高齢者にとっての「適正体重」は若い世代とは異なります。やせすぎのリスクを知り、健康長寿のための体重管理を実践しましょう。
BMI(Body Mass Index:体格指数)は、体重(kg)を身長(m)の2乗で割った値で、肥満度の指標として世界的に用いられています。日本肥満学会では成人のBMI 22を標準体重としていますが、高齢者の場合はやや高めのBMIが健康的とされています。
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、65〜74歳のBMI目標範囲を21.5〜24.9、75歳以上では21.5〜24.9と設定しています。これは若い世代の目標範囲(18.5〜24.9)と比べて下限が高くなっており、高齢者にとってやせすぎがいかに危険かを反映しています。
| 身長 | BMI 21.5の体重 | BMI 24.9の体重 |
|---|---|---|
| 150cm | 48.4kg | 56.0kg |
| 155cm | 51.7kg | 59.8kg |
| 160cm | 55.0kg | 63.7kg |
| 165cm | 58.6kg | 67.8kg |
| 170cm | 62.1kg | 71.9kg |
高齢者にとって、太りすぎよりもやせすぎのほうが深刻な健康リスクをもたらすことが、複数の大規模疫学研究で明らかになっています。
日本の大規模コホート研究(JACC Study、約11万人対象)では、BMI 20未満の高齢者はBMI 23〜24.9の群と比較して、総死亡リスクが約1.3〜1.8倍高いことが報告されています。一方、BMI 25〜27程度の「やや太め」の高齢者は、標準体重の群と比べて死亡リスクに大きな差はありませんでした。
特に注意が必要なのは、意図しない体重減少です。6ヶ月で5%以上、または3kg以上の意図しない体重減少がある場合は、何らかの疾患や栄養障害が隠れている可能性があり、早急に医療機関を受診すべきです。
高齢者のやせすぎが問題である一方、太りすぎにも当然リスクはあります。BMI 27を超えると、以下の生活習慣病のリスクが明確に上昇します。
| 疾患 | 肥満との関連 |
|---|---|
| 2型糖尿病 | インスリン抵抗性の増大により発症リスクが2〜3倍に上昇 |
| 高血圧 | 体重5kg増加につき収縮期血圧が約5mmHg上昇 |
| 脂質異常症 | 内臓脂肪の増加がLDLコレステロールの上昇を促進 |
| 変形性膝関節症 | 膝への荷重増加により軟骨の摩耗が加速 |
| 睡眠時無呼吸症候群 | 気道周囲の脂肪沈着により気道閉塞が起きやすい |
ただし、高齢者のカロリー制限は慎重に行う必要があります。極端な食事制限は筋肉量の減少を招き、サルコペニア肥満(筋肉が少なく脂肪が多い状態)を引き起こす恐れがあるためです。減量が必要な場合は、たんぱく質を十分に確保しながら、脂質や糖質を適度に調整することが原則です。
体重管理の基本は、定期的な体重測定と記録です。以下のポイントを意識して、日々の体重変化を把握しましょう。
配食サービスを利用されている方は、配達員が毎日訪問する際の見守りによって、体重変化の兆候(衣服がゆるくなった、食事の残しが増えたなど)を早期に察知できることもあります。体重管理は一人で頑張るものではなく、周囲のサポートを活用しながら継続することが大切です。
感覚では分かりません。
毎日測っても、数字は上下します。一日の変動に振り回されないでください。大事なのは、数か月の流れです。
紙に書いて、並べてください。線でつなぐと、上がっているか下がっているかが見えます。頭で覚えていると、都合よく思い込みます。
そして、その記録を受診のときに持っていってください。医師が判断する材料になります。口で伝えるより、正確です。
測るのが難しい方は、週に一度でも構いません。同じ曜日、同じ時間に測ってください。回数より、条件をそろえることが大事です。
体重計がない場合の見分け方です。
ベルトの穴が変わったら、体重が動いています。本人が気づいていない場合があります。周囲が見てください。
そして、指輪がゆるくなる、入れ歯が合わなくなる。これらも、体が変わったしるしです。見過ごされやすい変化です。
顔つきの変化も、久しぶりに会った人のほうが気づきます。毎日会っていると、分かりません。離れて暮らす家族の指摘は、参考になります。
気づいたら、体重を測ってください。そして、いつからかを思い出してください。期間が短いほど、急いで相談する必要があります。
食べる量が減っただけとは限りません。
体の中で起きていることが原因の場合があります。自己判断で「年のせい」としないでください。受診してください。
そして、口の中の問題が隠れていることがあります。歯が痛い、入れ歯が合わない、口内炎がある。これらは、本人が言い出しにくい部分です。
薬の影響も考えられます。食欲に関わる薬があります。飲んでいる薬をすべて医師に伝えてください。
気持ちの落ち込みも、食べる量を減らします。配偶者を亡くした後、独居になった後。時期と重なっていないか、振り返ってください。
こちらも、原因を分けて考えてください。
むくみによる増加があります。足がむくむ、靴がきつい、短期間で増えた。これらが重なるときは、受診してください。
そして、体を動かす量が減った場合があります。外出が減った、家の中でも動かなくなった。食べる量が同じでも、増えます。
間食が増えている場合もあります。本人に自覚がないことが多くあります。何を食べたか、書き出してみてください。
薬の影響も考えられます。体重の増加に関わる薬があります。勝手にやめず、医師に相談してください。
高齢の方では、やり方が違います。
急に減らさないでください。体をつくる材料まで失われます。筋肉が落ちると、動けなくなります。
そして、主食を極端に減らさないでください。力が出なくなり、転びやすくなります。減らすのは、油と間食からです。
体をつくる材料は、むしろ確保してください。肉、魚、卵、大豆、乳製品。ここを削ると、失敗します。
減らす目標は、医師に確かめてください。若い人と同じ考え方は当てはまりません。数字を自分で決めないでください。
減っている方には、こちらが課題になります。
量を増やすのが難しいなら、密度を上げてください。同じ一口に、より多くの栄養を入れる。これが基本の考え方です。
そして、油を使ってください。少量で、多くの力になります。炒める、和える、かける。
回数を増やす方法もあります。三食が難しいなら、五回に分ける。一回の負担が軽くなります。
間食を、栄養のあるものにしてください。ヨーグルト、チーズ、豆乳、バナナ、栄養を補う飲料。お菓子だけでは足りません。
食事だけでは決まりません。
体を動かさないと、筋肉が減ります。体重が同じでも、中身が変わります。これが最も避けたい状態です。
そして、動く量が減ると、お腹が空かなくなります。食べる量も減り、悪い方に回ります。動くことは、食べるための準備でもあります。
激しい運動は要りません。歩く、立つ、家の中で動く。これで十分です。
体を動かす内容は、医師や理学療法士に確かめてください。膝や腰に痛みがある方は、無理をしないでください。合った方法があります。
時期によって、動きやすい方向があります。
暑い時期は、食欲が落ちて減りやすくなります。そうめんだけ、冷たいものだけになりやすい。意識して補ってください。
そして、寒い時期は、外出が減って動く量が落ちます。家にこもると、増える方向に働きます。室内で動く工夫が要ります。
年末年始は、食べる内容が変わります。味の濃いもの、甘いものが増えます。期間を決めて、後で戻してください。
季節の変わり目は、体調も崩しやすい時期です。体重の急な変化は、体調の変化を映していることがあります。合わせて見てください。
本人だけでは続きません。
指摘の仕方に気をつけてください。「痩せた」「太った」と言われ続けると、食卓が苦痛になります。逆の結果になります。
そして、数字を見せるだけにしてください。評価を加えず、事実を共有する。本人が自分で判断できます。
離れて暮らす家族は、電話で聞いてください。「何を食べた」ではなく「どうだった」と聞くと、答えやすくなります。調子が声に出ます。
訪問する事業者にも、伝えておいてください。気づいた変化を知らせてもらえる形にしておく。早く分かるほど、対応できます。
限られた時間で、正確に伝えるための準備です。
いつから、どれくらい変わったかを伝えてください。「三か月で四キロ減った」という言い方です。期間と量の両方が要ります。
そして、食べる量の変化も伝えてください。減っているのか、変わらないのか。この違いで、考えられる原因が変わります。
ほかの変化も、あわせて伝えてください。疲れやすい、むくむ、便の状態が変わった、熱が出る。関係ないと思うことも伝えてください。
記録があれば、そのまま見せてください。言葉で説明するより早く、正確に伝わります。紙に書いていくだけで違います。
最後に、大事な前提をお伝えします。
体重は、体の状態を映す一つの手がかりにすぎません。同じ数字でも、中身が違えば意味が変わります。筋肉が減って脂肪が増えても、体重は動きません。
そして、握力や歩く速さも、大事な目安になります。ふたを開けにくくなった、横断歩道を渡り切れなくなった。こうした変化のほうが、先に現れることがあります。
体重が保たれていても、食べる内容が偏っていれば栄養は足りません。何を食べているかも、あわせて見てください。数字だけを追わないでください。
気になることがあれば、かかりつけの医師に相談してください。血液の検査で分かることもあります。自分の判断だけで進めないでください。
体重は最も確かな物差しですが、立てない方・体重計の無い家では測れません。 そういうときに使えるのがふくらはぎです。 筋肉の減り方がいちばん早く出る場所で、握力や歩く速さより先に変化します。
数字が動いていたら、体重を減らす話ではなくたんぱく質と総量を増やす話になります (高齢者に必要なたんぱく質量、 フレイルとは?)。
体重が減るのは分かりやすく心配されますが、 短い期間で増えたときのほうが急ぐことがあります。 脂肪は数日では付きません。数日で増えた重さは、ほぼ水です。
| 増え方 | 考えられること | すること |
|---|---|---|
| 3日で2kg以上 | 心不全によるむくみ。肺に水が溜まり始めていることがある | その日のうちに受診。心臓病と食事 |
| 1〜2週間で2〜3kg、足がむくむ | 腎臓の働きの低下、低栄養によるむくみ | 受診。慢性腎臓病(CKD)と食事療法 |
| ゆっくり数か月で増えた | 活動量が落ちた、間食が増えた | 食事より先に、動く量が減った理由を探す |
むくみは、すねの骨の上を指で10秒押して離し、へこみが残るかで見ます。 朝より夕方に強いのがふつうで、朝から残っているときは相談してください。 体重は朝起きてトイレを済ませたあと、同じ服装で測ると比べられます (食事の記録の付け方)。
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