「合わない」の正体が分かると、やめずに済むものが増える
特定の食べ物で具合が悪くなる現象は、大きく2つに分かれます。
| 食物アレルギー | 食物不耐症 | |
|---|---|---|
| しくみ | 免疫が反応する | 消化・代謝がうまくいかない |
| 症状の出方 | 数分〜2時間で出る | 数時間後、量に応じて出る |
| 少量なら | 少量でも出うる | 少量なら出ないことが多い |
| 命にかかわるか | ありうる | まずない |
| 検査 | 血液検査・皮膚テスト・負荷試験 | 呼気検査、除去と再開の記録 |
この違いが実務上なぜ大事かというと、不耐症であれば全部やめる必要がないからです。量を減らす、食べ方を変える、加工品を選ぶ、といった調整で付き合えます。
牛乳に含まれる乳糖を分解する酵素(ラクターゼ)が足りず、腸で発酵してお腹が張る・下痢をする状態です。日本人成人の多くで酵素の活性が下がっており、加齢とともに強くなります。
牛乳をやめるとカルシウムが落ちるので、やめる前にこの3つを試してください。詳しくは牛乳アレルギーと食事をご覧ください。
青魚・発酵食品・チーズ・ワイン・トマトなどに含まれるヒスタミンを分解しきれず、顔のほてり・頭痛・じんましんが出る状態です。鮮度の落ちた青魚で起きる「ヒスタミン食中毒」と見分けがつきにくいのが厄介なところです。
特定の薬(一部の降圧薬・鎮痛薬)が分解酵素を邪魔することがあります。薬が変わったタイミングで症状が出始めたら、お薬手帳を持って相談してください。
玉ねぎ、豆類、小麦、乳製品、一部の果物に含まれる特定の糖類が腸で発酵し、張り・ガス・下痢を起こすことがあります。過敏性腸症候群の方で問題になります。自己流で品目を減らすと栄養が偏るため、除去は管理栄養士の指導のもとで期間を区切って行います。
アレルギーか不耐症かを見分ける第一歩は記録です。2週間、次を書き留めてください。
「食べてすぐ・少量でも・毎回」ならアレルギーを疑い、「数時間後・たくさん食べたとき・体調によって」なら不耐症を疑います。いずれにせよ、判断は医師に委ねてください。
両者を分けて考える必要があるのは、対応が正反対だからです。アレルギーは微量でも危険なので、完全に避けます。不耐は量の問題なので、減らす、分ける、時間を空けるという調整が効きます。
| 見るところ | アレルギー | 不耐 |
|---|---|---|
| 起きるしくみ | 免疫が過剰に反応する | 消化・分解の力が足りない |
| 量との関係 | ごく微量でも起きうる | 量が増えると起きる |
| 出るまでの時間 | 数分〜2時間が多い | 30分〜数時間、翌日のこともある |
| 主な症状 | 皮膚、呼吸、血圧まで及ぶ | おなかの症状が中心 |
| 命に関わるか | 関わることがある | 基本的に関わらない |
| 対応 | 完全に避ける | 量を減らす、種類を変える |
両者を取り違えると、必要のない除去が広がるか、危険な食品を食べ続けるかのどちらかになります。どちらも避けたい結果です。
日本人の多くは、大人になるにつれて乳糖を分解する力が落ちます。牛乳を飲むとおなかが張る、ごろごろする、下すという方の多くはこれです。アレルギーではないので、牛乳をすべて絶つ必要はありません。
調整のしかたは次のとおりです。
牛乳をやめると、カルシウムとたんぱく質が減ります。高齢の方にとってこの2つは、骨と筋肉を保つ土台です。不耐を理由に乳製品を全部やめるのは、得より損が大きくなりがちです。ヨーグルトやチーズで続けられないかを先に試してください。牛乳が本当に駄目な場合の代わりは乳アレルギーの記事にまとめています。
「特定のものを食べるとおなかの具合が悪い」という訴えには、不耐以外の原因が隠れていることがあります。高齢の方では、次の可能性を先に考える必要があります。
食品のせいにする前に、これらを一つずつ消していってください。とくに薬と噛む力は見落とされやすく、そこを直せば食品を避ける必要がなくなることがあります。
不耐かどうかを見分けるには記録がいります。1〜2週間、食べたものと症状を書き出してください。細かく書く必要はなく、「時刻・食べたもの・症状・どれくらいで治まったか」の4つで足ります。
記録がたまったら、疑わしいものを2週間だけ抜いて、症状が減るかを見ます。減ったら、こんどは少量から戻して、どれくらいの量で症状が出るかを確かめます。この「抜いて、戻す」を1つずつやるのが、遠回りに見えて一番早い方法です。複数を同時に抜くと、何が原因か分からなくなります。
ただし、抜いて戻すのは不耐が疑われる場合に限ります。アレルギーが疑われるとき、つまり皮膚や呼吸の症状が出たときは、自分で戻さないでください。アナフィラキシーのきっかけになります。
また、体重が落ちている、下痢や便秘が続いている、便に血が混じる、といったときは、記録の前に受診してください。食べもののせいだと決めつけて様子を見ているあいだに、別の病気が進むことがあります。
不耐を疑うきっかけは、たいてい本人の感覚です。「これを食べるとおなかが張る気がする」という感覚から始まります。ところがこの感覚は当たることも外れることもあり、そのまま除去に進むと、食べられるものだけが減っていきます。
感覚を確かめる方法は、数えることです。疑わしい食品を食べた回数と、症状が出た回数を数えます。10回食べて2回しか症状が出ないなら、その食品が原因である可能性は低くなります。10回中8回なら、可能性は高いといえます。この単純な数え方だけで、思い込みの半分は消えます。
数えるときに気をつけるのは、量と組み合わせです。同じ牛乳でも、コップ1杯と大さじ1杯では違います。空腹で飲んだか、食事と一緒だったかでも違います。だから記録には量と場面を添えます。「朝、空腹で牛乳200mL」「昼、食後にヨーグルト100g」という具合です。
また、体調の影響も見てください。疲れているとき、寝不足のとき、風邪気味のときは、いつも平気なものでもおなかを壊すことがあります。体調の悪い日の記録を根拠にして食品を除外すると、必要のない除去が増えます。記録には、その日の体調も一言添えてください。
不耐を調べるうちに、実は食品ではなかったと分かることがよくあります。高齢の方でとくに多いのが、腸の動きそのものが変わっているという場合です。
加齢とともに、腸の動きは遅くなります。水分の摂取量も減りがちです。運動量が落ち、薬の数が増える。この4つが重なると、便秘と下痢を繰り返す状態になります。そこに何か食べれば、食べたもののせいに見えます。しかし原因は食品ではなく、腸の環境のほうにあります。
この場合にやることは、除去ではありません。水分を1日1,200mL前後を目安に取ること、食物繊維を海藻ときのこと根菜から取ること、毎日決まった時間に食事をすること、そして体を動かすことです。これらを2週間続けてから、まだ症状が残るかどうかを見てください。ここで治まるなら、食品を避ける必要はありません。
薬の影響も無視できません。便秘の薬、胃薬、痛み止め、抗生物質。これらはいずれもおなかの調子を変えます。新しい薬が始まった時期と、症状が出始めた時期が近いなら、まず薬を疑ってください。ただし自分でやめず、処方した医師か薬剤師に相談してください。もとの病気が悪くなるほうが問題です。
不耐の場合、避ける必要のない食品まで避けてしまうことが、実際の害になります。牛乳でおなかを壊したから乳製品を全部やめる。パンで胃が重いから小麦をやめる。こうして食べられるものを削っていくと、半年後には献立が数種類まで減っています。
高齢の方にとって、食べる食品の種類が減ることは、それ自体が栄養の問題です。1週間で20種類を下回ると、どこかの栄養素が不足します。不耐は命に関わりませんが、避けすぎた結果の低栄養は命に関わります。この順序を取り違えないでください。
だから、不耐が疑われるときは「やめる」ではなく「減らす」から始めてください。牛乳を200mLから100mLに。パンを2枚から1枚に。それで症状が出ないなら、そこが食べられる量です。量を見つけられれば、その食品を食べ続けられます。
そして、見つけた量を紙に書いて残してください。「牛乳は100mLまで、食事と一緒なら大丈夫」と書いておけば、家族や施設が判断できます。書いていないと、受け取る側は安全側に倒して全部抜きます。食べられる範囲を伝えることは、避けるものを伝えることと同じくらい大事です。
不耐症かアレルギーかを自分で判断するのは困難です。受診して確かめてください。そのときの準備で、得られる答えの質が変わります。
まず、記録です。いつ、何を、どれくらい食べて、何分後にどんな症状が出たか。2週間分あれば、傾向が見えます。記憶で話すより、はるかに正確に伝わります。
次に、飲んでいる薬の一覧です。お薬手帳を持っていってください。薬の作用で、腹部の症状が出ていることがあります。サプリメントも含めて伝えてください。
そして、避けている食品の一覧です。いま何を避けているか、いつから避けているか、避けた結果どうなったか。不必要に避けているものがあれば、そこで解除できます。
どの科にかかるかで迷ったら、まずかかりつけ医に相談してください。そこから、消化器の専門や、アレルギーの専門に紹介してもらえます。いきなり専門の外来を探すより、その方の全体を知っている医師を起点にするほうが確実です。
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