高齢者の慢性腎臓病(CKD)と食事療法|配食のふれ愛 太子店 健康コラム

CKDのステージ分類(G1〜G5)

慢性腎臓病(CKD: Chronic Kidney Disease)とは、腎臓の機能が慢性的に低下した状態、または腎臓の構造的異常(たんぱく尿など)が3ヶ月以上続く状態の総称です。日本腎臓学会によると、日本のCKD患者数は成人の約8人に1人、推定約1,330万人にのぼり、「新たな国民病」と呼ばれています。

CKDは、糸球体濾過量(GFR: Glomerular Filtration Rate)という腎臓の濾過能力を示す値によって5つのステージに分類されます。GFRは血液中のクレアチニン値と年齢・性別から推算されます(eGFR)。

ステージeGFR (mL/min/1.73m²)腎機能の状態食事療法の方針
G190以上正常または高値原疾患の治療、生活習慣改善
G260〜89軽度低下減塩(6g/日未満)、生活習慣改善
G3a45〜59軽度〜中等度低下減塩+たんぱく質管理の開始
G3b30〜44中等度〜高度低下たんぱく質制限+カリウム注意
G415〜29高度低下厳格なたんぱく質・カリウム・リン制限
G515未満末期腎不全透析または腎移植の検討

高齢者のCKDは自覚症状がほとんどないまま進行することが多く、健康診断でeGFRの低下やたんぱく尿を指摘されて初めて発見されるケースが大半です。65歳以上の約30%がG3a以上のCKDに該当するとされており、加齢自体がCKDのリスク因子の一つです。

ステージ別の食事制限

CKDの食事療法で最も重要な柱は、減塩たんぱく質調整カリウム・リン制限適正エネルギーの確保の4つです。ステージが進むほど制限が厳格になります。

減塩 — すべてのステージで基本

腎臓はナトリウム(食塩)の排泄を担う臓器です。CKDではこの排泄機能が低下するため、塩分の過剰摂取は体液量の増加→血圧上昇→腎臓へのさらなる負担という悪循環を引き起こします。

日本腎臓学会のCKD診療ガイドラインでは、すべてのステージで1日6g未満の食塩摂取が推奨されています。これは日本人の平均食塩摂取量(約10g)の約6割にあたります。出汁・酢・薬味を活用した減塩の工夫が欠かせません。

たんぱく質調整 — G3a以降で本格化

たんぱく質は体に必要な栄養素ですが、代謝の過程で尿素窒素やクレアチニンなどの老廃物が生成されます。これらの老廃物は腎臓で濾過・排泄されるため、たんぱく質の過剰摂取は腎臓に負担をかけます。

ステージたんぱく質の目安体重60kgの場合
G1〜G2過剰摂取を避ける60g/日以下
G3a0.8〜1.0 g/kg/日48〜60g/日
G3b〜G50.6〜0.8 g/kg/日36〜48g/日

ただし、高齢者のたんぱく質制限は慎重に行う必要があります。過度な制限はサルコペニアやフレイルを促進するリスクがあるためです。特にG3aの段階では、腎臓の保護とフレイル予防のバランスを取ることが求められ、腎臓専門医と管理栄養士の連携が重要です。

カリウム制限 — G3b以降で注意

腎機能が低下するとカリウムの排泄能力も落ち、血中カリウム濃度が上昇します(高カリウム血症)。カリウム値が6.0mEq/L以上になると不整脈を起こし、最悪の場合心停止に至る危険性があります。

G3b以降ではカリウムの摂取に注意が必要です。カリウムは生の野菜・果物・いも類・豆類に多く含まれますが、水にさらす・茹でこぼすことで30〜50%を減らすことができます。

  • カリウムの多い食品:バナナ、メロン、ほうれん草、トマト、じゃがいも、大豆、アボカド
  • 減らす調理法:細かく切って水にさらす(30分以上)、茹でこぼす、缶詰の果物を利用する
  • 注意:干し柿、ドライフルーツ、野菜ジュースは少量で高カリウムになりやすい

リン制限 — G4以降で重要

リンはカルシウムとともに骨を構成するミネラルですが、CKDが進行するとリンの排泄が低下し、血中リン濃度が上昇します。高リン血症は血管の石灰化(動脈硬化)を促進し、心血管疾患のリスクを著しく高めます。

リンは肉・魚・乳製品・加工食品に多く含まれます。特に加工食品(ハム・ソーセージ・練り物・菓子パン・清涼飲料水)に含まれるリン酸塩は吸収率が高く注意が必要です。たんぱく質制限を行うことで、自然とリンの摂取量もある程度抑えられます。

たんぱく質調整食の活用

CKDの食事療法では、たんぱく質を制限する一方で、十分なエネルギーを確保することが極めて重要です。エネルギー不足になると、体がたんぱく質(筋肉)をエネルギー源として分解するため、結果的にたんぱく質制限の意味がなくなるだけでなく、筋肉量の低下を招きます。

このジレンマを解決するために、たんぱく質調整食品が活用されます。

  • 低たんぱく質米:通常のごはんの約1/10〜1/25のたんぱく質量。エネルギーは同等に確保
  • たんぱく質調整パン・麺:小麦たんぱくを除去し、炭水化物でエネルギーを確保
  • 中鎖脂肪酸(MCT)オイル:少量で効率よくエネルギーを摂取。料理や飲み物に加える
  • でんぷん食品:春雨・くずきり・はるさめなど低たんぱく質でエネルギー豊富な食材

配食のふれ愛では、たんぱく質調整食メニューをご用意しており、1食あたりのたんぱく質量を管理しながら、十分なエネルギーと味わいのある食事をお届けしています。

透析期の食事

CKDがG5に進行し、腎臓の濾過機能がほぼ失われると、人工透析が必要になります。日本透析医学会によると、2022年末時点で日本の透析患者数は約34.9万人で、平均年齢は69.8歳と高齢化が進んでいます。

透析を開始すると、食事制限の内容が大きく変わります。

項目保存期(G3〜G5)血液透析期
たんぱく質制限する(0.6〜0.8g/kg/日)やや緩和(1.0〜1.2g/kg/日)
エネルギー十分に確保十分に確保(25〜35kcal/kg/日)
食塩6g/日未満6g/日未満
カリウム制限あり2,000mg/日以下
リン制限ありたんぱく質(g)×15mg以下
水分制限なし〜軽度制限できるだけ少なく(透析間体重増加を抑える)

透析では老廃物とともにアミノ酸(たんぱく質の構成成分)も失われるため、保存期と異なりたんぱく質制限がやや緩和されます。しかし、カリウム・リン・水分の制限は引き続き重要であり、食事管理の難易度はむしろ上がります。

CKDの食事療法は複雑で、ステージや合併症によって内容が大きく異なります。自己判断で制限を行うと栄養バランスを崩す恐れがあるため、必ず腎臓専門医と管理栄養士の指導のもとで実践してください。

自己判断で制限を始めない

この記事で最も伝えたい点です。

制限の内容は、人によってまったく違います。同じ病名でも、段階によって指示が変わります。一般的な情報で決めないでください。

そして、必要のない制限は、害になります。栄養が不足し、体力が落ちます。高齢の方では、こちらのほうが危険になることがあります。

検査の数字を見た医師が判断します。指示を紙でもらってください。家族にも共有できます。

指示は変わります。去年の指示が、今年も同じとは限りません。受診のたびに確かめてください。

検査の数字を並べて見る

一度の結果では分かりません。

検査の紙を、捨てずに残してください。並べると、動きが見えます。これが判断の材料になります。

そして、ゆっくり進むものです。一度の数字に一喜一憂しないでください。流れを見てください。

気になる数字があれば、その場で聞いてください。説明を受けないまま帰らないでください。何を目指すかが分からないと、食事も決められません。

複数の医療機関にかかっている方は、結果を共有してください。お薬手帳と一緒に持ち歩く方法があります。重なりも見つかります。

減塩は誰にでも当てはまる

共通する部分です。

段階に関わらず、塩分を控えることが勧められます。ここは変わりません。まずここから始めてください。

そして、一度に薄くすると続きません。少しずつ変えてください。味覚は数週間で慣れます。

調味料より、加工された食品から入る量のほうが多いことがあります。漬物、干物、練り製品、ハム。ここを見直すほうが効きます。

だしと香りで補ってください。しっかりとっただし、酸味、香味野菜。薄くても物足りなさが減ります。

体重と食事量を落とさない

制限と並んで大事な部分です。

制限を守ろうとして、食べる量が落ちる方がいます。これが最も多い失敗です。栄養不足のほうが、体に響くことがあります。

そして、体重が減ると、筋肉も落ちます。動けなくなり、生活が縮みます。ここを守ってください。

体重を測って、記録してください。週に一度でも構いません。減っているなら、受診のときに伝えてください。

力の元が足りないと、体をつくる材料が別の用途に使われます。結果として、制限の意味も薄れます。全体の量を確保してください。

主食を減らさない

間違えやすい部分です。

制限のある方ほど、主食から力を取る必要がある場合があります。減らすと、体力が落ちます。自己判断で減らさないでください。

そして、成分を調整した食品が使える場合があります。薬局や、通信販売で手に入ります。医師や管理栄養士に相談してください。

値段や使い方が分からない方も多くいます。相談すれば、案内してもらえます。一人で調べ込まないでください。

使うかどうかも、指示によります。すべての方に必要なわけではありません。確かめてから始めてください。

むくみと血圧を見る

日々確かめられる部分です。

足のすねを指で押してみてください。へこんだまま戻らないなら、たまっています。毎日確かめる習慣をつけてください。

そして、血圧も測ってください。毎日、同じ条件で。紙に書いて並べてください。

短い期間で体重が急に増えたときは、水分がたまっている可能性があります。脂肪が増えたのとは違います。受診のときに伝えてください。

息苦しさが加わったら、待たないでください。すぐに連絡してください。様子を見ないでください。

薬と市販品の注意

腎臓に関わる部分です。

痛み止めなどを、自己判断で続けないでください。影響がある場合があります。市販のものも含めて、医師に伝えてください。

そして、健康食品や補助的な製品にも注意してください。体に良いとされるものでも、制限の対象になることがあります。飲む前に確かめてください。

お薬手帳を、受診のときに必ず持っていってください。複数の医療機関にかかっている方は、特に大事です。忘れないでください。

処方された薬は、自己判断でやめないでください。調子が良くても続けてください。効いているから、その状態なのです。

作る側の負担を考える

続けるための現実的な話です。

調整した食事を毎日作り続けるのは、簡単ではありません。作る人が疲れ果てると、続きません。途中でやめるより、外の手を使ってください。

そして、一人だけ別の献立にすると、二重の手間になります。共通で作れる部分を増やしてください。味を後から足す形にすると、分けやすくなります。

届けてもらう形なら、買い物と調理と片付けが減ります。指示に対応した内容にできる場合があります。医師の指示を伝えて相談してください。

介護保険を使っている方は、ケアマネジャーに相談してください。組み合わせられる仕組みがあります。一人で抱えないでください。

定期的に見直す

最後に、続け方の話です。

状態が変われば、指示も変わります。一度決めた形を固定しないでください。受診のたびに確かめてください。

そして、体調を崩したときは、対応が変わることがあります。食べられない、下痢が続く、熱が出る。そのときどうするかを、前もって聞いておいてください。

管理栄養士の指導を受けられる場合があります。今の食事内容を見せると、具体的な助言が得られます。医療機関で相談してください。

分からないことは、その場で聞いてください。あいまいなまま持ち帰らないでください。間違った制限は、害になります。

たんぱく質を減らすと、エネルギーが足りなくなります

腎臓病の食事でいちばん多い失敗が、たんぱく質を減らしただけで終わることです。 主菜を半分にすれば、そのぶん一日の総エネルギーが落ちます。 エネルギーが足りないと、体は自分の筋肉を分解して燃やし始め、 その老廃物が腎臓の負担になります。制限したのに数値が悪くなる、という形です。

保存期でも1日25〜35kcal/kgが必要とされます。体重60kgなら1,500〜2,100kcal。 減らしたたんぱく質のぶんは、たんぱく質の少ない材料で埋めます。

埋めるもの使い方
炒める・揚げる・ドレッシングを足す。少量で高エネルギー
砂糖・はちみつ・粉あめ煮物や飲みものに。血糖の管理がある方は主治医に確かめる
でんぷん製品(春雨・くずきり・片栗粉)たんぱく質をほとんど含まずかさが出る
低たんぱく質のごはん・パン主食を減らさずに、たんぱく質だけを落とせる

主食を減らして主菜を残すのは逆です。ごはんから減らすと、 たんぱく質はそのままでエネルギーだけが落ちます。減らす順番は主菜からです。

カリウムは、下ごしらえで落とせます

カリウム制限がかかると、野菜と果物を全部やめてしまう方がいます。 そこまでする必要はありません。カリウムは水に溶けるので、 切り方と茹で方で2〜4割ほど落とせます

  • 小さく切ってから茹でる。切り口が多いほど溶け出します。茹で汁は捨てます
  • 茹でこぼす。いったん茹でて湯を捨て、新しい湯で調理する
  • 水にさらす。細く切って10分以上。生で食べる野菜はこの方法で
  • 煮汁は飲まない。溶け出したカリウムは煮汁に移っています。味噌汁は具だけ食べて汁を残す
  • 芋類は特に多い。じゃがいも・さつまいも・里芋は、必ず下茹でを挟む

逆に、生の果物・野菜ジュース・青汁・干した果物・玉露は カリウムを落とす手がありません。ここだけを控えれば、あとはかなり食べられます。 いわゆる「減塩しお」も塩化カリウムなので、腎臓病の方は使えません。 カリウムそのものの話はカリウムとナトリウムの比にまとめました。

たんぱく調整食という選び方

ここまでを毎食、家庭で計算し続けるのは現実的ではありません。 腎臓病の食事がうまくいかない原因は、知識ではなく作る側が続かないことです。

当店にはたんぱく調整食があります。たんぱく質・食塩・カリウム・リンを あらかじめ抑えて組んだ弁当で、エネルギーは落とさないように作ってあります。 毎食すべてを置き換えなくても、昼だけ、夕だけという使い方で 作る側の負担はかなり減ります。

透析に入ると、たんぱく質はむしろ増やす方向へ変わります(1.0〜1.2g/kg/日)。 制限の中身が入れ替わるので、そのままの献立を続けないでください (透析を受けている方の食事)。 自分の段階でどの制限が要るのかは、必ず主治医と管理栄養士に数字で確かめてください。 栄養指導は保険で受けられます(栄養ケア・マネジメント)。

たんぱく質や塩分に配慮した食事をお届けします

配食のふれ愛では、たんぱく質調整食やカロリー調整食など、たんぱく質や塩分の調整が必要な方に向けた食事メニューをご用意しています。管理栄養士がたんぱく質・塩分・カリウムに配慮した献立で、毎日美味しく食べていただけるお弁当をお届けします。

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関連用語

慢性腎臓病(CKD)

腎機能が慢性的に低下した状態。日本の成人の約8人に1人が該当する「新たな国民病」。

たんぱく質調整食

たんぱく質の摂取量を調整した食事。たんぱく質や塩分を控えたい方の食事管理に役立つ。

ナトリウム(食塩)

食塩の主成分。CKDでは排泄能力が低下するため、1日6g未満の塩分制限が推奨される。

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