嚥下体操と口の体操|配食のふれ愛 太子店 健康コラム

なぜ食事の前にやるのか

飲み込みは、舌・のど・首の筋肉が順番に動く一連の運動です。運動である以上、いきなり始めるより準備をしたほうがうまくいきます。

加えて、体操をすることで唾液が出やすくなり、口の中が湿ります。乾いた口では食べ物がまとまりません。目を覚まし、姿勢を整え、体を「食べる準備」に切り替える意味もあります。

時間は1〜2分で十分です。長くやることより、毎食前に必ずやることのほうが効きます。

基本の流れ

  1. 深呼吸(2回)
    鼻から吸って、口からゆっくり吐く。姿勢を整えます
  2. 首をゆっくり回す(左右各2回)
    痛みがあれば無理をせず、左右に傾けるだけにします
  3. 肩の上げ下げ(3回)
    すくめて、ストンと落とす
  4. 頬をふくらませる・へこませる(3回)
    口の周りの筋肉を動かします
  5. 舌を出す・引っ込める(3回)、左右の口角につける(各3回)
    舌は食べ物をまとめ、喉へ送る主役です
  6. 「パ・タ・カ・ラ」を各5回、はっきり発声
    パ=唇、タ=舌の先、カ=舌の奥、ラ=舌を巻く。飲み込みに使う場所を一通り動かします
  7. 空嚥下(つばを飲み込む)を2回
    実際に飲み込む動きを予行します
  8. 咳ばらいを2回
    誤嚥したときに出す力を確かめます

全部やらなくても構いません。4・5・6の3つだけでも意味があります。できることから始めてください。

日常のなかでできる練習

場面できること
会話話すこと自体が口と舌の運動。人と話す機会を増やす
歌息を長く使い、口を大きく動かす。カラオケ、童謡
音読新聞や本を声に出して読む
よく噛む一口30回。かむ力そのものの維持になります
うがいぶくぶくうがいは頬の筋肉、がらがらうがいは喉の筋肉を使う

人と話す機会が減ることは、口の機能の低下に直結します。体操よりも会話のほうが続けやすい方も多くいます。

無理をしない、専門職に相談する

次の場合は自己流で続けず、担当の医師・歯科医師・言語聴覚士に相談してください。

  • 首や肩に痛みがある、頸椎の治療を受けている(首を回す運動は避ける)
  • 脳卒中の後で、麻痺がある
  • 体操をすると疲れて食事が食べられなくなる
  • すでに肺炎を繰り返している

飲み込みの訓練には、体操以外に専門職が行うものがあります。介護保険の訪問リハビリテーション、通所リハビリテーション、居宅療養管理指導などで受けられます。ケアマネジャーに相談してください。

むせが続く場合の食事形態の見直しは嚥下食とは?をご覧ください。

食事の前の1分が効く理由

飲み込みに関わる筋肉は、使わなければ衰えます。そして、食事のときにいきなり使おうとしても、準備ができていません。準備運動をしてから食べることには、はっきりした意味があります。

まず、唾液が出ます。口や舌を動かすことで唾液腺が刺激され、口の中が潤います。乾いた口では、食べものがまとまらず、飲み込めません。これだけでも、最初の一口の安全性が変わります。

次に、筋肉が動く準備が整います。口の周り、舌、のど、首。これらの筋肉が温まっていれば、飲み込みの動作が滑らかになります。朝いちばんの食事でむせやすいのは、これらが動いていないためです。

そして、これから食べるという意識が生まれます。ぼんやりしたまま食事が始まると、噛むことと飲み込むことの手順が乱れます。体操をすることで、食事の時間が始まったという合図になります。認知の機能が落ちている方では、この効果がとくに大きく現れます。

順番と、それぞれの狙い

体操には順番があります。首から始めて、口、舌、頬、発声、そして深呼吸という流れです。それぞれに狙いがあります。

首の運動は、飲み込みに使う筋肉をほぐすためです。ゆっくり前後、左右、回す。勢いをつけないでください。首の骨に問題がある方、めまいがある方は、回す動きを避けて、前後と左右だけにします。

口と頬の運動は、食べものを口の中に保つ力を作ります。口を大きく開けて閉じる、頬をふくらませて へこませる、唇をすぼめて横に引く。これができないと、食べものが口からこぼれます。

舌の運動は、食べものをまとめて のどへ送るためです。舌を前に出す、左右に動かす、上あごに押しつける。舌の力は、飲み込みの中心になる力です。ここが弱ると、口の中に食べものが残るようになります。

発声は、のどを閉じる力を確かめ、鍛えるためです。「パ」「タ」「カ」「ラ」をはっきり言う。それぞれ、唇、舌の先、のどの奥、舌の側面を使う音で、飲み込みに関わる部位に対応しています。最後に深呼吸をして、むせたときに咳をする力を確かめます。

日常の動作に組み込む

体操として時間を取ると続かない方がいます。その場合は、日常の動作の中に組み込んでください。

歯みがきのときに、口をゆすぐ動作をゆっくり行う。これは頬と唇の運動になります。ぶくぶくうがいを、左右それぞれ5回ずつ意識して行うだけで、口の周りの筋肉を使います。

会話も訓練になります。人と話す機会が減ると、口とのどの筋肉を使わなくなります。一人暮らしの方、外出が減った方では、これが飲み込みの低下につながることがあります。電話でもよいので、声を出す機会を作ってください。

歌うことも効きます。声を出し、息を続けて使うため、のどと呼吸の筋肉を使います。デイサービスで歌う時間があるのは、楽しみのためだけではありません。

そして、しっかり噛むことです。やわらかいものばかり食べていると、噛む力が落ちます。安全に噛める範囲であれば、噛みごたえのあるものを残してください。ただし、飲み込みに問題がある方は、自己判断でかたいものを増やさないでください。

やってはいけないこと

体操は誰にでも安全というわけではありません。避けるべき場合と、やり方の注意があります。

まず、首の運動です。首の骨に病気がある方、めまいがある方、血圧が不安定な方は、首を回す動きを避けてください。勢いよく回すと危険です。心配な場合は、医師か理学療法士に確かめてから始めてください。

次に、無理な回数です。疲れるまでやると、食事のときに使う力が残りません。体操で疲れて、そのあと食べられないのでは本末転倒です。各動作を3〜5回、全体で1〜2分で十分です。

そして、痛みがあるときは中止してください。首、あご、のどに痛みがあるなら、原因を確かめるほうが先です。

また、体操をしていれば飲み込みが良くなる、と過信しないでください。体操は補助的なものであり、飲み込みの機能が落ちている方には、専門的な訓練と評価が必要です。むせる状態が続いているなら、体操だけで様子を見ずに受診してください。

介助が必要な方への行い方

自分で体操ができない方の場合、介助しながら行う方法があります。ただし、口の中に手を入れる動作を含むため、無理をしないでください。

まず、顔と首をやさしくさすることから始めます。頬、あごの下、首の横。手のひらで温めるように触れるだけでも、唾液が出やすくなります。唾液腺は、耳の前、あごの下、舌の下にあります。

次に、口の周りを動かします。介助者が指で唇の周りを軽くマッサージする、頬の内側と外側から挟むように動かす。強く押さないでください。粘膜が薄くなっているため、簡単に傷つきます。

そして、声かけです。「あー」「うー」と一緒に声を出す。本人が声を出せなくても、こちらが動きを見せることで、まねをすることがあります。鏡を使うと、自分の動きが見えて分かりやすくなります。

嫌がるときは、その日は中止してください。無理に続けると、次から口を開けてくれなくなります。できる範囲を、できる日に。この積み重ねのほうが長く続きます。

専門職に見てもらうタイミング

体操は自分でできることですが、その方に必要な訓練は人によって違います。専門職に見てもらうことで、効く方法が分かります。

相談すべきタイミングを挙げます。むせる回数が増えた。食事に時間がかかるようになった。食べものが口の中に残るようになった。声がかすれてきた。食後に痰が増える。体重が減っている。これらは、体操だけで対応する段階を超えています。

言語聴覚士は、飲み込みの評価と訓練を専門とする職種です。病院、訪問リハビリ、通所リハビリ、施設などで関われる場合があります。どこで受けられるかは、かかりつけ医かケアマネジャーに聞いてください。

歯科でも、口の機能について診てもらえます。噛む力、舌の動き、入れ歯の状態。これらは飲み込みに直結します。訪問での歯科診療を行っているところもあります。

そして、評価を受けると、食事の形についても具体的な指示がもらえます。「やわらかくする」ではなく、どの段階の形が安全かが分かります。段階の考え方は嚥下食の分類にまとめています。自己流で形を決めるより、評価に基づくほうが安全で、しかも必要以上に食事を制限せずに済みます。

続けるための組み込み方

体操は、続けなければ意味がありません。しかし、続かないのが実情です。習慣に組み込む工夫が要ります。

最も確実なのは、食事の前に必ず行うと決めてしまうことです。「毎日やる」では続きませんが、「食事の前にやる」なら、食事が合図になります。1日3回、それぞれ2分から3分。これで十分な回数になります。

次に、短くすることです。10分の体操は続きませんが、2分なら続きます。全部の項目をやろうとせず、その方に必要な3つか4つに絞ってください。何を優先すべきかは、言語聴覚士に聞けば教えてもらえます。

そして、一緒にやることです。本人だけにやらせると、やらされている感覚になります。家族も一緒に、向かい合ってやってください。真似をするほうが、言葉で説明されるより伝わります。

記録をつけると続きやすくなります。カレンダーに丸をつけるだけでかまいません。続いていることが目に見えると、やめにくくなります。逆に、できなかった日を責めないでください。責めると、体操そのものが嫌になります。

効果をどう確かめるか

体操を続けていても、効いているかどうかが分からないと、続ける気持ちが保てません。確かめ方があります。

最も分かりやすいのは、むせる回数です。1日に何回むせたかを、1週間ごとに数えてみてください。減っていれば、何らかの効果が出ています。増えているなら、体操の内容を見直すか、飲み込みの評価を受け直す時期です。

食事にかかる時間も指標になります。同じ献立で、以前より短く食べられるようになっていれば、処理する力が上がっています。逆に長くなっているなら、状態が落ちている可能性があります。

声の変化も見てください。食後に声がかすれる、湿ったような声になる。これは、のどに食べものが残っているしるしです。この変化が減っていれば、飲み込みきる力が上がっています。

そして、体重と発熱です。体重が保たれ、原因の分からない発熱がない状態が続いていれば、食べる力が保たれているということです。これらの記録を持って専門職に相談すれば、体操の内容を今の状態に合わせて調整してもらえます。効果が出ないまま同じ内容を続けても意味がありません。

食事形態を、その日の状態に合わせて選べます

配食のふれ愛 太子店では、普通食のほかに、やわらかく仕上げた小町食・きざみ・一口大・ムース食をご用意しています。同じ献立を形だけ変えてお届けできるため、ご家族と同じものを召し上がれます。どの形が合うか分からないときは、まず無料試食でお試しください。

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嚥下障害

飲み込みがうまくいかない状態。むせや口の中の残留が目印になります。

ケアマネジャー

介護保険のケアプランを作り、サービス事業者との調整を担う専門職です。

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