時間をずらすだけで、事故が減ることがあります。1日の流れ全体で組み直す視点が要ります。
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