同じものが3つ入っている冷蔵庫は、何かを伝えている
離れて暮らす家族が帰省したとき、いちばん情報が多いのは冷蔵庫です。本人は「ちゃんと食べている」と言います。冷蔵庫は違うことを言うことがあります。
| 見えるもの | 読み取れること |
|---|---|
| 同じ商品が3つ4つある | 買ったことを忘れている。認知機能の変化 |
| 賞味期限切れが多い | 管理ができていない。食べていない |
| 手つかずの惣菜が残っている | 食欲低下、または量が合っていない |
| 肉・魚がない | たんぱく質不足。買い物が難しい可能性 |
| 菓子パンと甘いものばかり | 調理をやめている |
| 作り置きが何日も残っている | 食べる量が落ちている。食中毒の危険も |
| ほとんど空 | 買い物に行けていない |
| 調味料だけ古い | 調理をしていない |
叱らないでください。「なんでこんなに溜めてるの」と言うと、次から隠されます。事実を確認して、対策に移してください。
高齢の方が一人分を作るのは、実は難しいことです。
結果として、同じおかずを3日食べ続けることになります。飽きて食欲が落ち、栄養も偏ります。
| 残し方 | 考えられる原因 | 対応 |
|---|---|---|
| 全体を少しずつ残す | 量が多い、食欲低下 | 量を減らす。回数を増やす(分けて食べる) |
| 主菜だけ残る | 硬い、噛めない | 形態の見直し(介護食の分類) |
| 汁物だけ残る | むせる、飲み込みにくい | とろみの検討。嚥下の評価 |
| ご飯だけ残る | 口の中がぱさつく、唾液の減少 | おかゆ、汁かけ。口腔ケア |
| 特定の野菜が残る | 好き嫌い、繊維が硬い | 調理法を変える |
| 後半になるほど残る | 疲れて食べられない | 食事時間の見直し(食事に時間がかかる) |
「残した」ではなく「何を残したか」を見てください。原因も対策も、まったく変わります。
配食を使うと、容器の回収時に残り方が分かります。毎日同じ量が届くので、比較もできます。
配食のふれ愛 太子店では、お弁当をお届けするときにご様子を拝見し、気になることがあればご家族やケアマネジャーにお伝えしています。「最近、主菜が残るようになった」といった変化が、形態を見直すきっかけになります。
食べ残しと作りすぎの多くは、中に何があるか分からないことから生まれます。見える状態を作れば、それだけで無駄が減ります。
まず、詰め込みすぎないことです。庫内は7割程度にとどめてください。いっぱいに詰まっていると、奥のものが見えず、忘れられ、傷みます。冷えも悪くなり、食中毒の危険が上がります。減らすことが、そのまま安全につながります。
次に、置く場所を決めてください。作り置きはこの段、開封したものはこの棚、というように決めておくと、探さずに済みます。高齢の方は、探すこと自体が負担になり、探すより買うほうが早いと考えるようになります。
透明な容器を使ってください。中身が見えない容器に入れると、何が入っているか分からなくなります。ふたを開けて確かめる手間があるだけで、忘れられます。透明な容器に替えるだけで、使い切る率が上がります。
そして、日付を書いてください。作った日を、テープに書いて貼るだけでかまいません。記憶に頼ると、実際より新しいものだと思い込みます。日付があれば、迷わず判断できます。
作りすぎは、意志の問題ではありません。長年の習慣と、道具の大きさから生まれます。仕組みで変えてください。
まず、鍋の大きさを替えてください。大きな鍋を使えば、大きな鍋に見合った量を作ります。家族が減っても、鍋は昔のまま使われていることがよくあります。一人分、二人分に合った小さな鍋に替えると、自然に量が減ります。
次に、材料を買う単位を見直してください。大袋で買えば、使いきるために多く作ることになります。少量の袋を選ぶ、買ったその日に小分けして冷凍する。ここで止めれば、作りすぎになりません。
そして、作ったらすぐ分けてください。鍋のまま置いておくと、全部を今日食べるものとして扱ってしまいます。作った直後に1食分ずつ容器に分ければ、明日以降の分として確保されます。
それでも作りすぎてしまうなら、冷凍に回してください。冷蔵で数日置くより、その日のうちに冷凍したほうが、味も安全も保てます。「明日食べるから」と冷蔵に置いたまま、食べずに捨てるという流れが最も多い無駄です。
残すという結果は同じでも、理由はさまざまです。理由によって、やるべきことが違います。
量が多い場合は、盛り付けを減らしてください。山盛りの皿を見ただけで食欲が失せる方がいます。少なく盛って、足りなければおかわりを出す。この形なら、食べきれたという満足が残ります。
食べにくい場合は、形の問題です。硬い、大きい、ばらける、汁が飛ぶ。特定のおかずだけが残るなら、そのおかずの形が合っていません。切り方や調理を変えてください。
味が合わない場合もあります。年齢とともに、味の感じ方が変わります。薄いと感じている、逆に濃すぎると感じている。本人に聞いてみないと分かりません。
そして、体調や気分の問題です。食欲がない、口の中が痛い、便通が悪い、薬の影響が出ている。特定の日だけ残るなら、この可能性が高くなります。残す量が続けて増えているなら、体の変化を疑ってください。
残ったものをどう扱うかで、食中毒の危険が変わります。高齢の方の家では、この扱いが特に重要です。
食卓に出したものと、出していないものを分けてください。一度食卓に出し、箸をつけたものは、傷みやすくなります。取り分ける前に、保存する分を先に別の容器に移しておくのが確実です。
冷ますときは、早く冷ましてください。常温でゆっくり冷ますあいだに、細菌が増えます。浅い容器に広げる、氷水に当てる、といった方法で早く冷まし、2時間以内に冷蔵庫へ入れてください。
温め直しは、中心まで熱くなるまで行ってください。表面だけ温かい状態は危険です。そして、温め直したものを再び保存しないでください。1回で食べきる分だけを温めるようにしてください。
そして、迷ったら捨ててください。高齢の方は、食中毒にかかったときの影響が大きく出ます。入院に至ることもあります。数百円の食材を惜しんで、命に関わる事態を招かないでください。
冷蔵庫と食べ残しは、その方の状態を映す記録です。離れて暮らす家族にとって、最も分かりやすい手がかりになります。
同じものが何個も入っているなら、買ったことを忘れています。認知の機能の変化を示している可能性があります。本人は「安かったから」と説明しますが、繰り返されているなら別の理由があります。
期限切れが多いなら、管理する力が落ちています。日付を見る、残りを把握する、順に使う。これらは思っているより複雑な作業です。できなくなってきたら、支える仕組みが要ります。
生鮮品が減り、パンや菓子が増えているなら、買い物か調理が難しくなっています。軽くて日持ちするものだけが残るのは、はっきりした合図です。
そして、中身がほとんど空なら、食べていない可能性があります。「ちゃんと食べている」という本人の言葉より、冷蔵庫のほうが正確です。帰省したときは、必ず開けてみてください。
配食を利用すると、食べ残しと作りすぎの問題の形が変わります。良い面と、新しく生まれる課題があります。
良い面は、1食分が決まっていることです。作りすぎることがなく、材料を余らせることもありません。買い物と調理の負担が減り、そこから生まれる無駄も消えます。
そして、残したかどうかが分かることです。手渡しで届ける事業者なら、前日の容器を回収するときに、残っているかどうかが見えます。家族が毎日確かめられない場合、これが重要な情報になります。
一方で、新しい課題も生まれます。冷凍で届く場合、庫内にたまっていくことがあります。食べていないのに次が届き続けると、置き場所がなくなります。何食残っているかを、誰かが把握しておく必要があります。
そして、量が合わない場合です。多すぎて毎回残す、少なすぎて足りない。多くの事業者が、量の異なる献立を用意しています。合わないまま続けず、変更を申し出てください。選び方は配食サービスの確認12項目にまとめています。
そもそも、一人分の料理を作ることには構造的な難しさがあります。この点を理解しておくと、無理な要求をせずに済みます。
材料が一人分では売られていません。野菜も、肉も、調味料も、複数人分を前提にした単位で流通しています。一人分だけ使えば、必ず余ります。これは本人の工夫では解決できない問題です。
そして、手間が量に比例しません。一人分を作るのも、四人分を作るのも、かかる時間はそれほど変わりません。だからこそ、多く作ってしまいます。効率を考えれば当然の行動です。
この構造を踏まえると、一人暮らしの方に「作りすぎないように」と言うだけでは解決しません。多めに作って、その日のうちに小分けして冷凍する。この形を勧めるほうが現実的です。
そして、作ること自体が難しくなってきたら、配食や惣菜に切り替える判断が必要になります。無理をして作り続け、残し、傷ませ、捨てる。この状態が続いているなら、方法を変える時期です。ケアマネジャーに相談すれば、その方に合う手段を一緒に考えてもらえます。
食べものを捨てることに、強い抵抗を持つ方が多くいます。この気持ちを頭から否定すると、話が進みません。
戦後の食糧難を経験した世代にとって、食べものを捨てることは価値観に反する行為です。「もったいない」という言葉の重みが、いまの世代とは違います。理屈で説明しても、簡単には変わりません。
効きやすいのは、捨てる話ではなく、買う話にすることです。捨てる量を減らすには、そもそも余分に買わなければよいのです。買う量を減らすことは、節約として受け入れられやすく、抵抗が小さくなります。
そして、危険を具体的に伝えてください。高齢の方は、食中毒にかかると入院に至ることがあります。「傷んだものを食べたせいで入院した」という結果は、捨てることよりはるかに大きな損失です。この点は、事実として伝える価値があります。
判断を仕組みに任せるという方法もあります。日付を書いて、決めた日が来たら中身を見ずに処分する。そのつど迷わずに済むため、気持ちの負担が減ります。家族が来たときにまとめて片づけるという形でもかまいません。
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