薬が多いことと、食べられないこと|配食のふれ愛 太子店 健康コラム

薬が食欲を奪う

複数の医療機関から薬をもらううちに、種類が増えていく。これをポリファーマシー(多剤服用)と呼びます。6種類以上で副作用と転倒が明らかに増えるという報告があります。

食事の面では、次のような形で現れます。

症状原因になりやすい薬
口が渇く抗ヒスタミン薬、一部の降圧薬、利尿薬、抗うつ薬、頻尿の薬、胃腸薬(抗コリン作用)
味が変わる、金属味がする一部の降圧薬、抗菌薬、抗がん剤、痛風の薬
吐き気、胃のむかつき鎮痛薬(NSAIDs)、鉄剤、抗菌薬、骨粗しょう症薬
眠気、ぼんやりする睡眠薬、安定剤、一部の抗アレルギー薬
便秘一部の鎮痛薬、鉄剤、抗コリン作用のある薬
飲み込みにくい一部の抗精神病薬、筋弛緩薬
食欲そのものが落ちる多数。特にジギタリス製剤は要注意

「年のせいで食べられない」と思っていたものが、薬の副作用だったという例は珍しくありません。

口の渇きは見逃されやすい

唾液が減ると、次のことが同時に起きます。

  • 食べ物が口の中でまとまらず、飲み込みにくい
  • 味を感じにくくなる(味の成分が唾液に溶けないと味蕾に届きません)
  • 虫歯・歯周病が増える
  • 入れ歯が合わなくなる、痛い
  • 会話がしにくくなる

対策としては、口腔ケアの保湿、こまめな水分、シュガーレスのガムやあめ、保湿ジェル、唾液腺のマッサージがあります。そのうえで、原因になっている薬を主治医と見直します。

減薬の相談のしかた

自己判断で薬をやめないでください。血圧、血糖、心臓の薬を勝手にやめると命に関わります。次の手順で相談します。

  1. お薬手帳を1冊にまとめる。すべての医療機関、市販薬、サプリメントを1冊に。これが出発点です
  2. 症状を記録する。「いつから」「どんな症状が」「どの薬が増えたあとに」
  3. かかりつけ医に相談する。「食欲がない。薬の影響はありますか」と具体的に
  4. かかりつけ薬局を1つに決める。薬剤師が全体を把握でき、重複や相互作用を見つけられます
  5. 薬剤師による訪問(居宅療養管理指導)を使う。介護保険・医療保険で、薬剤師が自宅に来て整理します

4番目は効果が大きく、費用もかかりません。薬局を1か所に集約するだけで、重複投与が見つかることがあります。

飲みにくさも相談できる

錠剤が大きい、数が多い、飲み込めない。これも相談の対象です。

  • 一包化:飲む時間ごとに1袋にまとめてもらう
  • 剤形の変更:口の中で溶ける錠剤(OD錠)、粉、ゼリー、貼り薬、シロップ
  • 回数をまとめる:1日3回を1回にできる薬もあります
  • 服薬ゼリーを使う:薬局で売っています。ただし薬によっては吸収に影響するため確認を

粉砕(つぶす)や脱カプセルは、自己判断でしないでください。効き方が変わったり、効果がなくなったりする薬があります。必ず薬剤師に相談してください。

飲み忘れ・飲みすぎを防ぐ

  • お薬カレンダー、曜日別のケース
  • 一包化した袋に日付を書く
  • 食卓に置く(飲むタイミングと場所を結びつける)
  • 家族や訪問介護の声かけ
  • 服薬支援ロボット、アラーム

飲めていないことに気づかず「効かないから」と薬が増える、という悪循環があります。残薬があれば、隠さず医師と薬剤師に見せてください。

食欲不振全般は高齢者の食欲不振、味覚の変化は亜鉛と味覚障害をご覧ください。

飲んでいるものをすべて書き出す

薬の見直しは、いま何を飲んでいるかを正確に把握することから始まります。ところが、これができていない方が多くいます。複数の医療機関にかかっていると、それぞれが出した薬の全体像を誰も見ていない、という状態が起こります。

書き出すのは、処方された薬だけではありません。市販薬、サプリメント、健康食品、漢方薬、目薬、貼り薬、塗り薬、そして人からもらった薬。「薬ではない」と思っているものが、実は影響していることがあります。青汁、にんにくの製剤、ハーブ、プロテイン。すべて書き出してください。

書き出したら、実際に飲んでいるかどうかも記録します。処方はされているが飲んでいない、指示と違う時間に飲んでいる、半分に割って飲んでいる。正直に書くことが大事です。飲めていない事実が分かれば、医師はそこから調整できます。飲んでいるふりをすると、効かない理由が分からず、量が増やされていきます。

この一覧は、お薬手帳を1冊にまとめることでも作れます。複数の医療機関と薬局を使っている方は、手帳を分けずに1冊にしてください。薬剤師がすべてを見られる状態にすることが、重複と飲み合わせを防ぐ最も確実な方法です。

食欲を落とす薬にどんなものがあるか

薬が食欲を落とす仕組みは、いくつかあります。直接的に吐き気を起こすもの、口を乾かすもの、味を変えるもの、胃腸の動きを変えるもの、眠気やだるさを起こすもの。

口の乾きは、とくに見落とされます。唾液が減ると、食べものが飲み込みにくくなり、味も分かりにくくなります。「食欲がない」という訴えの背景が、実は口の乾きだったという例は珍しくありません。口が乾く自覚がある方は、そのことを医師に伝えてください。

味が変わることもあります。金属のような味がする、何を食べても味がしない、苦く感じる。これらは薬の影響として知られており、また亜鉛の不足でも起こります。味が分からなくなると、食べる意欲そのものが落ちます。

そして、薬の数が多いこと自体も食欲に影響します。食前と食後に何錠も飲むことで、胃が薬でいっぱいになり、食べる余地が減ります。薬を飲むことが1日の中心になってしまい、食事が二の次になるという状態も起こります。数を減らせないか相談する価値があります。

減薬をどう切り出すか

薬を減らしたいと思っても、どう伝えればよいか分からない方が多くいます。医師の判断に口を出すようで気が引ける、という声もよく聞きます。しかし、減薬の相談は正当な相談であり、遠慮する必要はありません。

伝え方の例を挙げます。「薬を飲んでから食欲が落ちた気がします」「口が乾いて食べにくいです」「薬が多くて飲みきれません」「この薬は何のために飲んでいるのか、もう一度教えてください」。症状として伝えるのが、最も受け止められやすい言い方です。「減らしてください」と言うより、困っていることを具体的に言うほうが、話が進みます。

そのうえで、記録を見せてください。いつから食欲が落ちたか、いつから薬が変わったか。時期が重なっていることが分かれば、医師も判断しやすくなります。

薬剤師に相談する道もあります。かかりつけの薬局を1つに決めておくと、全体を見て助言してもらえます。医師に伝えにくいことを、薬剤師から伝えてもらえる場合もあります。薬局は、薬を受け取るだけの場所ではありません。

ただし、自分で勝手にやめないでください。急にやめると悪化する薬があります。減らすなら、医師の管理のもとで、順番と速さを決めて行う必要があります。

飲みにくさも相談できる

薬が飲めない理由が、飲み込みにくさにあることもあります。この場合、薬の種類ではなく、形を変えることで解決できます。

相談できる内容を挙げます。粉薬が飲みにくい、錠剤が大きくて飲めない、口の中に張りつく、一度に何錠も飲めない、包装が開けられない、目薬がさせない。これらは工夫や変更で解決できることが多く、我慢する必要はありません。

実際の対応としては、錠剤を口の中で溶けるタイプに変える、粉薬をゼリーに混ぜる、貼り薬に変える、1日3回を1回にまとめられる薬に変える、一包化して飲む回数ごとにまとめる、といった方法があります。一包化は、飲み忘れと飲み間違いを大きく減らします。薬局に頼めば対応してもらえます。

服薬を助ける道具もあります。服薬用のゼリー、お薬カレンダー、曜日ごとのケース、薬を押し出す道具。薬を飲むことが負担になっているなら、その負担を減らす手立てがあります。

そして、飲み込みにくさが薬だけでなく食事にも出ているなら、それは別の問題として評価が必要です。むせる、時間がかかる、食後に痰が増える。薬が飲みにくいことが、飲み込みの機能が落ちている最初のサインである場合があります。医師に伝えてください。

飲み忘れと飲みすぎを防ぐ

薬の数が増えると、飲み忘れと飲みすぎの両方が起きやすくなります。どちらも危険で、とくに高齢の方では、飲んだかどうかを忘れて二重に飲んでしまうことがあります。

防ぐ方法として、まず一包化があります。朝・昼・夕・寝る前ごとに1袋にまとめてもらえば、何を飲むかを考えずに済みます。袋に日付を印刷してもらうこともできます。これだけで、飲み忘れと飲み間違いの大半が防げます。

次に、お薬カレンダーです。壁に掛けて、曜日と時間ごとに薬を入れておきます。飲んだかどうかが目で見て分かるので、二重に飲むことを防げます。家族が離れて暮らしている場合でも、訪問したときに減り方を見れば、飲めているかが分かります。

そして、飲む時間を生活の中に組み込んでください。歯を磨いたあと、朝食のあと、寝る前に布団に入る前。「時間で覚える」より「動作とセットで覚える」ほうが、忘れにくくなります。

それでも難しい場合は、訪問薬剤師や訪問看護の支援があります。薬の管理を専門職に手伝ってもらう仕組みで、介護保険や医療保険で使えることがあります。ケアマネジャーに相談してください。家族が毎日確認しに行くのが難しいなら、外の手を借りるほうが確実です。

薬を減らすことが目的ではない

最後に、方向を間違えないでください。薬を減らすこと自体が目的ではありません。目的は、その方が元気に過ごせることです。

薬の数が多いこと自体が悪いわけではなく、必要な薬もあります。減らした結果、もとの病気が悪くなれば、何の意味もありません。血圧の薬、心臓の薬、糖尿病の薬、血を固まりにくくする薬。これらを自己判断でやめると、重い結果につながることがあります。

見直すべきなのは、始めた理由がはっきりしない薬、症状が治まったのに続いている薬、同じ働きの薬が重なっているもの、そして副作用のほうが大きくなっているものです。これを判断できるのは医師と薬剤師だけです。

そして、見直しは1回で終わるものではありません。体の状態は変わっていきます。年に1度は、飲んでいるものすべてを持って、いまも必要かどうかを確かめる機会を作ってください。複数の医療機関にかかっているなら、どこか1つを窓口として決めておくと、全体を見てもらいやすくなります。

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味蕾の再生や免疫にかかわるミネラル。不足すると味覚が鈍ります。

低栄養

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嚥下障害

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