和食なら安心、とはいかない。だしとしょうゆの向こうに小麦がいる
小麦アレルギーというとパン・うどん・パスタが思い浮かびますが、実務で困るのはむしろ調味料です。日本の家庭料理の土台にある調味料の多くに小麦が入っています。
| 調味料・食品 | 小麦の入り方 |
|---|---|
| しょうゆ | 大豆と小麦を麹にして仕込む。原材料に「小麦」と明記される |
| みそ | 米みそ・豆みそには通常入らないが、麦みそは大麦・はだか麦を使う |
| カレールウ・シチュールウ | 小麦粉をバターで炒めたルウが土台 |
| 練り製品 | かまぼこ・ちくわ・さつま揚げのつなぎに小麦でんぷんを使うことがある |
| ハム・ソーセージ | 結着材として小麦たんぱくを使うものがある |
| 春雨・くずきり | 原料がでんぷんなら問題ないが、製品により配合が異なる |
しょうゆについては、発酵の過程で小麦タンパクがアミノ酸まで分解されるため、多くの小麦アレルギーの方が問題なく使えるとされています。ただしこれは全員に当てはまるものではありません。主治医の判断を仰いだうえで、必要なら小麦不使用のたまりしょうゆに替えてください。
小麦アレルギーの方が大麦・ライ麦・オート麦にも反応するかどうかは、人によって分かれます。タンパクの構造が似ているため交差反応が起きることがある、というのが実際のところです。麦茶(大麦)、押し麦入りごはん、麦みそ、オートミールを使ってよいかは、自己判断せず必ず主治医に確かめてください。
なお「グルテンフリー」という表示は、日本では小麦アレルギー対応を保証するものではありません。海外基準(グルテン20ppm未満)に準拠しているかどうかは製品ごとに異なります。
小麦を抜く場合、主食は米に寄せるのが最も簡単です。加えて、調理面での置き換えも用意しておくと献立の幅が保てます。
米粉は小麦粉よりも水分を吸いにくいため、同じレシピで置き換えると柔らかく仕上がります。高齢者にとってはむしろ食べやすい方向の変化です。
小麦を食べただけでは何も起きないのに、食後に体を動かすと症状が出る食物依存性運動誘発アナフィラキシーという型があります。原因食物では小麦が最も多いとされ、成人になってから発症します。
高齢者では激しい運動の機会が少ないぶん見逃されがちですが、食後の入浴や散歩でも起きることがあります。食後に強いだるさ、じんましん、息苦しさが出た経験がある方は、アナフィラキシーの見分けと対応を確認したうえで受診してください。
配食での対応はよくある質問「小麦アレルギーに対応できますか」をご覧ください。
小麦アレルギーで難しいのは、主食より調味料です。ふだん意識しないところに入っています。
| 調味料 | 小麦 | 代わりになるもの |
|---|---|---|
| しょうゆ | ほとんどの製品に入る | 小麦を使わないたまりしょうゆ、雑穀のしょうゆ |
| みそ | 麦みそに入る。米みそ・豆みそは入らない | 米みそ、豆みそ |
| カレールウ・シチュールウ | 入る | 米粉でとろみをつけ、カレー粉で味をつける |
| ウスターソース・中濃ソース | 製品による | 原材料名で確かめる |
| めんつゆ | しょうゆ由来で入る | だしとたまりしょうゆで作る |
| 酢 | 穀物酢に入ることがある | 米酢 |
しょうゆの小麦は、醸造の過程でたんぱく質がほぼ分解されます。そのため主治医から「しょうゆは使ってよい」と言われる方もいます。ただしこれは人によって判断が分かれるところなので、自己判断で解禁せず、必ず主治医に確かめてください。
小麦粉を米粉に替えるとき、同じ分量では思った仕上がりになりません。米粉は水を吸う量が違い、粘りが出ません。
市販の米粉には「製菓用」「パン用」の別があります。粒の細かさが違うので、用途の違う米粉を使うと失敗します。袋の表示を見て選んでください。
小麦を避けると、朝食のパンと昼食の麺がなくなります。三食すべてご飯にすると飽きるので、米を使った主食の幅を持っておくと続きます。
春雨は小麦不使用が多いものの、製品によっては小麦でんぷんを使うものがあります。原材料名を確かめてください。
小麦は油と器具を通じて回ります。避けているつもりでも入ることがあるので、次の3つを確かめてください。
配食を使う場合は、献立表のアレルゲン欄に小麦の印がある日を先に洗い出し、その料理を差し替えられるかを事業者に聞いてください。1品の差し替えで済むことが多く、その日を休む必要はありません。
店頭で「グルテンフリー」と書かれた食品が増えました。小麦アレルギーの方にとって使いやすい製品もありますが、この表示は小麦アレルギー向けに作られたものではありません。グルテンは小麦・大麦・ライ麦に含まれるたんぱく質の総称で、グルテンフリーはそれを取り除いたという意味です。
問題は、小麦アレルギーの原因となるたんぱく質がグルテンだけではないという点です。グルテン以外のたんぱく質が原因になっている方には、グルテンフリーの表示は安全の根拠になりません。また日本では、この表示に法的な基準がありません。どの程度まで取り除けばグルテンフリーと名乗れるかが決まっていないため、製品によって中身が違います。
使うのであれば、グルテンフリーの表示ではなく原材料名を読んでください。小麦が入っていないことを原材料名で確かめる。これはグルテンフリーの表示があってもなくても同じ手順です。表示は見つけるための手がかりにはなりますが、判断の根拠にはなりません。
小麦を食べただけでは何ともないのに、食べたあと2時間ほどのあいだに体を動かすと強い症状が出る、という形があります。原因の食品として小麦が最も多く報告されています。ふだんは食べられるため、原因にたどりつくまで時間がかかるのが特徴です。
高齢の方では、激しい運動をする場面が少ないぶん見過ごされがちですが、散歩、買い物、入浴、庭仕事といった日常の動作でも起きた例があります。食後に急に全身が赤くなる、息が苦しくなる、めまいがする。こうしたことが食後の外出時に繰り返し起きるなら、この形を疑う理由があります。
疑いがあるときは、食べたもの、食後どれくらいで何をしたか、どんな症状がどれくらい続いたかを記録してください。記録がないと医師も判断できません。また、症状が出たときは横になって足を高くし、動かないことが大事です。動くと症状が進みます。対応の詳しい流れはアナフィラキシーの見分けと対応にまとめています。
小麦を避ける食事は、しょうゆとみそを替える段階でつまずく方が多いところです。ここを最初に片づけると、あとはずいぶん楽になります。小麦を使わないたまりしょうゆと米みそを常備し、めんつゆやソース類は原材料名で選び直す。この入れ替えを一度やってしまえば、和食の献立はほぼそのまま作れます。
次に手を付けるのは主食です。朝のパンをご飯にする、昼の麺を米粉のめんやビーフンにする。それだけで摂取する小麦の量は大きく減ります。ここまでで、日常の小麦の八割ほどは避けられます。残りは加工品と外食で、これは表示を読むか事業者に聞くかで対応します。
問題は、この入れ替えを続けられるかどうかです。調味料が特殊になり、買う場所が限られ、値段も上がります。ご本人が高齢でひとり暮らしであれば、買い物の負担がそのまま続けられるかどうかを決めてしまいます。ご家族がまとめて買って届ける、通販で定期的に届くようにする、といった仕組みを作っておくと途切れません。
調理の負担が重いときは、小麦を使わない献立に対応できる配食を組み合わせるという選択もあります。毎食を配食にする必要はなく、負担の大きい日だけ使う形でも、続けやすさは変わります。
小麦を抜くと、主食の選択肢がごはん中心になります。それ自体は問題ありませんが、毎食同じだと飽きが来て、食べる量が落ちます。米以外の選択肢を持っておくと、食卓が回ります。
使えるのは、米粉パン、米粉麺、ビーフン、フォー、春雨、いも類です。米粉パンは市販品が増え、冷凍で買えるものもあります。ビーフンやフォーは、汁ものとして仕立てれば水分も取れます。春雨は、スープの具としても主食としても使えます。いも類は、じゃがいも、さつまいも、里いもがそれぞれ違う味になるため、変化が付きます。
気をつけたいのは、これらの原材料の確認です。米粉パンでも、ふくらませるために小麦グルテンを加えている製品があります。「米粉」と大きく書いてあっても、小麦不使用とは限りません。原材料欄を必ず読んでください。春雨もでんぷんの種類が製品によって違います。
調味料も見直しが必要です。しょうゆの多くは小麦を使って作られます。ただし、製造の過程で小麦のたんぱく質が分解されるため、多くの方は普通のしょうゆを使えます。医師の指示によりますが、避ける必要がある場合は、小麦を使わないしょうゆが市販されています。カレールウ、シチューのルウ、天ぷら粉、麩、麦茶も小麦を含みます。麦茶は見落とされやすいので、飲みものまで確かめてください。
食品のアレルギー表示は義務の8品目と推奨の20品目に分かれます。個別表示と一括表示の違い、「入っているかもしれない」表記の意味を、配食の献立表を例に解説します。
アナフィラキシーの初期症状、救急車を呼ぶ判断、待つあいだの姿勢を整理します。高齢者は循環の予備力が低く重症化しやすいという点を踏まえて解説します。
食物アレルギーは子どもだけのものではありません。高齢になってから発症する場合の特徴、原因になりやすい食品、受診すべき目安を管理栄養士が解説します。
食物アレルギーの仕組み、義務表示8品目+推奨21品目の一覧、高齢者の後天性アレルギー、配食サービスにおける安全管理体制を解説します。
介護保険や事業所探し、福祉用具の選び方は、同じ株式会社京谷商会が運営する情報サイトにまとめています。
介護の窓口(kaigoinfo.com)の記事。どこに何を相談すればよいかを窓口別に整理しています。
介護の窓口の記事。持病やアレルギーを把握してくれる医師がいると、緊急時の判断が早くなります。