「まだ大丈夫」の感覚は、年齢とともにずれていく
まず言葉を分けます。消費期限は「これを過ぎたら食べないでください」という安全の線で、弁当・惣菜・生菓子のように傷みやすい食品に付きます。賞味期限は「おいしく食べられる目安」で、缶詰・レトルト・乾物のように日持ちする食品に付きます。過ぎてすぐ危険になるわけではありません。
お弁当に付いているのは、ほぼ例外なく消費期限です。ここを「賞味期限だから少しくらい平気」と読み替えてしまうのが、いちばん多い誤りです。コンビニの弁当も、スーパーの惣菜も、配食のお弁当も、この線を越えたら食べないという前提で作られています。
作ってから食べるまでの時間の目安は、置いておく温度でほぼ決まります。細菌がいちばん増えるのは10〜60℃の帯で、この帯にある時間が長いほど危険が増します。
| 置き方 | 目安 | 注意 |
|---|---|---|
| 常温(20℃前後・春秋) | 調理から4〜5時間 | 朝作って昼に食べるまでが限界 |
| 常温(28℃以上・夏) | 調理から2〜3時間 | 保冷剤なしで持ち歩かない |
| 冷蔵(10℃以下) | 調理から当日中 | 冷やせば安全ではなく、遅くなるだけ |
| 冷凍(−18℃以下) | 製品の表示に従う | 家庭で冷凍した弁当は品質が大きく落ちる |
市販の弁当に「本日中にお召し上がりください」と書かれているのは、この帯の話をひとことにまとめたものです。「当日中」は24時間ではありません。製造から数時間を見込んだ表示なので、夕方に買ったものを翌朝食べるのは、日付が変わっていなくても想定の外です。
同じ弁当箱の中でも、料理によって傷み方はかなり違います。目安になるのは水分と、加熱後に手を触れたかどうかです。
意外に思われるのがポテトサラダと和え物です。加熱したあとに手や器具で触れる工程があるものは、そこで菌が入り、そのあと加熱されません。調理そのものは丁寧でも、この一手間が入るだけで日持ちの前提が変わります。夏場に持ち歩く弁当では、この2つを入れないだけで危険がかなり下がります。
「昨日の残りを食べても平気だった」という経験は、多くの方が持っています。ただし、その感覚は年齢とともにずれます。加齢で胃酸の分泌が減ると、口から入った菌を胃で止める力が落ちます。免疫の働きも落ちるため、同じ量の菌を口にしても、若い人なら下痢で済むところが、高齢者では入院に至ることがあります。
脱水も重なります。下痢と嘔吐で水分を失っても、高齢者は喉の渇きを感じにくいため、水分を摂らないまま脱水が進みます。食中毒そのものより、脱水と、そこから起きる転倒や意識の低下のほうが重い結果になることがあります。
もうひとつ現実的な問題として、においや味の変化に気づきにくくなることがあります。嗅覚と味覚は加齢で鈍り、亜鉛の不足でさらに鈍ります。「におってみて大丈夫だったから」という確かめ方は、高齢者では通用しません。時間と温度で判断する必要があります。
結論は「食べない」です。とくに一人暮らしの高齢の方の家では、もったいないという気持ちから翌日に持ち越されることが多く、ここが危ないところです。冷蔵庫に入れてあっても、消費期限を過ぎたものは越えたと考えてください。
加熱すれば大丈夫、とも言い切れません。食中毒には菌そのものが原因のものと、菌が作った毒素が原因のものがあり、毒素は加熱しても壊れないものがあります。黄色ブドウ球菌の毒素がその代表で、100℃で加熱しても残ります。「レンジで温め直したから」は理由になりません。
残してしまう量が毎回同じくらいなら、そもそも1食の量が多すぎます。量を減らして食べ切る形に変えるほうが、結果として食費も下がります。冷蔵庫を見れば分かるで、食べ残しの見方をまとめています。
配食のふれ愛 太子店のお弁当は、毎朝キッチンで調理し、その日のうちにお届けしています。消費期限はお届け当日中で、保存料は使っていません。保存料を使わずに済むのは、作ってから食べていただくまでが数時間だからです。日持ちさせる必要がないので、日持ちのための材料も要りません。
配達では季節に応じた温度管理をしています。夏場は保冷バッグと保冷剤、冬場は保温バッグを使い、先ほどの10〜60℃の帯にいる時間をできるだけ短くします。お届けのときに「すぐに冷蔵庫へ入れてくださいね」とお声がけするのは、受け取ったあとの時間がいちばん長いためです。
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