水分でむせるとき|配食のふれ愛 太子店 健康コラム

水がいちばんむずかしい理由

「固いものは食べられるのに、お茶でむせる」という訴えは非常によくあります。直感に反しますが、飲み込みの観点では水がいちばん難しいのです。

  • 速い。口から喉へ一気に流れ、反射が間に合わない
  • まとまらない。口の中でひとかたまりにならず、ばらばらに流れ込む
  • 感じにくい。味も温度も刺激が弱く、喉が「来た」と気づきにくい

だから、飲み込みの力が落ち始めると最初に水分でむせます。ここは体調の変化を知る目印にもなります。

とろみをつける前に試すこと

とろみは有効な手段ですが、水分量が減るという副作用があります。まず次を試してみてください。

工夫ねらい
あごを引いて飲む気管の入り口を狭める。最も効果が早い
一口を少なくする一度に流れ込む量を減らす
コップの形を変える飲み口が斜めにカットされたコップなら、あごを上げずに飲み干せる
ストローを使わない吸う勢いで奥へ飛び込みやすい方には向きません
冷たいものにする冷たさが刺激になり、飲み込みの反射が出やすくなります
炭酸を使う刺激で反射が出やすくなるという報告があります
飲む前に一度、空嚥下する喉の準備ができる

ペットボトルから直接飲むと、必ずあごが上を向きます。コップに移して飲むだけでむせが減る方がいます。

とろみ以外で水分を摂る

飲み物でむせるなら、食べる形で水分を入れます。

  • ゼリー飲料・水分補給ゼリー:まとまって喉を通るので、水よりずっと安全です
  • 茶碗蒸し、プリン、ヨーグルト
  • 汁物にとろみをつける:味噌汁、あんかけ
  • 果物:すいか、梨、みかん(つぶす・ゼリーにするとより安全)
  • おかゆ、雑炊:主食で水分を稼げます

高齢者に必要な水分は、飲み物として1日1.0〜1.5Lが目安です(食事からとる分は別)。心臓や腎臓の病気で制限がある方は、主治医の指示が優先します。

記録をとる

とろみをつけたあとに水分量が落ちるのはよくあることですが、落ちたことに誰も気づかないのが問題です。1週間でよいので記録してください。

  • 1回に飲んだ量(コップ何杯、mLで)
  • 1日の合計
  • むせた回数と、そのとき飲んだもの
  • 尿の回数と色(濃い黄色は不足の目印)

合計が1日800mLを切る日が続くなら、脱水の危険域です。ケアマネジャーか主治医に相談してください。

受診したほうがよい場合

  • 急にむせるようになった(数日〜数週間のうちの変化)
  • 食事中だけでなく、唾液でもむせる
  • むせたあと、声がガラガラになる
  • 微熱が続く、痰が増えた(誤嚥性肺炎の疑い)
  • 体重が減っている

特に1つ目は、脳の病気や薬の副作用が背景にあることがあります。徐々にではなく急に、という変化は受診の理由になります。

なぜ水がいちばん危ないのか

飲み込みにくさがある方にとって、最も危険なのは、かたいものでも大きいものでもなく、水です。ここを意外に思う方が多いのですが、理由があります。

水は、口の中でまとまりません。舌の上で塊にできず、四方に広がります。そして、非常に速く流れます。飲み込む準備が整う前に、のどの奥に到達してしまうのです。健康な方なら反射で気管をふさげますが、その反射が遅れている方では間に合いません。

さらに、水は無味無臭で、口の中に入ったことを感じにくいという性質があります。感覚が鈍っている方では、口に入ったこと自体に気づくのが遅れます。「ごはんは食べられるのに水でむせる」というのは、症状が軽いのではなく、むしろ飲み込みの問題が始まっているサインです。

そして、水でむせることを本人が自覚すると、飲むのを控えるようになります。その結果、脱水になり、体力が落ち、飲み込む力もさらに落ちます。むせるから飲まない、という判断が、状態を悪くします。

とろみをつける前に試せること

水でむせるからといって、すぐにとろみをつけるとは限りません。先に試せることがあります。

まず、姿勢です。あごが上がった状態で飲むと、水がまっすぐ のどへ流れます。あごを軽く引いて飲むだけで、むせが減ることがあります。コップの縁が鼻に当たって、あごが上がってしまう場合は、鼻の当たる部分を切り取った専用のコップがあります。

次に、1回の量です。ごくごく飲むと、量が多すぎて処理しきれません。スプーン1杯ずつ、あるいは少しずつ口に含んで飲む形に変えるだけで、むせが減ります。ストローを使うと勢いよく吸い込むことがあるので、状態によっては向きません。

そして、温度です。常温の水は、口の中で感じにくく、飲み込みの反射が起こりにくくなります。冷たい水、あるいは温かい飲みものにすると、感覚が刺激されて反射が起きやすくなります。

飲む場面も見直してください。疲れているとき、眠いとき、話しながら飲むとき。集中していないときほどむせます。座って、落ち着いた状態で飲むという当たり前のことが、大きく効きます。

とろみ以外で水分を取る方法

とろみをつけた水が苦手で飲めない、という方は多くいます。無理に飲ませても量が入らないなら、別の形で水分を取ってください。水分は、飲みものからだけ取るものではありません。

ゼリー飲料、水ようかん、ゼリー、プリン、茶わん蒸し、豆腐、果物、アイスクリーム。これらはすべて水分です。市販の水分補給用ゼリーは、1個で100〜200mLの水分が取れるように作られています。

汁ものも有効です。みそ汁、すまし汁、スープ。具を入れることで、汁だけの状態より飲み込みやすくなります。ただし、汁と具が別々に動くと危険な方もいるので、状態によってはとろみをつけるか、ポタージュのようにまとめた形にしてください。

おかゆ、麺類、煮物、鍋。食事そのものからも、1日500〜800mL程度の水分が入っています。食事量が落ちると、この分の水分も一緒に減ることを覚えておいてください。

1日にどれくらい必要かというと、目安は1,200〜1,500mLです。これを飲みものだけで取ろうとすると大変ですが、食事とゼリーを合わせれば届きます。心臓や腎臓の状態によっては制限がある方がいるので、その場合は指示に従ってください。

記録をとると判断できるようになる

むせるかどうかは日によって違います。感覚で判断していると、何が効いているのか分かりません。記録をとってください。

書くのは4つです。何を飲んだか。どれくらいの量か。むせたかどうか。そのときの姿勢と体調。1週間ぶん書くだけで、傾向が見えてきます。

見えてくることの例を挙げます。朝はむせないが夕方はむせる。疲れているとむせる。とろみが薄いとむせる。冷たいものはむせない。座って飲めばむせない。こうした個別の傾向は、一般的な説明からは分かりません。

そして、水分がどれだけ入っているかも記録してください。「飲めている」と思っていても、実際に数えると1日600mLしか入っていない、ということがよくあります。コップ何杯、ゼリー何個、汁もの何杯。数えれば分かります。

この記録は、受診のときにそのまま使えます。「よくむせます」より、「水でむせるが、とろみをつければむせない。1日の水分は約900mL」のほうが、はるかに具体的な相談ができます。

脱水を見逃さない

水分でむせる方は、脱水になりやすい状態にあります。そして、高齢の方の脱水は、症状が分かりにくく、気づいたときには進んでいます。

目印を挙げます。尿の量が減った。尿の色が濃い。口の中や舌が乾いている。皮膚をつまむと戻りが遅い。わきの下が乾いている。立ちくらみがする。ぼんやりしている。話がかみ合わない。微熱がある。便秘になった。とくに、いつもと様子が違うという印象は、脱水を疑う重要な手がかりです。

脱水は、それだけで意識の低下、転倒、腎臓の悪化を招きます。そして、脱水になると唾液が減り、飲み込む力がさらに落ちるという悪循環に入ります。

夏場、発熱したとき、下痢のあと、暖房の効いた部屋で過ごしているとき。これらの場面では、意識して水分を増やしてください。本人はのどの渇きを感じません。周囲が声をかけて勧める必要があります。

1日の水分量が900mLを下回る日が続いているなら、対策が必要な段階です。飲む回数を決める、時間を決めて勧める、ゼリーを常備する。形を変えてでも量を確保してください。

専門職に評価してもらう

水でむせる状態が続いているなら、自己流で対応し続けるのではなく、一度評価を受けてください。とろみの濃さも、本来は評価に基づいて決めるものです。

まず、かかりつけ医に伝えてください。飲み込みの検査ができる医療機関を紹介してもらえます。実際に飲み込む様子を見る検査があり、どの形なら安全かが分かります。

言語聴覚士による評価も受けられます。飲み込みの訓練、姿勢の調整、食べものの形の助言まで、具体的な指導が受けられます。病院、訪問リハビリ、通所リハビリなどで受けられる場合があります。

受診したほうがよい状態を挙げます。水以外でもむせるようになった。食事に時間がかかるようになった。食後に痰が増える。声がかすれる。原因のはっきりしない熱が出る。体重が減っている。とくに、熱と痰は誤嚥が起きているサインの可能性があるので、すぐに受診してください。

そして、とろみをつけていれば安心、と思わないでください。濃すぎるとろみは、かえって のどに残って危険になることがあります。濃さの決め方と付け方はとろみ食の付け方にまとめていますが、その方に合う濃さは評価で決めるのが確実です。

とろみをつけすぎない

とろみは、濃ければ安全というものではありません。濃すぎることの害を知らずに、念のため濃くしている家庭が多くあります。

濃すぎるとろみは、飲み込むのに力が要ります。力の弱い方では、のどに残ってしまい、そのあとで気管に落ちることがあります。薄すぎる場合と同じように、濃すぎる場合も誤嚥につながります。

そして、飲む量が減ります。ねっとりして飲みにくいものを、進んで飲む人はいません。水分を取ってもらうためにとろみをつけたのに、結果として脱水になるという逆転が起きます。

適切な濃さは、飲み込みの評価で決まります。「スプーンで少し傾けると流れ落ちる」くらいの薄いとろみで足りる方が多くいます。専門職から指示された濃さを、勝手に変えないでください。

また、時間がたつと濃くなる性質があります。作ってすぐは適切でも、30分後には別物になっていることがあります。飲む直前に作る、あるいは作り置きの場合は濃さを確かめてから出してください。濃さの段階はとろみ食の付け方にまとめています。

食事形態を、その日の状態に合わせて選べます

配食のふれ愛 太子店では、普通食のほかに、やわらかく仕上げた小町食・きざみ・一口大・ムース食をご用意しています。同じ献立を形だけ変えてお届けできるため、ご家族と同じものを召し上がれます。どの形が合うか分からないときは、まず無料試食でお試しください。

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関連用語

嚥下障害

飲み込みがうまくいかない状態。むせや口の中の残留が目印になります。

脱水症

体内の水分と電解質が不足した状態。高齢者は喉の渇きを感じにくく気づきが遅れます。

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とろみ調整食品で粘度をつけた食事や飲み物。むせを防ぐ工夫です。

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