高齢者の心臓病と食事|配食のふれ愛 太子店 健康コラム

高齢者の心臓病 — 心不全はなぜ増えているのか

心臓病は日本人の死因の約15%を占め、がんに次いで2番目に多い疾患です。中でも心不全は高齢者に圧倒的に多く、75歳以上の入院原因の第1位を占めています。日本心不全学会は「心不全パンデミック」として、2030年には患者数が130万人を超えると警告しています。

心不全とは、心臓のポンプ機能が低下し、全身に十分な血液を送れなくなった状態です。息切れ、むくみ、疲労感が主な症状で、一度発症すると悪化と改善を繰り返しながら進行します。

心不全のリスク要因

心不全の主なリスク要因は、食事で改善できるものが多いのが特徴です。

  • 高血圧:心不全の最大のリスク因子。心臓に持続的な負担をかける
  • 動脈硬化・冠動脈疾患:心臓の血管が狭くなり、心筋が弱る
  • 糖尿病:高血糖が血管を傷つけ、心臓の微小血管にもダメージを与える
  • 脂質異常症:悪玉コレステロールの上昇が動脈硬化を促進
  • 肥満:心臓への物理的な負担が増加
  • 過度の飲酒:アルコール性心筋症のリスク

心臓を守る食事の3つの柱

柱1:塩分管理

塩分の過剰摂取は血圧を上昇させ、心臓に大きな負担をかけます。日本人の平均食塩摂取量は1日約10gですが、心臓病予防のためには1日6g未満が推奨されています。心不全の方はさらに厳しく、1日3〜6gの制限が求められることもあります。

減塩のポイントは以下の通りです。

  • 醤油やソースは「かける」から「つける」に変える
  • レモン・酢・出汁・香辛料で風味を補う
  • 味噌汁は1日1杯まで、具だくさんにして汁を減らす
  • 漬物・加工食品(ハム、ソーセージ、練り物)を控える
  • 外食やコンビニ食では栄養成分表示の食塩相当量を確認する

柱2:脂質バランスの適正化

心臓の血管を守るために、脂質の「量」と「質」の両方を意識することが大切です。

  • 控えるべき脂質:飽和脂肪酸(脂身の多い肉、バター、ラード)、トランス脂肪酸(マーガリン、ショートニング)
  • 積極的に摂りたい脂質:不飽和脂肪酸、特にオメガ3系脂肪酸(EPA・DHAを含む青魚、えごま油、アマニ油)

1日の脂質エネルギー比率は20〜25%が目安です。肉を食べる際は脂身の少ない部位を選び、調理には植物油(オリーブオイル、なたね油)を使いましょう。

柱3:カリウムとマグネシウムの補給

カリウムはナトリウム(塩分)の排出を促し、血圧を下げる効果があります。マグネシウムは心臓の筋肉の正常な収縮を助け、不整脈の予防に役立ちます。

栄養素豊富な食材1日の推奨量
カリウムバナナ、ほうれん草、さつまいも、アボカド、トマト2,600mg以上
マグネシウムナッツ類、大豆、ひじき、玄米、ほうれん草男性370mg/女性290mg

ただし、腎機能が低下している方はカリウムの過剰摂取に注意が必要です。必ずかかりつけ医に相談しましょう。

地中海食 — 世界が注目する心臓に良い食事パターン

地中海食は、オリーブオイル・魚・野菜・果物・全粒穀物・豆類を中心とした食事パターンで、心臓病予防への効果が世界中で注目されています。

スペインで行われた大規模臨床試験「PREDIMED研究」では、地中海食グループの心血管イベント(心筋梗塞、脳卒中、心血管死)の発症リスクが約30%低下したことが報告されています。

地中海食を日本の食卓に取り入れるコツ

  • 魚を週3回以上:青魚(さんま・さば・いわし)をメインに
  • 野菜を毎食たっぷり:1日350g以上を目標に
  • オリーブオイルを調理に:炒め物やドレッシングに活用
  • 豆類を週2〜3回:煮豆、豆腐、納豆で手軽に
  • 赤身肉は月2〜3回に控える:代わりに鶏肉や魚を
  • ナッツを間食に:素焼きアーモンドやくるみを1日ひとつかみ

和食は元来、魚・大豆・海藻・野菜が豊富で、地中海食の理念と多くの共通点があります。伝統的な和食に少しオリーブオイルやナッツを加えるだけで、心臓に優しい食事パターンが完成します。

心不全と水分管理

心不全の方は、医師から水分制限を指示されることがあります。心臓のポンプ機能が低下すると、体内に水分がたまりやすくなり、むくみや息苦しさの原因となるためです。

一般的な目安は1日1,000〜1,500mlですが、個人の状態によって異なります。水分制限を受けている方は、以下の点に注意しましょう。

  • 味噌汁やスープなどの汁物も水分としてカウントする
  • 氷を舐めると少量の水分で口の渇きを和らげられる
  • 毎日同じ時間に体重を測り、急激な増加がないか確認する
  • 1日の水分摂取量を記録する習慣をつける

一方で、水分を制限しすぎると脱水のリスクもあるため、自己判断は禁物です。必ず医師の指示に従い、定期的な体重測定と診察を受けることが重要です。

毎日体重を測る意味

この病気では、体重が特別な意味を持ちます。

短い期間で急に増えたときは、水分がたまっている可能性があります。脂肪が増えたのとは違います。ここを見分ける手がかりが体重です。

そして、毎日同じ条件で測ってください。朝起きてトイレを済ませた後、同じ服装で。条件をそろえないと、比べられません。

紙に書いて、並べてください。何日で何キロ増えたかが見えます。受診のときに持っていってください。

どれくらいの増え方で連絡すべきかは、医師に確かめておいてください。前もって聞いておけば、迷いません。その場で判断しなくて済みます。

むくみに気づく

体重と並んで、大事な手がかりです。

足のすねを指で押してみてください。へこんだまま戻らないなら、たまっています。毎日確かめる習慣をつけてください。

そして、靴下の跡が深く残る、靴がきつくなる。これらも同じしるしです。本人が気づかない場合があります。

横になっている時間が長い方は、背中や腰にたまることがあります。足だけを見ていると、見落とします。介助する方が確かめてください。

息苦しさが加わったら、待たないでください。特に横になると苦しい場合は、すぐに連絡してください。様子を見ないでください。

食事の量が落ちるという問題

制限だけを考えると、見落とされます。

味を薄くしすぎると、食べられなくなります。食事量が落ち、栄養が不足します。体力が落ちると、回復も遅れます。

そして、この病気では、食欲そのものが落ちることがあります。お腹が張る、少し食べると苦しい。本人の訴えを聞いてください。

一度に食べられないなら、回数を分けてください。三食を五回に。一回の負担が軽くなります。

体重が減り続けているなら、医師に伝えてください。制限より、栄養の確保が優先される場合があります。判断は医師が行います。

減塩を続けられる形にする

やり方の問題です。

一度に薄くすると、続きません。少しずつ変えてください。味覚は数週間で慣れます。

そして、だしと香りで補ってください。しっかりとっただし、酸味、香味野菜、香辛料。塩を減らしても、物足りなさが減ります。

加工された食品を見直してください。漬物、干物、練り製品、ハム。調味料より、こちらから入る量が多いことがあります。

そして、汁物の量と回数を決めてください。一日一杯にする、汁を残す。これだけで大きく変わります。

水分の指示は人によって違う

ここを一般論で判断しないでください。

制限を受けている方と、そうでない方がいます。状態によって、まったく逆の指示になります。自分の指示を確かめてください。

そして、指示は変わることがあります。去年の指示が、今年も同じとは限りません。受診のたびに確かめてください。

制限がある方は、食事に含まれる水分も数えます。汁物、粥、果物、ゼリー。飲み物だけではありません。

暑い時期や、体調を崩したときは、考え方が変わることがあります。そのときの対応を、前もって聞いておいてください。あわてずに済みます。

薬と食べ合わせ

注意が要る組み合わせがあります。

血液を固まりにくくする薬を飲んでいる方は、特定の食品に注意が要ります。納豆、青汁、一部の野菜。医師や薬剤師に確かめてください。

そして、特定の果物や飲み物と、組み合わせてはいけない薬があります。処方のときに説明を受けているはずです。紙を捨てないでください。

薬を飲み忘れないでください。この病気では、飲み忘れが体調に直結します。一日ごとに分ける容器を使ってください。

体調が良いからと、勝手にやめないでください。薬が効いているから、その状態なのです。必ず医師に相談してください。

体を動かす量の決め方

安静にしすぎるのも、良くありません。

動かないと、筋肉が落ちます。そのぶん、日常の動作が苦しくなります。悪い方に回ります。

そして、どこまで動いてよいかは、人によって違います。医師に確かめてください。自己判断で決めないでください。

息切れが出たら、そこで止めてください。無理を重ねないでください。その日の調子で変わります。

心臓の働きを支える取り組みが、医療機関で受けられる場合があります。専門の指導のもとで進められます。相談してみてください。

寒暖の差に気をつける

季節が体に響きます。

急に寒いところに出ると、体に負担がかかります。脱衣所、トイレ、廊下、玄関。暖めておいてください。

そして、熱い風呂に長く入らないでください。負担が大きくなります。湯温と時間を、医師に確かめてください。

暑い時期は、水分が失われます。制限のある方は、どう対応するかを前もって聞いてください。自分で増やさないでください。

季節の変わり目に、体調を崩しやすくなります。この時期は、体重とむくみをより注意して見てください。変化に早く気づけます。

家族が支える部分

一人では続けにくい管理です。

食事を作る人が、指示を知っていなければ実行できません。受診に付き添って、一緒に説明を聞いてください。そのほうが早く伝わります。

そして、記録を家族が手伝ってください。体重、血圧、むくみの有無。本人が続けにくい部分です。

変化に気づいたら、遠慮せず連絡してください。本人は「大丈夫」と言うことが多くあります。周囲の目が要ります。

一人だけ別の献立にすると、作る側が疲れます。家族全体で薄味にするほうが続きます。ほかの家族にも役立ちます。

負担を減らす手を使う

最後に、現実的な話です。

毎日、調整した食事を作り続けるのは、簡単ではありません。作る人が疲れ果てると、続きません。途中でやめるより、外の手を使ってください。

届けてもらう形なら、買い物と調理と片付けが減ります。栄養の調整に対応した内容にできる場合があります。医師の指示を伝えたうえで相談してください。

そして、介護保険を使っている方は、ケアマネジャーに相談してください。組み合わせられる仕組みがあります。一人で抱えないでください。

状態が変われば、食事の内容も変わります。一度決めた形を固定しないでください。受診のたびに見直してください。

心不全の方が、毎日測る3つ

心不全は、悪くなる前に必ず前ぶれが出ます。 検査ではなく、家で毎日測れるものに出ます。 次の3つを同じ時刻に記録してください。

測るものいつ受診の目安
体重朝、トイレのあと、同じ服装で3日で2kg以上増えた/1週間で2kg以上増えた
血圧と脈朝と晩、座って1〜2分休んでからいつもと大きく違う。脈が乱れる、極端に速い・遅い
むくみ夕方、すねの骨の上を10秒押すへこみが戻らない。朝から残っている

あわせて、横になると息が苦しい・夜中に息苦しくて目が覚めるときは、 肺に水が溜まっているしるしです。朝を待たずに連絡してください。 「食欲が無い」「お腹が張る」も、腸のむくみとして出ることがあります。 塩分を控えているのに体重が増えるなら、それは食べすぎではありません。

水分制限と言われたときの、実際のやり方

心不全で水分制限が付くことがあります。ここで多い間違いが2つあります。 指示が無いのに自分で制限してしまうことと、 飲みものだけ数えてしまうことです。

  • 制限は全員に付くわけではありません。 軽い段階では、水分より塩分の管理が優先されます。 自己判断で減らすと脱水を起こし、腎臓を傷めます (高齢者の脱水を防ぐ
  • 数えるのは飲みものだけではありません。 味噌汁1杯150ml、うどんの汁200ml、おかゆは重さの8割、 ゼリー・果物・アイスも水分です。汁物を残すだけで1日300〜400ml変わります
  • 薬を飲む水も数に入ります。1回100mlなら1日で300ml。 制限が厳しい方ほど、ここが効きます
  • 口の渇きは、飲む以外で和らげます。 うがい、氷を1片なめる、レモン水で口をすすぐ、口腔保湿剤。 乾きに任せて飲むと、あっという間に超えます

1日に何mlまでなのかは、体格と心臓の状態で決まります。 数字を主治医から聞いて、紙に書いて台所に貼ってください。 減塩の進め方は高齢者の高血圧と食事、 塩を減らして食が細るときは低栄養とその対策を合わせてご覧ください。 当店では食塩相当量を毎日の献立に表示しており、汁物を外したご用意もできます。

配食のふれ愛の減塩・心臓ケアメニュー

配食のふれ愛では、1食あたりの食塩相当量を2g前後に抑えた減塩メニューを提供しています。出汁と素材の旨みを活かした調理法で、減塩でも美味しさを損なわない食事を実現。青魚を使ったメニューを週2回以上取り入れ、EPA・DHAの摂取もサポートします。心臓病と診断された方向けの特別なメニュー調整もご相談いただけます。

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関連用語

高血圧

収縮期血圧140mmHg以上または拡張期90mmHg以上の状態。心臓病の最大のリスク因子。

ナトリウム(塩分)

体液バランスを調整するミネラル。過剰摂取は高血圧・心臓病・脳卒中のリスクを高める。

EPA・DHA

魚の脂に含まれるオメガ3系脂肪酸。血液サラサラ効果で心臓病予防に貢献する。

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