市販の介護食は大きく三つに分かれる

店頭や通販で手に入る介護食は、保存のしかたで三つに分けて考えると整理しやすくなります。常温で長く保つレトルト、冷凍庫に入れておく冷凍食品、そして作ったものを届けてもらう宅配の三つです。

この三つは優劣ではありません。保存が効くものほど、食べる直前に人がやることが増えます。逆に、手間が少ないものほど、届く時間や曜日が決まってしまいます。どちらかを選ぶというより、弱いところを他方で埋めるという考え方が現実的です。

まず確かめておきたいのは、ご本人に合う食事の形です。歯ぐきで噛める硬さが良いのか、細かくしたものが良いのか、とろみが要るのか。形が合っていなければ、どんなに良い商品でも残されます。形の見分けは嚥下食とは?にまとめています。

そして、誰が用意するのかをはっきりさせてください。ご本人が一人で準備するのか、同居の家族が渡すのか、ヘルパーが訪問する時間に合わせるのか。ここが決まらないうちは、商品を見比べても結論が出ません。

この記事では、三つそれぞれの得意な場面と、買う前に確かめる点を順に整理します。併せて、味が落ちたと言われたときに見直すところも書いています。

レトルトの介護食にできること

レトルトの強みは、常温で長く保つことです。冷凍庫の場所を取らず、買い置きができます。帰宅が遅い日や、買い物に行けなかった日の手当てとして、棚にいくつかあると安心できます。

災害への備えとしても意味があります。電気やガスが止まっても、湯せんで温めるか、そのままでも食べられるものがあります。やわらかい形の備蓄食は、普通の非常食では代用できません。備えの考え方は災害への備えに書いています。

一方で、レトルトは一食分の量が小さめのものが多く、おかず単品で売られています。これだけで一日を組むと、たんぱく質も野菜も不足しがちです。ご飯や汁物、乳製品を足して一食に仕上げるという前提で揃えてください。

味付けは全体にしっかりめのものが多く、塩分の調整が必要な方は表示を見て選ぶ必要があります。一つあたりの食塩相当量はパッケージに必ず書いてあります。一日の目安を主治医や管理栄養士から聞いている場合は、その範囲に収まるかで選んでください。

開封しやすさも見ておきたい点です。握力が落ちている方は、袋の切り口が開けないことがあります。ご本人が一人で準備するなら、実際に開けられるかを一度見てからまとめ買いしてください。

冷凍の介護食にできること

冷凍の強みは、一食分が一つの容器に揃っていることです。主食・主菜・副菜が揃った形で届くため、足して組み立てる手間が少なくて済みます。献立を考える負担が減ることは、作る側にとって大きな助けになります。

まとめて届いて好きな日に食べられることも利点です。毎日受け取る必要がないので、外出や通院の予定が入っても困りません。通院日の乗り切り方は通院日の食事にまとめています。

弱いところは、冷凍庫の容量を使うことです。一人暮らしの小さな冷蔵庫だと、一週間分も入りません。受け取る前に、入れられる数を実際に数えておくと失敗がありません。

もう一つは、解凍と加熱の手順を守ってもらう必要があることです。加熱が足りないと中心が冷たいままになり、逆に長すぎると固くなって食べにくくなります。認知症のある方が一人で操作する場合は、ここがつまずきになりやすいところです。

冷凍と当日調理の違いは、味や食感にも出ます。どちらが向くかは、食べる方の好みと、準備をする人の事情で変わります。比べ方は冷凍弁当と当日調理に詳しく書いています。

宅配(配食サービス)にできること

配食サービスの強みは、準備も片づけもほぼ残らないことです。決まった時間に届き、そのまま食べられます。台所に立つことが難しくなっている方でも、食事を取ることができます。

もう一つ、手渡しのときに人の目が入るという働きがあります。届ける側が、前回との違いに気づける場面です。何を見ているのかは配食の手渡しが安否確認になる理由に書いています。

弱いところは、時間帯と配達範囲に縛られることです。希望の時刻に合わないことも、そもそも届けられない地域もあります。事業者を比べるときの確かめ方は配食サービスの確認12項目に一覧にしてあります。

費用は一食あたりで見ると割高に見えますが、材料を買って作る場合の手間と、使い切れなかった食材を捨てる損などを含めると見方が変わります。一人分を作るのは、意外なほど割に合いません。考え方は高齢者の食費に整理しています。

毎日でなくても構いません。平日の昼だけ、あるいは家族が遠出する日だけという使い方もできます。回数を変えられるかどうかは、最初に確かめておくと後で楽になります。

選び方は「誰が用意するか」で決まる

商品の比較より先に、準備をする人を決めてください。ここが決まると、選ぶべき形は自然と絞られます。

ご本人が一人で準備する場合、火や刃物を使う工程が少ないほど安全です。火を使わない、湯を沸かさない、包丁を使わない。台所の安全については台所の安全で触れています。

同居の家族が用意する場合は、家族の食事と同じ献立に寄せられるかが重要になります。別々に作る日が続くと、作る側が先に疲弊します。作る側の食事については介護する人の食事をご覧ください。

ヘルパーの訪問時間に合わせる場合は、短い時間で用意できるものが向きます。訪問介護の時間は限られており、調理に使える分はその一部です。何をどこまで頼めるかは、ケアマネジャーを通して相談してください。

離れて暮らす家族が手配する場合は、届いたかどうかが分かることが大事です。届けたことを知らせてもらえるかどうかを、契約前に確かめてください。離れた場所からの支え方は離れて暮らす親の食事を、どう支えるかにまとめています。

パッケージの表示を読む

市販の介護食には、硬さや飲み込みやすさの目安が表示されています。代表的なものが、日本介護食品協議会のユニバーサルデザインフードと、農林水産省のスマイルケア食です。

ユニバーサルデザインフードは、噛む力と飲み込む力の目安で四つの区分に分けています。区分の番号が大きいほど、やわらかく仕上げられています。パッケージのマークを見れば、店頭でも判断がつきます。

スマイルケア食は、噛むこと・飲み込むこと・栄養の三つの視点で記号を付けています。噛む力だけでなく、低栄養の備えとして選ぶ場合の目印も含んでいます。

病院や施設では、日本摂食・嚥下リハビリテーション学会の分類が使われます。退院時に伝えられるのは、多くの場合この分類の呼び方です。市販品の表示とは別のものなので、読み替えの考え方を退院時に食事形態を引き継ぐに書いています。

表示は目安であって、保証ではありません。同じ区分でも、商品によって実際の硬さに幅があります。初めての銘柄は少量で試し、実際の様子を見てから揃えてください。

買う前に確かめる四つ

一つ目は、とろみが要るかどうかです。水分でむせる方は、おかずがやわらかければ良いというわけではありません。とろみの濃さの決め方はとろみ食とは?をご覧ください。

二つ目は、アレルギーと制限の確認です。市販品は原材料表示を見れば分かりますが、小さな字のため見逃しやすいところです。読み方はアレルギー表示の読み方にまとめています。

三つ目は、一食あたりの量です。食が細くなっている方に大盛りを出すと、見た目だけで手が止まることがあります。分けて食べる考え方は一度に食べられないときに書いています。

四つ目は、続けられる価格かどうかです。一度だけなら良いものを選べますが、食事は毎日続きます。一ヶ月分に直して計算し、無理のない範囲で組み立ててください。

この四つを確かめておけば、大きな失敗は防げます。逆に、ここを飛ばしてまとめ買いすると、食べないまま棚に残ることになります。

味が落ちたと言われたとき

やわらかい食事に切り替えたとたん、「味がしない」と言われることがあります。多くは味付けの問題ではなく、食感と見た目が変わったことへの違和感です。

まず、温度を見直してください。あたたかいものをあたたかいうちに出すだけで、印象が大きく変わります。すべてを一度に並べず、食べる順に温めて出すという手もあります。

次に、盛り付けを見直してください。容器のまま出すのと、器に移して出すのとでは、食べる量が変わることがあります。見た目と量の関係は器と盛りつけにまとめています。

香りと酸味を足すのも有効です。だし、ゆずやレモンの皮、ごま、のり。塩を増やさずに味の輪郭を作れます。塩分の調整が必要な方にとっては、こちらのほうが現実的な道です。

それでも進まないときは、味覚そのものが変わっている可能性を考えてください。薬の影響や、亜鉛の不足が関わることがあります。思い当たるときは、主治医や薬剤師に相談してください。

使い分けの例

実際には、一つに絞らない家庭がほとんどです。場面ごとに充てると、無理が出にくくなります。

平日の昼は、家族が仕事でいない時間帯です。ここを宅配に充てると、昼食と安否の確認を同時に満たせます。

夕食は、家族がいる日なら同じ献立を形だけ変えて出すことができます。同じものを食べているという感覚は、食欲に直接響きます。作り方はやわらかく調理するこつに書いています。

帰りが遅い日や、体調を崩した日は、レトルトが支えになります。「今日は作れない」という日を見込んでおくことが、続けるための工夫です。

週末にまとめて冷凍を受け取るという形もあります。予定が読みにくい家庭には、この柔らかさが向いています。買い物に行けない場合の選択肢は買い物に行けなくなったらにも整理しています。

合わない形を続けない

一度決めた形を、ずっと続ける必要はありません。飲み込む力も噛む力も、良くなることも悪くなることもあります。

むせる回数が増えた、食事にかかる時間が伸びた、残す量が増えた。この三つのうちどれかが続くときは、形を見直す合図です。時間の目安は食事に時間がかかるに書いています。

逆に、形を下げすぎていないかも見てください。安全のために細かくしすぎると、噛む力が使われなくなります。噛む力を保つ考え方はきざみ食とは?で触れています。

判断に迷ったときは、一人で決めないでください。ケアマネジャー、主治医、歯科医、言語聴覚士、管理栄養士。相談できる相手はいます。相談のしかたはケアマネジャーへの相談のしかたをご覧ください。

そして、試すときは少量から始めてください。まとめ買いしてから合わないと分かるのが、一番もったいない失敗です。試食や少量セットがあるなら、そこから始めるのが確実です。

食事形態を、その日の状態に合わせて選べます

配食のふれ愛 太子店では、普通食のほかに、やわらかく仕上げた小町食・きざみ・一口大・ムース食をご用意しています。同じ献立を形だけ変えてお届けできるため、ご家族と同じものを召し上がれます。どの形が合うか分からないときは、まず無料試食でお試しください。

メニュー詳細を見る 無料試食を申し込む

関連用語

介護食

かむ力・飲み込む力に合わせて形や硬さを調整した食事の総称です。

とろみ食

とろみ調整食品で粘度をつけた食事や飲み物。むせを防ぐ工夫です。

配食サービス

栄養に配慮した食事を自宅へ届けるサービス。安否確認を兼ねる場合があります。

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