下痢が続くとき|配食のふれ愛 太子店 健康コラム

まず脱水を防ぐ

高齢者は体内の水分量がもともと少なく、喉の渇きも感じにくいため、下痢による脱水が急速に進みます。これが最も危険な点です。

水だけを飲むと、失われた電解質が戻らず、かえって具合が悪くなることがあります。塩分と糖分を含んだものを、少量ずつ、頻回に。

  • 経口補水液が最も適しています(薬局で購入できます)
  • 薄めたスポーツドリンク+ひとつまみの塩
  • みそ汁の上澄み、重湯、番茶
  • 一度に飲まない。50mLずつ、15〜30分おきに
  • 冷たすぎるものは腸を刺激します。常温で

心臓病・腎臓病で水分や塩分の制限がある方は、必ず主治医に連絡してください。経口補水液の使用も含めて指示を仰ぎます。

脱水の見分け方

  • 口の中、舌、脇の下が乾いている
  • 尿の回数が減った、色が濃い
  • 手の甲の皮膚をつまむと、戻りが遅い
  • ぼんやりする、返事が遅い、元気がない
  • 立ちくらみ、脈が速い
  • 体重が急に減った(1〜2日で1kg以上)

「ぼんやりする」は重要な目印です。高齢者の脱水は、意識の変化として最初に現れることがあります。

食事の戻し方

段階食べるもの
症状が強い時期経口補水液、重湯、りんごのすりおろし。無理に食べない
落ち着いてきたらおかゆ、うどん、白身魚、豆腐、じゃがいも、バナナ
ほぼ戻ったらやわらかく煮た野菜、卵、鶏ささみ
控える脂っこいもの、乳製品(一時的に)、食物繊維の多い生野菜、香辛料、アルコール、カフェイン、冷たいもの

絶食を長引かせないでください。かつては「腸を休ませる」と言われましたが、現在は早めに食べたほうが腸の粘膜が回復しやすいと考えられています。食べられるものから戻します。

市販の下痢止めに注意

感染性の下痢(細菌やウイルス)では、下痢止めで排出を止めると、かえって病原体が体内に留まり悪化することがあります。

次の場合は下痢止めを使わず、受診してください。

  • 発熱をともなう
  • 血が混じる
  • 激しい腹痛がある
  • 周囲に同じ症状の人がいる(集団発生)
  • 抗生物質を飲んでいる、または最近飲んだ

最後の項目は重要です。抗生物質の使用後に起きる下痢(偽膜性大腸炎など)は、専用の治療が必要です。自己判断で市販薬を使わないでください。

受診の目安

  • 水分がとれない、吐いてしまう
  • 尿がほとんど出ていない
  • ぼんやりしている、呼びかけへの反応が鈍い
  • 血便、黒い便
  • 38度以上の発熱
  • 3日以上続く
  • 下痢と便秘を繰り返す状態が数週間続く

最後の項目は、大腸の病気の可能性があります。「年のせい」で済ませないでください。

食中毒の予防は食中毒予防、脱水全般は脱水予防をご覧ください。

水分と塩分をどう取るか

下痢が続くと、水と一緒に塩分も失われます。水だけを飲んでいると、体の塩分が薄まって、かえって具合が悪くなることがあります。水と塩分を一緒に取ることが基本です。

手軽なのは、経口補水液です。薬局で買えます。水分と塩分と糖分が、体に吸収されやすい割合で配合されています。スポーツ飲料は糖分が多く塩分が少ないため、下痢のときには経口補水液のほうが向いています。スポーツ飲料しかない場合は、水で薄めて塩をひとつまみ加えると近くなります。

飲み方は、一度にたくさんではなく、少しずつ何度もです。コップ半分を、15分から30分おきに。一気に飲むと、腸が刺激されてかえって下痢が増えます。吐き気があるときは、スプーン1杯ずつから始めてください。

1日にどれくらい必要かというと、失った分に加えて、普段の必要量が要ります。下痢が続く日は、1,500mL以上を目安にしてください。ただし、心臓や腎臓の病気で水分を制限されている方は、自己判断で増やさず、医療機関に連絡してください。制限がある方の脱水は、判断が難しく危険なので、家庭で対処しないでください。

食事をどの順で戻すか

下痢のときに絶食したほうがよいと考える方がいますが、長く食べないでいると腸の回復が遅れます。吐き気がなく食べられるなら、早めに戻していくほうが治りが早くなります。

最初に戻すのは、糖質を中心とした消化のよいものです。おかゆ、うどん、白いパン、じゃがいも、バナナ。味付けは薄めにして、温かくして出します。冷たいものは腸を刺激するため、この時期は避けてください。

次に、脂の少ないたんぱく質を加えます。白身魚、鶏のささみやむね肉、豆腐、卵。調理は、ゆでる、蒸す、煮るにします。揚げものと炒めものは、まだ早い段階です。

最後に、油と食物繊維と乳製品を戻します。この3つは、腸が回復しきる前だと下痢を長引かせることがあります。とくに、下痢のあとは一時的に乳糖を分解する力が落ちることがあるため、牛乳で調子が悪くなる方がいます。ヨーグルトのほうが戻しやすいので、まずそちらから試してください。

そして、避けるものを挙げます。冷たいもの、辛いもの、脂の多いもの、アルコール、カフェイン、糖分の多い飲みもの、繊維の硬い野菜。これらは症状が落ち着くまで控えてください。

高齢の方で危ないサインを見逃さない

高齢の方の下痢は、若い方より危険です。体の水分の蓄えが少なく、のどの渇きを感じにくいため、気づかないうちに脱水が進みます。そして、脱水は意識の低下や転倒、腎臓の悪化につながります。

脱水を見分ける目印を挙げます。尿の量が減った、尿の色が濃い、口の中が乾いている、舌が乾いている、皮膚をつまむと戻りが遅い、目がくぼんで見える、立ちくらみがする、ぼんやりしている、脈が速い。とくに、いつもと様子が違う、話がかみ合わないというのは、脱水が進んでいるサインとして重要です。本人は訴えません。

すぐ受診すべき場合を挙げます。便に血が混じる。黒い便が出る。強い腹痛がある。高い熱がある。嘔吐が続いて水も飲めない。1日に何度も下痢が続いて水分が追いつかない。意識がはっきりしない。尿が半日以上出ていない。これらのいずれかがあれば、様子を見ずに医療機関に連絡してください。

また、複数の人が同時に下痢をしている場合は、感染性のものを疑ってください。施設や家庭で広がることがあります。手洗い、吐いたものや便の処理のしかた、消毒。この場合の対応は、通常の下痢とは別に必要になります。自己判断で下痢止めを飲むと、原因となるものが体内にとどまり、かえって悪化することがあります。

長引く下痢の背景を疑う

数日で治まる下痢と、何週間も続く下痢は、別のものとして考える必要があります。長引く場合は、食あたりではない原因が隠れていることがあります。

まず、薬です。抗生物質を飲んだあとに下痢が続くことがあります。ほかにも、胃薬、糖尿病の薬、心臓の薬、便秘薬の飲みすぎなどが関わることがあります。下痢が始まった時期と、薬が変わった時期が近いなら、まず薬を疑ってください。ただし自分でやめず、医師か薬剤師に相談します。

次に、食べているものです。乳糖を分解する力が落ちている、人工甘味料を含む食品を多く取っている、脂の多い食事が続いている。こうした場合は、原因を減らせば治まります。何を食べたときに悪くなるかを記録すると、見当がつきます。

そして、便秘との関係です。硬い便が詰まっていて、そのわきから液状の便だけが出ているという状態があります。これは下痢に見えますが、実際は便秘です。下痢止めを飲むと悪化します。下痢と便秘を繰り返している、おなかが張っている、といったときは、この可能性を医師に伝えてください。

そのほか、腸の病気、甲状腺の病気、膵臓の病気なども、慢性の下痢の原因になります。2週間以上続く下痢は、原因を確かめる対象です。市販薬でしのぎ続けず、受診してください。体重が落ちている場合は、とくに急いでください。

下痢のあとに体重と体力を戻す

下痢が治まっても、そこで終わりではありません。数日食べられなかったぶん、体重と筋肉が落ちています。高齢の方の場合、この落ちたぶんが自然には戻りません。回復期の食事が、その後の生活を左右します。

下痢が治まったあとの1〜2週間は、意識して量を増やす時期です。食欲が完全に戻っていなくても、回数を増やして少しずつ入れてください。おかゆから普通のごはんに戻し、たんぱく質を毎食に入れ、間食を足す。この時期に十分に食べられるかどうかで、体力の戻り方が変わります。

体を動かすことも欠かせません。数日寝ていただけでも、足の筋肉は落ちます。食べるだけでは筋肉は戻らず、動かすことと組み合わせて初めて戻ります。いきなり元の生活に戻すのではなく、座る時間を増やす、立つ、少し歩く、と段階を踏んでください。

そして、体重を量ってください。下痢の前と比べて落ちているなら、戻すまで意識して食べる必要があります。「元気になったから大丈夫」と量を戻さないでいると、落ちたところで固定されます。高齢の方では、こうした一度ごとの落ち込みが積み重なって、動けなくなっていきます。1回の下痢を軽く見ないでください。

介護する人と施設が気をつけること

下痢が起きたとき、介護する側が気をつけることがあります。本人の症状への対応と、周囲への広がりを防ぐことの両方です。

まず、記録を取ってください。1日に何回か、どんな便か、量はどれくらいか、食事はどれだけ取れたか、水分はどれだけ飲めたか、熱はあるか。この記録が、受診したときの判断材料になります。「何回か下痢をしました」では、脱水の程度が分かりません。

次に、水分を勧める役目です。高齢の方は自分から飲みません。声をかけて、少しずつ何度も勧めてください。飲めているかどうかは、尿の回数と色で分かります。半日以上尿が出ていないときは、脱水が進んでいる可能性があります。

そして、感染性のものである可能性を常に考えてください。便や吐いたものには、感染力のあるものが含まれていることがあります。処理するときは手袋を使い、処理後は石けんで手を洗ってください。アルコール消毒だけでは効かないものがあるため、流水と石けんでの手洗いが基本です。汚れた衣類は分けて洗い、周囲の消毒の方法は保健所や医療機関の指示に従ってください。施設では、同じ症状の方が複数出た時点で報告の対象になります。

施設や家庭でうつさないために

下痢の原因が感染である場合、周囲に広がります。高齢の方が集まる場所では、これが大きな問題になります。

まず、手洗いです。石けんと流水で、指の間と爪の先まで洗ってください。アルコールの消毒だけでは効きにくい原因があるため、洗い流すことが基本になります。介助のたび、片づけのたびに洗ってください。

汚れたものの扱いにも注意が要ります。手袋をして扱う、袋に密閉して捨てる、床や便座を消毒する。飛び散った目に見えない部分から広がります。

そして、消毒には適した薬剤があります。原因によって効く薬剤が違うため、何を使うべきかを保健所や医療機関に確かめてください。台所用の塩素系漂白剤を薄めて使う方法が示されることがあります。

同じ時期に複数の人が下痢をしているなら、すぐ相談してください。施設では、報告が必要になる場合があります。広がってからでは対応が難しくなります。一人目の段階で動くことが、被害を小さくします。

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関連用語

脱水症

体内の水分と電解質が不足した状態。高齢者は喉の渇きを感じにくく気づきが遅れます。

おかゆ

米を多めの水で炊いた主食。水分量で全粥・七分粥などに分かれます。

低栄養

エネルギーとたんぱく質が不足した状態。高齢者の要介護化の入口になります。

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