同じ料理でも、器を変えると食べる量が変わる
加齢で味覚・嗅覚が鈍くなると、視覚の役割が相対的に大きくなります。次の変化が食欲を落とします。
ムース食でも、型で成型して元の料理の形に近づける工夫があります。「何を食べているか分かる」ことが、食べる意欲を支えます。
加齢で視力が落ち、コントラストの識別が弱くなります。
器の形は「自分で食べられるかどうか」を左右します。
| 困りごと | 器の工夫 |
|---|---|
| すくえない、こぼす | 縁が内側に返った皿。スプーンで押し当てるとすくえます |
| 器が動く | 裏に滑り止めの付いた食器、滑り止めマット |
| 持ち上げられない | 軽い器。持ち手つきのカップ |
| 片手しか使えない | 片手用の食器(片手で食べる) |
| 手が震える | やや重い器のほうが安定することもあります |
| 握力が弱い | 柄の太いスプーン、軽い箸 |
詳しくは食べやすい食器と自助具をご覧ください。
自助具は機能が優先されますが、「介護用品を使わされている」と感じさせるものは、拒否されることがあります。
食事は毎日3回、生活の中心にある行為です。効率だけで決めないほうが、結果として食べる量は保たれます。
配食のふれ愛 太子店のお弁当も、素材ごとに分けて盛りつけています。器に移していただくと、さらに食べやすくなります。
同じ量でも、器の大きさによって多く見えたり少なく見えたりします。この見え方が、実際に食べる量を左右します。
食べる量が落ちている方には、小さめの器を使ってください。大きな器に少量を盛ると、いかにも少なく見えます。逆に、小さな器に同じ量を盛れば、しっかりした量に見えます。食べきったという満足も得られます。
そして、山盛りの皿を出さないでください。量が多いと見えた時点で、食べる前に気持ちが引いてしまいます。少なめに盛って、足りなければおかわりを出す。この順番のほうが、結果として多く食べられます。
逆に、食べすぎてしまう方には、大きめの器を使う方法があります。同じ量でも少なく見えるため、満足感が得にくくなります。ただし、この使い方は、必要な量が確保できている方に限られます。
器の深さも関係します。深い器は、底のものが見えず、残っているのに気づかれないことがあります。浅めで、中身が見える器のほうが、最後まで食べられます。
色は、食欲に直接影響します。とくに、視力が落ちてきた方では、色の違いが見えるかどうかが決定的になります。
白い器に白い食べものを盛ると、境目が見えません。ごはん、豆腐、うどん、白身魚。これらを白い器に盛ると、どこに何があるか分からなくなります。色の濃い器に替えるだけで、見えるようになります。
そして、料理の色を残してください。すべてをミキサーにかけて同じ色にしてしまうと、何を食べているのか分かりません。素材ごとに分けて調理し、にんじんの赤、ほうれん草の緑、卵の黄色を残す。それだけで食欲が変わります。
テーブルクロスやランチョンマットの色も見てください。器と同系色だと、器の縁が見えず、手が届きません。器と対比する色を敷くと、器の位置がはっきりします。
柄の多い器は、避けたほうがよい場合があります。認知の機能に変化がある方では、柄を食べもののように認識して手を伸ばすことがあります。無地で、内側が一色の器のほうが混乱が少なくなります。
器を選んだら、次は並べ方です。届く範囲に、必要なものが置かれているかを確かめてください。
まず、手が届く範囲に置いてください。体をひねらないと取れない位置にあると、姿勢が崩れます。姿勢が崩れれば、飲み込みが不安定になります。よく食べるものを、使える手の前に置いてください。
器の数も見直してください。小鉢がいくつも並ぶと、扱いきれません。手が不自由な方、認知の機能に変化がある方では、選択肢が多いこと自体が負担になります。仕切りのある器にまとめる方法があります。
ただし、すべてを混ぜないでください。味が混ざると、食欲が落ちます。仕切りで分ける、器は減らしても中身は分けておく。この配慮が要ります。
そして、毎回同じ位置に置いてください。いつも同じ場所にあると、探さずに済みます。視力が落ちている方、認知の機能に変化がある方では、この一貫性が大きく効きます。
使いやすい器をそろえても、本人が使いたがらなければ意味がありません。この点でつまずく家庭が多くあります。
いかにも介護用という見た目のものは、拒まれやすいものです。自分が弱ったことを、食卓のたびに突きつけられるように感じられます。これは、わがままではなく自然な感情です。
最近は、見た目が普通の食器と変わらないものが増えています。木目調、陶器風、落ち着いた色や柄のもの。機能は同じでも、見た目が違えば受け入れられ方が変わります。
そして、本人に選ばせてください。いくつか候補を用意して、どれがよいかを聞く。押しつけられたものより、自分で選んだもののほうが使われます。
家族と違う器を一人だけ使うことへの抵抗もあります。家族も同じ形の器に替えるという方法があります。全員が同じなら、特別扱いされている感覚が生まれません。
食べる量が減っている原因が、実は見えていないことにある場合があります。この可能性を確かめてください。
まず、明るさです。年齢とともに、同じ明るさでも見えにくくなります。食卓の上に手元を照らす明かりを足すだけで、食べる量が変わることがあります。天井の明かりだけでは、手元が影になります。
次に、眼鏡です。合わない眼鏡をかけたまま、あるいは外したまま食べていることがあります。手元が見える度数になっているかを確かめてください。
視野が欠けている方の場合、片側の食べものに気づかないことがあります。脳の病気のあとで、この状態になることがあります。器を見える側に寄せる、途中で器の位置を回す、といった対応が取られます。
そして、白内障などで色の見え方が変わっている場合があります。全体が黄色みがかって見え、料理がおいしそうに見えなくなります。器の色を工夫することで、いくらか改善します。眼科で相談する価値もあります。
器と並べ方が整ったら、盛り付けそのものを見直してください。手間をかけずにできる工夫があります。
まず、高さを出してください。平らに広げるより、中心を少し高く盛るほうが、料理として見えます。同じ量でも、印象がまったく違います。
次に、余白を残してください。器いっぱいに盛ると、雑然として見えます。縁に少し余白があるほうが、丁寧に用意されたように見えます。
色を1つ足すという工夫もあります。青菜、にんじん、卵、のり、ごま。茶色ばかりの食卓に一色加えるだけで、印象が変わります。
そして、温かいものは温かく出してください。器を温めておく、直前に仕上げる。冷めた料理は、どれだけ盛り付けを工夫しても食欲を呼びません。とくにやわらかい食事は冷めやすいため、この配慮が効きます。
見た目の工夫と同時に、自分で食べられるかどうかという機能面も見てください。両立できます。
縁が内側に立ち上がった器を選んでください。平らな皿では、すくうときに食べものが外へ逃げます。縁に押し当ててすくえる形なら、片手でも最後まで食べられます。
底が広く、重さのある器を選んでください。軽い器は、すくうたびに動きます。滑り止めのマットを敷けば、さらに安定します。濡らしたふきんでも代用できます。
持ち上げて使う器なら、軽さと持ちやすさを見てください。汁椀を持ち上げられなくなっている方がいます。持ち手の付いた器、両手で支えられる形のものがあります。
そして、割れない素材も選択肢です。落としても割れない器なら、こぼすことを恐れずに食べられます。ただし、あまりに軽いものは安定しません。重さと安全さのつり合いを見て選んでください。道具の選び方は食事の自助具にまとめています。
家庭以外の場所で食べる機会が増えると、器を選べなくなります。それでも、伝えられることがあります。
施設では、多くの場合、共通の食器が使われています。その方に合わない器が使われていれば、食べる量が落ちます。持ち込みができるかを確かめてください。使い慣れた器を持ち込むことで、食べる量が戻ることがあります。
配食の場合、容器は事業者が決めたものです。ただし、届いたものを家の器に移し替えることはできます。容器のまま食べると味気ないと感じる方には、この一手間が効きます。
移し替えるときは、区分を保ってください。すべてを一つの皿に出すと、味が混ざり、見た目も悪くなります。おかずごとに分けて盛ると、家で作ったものに近い印象になります。
そして、汁ものと主食は温め直してください。容器のまま出すより、器に移して温めたほうが、はるかにおいしく感じられます。手間をかける価値のある部分です。
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