「繊維を摂れ」と言われて野菜を増やしたら、余計に苦しくなった
| 水溶性食物繊維 | 不溶性食物繊維 | |
|---|---|---|
| 性質 | 水に溶けてゲル状になる | 水を吸って膨らむ |
| 働き | 便をやわらかくする。糖の吸収を緩やかにする。コレステロールを排出する。腸内細菌のえさになる | 便のかさを増やす。腸を刺激して動かす |
| 多い食品 | 海藻、大麦、オートミール、里いも、こんにゃく、果物、納豆、オクラ、山いも | 穀類、豆類、野菜、きのこ、いも、ごぼう、切り干し大根 |
| 目安の比率 | 水溶性1:不溶性2 | |
日本人が普通に食事をしていると、不溶性のほうが多くなり、水溶性が不足します。意識して足すべきは水溶性のほうです。
ここが実務上いちばん大切な点です。
| タイプ | 状態 | 増やす側 |
|---|---|---|
| 弛緩性便秘 | 腸の動きが弱い。高齢者に最も多い | 不溶性で腸を刺激。ただし水分を必ず一緒に |
| けいれん性便秘 | 腸が緊張している。コロコロ便、下痢と交互 | 水溶性。不溶性を増やすと悪化します |
| 直腸性便秘 | 便意を我慢する習慣。便が直腸にたまる | 水溶性でやわらかく。加えて排便習慣の立て直し |
「食物繊維を摂ったら余計に苦しくなった」という方は、けいれん性便秘に不溶性を足している可能性があります。ごぼう・玄米・きのこを増やすのではなく、海藻・大麦・果物に切り替えてみてください。
不溶性食物繊維は水を吸って膨らみます。水分が足りない状態で不溶性ばかり増やすと、硬い便のかたまりができて、かえって出なくなります。
高齢者は脱水気味であることが多いため、この失敗が起きやすくなります。食物繊維を増やすなら、水分も同時に増やす。これは必ずセットです。
いちばん実行しやすいのは大麦です。1袋買って白米に混ぜるだけで、家族全員の摂取量が上がります。
目標量は男性20g以上、女性18g以上(65歳以上)ですが、日本人の平均は14〜15g程度で不足しています。
一方で、急に大量に増やすとお腹が張り、ガスが増えます。1〜2週間かけて少しずつ増やしてください。
関連して便秘対策、腸内細菌と食事、血糖値スパイクもご覧ください。
食物繊維を増やせば便秘が治る、という理解は単純すぎます。高齢の方の便秘には、複数の原因が重なっています。
まず、食べる量そのものが減っていることです。入る量が少なければ、出る量も少なくなります。繊維の種類を工夫する前に、全体の量が足りているかを確かめてください。
次に、水分の不足です。高齢の方は喉の渇きを感じにくく、水分が足りていないことが多くあります。水分が足りない状態で繊維だけを増やすと、かえって硬くなり、詰まります。
そして、動かないことです。体を動かさないと、腸の動きも鈍ります。寝ている時間が長い方、外に出なくなった方では、この影響が大きく出ます。
薬の影響も見落とせません。痛み止め、精神科で出される薬、一部の血圧の薬など、便通に影響するものがあります。複数の薬を飲んでいる方は、医師か薬剤師に確かめてください。
繊維を増やすときに、最も重要でありながら見落とされるのが、水分です。
水に溶けない種類の繊維は、水を吸って膨らみ、かさを増やすことで腸を刺激します。水がなければ膨らまず、硬い塊のまま腸に残ります。これが、繊維を増やしたのに悪化する理由です。
1日にどれくらい必要かは、その方の体格や状態によりますが、こまめに取ることが基本です。一度に大量に飲むより、少量を何回にも分けて取るほうが、体に残ります。
水だけで取る必要はありません。お茶、汁もの、牛乳、果物、ゼリー。食事に含まれる水分も、合計に入ります。汁ものを1品足すだけでも、意味があります。
心臓や腎臓の病気で、水分の量に指示が出ている方は、勝手に増やさないでください。この場合は、繊維の増やし方そのものを医師と相談する必要があります。一般的な助言をそのまま当てはめないでください。
繊維を増やすというと、野菜をたくさん食べることを思い浮かべますが、それだけでは続きません。手軽な方法があります。
主食を替えるのが、最も効率的です。白米に雑穀や押し麦を混ぜる、全粒の入ったパンを選ぶ。毎日食べるものなので、少し替えるだけで積み上がります。ただし、消化に負担がかかることがあるため、少量から始めてください。
果物は、そのまま食べられるのが利点です。バナナ、キウイ、りんご、みかん。皮をむくだけで食べられ、水分も同時に取れます。1日1個から2個程度が目安です。
いも類、海藻、きのこ、豆類も豊富です。煮物、味噌汁の具、和えもの。やわらかく調理すれば、噛む力が落ちている方にも使えます。
そして、納豆とオートミールは、両方の種類の繊維を含む食品として知られています。やわらかく、調理の手間も少なく、たんぱく質も同時に取れます。毎日の食卓に組み込みやすい食品です。
繊維だけでなく、腸の中の細菌のはたらきに目を向ける考え方があります。
ヨーグルト、納豆、みそ、漬物、甘酒。これらは、日本の食卓に古くからある発酵食品です。特別なものを買わなくても、日常の食事の中に組み込めます。
水に溶ける種類の繊維は、腸の中の細菌のえさになると言われています。発酵食品と繊維を一緒に取ることで、相乗の効果が期待されます。納豆に海藻を足す、ヨーグルトに果物を足す。この組み合わせが分かりやすい形です。
ただし、効果には個人差があります。合う人と合わない人がいます。2週間ほど続けて変化がなければ、別の方法を試してください。
そして、続けられることが最も重要です。1日だけ大量に取っても意味がありません。毎日少しずつ、無理なく続けられる形を選んでください。高価な製品である必要はありません。
体に良いものだから多いほど良い、とはなりません。増やしすぎたときの害を知っておいてください。
まず、お腹が張ります。ガスが増え、不快感が出ます。食事の量が落ちる原因になり、結果として栄養が不足します。
そして、他の栄養素の吸収に影響することがあります。鉄、亜鉛、カルシウムなど、微量の栄養素の吸収を妨げると言われています。もともと不足しがちな方では、この影響が問題になります。
急に増やすと、体がついてきません。少量から始めて、数週間かけて増やしてください。いきなり多く取ると、腹痛や下痢を起こします。
そして、腸に狭くなっている部分がある方、腸の手術を受けた方では、繊維の多い食事が危険な場合があります。この場合は、必ず医師の指示に従ってください。詰まると、緊急の処置が必要になります。
繊維の多い食品には、飲み込みにくいものが含まれます。安全を優先した選び方が要ります。
ごぼう、たけのこ、れんこん、繊維の残る葉物。これらは噛み切りにくく、口の中でばらけます。飲み込む力が落ちている方には向きません。
海藻、きのこも、ばらけやすい食品です。細かく刻んで、とろみのある料理に混ぜる。この形にすれば、まとまって飲み込めます。
いも類、かぼちゃ、バナナ、豆をつぶしたもの。これらは、繊維が取れて、なおかつやわらかくまとまります。飲み込みに不安がある方に向いています。
そして、安全のほうが優先です。繊維を取ることより、誤嚥しないことのほうが重要です。その方が安全に食べられる範囲で工夫してください。形については嚥下食の分類にまとめています。
食事を工夫しても便通が改善しない場合、別の原因を考える必要があります。
まず、薬の見直しです。複数の薬を飲んでいる方では、便秘を起こす薬が含まれていることがあります。お薬手帳を持って、医師か薬剤師に相談してください。替えられる薬があるかもしれません。
そして、下剤の使い方です。市販の下剤を長く使い続けると、効きにくくなることがあります。自己判断で量を増やさず、医師に相談してください。種類によって作用が違い、その方に合ったものがあります。
体を動かすことも欠かせません。散歩、体操、腹部をさする。寝たきりに近い方でも、体の向きを変える、腹部をあたためるといった方法があります。
そして、急に便通が変わった場合は、受診してください。これまでと明らかに違う、血が混じる、体重が落ちている、腹痛がある。これらは、食事の問題ではなく、病気の可能性を示すしるしです。様子を見ずに相談してください。
便通の問題は、感覚だけで語ると食い違いが起きます。記録が判断の材料になります。
書くことは多くありません。いつ出たか、どんな状態だったか、その日に何を食べたか、水分をどれくらい取ったか。これだけを1週間続ければ、傾向が見えます。カレンダーに丸をつけるだけでも構いません。
記録があると、医師や管理栄養士に相談するときに話が早く進みます。「最近便秘気味です」と言うのと、1週間の記録を見せるのとでは、返ってくる助言の具体性がまったく違います。思い出しながら話すと、実際より良く見積もったり悪く見積もったりします。
離れて暮らす家族が様子を見る場合にも、この記録が役に立ちます。電話で「変わりない」と言われても、記録を見れば分かることがあります。本人が問題と思っていない変化を、家族が先に気づくことがあります。
そして、記録を続けること自体が目的ではありません。2週間ほど続けて傾向がつかめたら、やめてかまいません。負担になるほど細かく書く必要はありません。困ったときに再開すればよいものです。
届く食事だけでは、繊維が足りないと感じることがあります。足す方法を考えておきます。
まず、献立表を見てください。野菜、いも、豆、海藻がどれくらい入っているかが分かります。事業者によっては、栄養成分を出しているところもあります。分からなければ問い合わせてください。
足りないと感じたら、家で1品足す形が現実的です。納豆を1パック、果物を1個、味噌汁にわかめを入れる。調理の負担がほとんどなく、毎日続けられます。届いた食事を作り直す必要はありません。
そして、水分を一緒に取ってください。届いた食事に汁ものがついていない場合、お茶や白湯を添えるだけで違います。繊維を足しても水がなければ、かえって詰まる原因になります。
体調に変化があれば、配達の担当者に伝えておくことも一つの方法です。毎日顔を合わせる相手だからこそ、気づくことがあります。当社の見守りの考え方は見守りの基本にまとめています。
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