薬が効きにくい時間帯がある。食事の時間がそれを作っていることがある
パーキンソン病の治療で使われるレボドパ(L-ドパ)は、たんぱく質を分解してできるアミノ酸と同じ経路で腸から吸収され、脳へ運ばれます。そのため、たんぱく質の多い食事と同時に飲むと、薬の効きが落ちることがあります。
対応は次のとおりです。
ただし、これはすべての方に必要な調整ではありません。薬の効きにムラがある(ウェアリング・オフ)方に検討されるものです。自己判断でたんぱく質を減らすとサルコペニアが進みます。必ず主治医に相談してください。
便秘はパーキンソン病の非運動症状のひとつで、運動症状より何年も前から出ていることがあります。薬の副作用も重なります。
便秘が続くと薬の吸収も悪くなります。便秘対策もご覧ください。
病気が進むと、飲み込みの動きが遅くなり、むせが増えます。誤嚥性肺炎はパーキンソン病の方の大きな危険です。
薬を飲むこと自体が難しくなることもあります。錠剤が飲みにくい場合は、口腔内崩壊錠や貼り薬など別の形があります。とろみ剤で薬を包む方法は、吸収に影響する場合があるため主治医に確認してください。
手の震え、動作の遅さ、すくみで、食事の動作そのものが難しくなります。
パーキンソン病では、震えによるエネルギー消費、食事量の減少、飲み込みの問題が重なって体重が減りやすくなります。
週1回の体重測定を習慣にし、減っているなら分食と補食で補ってください。管理栄養士の関わりが必要なら、ケアマネジャーに相談できます。
薬の効きが食事のたんぱく質に影響される方の場合、たんぱく質を1日のどこに置くかを組み替える方法があります。ただし、これはすべての方に必要なわけではありません。薬の効きにむらがある方だけが、主治医の指示のもとで行うものです。自己判断で始めると、たんぱく質が足りなくなります。
組み立て方は、日中のたんぱく質を控えめにして、夕食以降にまとめる形です。朝と昼は、ごはん、パン、いも、野菜、果物を中心にして、肉・魚・卵・乳製品・大豆製品を夕食に集めます。日中の活動時間に薬を効かせて、動きにくくなっても支障の少ない夜にたんぱく質を回すという考え方です。
ここで問題になるのが、1日に必要なたんぱく質を夕食1回で取れるかという点です。体重50kgの方なら1日50〜60gが目安で、これを夕食に集中させるのは現実的ではありません。夕食と、その後の間食に分ける形になります。夕食で30g、就寝前に牛乳や栄養補助食品で10g、といった配分です。
この方法を取ると、朝食と昼食が炭水化物に偏ります。エネルギーが足りなくなりやすいので、いも類、果物、油を使った料理でエネルギーを確保してください。たんぱく質を減らした結果、食事全体が細くなるのが最も避けたい形です。
薬を飲む時間との関係も確かめてください。多くの場合、食前30分から1時間前に飲むよう指示されます。指示があいまいなままだと、効き方が安定しません。受診のときに、飲む時間と食事の時間の関係を具体的に聞いておいてください。
便秘は、この病気ではよく見られる症状で、しかも薬の吸収にも影響します。腸の動きが遅いと、飲んだ薬が届くまでに時間がかかり、効きにむらが出ます。便秘の対策は、消化器の問題であると同時に、薬をきちんと効かせるための対策でもあります。
取り組む順番は、水分、食物繊維、運動、そして薬です。水分は1日1,200〜1,500mLを目安に、日中に分けて取ります。飲み込みにくさがある方は、とろみをつけて取ってください。むせるのが怖くて水分を控えると、便秘が悪化します。
食物繊維は、水に溶けるものと溶けないものを両方取ります。溶けるものは、海藻、こんにゃく、果物、大麦。溶けないものは、野菜、きのこ、豆、いも。溶けないものだけを増やすと、かえって詰まった感じが強くなることがあります。両方を組み合わせてください。
発酵食品も役立ちます。ヨーグルト、納豆、みそ、漬物。毎日続けることに意味があるので、好みに合うものを見つけてください。
運動は、歩くこと、体をひねること、おなかをさすることが基本です。動きにくい時間帯を避けて、薬が効いている時間に体を動かしてください。
それでも出ないときは、薬に頼って構いません。市販の下剤を長く使い続けるより、主治医に相談して合うものを処方してもらうほうが安全です。便秘を我慢し続けると、食欲が落ち、食事量が減り、さらに便秘が進むという悪い循環に入ります。
手が震える、動きが遅い、姿勢が保てない。こうした状態で食事をすると、時間がかかり、こぼれ、疲れます。その結果、食べる量が落ちます。食事の内容を工夫する前に、環境を整えるほうが効くことがあります。
まず、姿勢です。足の裏が床につく高さの椅子に座り、背もたれとひじ掛けで体を支えます。テーブルの高さは、ひじが軽く曲がる位置です。体が安定していないと、手も口も動きません。クッションやタオルで体の横を支えると、楽になることがあります。
次に、道具です。持ち手が太いスプーンや箸、皿の縁が立ち上がった食器、滑り止めのマット、両手で持てるコップ。これらは介護用品として手に入ります。道具を変えるだけで、自分で食べられる時間が延びます。自分で食べられることは、食欲そのものに関わります。
そして、食事の内容も動作に合わせます。すくいやすい形にする、まとまりやすくとろみをつける、一口大に切っておく、汁を別の器にする。こぼれるのが怖くて食べるのをやめる、という流れを防ぐことが目的です。
時間にも余裕を持ってください。急がせると誤嚥の危険が上がります。薬が効いている時間帯に食事を合わせられるなら、そのほうが安全に食べられます。飲み込みに不安があるときは、言語聴覚士や医師に評価してもらってください。とろみのつけ方はとろみ食の付け方を参照してください。
この病気では、体重が減りやすいことが知られています。原因は一つではありません。動作に体力を使うこと、飲み込みにくさ、食べるのに時間がかかること、におい や味の感じ方が変わること、便秘や吐き気、そして薬の影響。いくつもの要因が重なるため、原因を一つに絞ろうとしても答えが出ません。
やるべきことは、原因探しより先に、まず入る量を増やすことです。1回に食べられる量が減っているなら、回数を増やします。3食に加えて、午前と午後と就寝前に軽く食べる形にすれば、1日の合計が確保できます。間食を「おやつ」ではなく「4回目、5回目の食事」と位置づけてください。チーズ、ヨーグルト、豆乳、バナナ、カステラ、栄養補助食品。手を伸ばせば食べられるものを常備しておくのがこつです。
次に、1口あたりのエネルギーを上げます。同じ量を食べても、内容によって入るエネルギーが変わります。ごはんに油を混ぜる、汁ものにバターを落とす、和えものにマヨネーズやごまを使う、牛乳を濃いものにする。量を増やせないなら、質を濃くするしかありません。
そして、体重を毎週量って記録してください。落ちているかどうかは、感覚では分かりません。半年で体重の5%が落ちたら、栄養の相談が必要な段階です。50kgの方なら2.5kgです。この段階で主治医に伝えれば、栄養指導や補助食品の処方といった手立てが取れます。落ちきってからでは、戻すのに時間がかかります。
飲み込みにくさは、進行とともに出てくることがあります。しかし、はっきりむせるようになるまで気づかれないことが多く、その時点ではすでに進んでいます。早めに気づくための目印を挙げます。
食事に時間がかかるようになった。食べたあとに声がかすれる。食後に痰が増える。食べものが口に残る。水分でむせる。錠剤が飲みにくい。食事の途中で疲れる。好んで食べるものがやわらかいものに偏ってきた。これらは、はっきりむせる前に現れる変化です。とくに、水分でむせるようになるのは早い段階のサインです。
気づいたら、放置せずに評価を受けてください。かかりつけ医に伝えれば、専門の検査や、言語聴覚士による評価につないでもらえます。評価を受けると、どの形なら安全に食べられるかが分かります。やみくもにきざみ食にすると、かえって危険になる場合があるため、自己流で形を変えないでください。
そして、熱が出たとき、痰が増えたとき、食欲が落ちたときは、誤嚥が起きている可能性を考えてください。高齢の方の場合、はっきりした症状が出ないまま肺炎になることがあります。「風邪だろう」で様子を見ずに受診してください。食事の形と姿勢を見直す機会にもなります。
この病気では、症状に時間帯の波があります。薬が効いている時間は動けるのに、切れると急に動けなくなる。この差が大きいため、周囲から「やる気の問題ではないか」と誤解されることがあります。動けないのは意思の問題ではありません。ここを理解しているかどうかで、支え方が変わります。
食事の時間を、薬が効いている時間帯に合わせられるなら、そのほうが安全に食べられます。決まった時間に食べることにこだわるより、動ける時間に食べるほうが、量も入り、誤嚥の危険も下がります。施設や配食を使う場合は、この事情を伝えてください。時間をずらせるかどうかを相談する価値があります。
食事の介助では、急がせないことが最も大事です。時間がかかるのは症状によるもので、待つことが支援になります。声をかけるなら、次の一口を促すのではなく、飲み込めたかどうかを確かめる声かけにしてください。口の中に残ったまま次を入れると、詰まる危険があります。
そして、自分で食べられる部分は本人にやってもらってください。介助してしまうほうが早く終わりますが、自分で食べる機会が減ると、その動作ができなくなっていきます。道具を工夫して、自分で食べられる期間を延ばすほうが、長い目で見て本人のためになります。滑り止め、持ち手の太いスプーン、縁の立った皿。介護用品店や福祉用具の相談窓口で見つかります。
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