台所の安全|配食のふれ愛 太子店 健康コラム

兆候は台所に出る

認知機能や体力の低下は、台所で最初に表れることが多くあります。次のような変化に気づいたら、対策の時期です。

  • 鍋を焦がした。火をつけたまま別のことをしてしまう
  • やかんの空焚き
  • 冷蔵庫に古いものが溜まる、同じものが何個もある
  • 包丁を使わなくなった(切るのが怖い、手が震える)
  • 床に食べこぼしや水が残っている
  • 調味料の使い方が変わった(極端に濃い、味見をしない)
  • 台所に立つ時間が減り、パンや菓子で済ませている

「一度焦がしただけ」で片づけないでください。一度起きたことは、また起きます。

火の対策

  • Siセンサーコンロに替える。2008年以降の家庭用ガスコンロには、立ち消え安全装置・調理油過熱防止装置・消し忘れ消火機能が標準で付いています。古いコンロを使っているなら交換を検討してください
  • IHクッキングヒーターにする。裸火が出ません。ただし切り替えで混乱する方もいます。本人が使えるか確認してから
  • ガスの元栓を締める習慣。使うときだけ開ける
  • 電子レンジ中心に切り替える。操作が単純なものに交換する
  • 電気ケトル、電気ポット。やかんの空焚きを防げます
  • 住宅用火災警報器の設置と電池の確認(設置は義務です。電池切れに注意)
  • 調理中は袖口の広い服を着ない

やけどと転倒

  • 熱い鍋を運ばない。お玉で器に移す。運ぶ距離を短くする
  • 持ち手の付いた軽い調理器具に替える。片手鍋、軽量のフライパン
  • 床の水濡れをすぐ拭く。台所での転倒は多い
  • 滑りにくいマット。ただし端がめくれるものは逆に危険
  • 足元に物を置かない
  • 手元を明るくする。手元灯を追加。加齢で必要な明るさは若い頃の2〜3倍
  • 座って調理できるようにする。椅子を置くだけで負担が変わります

刃物と食中毒

  • 包丁はよく研いだものを使う。切れない刃物のほうが力が要り、危険です
  • カット済み野菜、冷凍野菜を使う
  • ピーラー、はさみで代用する
  • 冷蔵庫を定期的に整理する。家族が帰省時に確認
  • 加熱をしっかり。高齢者は食中毒が重症化しやすい(食中毒の予防)
  • 作り置きは早めに冷まして冷蔵、2〜3日で食べきる

調理をやめる判断

安全対策には限界があります。次の状態になったら、調理そのものを減らす方向に切り替えてください。

  • 火の消し忘れが繰り返し起きる
  • やけどをした
  • 調理の手順が分からなくなる(何を作ろうとしていたか忘れる)
  • 立っていることがつらい
  • 「面倒だから食べない」が増えた

これは能力を否定することではありません。危ない部分だけを外して、できる部分を残すという発想です。配食を昼だけ入れて、朝夕は簡単なものを自分で用意する。それだけで火を使う回数は3分の1になります。

「取り上げられた」と感じさせない伝え方については食欲が落ちたときの考え方も参考になります。手すりや福祉用具の相談先は下のリンクをご覧ください。

火を使わない調理に切り替える

台所での危険を減らす最も確実な方法は、火を使う場面そのものを減らすことです。調理をやめるのではなく、方法を変えるという考え方です。

電子レンジは、火を使わずに温められる最も身近な道具です。汁もの、煮物、ごはん。ほとんどのものが温め直せます。ただし、加熱しすぎると発火することがあるため、時間の設定には注意が要ります。ラップの扱いや、金属を入れないことも含めて、使い方を一緒に確かめておいてください。

電気の調理器具も選択肢です。電気ケトル、電気ポット、電気の鍋、自動で切れる炊飯器。これらは、火が出ず、多くが自動で止まります。切り忘れても大事に至りにくいという点が重要です。

ガスコンロを電気の調理器に替えるという方法もあります。ただし、使い慣れた道具を替えることには抵抗が伴います。本人が扱えるかどうかを確かめてから決めてください。かえって使えなくなり、調理そのものをやめてしまうことがあります。

そして、そもそも調理しなくてよいものを増やすことです。レトルト、缶詰、惣菜、配食。温めるだけ、開けるだけで食べられるものを組み込めば、火を使う機会が自然に減ります。

見落とされやすい危険

火と刃物に注意が向きがちですが、台所には他にも危険があります。見落とされやすいものを挙げます。

まず、足元です。水や油で濡れた床、敷いたままのマット、床に置かれた荷物。台所は家の中で転びやすい場所の一つです。こぼれたらすぐ拭く、マットは滑り止めのあるものにする、床に物を置かない。この3つで、転倒の危険が大きく下がります。

次に、高いところの物です。吊り戸棚に置いた物を取ろうとして、椅子や踏み台に乗り、落ちるという事故が起きています。よく使うものは、腰から目の高さのあいだに移してください。高いところには、めったに使わない軽いものだけを置きます。

そして、明るさです。年齢とともに、同じ明るさでも見えにくくなります。手元が暗いと、刃物の扱いも、汚れの見落としも危険になります。手元を照らす明かりを足すだけで、かなり改善します。

やけども見落とされやすい危険です。感覚が鈍くなっていると、熱さに気づくのが遅れます。熱い汁を運ぶ距離を短くする、鍋を持ち上げずに移す道具を使う、といった工夫が要ります。

食中毒への備えは年齢とともに重くなる

高齢の方は、食中毒にかかったときの影響が大きく出ます。若い頃と同じ扱い方では危険です。

まず、冷蔵庫の使い方です。詰め込みすぎると冷えが悪くなります。そして、奥のものが見えなくなり、忘れられて傷みます。庫内は7割程度にとどめ、手前から使う習慣をつけてください。

次に、作り置きの扱いです。作ったものを常温で冷ましているあいだに、細菌が増えます。2時間以内に冷蔵庫へ入れてください。そして、冷蔵で2日、それ以上なら冷凍という目安を守ってください。

温め直しも重要です。中心まで熱くなるように温めてください。表面だけ温かくても、中が冷たいままでは意味がありません。汁ものは、かき混ぜながら沸くまで温めるのが確実です。

そして、においや見た目で判断させないでください。嗅覚と視力が落ちていると、傷んだものに気づけません。日付を書いて貼る、決めた日に処分する、という仕組みで判断するようにしてください。「もったいない」で食べてしまうことが、最も危険です。

家族が気づくためのしるし

台所の変化は、生活全体の変化を映します。離れて暮らす家族が確かめるべき点を挙げます。

まず、鍋やフライパンの底です。焦げつきが増えていたら、火をつけたまま離れている可能性があります。本人は「たまたま」と言いますが、繰り返されていることが多いものです。

次に、冷蔵庫の中身です。期限の切れたもの、同じものが何個も、開封したまま忘れられたもの。これらは、管理する力が落ちているしるしです。中身を見ずに買ってしまうため、同じものが重複します。

そして、においです。ガスのにおいがする、焦げたにおいが残っている、生ごみが片づいていない。本人はにおいに慣れて気づきません。訪ねた人だけが分かることです。

調理の道具が使われなくなっているのも、しるしの一つです。包丁が長く使われていない、まな板が乾いたまま、鍋が出ていない。調理をやめて、パンや菓子で済ませるようになっている可能性があります。

やめるのではなく、範囲を狭める

危険があるからといって、台所から遠ざけるのは適切ではありません。できる範囲を残す工夫をしてください。

調理をやめると、失われるものが多くあります。何を食べたいか考えること、手を動かすこと、家の中で役割を持つこと。これらが消えると、気持ちの張りが落ち、機能も落ちていきます。

危険なのは、火と刃物と重いものです。この3つを避ければ、できることは残ります。盛り付ける、和える、混ぜる、洗う、切ったものを並べる。誰かと一緒なら、より多くのことができます。

家族が来たときに、一緒に作るという形も有効です。危ない部分だけを家族がやり、それ以外は本人がやる。見守られながらであれば、火を使うこともできます。

そして、本人の希望を聞いてください。もう作りたくないという方に無理をさせる必要はありません。逆に、まだ作りたいという方から取り上げると、強い喪失感を生みます。どちらを望んでいるかを確かめてから決めてください。

調理をやめる判断とその後

いずれ、調理をやめる判断が必要になる時期が来ます。その判断と、やめたあとの組み立てについて整理します。

やめる判断のきっかけになるのは、実際に起きた出来事です。鍋を焦がした、やけどをした、火をつけたまま忘れた、転んだ。一度でも起きたら、次があると考えてください。「気をつける」では防げません。

やめる場合は、代わりの手段を先に用意してください。用意しないままやめると、食べる量が落ちます。配食、宅配の惣菜、家族が作って届ける、施設の通所で食べる。複数を組み合わせるのが現実的です。

そして、部分的にやめるという選択もあります。火を使う調理だけをやめて、温めることは続ける。全部をやめる必要はありません。何が危険かを見極めて、その部分だけを外してください。

判断に迷うときは、ケアマネジャーに相談してください。その方の状態を知っており、地域で使える手段も知っています。家族だけで決めると、本人との対立になりがちです。第三者が入ることで、話が進むことがあります。事業者の選び方は配食サービスの確認12項目にまとめています。

ガス・電気の設備で備える

本人の注意力に頼らず、設備の側で危険を減らす方法があります。費用はかかりますが、効果は確実です。

いまのガスコンロには、安全のための機能が標準で付いています。一定の時間で自動的に消える、鍋の温度が上がりすぎると止まる、立ち消えを検知して止める。古いコンロを使っている家では、買い替えるだけで危険が大きく下がります。

火災の警報器は、住宅に設置が義務づけられています。付いているか、電池が切れていないかを確かめてください。10年ほどで交換が必要とされています。付いていても動かなければ意味がありません。

ガスの元栓を自動で締める仕組みや、電気の使いすぎを検知する仕組みもあります。ガス会社や電力会社に相談すると、その家に合ったものを教えてもらえます。高齢の方の世帯向けの見守りの仕組みを用意している事業者もあります。

そして、市町村によっては、こうした設備の費用を助成する仕組みがあります。火災警報器、自動で消えるコンロ、電磁調理器など。対象になるかどうかを、市町村の窓口か地域包括支援センターに確かめてください。使える制度があるのに知られていないことがよくあります。

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記憶や判断の力が低下し生活に支障が出る状態。食事の場面にも影響が出ます。

配食サービス

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