食器と自助具の選び方|配食のふれ愛 太子店 健康コラム

道具で解決できることは多い

手が震える、握力が落ちた、片手しか使えない。こうした状態で「食べさせてもらう」に移る前に、道具を替えるだけで自分で食べられることがあります。

自分で食べることには、摂取量が増える、意欲が保たれる、上肢の運動になる、という利点があります。介助を減らせれば介護する側の負担も減ります。

目的別に選ぶ

困りごと道具選ぶときの目安
器が滑る滑り止めマット、吸盤付き食器洗いやすい素材。丸めて収納できるもの
すくえない内側にカーブのある皿、縁が立ち上がった皿片手ですくって最後まで取れる形
握れない柄の太いスプーン、スポンジグリップ実際に握って確かめる。太すぎても持てない
手首が返らない曲がるスプーン(角度調整式)左右で角度が違うので利き手を確認
手が震える重みのあるスプーン、両手で持つコップ重すぎると疲れます
箸が使いにくいばね付き箸、ピンセット型の箸スプーンに切り替える判断も必要
あごが上がる飲み口が斜めにカットされたコップ最後まであごを上げずに飲めます
こぼれるふた付きコップ、シリコンのエプロンエプロンは受け皿があるものが実用的
熱いものが冷める保温食器、二重構造の皿食事に時間がかかる方に

選ぶときの3つの目

  1. 本人が持って試す。カタログの写真では分かりません。介護用品店で握らせてもらう、レンタルで試す
  2. 洗いやすいか。毎日洗うものです。溝が多い、分解が必要、食洗機に入らない、は続きません
  3. 見た目が「介護用品」すぎないか。本人が使いたくない道具は使われません。木の器、普通に見えるマグなど、日常の食器に見えるものを選びます

3番目は軽視されがちですが、実際には最も長続きを左右します。プラスチックの子ども用に見える食器を拒む方は多くいます。

介護保険との関係

食器や自助具の多くは、介護保険の福祉用具の対象外です。全額自己負担になります。

ただし、次のような支援がある場合があります。

  • 市区町村の日常生活用具給付事業:障害者手帳をお持ちの方が対象になることがあります
  • 作業療法士による助言:訪問リハビリ・通所リハビリのなかで、その方に合う道具を選んでもらえます
  • 介護用品店の試用:購入前に試せる店があります

福祉用具として保険が使えるものと、実費で買うものの線引きは、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員に確かめてください。福祉用具の話は、下の「介護のことをもっと詳しく」からご覧いただけます。

容器も道具のうち

配食の容器も、食べやすさに関わります。配食のふれ愛 太子店では、仕切りのある容器でお届けしており、そのまま召し上がることも、ご家庭の食器に移していただくこともできます。

器に移したほうが食が進む方もいます。「弁当のまま」が必ずしも正解ではありません。ご家族が用意できるときは、温かいうちに器に移してみてください。

スプーンは大きさで決まる

食事の道具を選ぶとき、多くの方が持ち手ばかりを気にします。しかし、実際に飲み込みやすさを左右するのは、口に入る部分の大きさです。ここを間違えると、他の工夫がすべて無駄になります。

基本は、その方の口の幅の3分の2以下です。大きすぎるスプーンは、一度に入る量が多くなり、口の中でまとめきれずに、噛まずに飲み込むことになります。これが誤嚥につながります。カレー用の大きなスプーンを使っている家庭は少なくありませんが、飲み込みに不安がある方には向きません。

深さも重要です。深いスプーンは、口の中で全部を出しきれず、残ったまま引き抜くことになります。浅くて平たい形のほうが、唇でこそげ取りやすく、口の中に残りません。介護用として売られているスプーンの多くが浅い形をしているのは、この理由です。

そして、素材です。金属のスプーンは、熱いものを載せると熱が伝わり、口の中を傷めます。感覚が鈍っている方は、熱さに気づくのが遅れます。樹脂やシリコンのスプーンなら、この心配がありません。また、噛みしめる癖がある方には、歯を傷めないシリコン製が向いています。

持ち手は握り方を見てから選ぶ

持ち手を選ぶには、まずその方がどう握っているかを見てください。握り方によって、必要なものが変わります。

指先でつまむように持てるなら、通常の太さで足ります。握りこむように持っているなら、持ち手が太いものに替えると安定します。市販の太いスプーンのほか、既存のスプーンにスポンジやグリップを巻きつけて太くする方法もあります。数百円で試せます。

手首が回らない、肩が上がらないという方には、首の部分が曲がったスプーンがあります。手首をひねらなくても、水平のまま口まで運べます。右手用と左手用があるので、使う側を確かめて買ってください。自分で角度を曲げられるタイプもあります。

握力がほとんどない方には、手に固定するバンド付きのものがあります。握れなくても、手のひらに固定してしまえば、腕の動きだけで食べられます。「握れないから自分では食べられない」と諦める前に、この選択肢を確かめてください。

手が震える方には、重みのある柄のものが向きます。軽い道具は、震えがそのまま先端に出ますが、重さがあると震えが抑えられます。重すぎると疲れるので、実際に持って選んでください。

皿とコップの選び方

道具は、スプーンだけではありません。皿とコップの選び方で、こぼす量が大きく変わります。

皿は、縁が内側に立ち上がった形を選んでください。平らな皿は、すくうときに食べものが外へ逃げます。縁に押し当ててすくえる形なら、最後の一口まで自分で食べられます。既存の皿に取り付ける、着脱式の縁も売られています。

底が広く、重さのある皿を選んでください。軽い皿は、すくうたびに動きます。裏に滑り止めが付いた皿、または滑り止めマットを併用してください。これだけで、片手でも食べられるようになる方がいます。

コップは、あごが上がらない形が重要です。普通のコップで最後まで飲もうとすると、頭を後ろに倒すことになり、この姿勢は飲み込みにとって最も危険です。鼻の当たる部分を切り取ったコップなら、あごを引いたまま飲みきれます。

持ち手が2つ付いたコップ、ふた付きで飲み口の付いたコップ、傾けなくても吸える形。その方が握れる形、こぼさない形を選んでください。ストローは便利に見えますが、勢いよく吸い込むとむせることがあるため、飲み込みに不安がある方には向かない場合があります。

道具を使わせる工夫

よい道具をそろえても、使ってもらえなければ意味がありません。実際、「介護用の道具は嫌だ」と言って使わない方が少なくありません。

理由の多くは、見た目です。いかにも介護用という見た目のものは、自分が弱ったことを突きつけられるように感じられます。最近は、見た目が普通の食器と変わらないものが増えています。木目調、陶器風、色や柄のあるもの。選べるなら、そちらを選んでください。

家族と同じ食卓で、一人だけ違う道具を使うことへの抵抗もあります。本人に選ばせてください。いくつか候補を用意して、どれがよいかを聞く。押しつけられた道具より、自分で選んだ道具のほうが使われます。

そして、いきなり全部を替えないでください。スプーンだけ、皿だけ、と一つずつ替えていくほうが受け入れられます。効果が実感できれば、次の道具にも前向きになります。

逆に、道具を替えたのに使いにくそうなら、合っていません。合わない道具を我慢して使わせないでください。選び直せばよいだけです。

どこで買えるか、いくらかかるか

介護用の食器や自助具は、特別な場所でしか買えないわけではありません。入手先を知っておいてください。

まず、福祉用具の販売店です。実物を手に取って選べるのが最大の利点です。展示場を持つ店なら、いくつも試して比べられます。地域包括支援センターやケアマネジャーに聞けば、近くの店を教えてもらえます。

インターネットでも買えます。種類が豊富で、値段も比べやすいのですが、手に持った感覚が分かりません。最初の1本は実物を見て選び、同じものを買い足すときにインターネットを使うという順番が失敗しません。

値段は、スプーン1本で千円から3千円ほど、皿が2千円から5千円ほど、専用のコップが千円から3千円ほどが目安です。介護保険の給付対象になるものは限られており、食器や自助具の多くは自己負担です。ただし、市町村によっては独自の助成がある場合があります。

そして、代用できるものもあります。滑り止めは濡らしたふきんで、太い持ち手はスポンジを巻いて、浅いスプーンは離乳食用のもので代用できます。まず代用品で試して、効果があれば専用品を買うという進め方なら、無駄が出ません。

合う道具は専門職に見てもらう

ここまで挙げた選び方は一般的な目安です。実際にどれが合うかは、その方の手の状態、口の大きさ、飲み込みの力によって変わります。

作業療法士が、この分野の専門です。実際に食べている場面を見てもらえば、どこでつまずいているかが分かります。本人も家族も気づいていない原因が見つかることがよくあります。病院のリハビリ、訪問リハビリ、通所リハビリで相談できます。

言語聴覚士は、飲み込みの専門です。スプーンの大きさや形は、飲み込みの状態と直結しています。むせが増えている、食後に痰が増える、といった変化があるなら、道具の前に飲み込みの評価を受けてください。

そして、道具だけで解決しないこともあります。姿勢が崩れていれば、どんな道具を使っても食べにくいままです。まず姿勢、次に食事の形、そして道具。この順で見てください。姿勢の整え方は食事の姿勢にまとめています。

道具を替えることには、量が増える、時間が短くなる、こぼれなくなる、といった目に見える効果があります。それ以上に大きいのは、自分で食べられるという実感が保たれることです。手を出す前に、道具を替えてみてください。

道具を替える前に確かめること

道具を替えれば解決すると思って買いそろえたのに、変わらなかった。この失敗はよくあります。道具の前に確かめるべきことがあります。

まず、口の中の状態です。合わない義歯、痛む歯、口内炎、乾燥。これらがあれば、どんな道具を使っても食べにくいままです。食べる量が減った、時間がかかるようになった、という変化の原因が口の中にあることは非常に多くあります。

次に、姿勢です。体が傾いている、足が浮いている、テーブルの高さが合っていない。この状態では、道具の効果が出ません。姿勢を整えるほうが、はるかに費用がかからず効果が大きい場合があります。

そして、食事の形です。ばらけるもの、硬いもの、大きいもの。そもそも食べにくい形のものを、道具でどうにかしようとしても限界があります。

薬の影響も見てください。口が乾く、眠くなる、手が震える。こうした作用のある薬があります。心当たりがあれば、医師か薬剤師に相談してください。道具を買う前に、この4つを確かめると無駄が減ります。

食事形態を、その日の状態に合わせて選べます

配食のふれ愛 太子店では、普通食のほかに、やわらかく仕上げた小町食・きざみ・一口大・ムース食をご用意しています。同じ献立を形だけ変えてお届けできるため、ご家族と同じものを召し上がれます。どの形が合うか分からないときは、まず無料試食でお試しください。

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関連用語

介護食

かむ力・飲み込む力に合わせて形や硬さを調整した食事の総称です。

ケアマネジャー

介護保険のケアプランを作り、サービス事業者との調整を担う専門職です。

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