気分の落ち込みと食欲|配食のふれ愛 太子店 健康コラム

高齢者のうつは見つかりにくい

高齢者のうつは、気分の落ち込みとして表れるとは限りません。次のような形で出ることがあります。

  • 食欲がない、体重が減る
  • 眠れない、早朝に目が覚める
  • 体の不調を訴える(頭痛、めまい、しびれ、胃の不快感)
  • 物忘れが増える(認知症と間違われやすい)
  • 意欲が出ない、外に出なくなった
  • 「迷惑をかけている」「早く死にたい」と言う

うつは治療で改善します。認知症と誤解されたまま放置されるのは大きな損失です。物忘れと食欲低下が同時に出たときは、うつの可能性も考えてください。

きっかけになりやすい出来事

  • 配偶者や親しい人との死別
  • 入院、手術、病気の宣告
  • 引っ越し、施設への入所
  • 免許の返納、退職
  • 体が動かなくなった(骨折、脳卒中)
  • 一人暮らしになった

これらのあとに食欲が落ちたなら、身体の病気を調べると同時に、心の状態も見てください。

まず身体の病気を除く

食欲不振と体重減少には、身体の病気が隠れていることもあります。「うつだろう」と決めつける前に、次を確かめます。

体重が半年で5%以上減っているなら、必ず受診してください。

食べやすくする工夫

気分が落ちているときに「しっかり食べなさい」と言っても届きません。次のような形で環境を整えます。

  • 量を減らして出す。山盛りの皿はそれだけで負担になります。小さい器に少しずつ
  • 好きだったものを出す。栄養価より、口に入ることが優先
  • 一緒に食べる。誰かと食べると摂取量が増えることが分かっています
  • 決まった時間に。生活のリズムが心の状態を支えます
  • 朝、日光を浴びる。体内時計が整い、睡眠にも効きます
  • 作らせない。「作るのがおっくう」が食べない理由なら、そこを外す

家族の関わり方

言わないほうがよい代わりに
「がんばって」「元気を出して」「つらいね」「無理しなくていい」
「気の持ちようだ」「病気だから治療で良くなるよ」
「もっと食べないと」「食べられるものだけでいいよ」
「外に出れば気が晴れる」「一緒に少し歩いてみる?」

励ましは、本人にとって「できていない自分」を突きつけられる言葉になることがあります。否定せず、そばにいることのほうが効きます。

相談先

  • かかりつけ医:まずここ。身体の検査と、必要なら専門医の紹介
  • 精神科・心療内科・老年精神科
  • 地域包括支援センター:介護と生活の両面から相談できます
  • 市区町村の保健センター

「死にたい」と口にしたときは、その場で受診・相談につないでください。高齢者の自殺は、うつが背景にあることが多く、また実行に至りやすいことが知られています。

食欲不振全般の対応は高齢者の食欲不振、孤立の予防は孤立を防ぐをご覧ください。

食べられない理由を切り分ける

食欲がないという訴えの背景には、いくつもの原因が並んでいます。心の問題だと決めつける前に、体の側の原因を一つずつ確かめてください。順番を間違えると、治せるものを見落とします。

まず、口の中です。入れ歯が合わない、歯が痛い、口内炎がある、口が乾いている。噛めない状態が続くと、食べること自体が苦痛になり、食欲がないように見えます。歯科で解決することが多いので、最初に確かめてください。

次に、薬です。高齢の方は複数の薬を飲んでおり、その中に食欲を落とすもの、口を乾かすもの、吐き気を起こすものが含まれていることがあります。食欲が落ちた時期と、薬が変わった時期を並べてみてください。重なっているなら、医師に相談する価値があります。

そして、体の病気です。がん、甲状腺の病気、心不全、腎臓の病気、感染症、便秘。いずれも食欲の低下として現れます。体重が落ちている場合は、心の問題と決めつける前に、必ず検査を受けてください。体の原因が見つかれば、それを治すことで食欲が戻ります。

これらを確かめたうえで、なお原因が見当たらず、気分の落ち込みや興味の喪失があるなら、そこで初めて心の側を考えます。この順番が大事です。

食欲がないときに食べやすいもの

食欲がないときに「しっかり食べなさい」と言っても、食べられません。量を求めるのではなく、少しでも入るものを探すほうが現実的です。

食べやすいものには傾向があります。冷たいもの、のどごしのよいもの、においの少ないもの、酸味のあるもの、口の中でまとまるもの。具体的には、そうめん、冷やしうどん、茶わん蒸し、豆腐、ヨーグルト、プリン、アイスクリーム、果物、ゼリー、おにぎり。温かい料理のにおいが つらいという方が多いので、冷ましてから出すだけで食べられることがあります。

盛り付けも効きます。大きな皿に山盛りにされると、それだけで食べる気がなくなります。小さな器に少しずつ、いろいろな種類を並べるほうが、結果として量が入ります。食べきれたという感覚が、次の食事につながります。

そして、量より回数です。1回に食べられないなら、1日5回でも6回でも構いません。決まった時間にこだわらず、食べられるときに食べる形にしてください。「食事の時間だから食べる」ではなく「食べられるときに口に入れる」という考え方に切り替えると、合計は増えます。

それでも足りないときは、栄養補助食品を使ってください。少量で栄養が入るように作られています。味の種類が多いので、口に合うものを探せます。

家族の関わり方で結果が変わる

食べない方を前にすると、家族は焦ります。心配のあまり、食べるよう強く促してしまうことがありますが、これは多くの場合、逆の結果を生みます。

食べることを責められると、食卓そのものが苦痛になります。すると、家族と食べる時間を避けるようになり、さらに食べなくなります。「食べなさい」と言うことが、食べない理由を増やしてしまうという構図です。

代わりにできることを挙げます。一緒に食べること。誰かと食べるほうが、一人で食べるより量が入ります。会話をしながら、ゆっくり時間を取ってください。次に、食べたものを責めないこと。少ししか食べられなくても、食べられたところを認めてください。そして、好きだったものを聞いて出すこと。栄養の計算より、食べたいと思えるかどうかのほうが、この段階では優先されます。

作る側の負担にも目を向けてください。工夫して作ったものが残されるのは、こたえます。この状態が続くと、作る側が疲れ、食卓の空気が重くなります。買ってきたもの、配食、レトルトを使うことに、後ろめたさを感じる必要はありません。負担を減らして、食事の時間を穏やかに保つほうが、結果として食べる量につながります。

どこに相談すればよいか

気分の落ち込みと食欲の低下が続いているとき、どこに相談すればよいか分からないという方が多くいます。相談先はいくつもあります。

まず、かかりつけ医です。体の病気を確かめたうえで、必要なら専門の医療機関を紹介してもらえます。いきなり精神科に行くことに抵抗がある方でも、かかりつけ医からなら相談しやすくなります。体重の記録と、食べた量の記録を持っていってください。

介護保険を使っているなら、ケアマネジャーです。食事の困りごとを伝えれば、使えるサービスを探してくれます。訪問介護での調理、配食、デイサービスでの食事。食べる場面を増やすことが、食欲を戻すきっかけになることがあります。

地域包括支援センターも窓口になります。介護保険の認定を受けていなくても相談できます。市区町村の保健センターや、精神保健福祉センターでも、家族からの相談を受け付けています。

そして、家族だけで抱え込まないでください。食べない状態が続くと、体力が落ち、動けなくなり、さらに気分が落ちるという循環に入ります。早い段階で外の目を入れるほうが、回復も早くなります。相談することは、家族が力不足だということではありません。この状態は、家族の努力だけで変えられるものではないからです。

生活のリズムから立て直す

食欲が落ちているとき、食事だけを変えようとしてもうまくいかないことがあります。食欲は、1日の過ごし方全体と結びついているためです。生活のリズムから立て直すほうが、結果として食べる量が戻ります。

まず、朝に光を浴びることです。カーテンを開けて、窓辺で過ごす。それだけで体内の時計が整い、夜の眠りが良くなります。夜に眠れていないと、日中の食欲は戻りません。散歩ができるなら、朝の時間に出るのが理想です。

次に、日中に体を動かすことです。動かないでいると、おなかが空きません。買いものに歩いて行く、家事をする、体操をする、庭に出る。体を使った分だけ、食べたいという感覚が戻ってきます。疲れて食べられないほど動く必要はありません。少し動くだけで違います。

そして、人と会うことです。一人で食べる食事は、量が入りません。デイサービス、地域の集まり、家族との食事。誰かと食べる機会を週に何回か作るだけで、食べる量が変わることがあります。食欲を戻す手立てとして、これは軽く見られがちですが、実際には大きく効きます。

これらは、本人だけでは始められないことが多くあります。気分が落ちているときは、外に出る気力そのものが湧きません。家族や支援者が誘い出すところから始まります。無理に連れ出すのではなく、短い時間から、負担の少ないところから。

長引くときは治療の対象になる

気分の落ち込みと食欲の低下が数週間以上続いているなら、それは性格や気の持ちようの問題ではなく、治療の対象になる状態です。ここを見誤ると、時間だけが過ぎます。

受診の目安を挙げます。2週間以上、気分が落ち込んでいる。今まで楽しめたことに興味がなくなった。眠れない、または眠りすぎる。食欲がない、体重が減った。何をするにもおっくうで、動けない。自分を責める考えが続く。死にたいという気持ちが出てくる。最後の項目があれば、その時点で急いで相談してください。

高齢の方の場合、気分の落ち込みを訴えず、体の不調として現れることがあります。だるい、食べられない、眠れない、あちこちが痛い。検査をしても異常が見つからない。この形が続くときは、心の側の可能性を医師に伝えてください。本人は「気分の問題ではない」と言うことが多いのですが、家族が気づいて伝えることに意味があります。

治療を受けることで、食欲が戻ることがあります。栄養の工夫だけを続けても、背景にあるものが変わらなければ限界があります。食事の対応と、治療は、どちらか一方ではなく両方が要ります。

そして、家族自身も疲れます。食べてくれない相手を前にする日々は、想像以上にこたえます。介護する側の相談窓口もあるので、抱え込まずに使ってください。地域包括支援センター、ケアマネジャー、保健センター。支える側が倒れないことも、この状況では大事な要素です。

制限のある食事を、毎日ひとりで組み立てない

配食のふれ愛 太子店では、カロリー調整食・たんぱく調整食をはじめ、栄養バランスに配慮した食事を管理栄養士の献立でお届けしています。主治医から受けている指示をお伝えいただければ、どのコースが合うかを一緒に確かめます。まずは無料試食からお試しください。

メニュー詳細を見る 無料試食を申し込む

関連用語

低栄養

エネルギーとたんぱく質が不足した状態。高齢者の要介護化の入口になります。

亜鉛

味蕾の再生や免疫にかかわるミネラル。不足すると味覚が鈍ります。

認知症

記憶や判断の力が低下し生活に支障が出る状態。食事の場面にも影響が出ます。

関連コラム

高齢者が食事を食べない

高齢者の食欲不振の原因(味覚変化・薬の副作用・うつ・口腔トラブル)と、食欲を取り戻す7つの改善策を管理栄養士が解説します。

孤立を防ぐという見守り

社会的孤立が高齢者の健康に及ぼす影響と、食事を通じたつながりのつくり方を解説します。共食の効果、通いの場、配食の会話の役割を整理します。

高齢者が気をつけたい低栄養とその対策

高齢者の低栄養の定義・基準、BMIやアルブミン値の目安、MNA-SFスクリーニング、予防と改善のための食事戦略を管理栄養士が解説します。

葉酸とビタミンB12

高齢者で不足しやすい葉酸とビタミンB12について、鉄欠乏性貧血との違い、胃の萎縮による吸収低下、認知機能との関係を解説します。

眠れないときの食事

高齢者の不眠と食事の関係を整理します。カフェイン・アルコール・夕食の時間の影響、朝食が睡眠に効く理由を解説します。

介護のことをもっと詳しく

介護保険や事業所探し、福祉用具の選び方は、同じ株式会社京谷商会が運営する情報サイトにまとめています。

介護している側が、うつになるとき

介護の窓口(kaigoinfo.com)の記事。介護者自身の心の状態を扱っています。

地域包括支援センターとは

介護の窓口の記事。高齢者のことなら何でも最初に相談できる窓口です。

認知症かもしれないと思ったら

介護の窓口の記事。物忘れの相談先を整理しています。