高齢者の脳卒中予防と食事|配食のふれ愛 太子店 健康コラム

脳卒中とは — その種類と高齢者のリスク

脳卒中は脳の血管に異常が起きる疾患の総称で、日本人の死因第4位を占め、要介護・寝たきりの原因としては第1位です。年間約30万人が発症し、そのうち約7割が65歳以上の高齢者です。

脳卒中の3つのタイプ

種類割合メカニズム主なリスク因子
脳梗塞約75%脳の血管が血栓で詰まる動脈硬化、心房細動、高血圧
脳出血約20%脳の血管が破れて出血する高血圧(最大の原因)
くも膜下出血約5%脳の表面の血管(動脈瘤)が破裂高血圧、喫煙、過度の飲酒

いずれのタイプでも、高血圧が最大のリスク因子です。国立循環器病研究センターの研究によると、収縮期血圧が10mmHg上昇するごとに脳卒中のリスクは約20%増加します。つまり、血圧管理こそが脳卒中予防の要なのです。

その他の食事関連リスク因子

  • 糖尿病:血糖値の高い状態が続くと血管が傷つき、脳梗塞のリスクが2〜3倍に
  • 脂質異常症:悪玉コレステロール(LDL)の上昇が動脈硬化を促進
  • 肥満:高血圧・糖尿病・脂質異常症のリスクを増幅する
  • 過度の飲酒:1日平均2合以上の飲酒は脳出血リスクを約2倍に
  • 脱水:血液が濃縮されて血栓ができやすくなる。高齢者は特に要注意

減塩+カリウム摂取 — 血圧を下げる食事の基本

脳卒中予防の食事で最も重要なのは血圧のコントロールであり、その柱となるのが減塩とカリウムの摂取です。

減塩の目標と実践

日本高血圧学会は、高血圧の予防・治療のための食塩摂取量を1日6g未満と定めています。しかし日本人の平均摂取量は約10gと大幅に超過しています。

減塩は「味が薄くなって美味しくない」と敬遠されがちですが、工夫次第で十分に美味しい食事が可能です。

  • 出汁を効かせる:かつお節・昆布・干ししいたけの旨みで塩分をカバー
  • 酸味を活用:酢・レモン・ゆず・すだちで風味をプラス
  • 香味野菜・香辛料:生姜・にんにく・大葉・わさび・七味で味のアクセントを
  • 「かける」から「つける」へ:醤油やソースは皿に少量出してつけて食べる
  • 汁物は具だくさんに:汁を減らして具を増やすことで満足感を保ちながら減塩

カリウムで塩分を排出

カリウムは腎臓でのナトリウムの再吸収を抑え、体外への排出を促進します。厚生労働省は成人のカリウム摂取目標量を男性3,000mg以上、女性2,600mg以上と定めています。

食材1食の目安量カリウム含有量
バナナ1本(100g)360mg
ほうれん草(ゆで)80g392mg
さつまいも100g480mg
アボカド1/2個(70g)504mg
トマト中1個(150g)315mg
大豆(水煮)50g285mg
里芋2個(80g)512mg

ただし、腎機能が低下している方はカリウムの蓄積が危険なことがあるため、必ず医師に相談してから摂取量を調整してください。

血管を守る栄養素 — 葉酸とEPA

葉酸 — ホモシステインを抑える

葉酸はビタミンB群の一種で、血液中のホモシステイン(アミノ酸の一種)を分解する働きがあります。ホモシステインの値が高いと血管の内壁が傷つきやすくなり、動脈硬化が進行します。

中国で行われた大規模研究「CSPPT」では、高血圧患者に葉酸を投与したところ、脳卒中の初発リスクが21%低下したと報告されています。

葉酸が豊富な食材は、ブロッコリー(100gあたり210μg)、ほうれん草(同210μg)、枝豆(同260μg)、アスパラガス(同190μg)などの緑色野菜です。1日の推奨量240μgを目指して、毎食緑色の野菜を取り入れましょう。

EPA — 血栓を予防する

青魚に含まれるEPAは、血小板の凝集を抑えて血栓の形成を防ぐ効果があります。グリーンランドのイヌイットが心筋梗塞や脳卒中の発症率が極めて低いのは、アザラシや魚からのEPA大量摂取が原因とされています。

日本人を対象としたJELIS研究では、スタチン(コレステロール低下薬)にEPA製剤を上乗せしたグループで脳卒中の発症リスクが20%低下したことが示されました。

EPAを食事から十分に摂取するには、さんま・さば・いわし・あじなどの青魚を週3〜4回食べることが目安です。缶詰も手軽なEPA源として活用できます。

脳卒中予防のための1日の食事例

上記の栄養戦略をまとめた、脳卒中予防に理想的な1日の食事プランをご紹介します。

  • 朝食:ごはん、納豆(カリウム)、ほうれん草の味噌汁(葉酸・減塩味噌使用)、卵焼き
  • 昼食:さばの味噌煮(EPA)、ブロッコリーのおひたし(葉酸)、里芋の煮物(カリウム)、ごはん
  • 間食:バナナ1本(カリウム360mg)、お茶
  • 夕食:鶏むね肉のソテー、トマトサラダ(カリウム)、枝豆(葉酸・カリウム)、ごはん

この食事プランでは、食塩約5g、カリウム約3,200mg、葉酸約350μg、EPA約600mgの摂取が見込め、脳卒中予防のための栄養目標を概ね達成できます。

すぐに気づくための知識

予防の話の前に、知っておくべきことがあります。

片方の手足が動かない、顔の片側が下がる、言葉が出ない。これらが急に起きたら、すぐに救急に連絡してください。様子を見ないでください。

そして、時間が結果を分けます。早く医療機関に着くほど、選べる治療が増えます。迷っている時間が惜しくなります。

症状が一度おさまっても、受診してください。消えたから大丈夫、ではありません。前触れの場合があります。

この内容を、家族全員が知っておいてください。本人は連絡できません。そばにいる人が判断します。

血圧を毎日測る

最も基本になる習慣です。

一度測っただけでは分かりません。毎日、同じ条件で測ってください。朝起きて、トイレを済ませた後が目安になります。

そして、紙に書いて並べてください。上がってきているかが見えます。受診のときに持っていってください。

目標の数字は、年齢や持っている病気によって変わります。医師に確かめてください。ほかの人と比べても意味がありません。

寒い時期は上がりやすくなります。季節で変わることを知っておいてください。変化があれば、伝えてください。

塩分を減らす順序

やり方の問題です。

一度に薄くすると、食べられなくなります。食事量が落ち、栄養が不足します。少しずつ変えてください。

そして、調味料より、加工された食品から入る量のほうが多いことがあります。漬物、干物、練り製品、ハム。ここを見直すほうが効きます。

汁物の量と回数を決めてください。汁を残す、一日一杯にする。これだけで大きく変わります。

だしと香りで補ってください。しっかりとっただし、酸味、香味野菜。薄くても物足りなさが減ります。

喫煙と飲酒の見直し

食事以外の部分です。

たばこは、血管に直接影響します。やめる意味が最も大きい習慣です。何歳からでも遅くありません。

やめ方が分からない方は、医療機関に相談してください。支援を受けられる場合があります。一人で頑張らなくて構いません。

そして、飲酒の量も見直してください。どこまでなら良いかは、医師に確かめてください。持病や薬によって変わります。

薬を飲んでいる方は、組み合わせに注意が要ります。自己判断で飲まないでください。必ず確かめてください。

水分が足りないと危ない

見落とされやすい部分です。

体の水分が減ると、血が流れにくくなります。危険が上がります。暑い時期や、体調を崩したときに起きます。

そして、夜中から明け方が、最も起きやすい時間帯とされています。寝る前と、起きたときに水を飲む習慣をつけてください。コップ一杯で構いません。

トイレを嫌って控える方がいます。控えると、別の危険が上がります。夜中に行きやすい環境を整えてください。

ただし、水分を制限されている方は別です。心臓や腎臓の状態によります。医師の指示が優先されます。

体を動かす習慣

食事と組み合わせてください。

座っている時間が長いほど、危険が上がります。一時間に一度は立ってください。難しいことではありません。

そして、歩く習慣が最も続けやすくなります。激しい運動は要りません。毎日少しずつのほうが効きます。

寒い時期は、急に外に出ないでください。体を暖めてから動いてください。朝の冷え込みが危険です。

どこまで動いてよいかは、医師に確かめてください。持病がある方は、制限がある場合があります。自己判断しないでください。

不整脈が隠れている場合

知っておくべき原因のひとつです。

脈が乱れる状態が、原因になることがあります。本人に自覚がないことが多くあります。健診で見つかることがあります。

そして、脈を自分で測る方法があります。手首に指を当てて、規則正しいかを確かめてください。乱れていたら、受診してください。

血圧計に、乱れを知らせる機能がついているものがあります。表示が出たら、記録してください。受診のときに伝えてください。

診断がついたら、指示された薬を必ず飲んでください。自己判断でやめないでください。再発を防ぐ働きがあります。

薬を飲んでいる方の食事

注意が要る組み合わせがあります。

血液を固まりにくくする薬を飲んでいる方は、特定の食品に注意が要ります。納豆、青汁、一部の野菜。医師や薬剤師に確かめてください。

そして、この記事に書かれた一般的な内容より、個別の指示が優先されます。自分の指示を確かめてください。迷ったら相談してください。

市販のものを重ねて飲まないでください。組み合わせに注意が要る場合があります。飲んでいるものをすべて伝えてください。

お薬手帳を、受診のときに必ず持っていってください。複数の医療機関にかかっている方は、特に大事です。忘れないでください。

一度起こした方の再発予防

ここからが、より大事になります。

一度起こすと、再び起きやすくなります。治ったから終わり、ではありません。ここからが本番です。

そして、薬を飲み続けてください。調子が良くても、やめないでください。薬が効いているから、その状態なのです。

飲み込みにくさが残っている方は、食事の形に注意が要ります。指示された形を守ってください。詰まらせる危険があります。

受診の間隔を空けないでください。血圧と、検査の数字を見てもらってください。変化があれば早く対応できます。

家族が支える部分

一人では続けにくい管理です。

血圧の記録を、家族が手伝ってください。本人が続けにくい部分です。書くだけで構いません。

そして、食事を作る人が指示を知っていなければ、実行できません。受診に付き添って、一緒に説明を聞いてください。そのほうが早く伝わります。

一人だけ別の献立にすると、続きません。家族全体で薄味にするほうが現実的です。ほかの家族にも役立ちます。

作る負担が大きいなら、届けてもらう形も使えます。栄養の調整に対応した内容にできる場合があります。医師の指示を伝えて相談してください。

「FAST」— その場で見分ける3つと、時間

脳卒中は、治療を始めるまでの時間で結果が変わります。 詰まった血管を溶かす薬は発症から4時間半以内、 血栓を取り除く治療も限られた時間内でしか使えません。 「様子を見る」がいちばんいけません。

見るところ異常のとき
Face(顔)「イー」と歯を見せてもらう片側の口角が下がる。片方だけ動かない
Arm(腕)両腕を前に上げ、手のひらを上にして10秒片方だけ下がってくる。力が入らない
Speech(言葉)短い文を復唱してもらうろれつが回らない。言葉が出ない。話が通じない
Time(時間)1つでも当てはまればすぐ119番。「いつからか」を必ず伝える

ほかに、片側の手足のしびれ、突然の激しい頭痛、片目が見えない、 物が二重に見える、まっすぐ歩けないも脳卒中の症状です。 症状が消えても受診してください。 数分で治まるもの(一過性脳虚血発作)は、 そのあと数日以内に本格的な脳梗塞を起こすことがあります。 「治ったから大丈夫」がいちばん危ない受け取り方です。

「いつからか」が分からないと使えない治療があります。 最後に普通だった時刻を思い出して、救急隊に伝えてください。

脳卒中のあとの食事 — 麻痺と飲み込み

ここまでは予防の話ですが、 すでに一度起こされた方のご家族からのご相談も多くいただきます。 退院してからが長く、しかも家では病院と同じようにいきません。

  • 飲み込みにくさが残る。脳卒中のあとは、 飲み込む力に障害が残ることがあります。水分でむせるのが最初のしるしです。 水にとろみを付ける、食事の形を落とすといった手当てを、 退院時に決められた段階のまま続けてください (病院の食形態を家庭で再現する水分にとろみを付ける
  • 麻痺のある側に食べ物が残る。 頬の内側や麻痺側の口の中に食べ物が溜まっていることがあります。 食後に口の中を見て、残っていれば取り除きます。 気づかないまま眠ると、そのまま誤嚥します (口腔ケアの手順
  • 片手で食べられる形にする。 利き手が使えなくなった方には、滑り止めのマット、 縁の立った皿、太い柄のスプーンが効きます (片手で食べられる形
  • 再発予防の食事は続ける。 一度起こした方の再発は珍しくありません。 血圧の管理と減塩は、退院後こそ続けてください
  • 薬と食べ物の組み合わせを確かめる。 血液を固まりにくくする薬のうち、種類によっては 納豆・青汁・クロレラを避けるよう指示が出ます。 自己判断せず、薬の名前を薬剤師に伝えて確かめてください。 薬によっては制限がありません

退院直後は、ご家族が作り方から食器まで一度に抱えることになります。 全部を家で背負わず、食事の一部を外に出す手があります (退院後の食事介護する人の食事)。 当店ではとろみ・きざみ・ムースの形にも対応しています。

配食のふれ愛の脳卒中予防サポート

配食のふれ愛では、1食あたり食塩相当量2g前後の減塩設計で、1日3食利用しても6g未満の目標を達成できるメニューを提供しています。出汁の旨みを活かした調理法で、減塩でも満足感のある食事を実現。青魚メニューを週2回以上、緑黄色野菜を毎食取り入れ、EPAや葉酸の摂取もサポートします。血圧が気になる方もお気軽にご相談ください。

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関連用語

高血圧

収縮期血圧140mmHg以上または拡張期90mmHg以上の状態。脳卒中の最大のリスク因子。

カリウム

ナトリウムの排出を促し血圧を下げるミネラル。バナナ・ほうれん草・さつまいもに豊富。

EPA・DHA

魚の脂に含まれるオメガ3系脂肪酸。血栓予防効果で脳梗塞のリスクを低減する。

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