食べていなくても、同じ釜のお湯を通っていれば届いてしまう
そばは特定原材料8品目のひとつです。表示が義務づけられている理由は、患者数の多さではなく症状の重さにあります。ごく微量でアナフィラキシーに至る例が報告されており、加熱しても抗原性がほとんど落ちません。
高齢者の場合、長年そばを食べてきて何ともなかった方が、ある時点から反応するようになることもあります。成人になってから始まる食物アレルギーで扱っているとおり、発症に年齢の上限はありません。
| 場面 | 何が起きるか |
|---|---|
| そば・うどん兼用の店 | 同じ釜・同じ湯でゆでる。うどんにそばのタンパクが移る |
| 製麺所・工場 | 製造ラインの共用。打ち粉が飛ぶ |
| そば殻の枕 | 粉じんを吸い込んで鼻や喉に症状が出ることがある |
| そば茶・そばぼうろ・ガレット | そばと分かりにくい名前の食品 |
| 年越しそばの席 | 湯気や飛沫。同席するだけで症状が出た報告がある |
「そば湯を飲まなければ大丈夫」という考え方は通用しません。ゆで湯を共用している時点で、うどんにもそばのタンパクが移っています。そばアレルギーがある方は、そばを扱う店では何も食べないという線引きが安全側です。
家族の中に1人でもそばアレルギーの方がいる場合、家庭内で守る手順は次のとおりです。
介護施設やデイサービスで年越しそば・行事食が出るときは、行事の予定が出た時点で伝えてください。当日に伝えても厨房の段取りは変えられません。
配食のふれ愛 太子店の弁当ではそばを使用していませんが、ご注文時にそばアレルギーを登録いただくことで、献立の変更があった場合にも確認の対象になります。麺類の日に何が使われているかは献立表でご確認いただけます。
詳しくはよくある質問「そばアレルギーに対応できますか」と、混入の考え方についてはコンタミネーションをご覧ください。
そばは「そば」と書かれるので見つけやすいほうですが、そば粉が使われているのに名前から分からないものがあります。
| 食品 | そば粉 |
|---|---|
| そばぼうろ、そば茶 | 入る。そば茶は液体でも症状が出た例がある |
| ガレット | 入る。フランス料理のクレープ状のもの |
| 韓国冷麺、平壌冷麺 | 製品による。そば粉主体のものがある |
| 五平餅、団子の一部 | 地域によってそば粉を混ぜるものがある |
| ドッグフード、鳥のえさ | 入ることがある。手についたまま調理すると回る |
そば茶は湯だけを飲むものですが、成分が溶け出しているため症状が出ることがあります。健康によいと勧められて飲み始める方がいるので、ご家族が把握しておいてください。
そばの厄介なところは、食べていなくても届く経路が多いことです。うどんとそばを同じ釜でゆでる店では、うどんにもそばの成分が回ります。「そばは頼んでいないから大丈夫」という理屈が通らないのは、この共用のためです。
湯気も経路になります。そばをゆでる湯気を吸って症状が出た例が報告されています。そば屋の店内に入るだけで具合が悪くなる方がいるのは、これが理由です。反応が強い方は、店を選ぶ段階で外してください。
年末の年越しそばは、家庭でこれが起きやすい場面です。同じ鍋でうどんもゆでる、同じざるを使う、同じ箸で取り分ける。家族の行事だからこそ流れ作業になり、確認がおろそかになります。そばを扱う日は、ご本人のぶんを先に別の鍋で用意して、避難させておくのが確実です。
そば殻の枕も、いまだに使われています。寝ているあいだに顔が触れ、粉が舞う環境が続くため、反応が強い方には勧められません。施設に入るとき、ショートステイのときは、寝具の中身を確かめてください。
そばアレルギーは子どものころに分かることが多い一方で、大人になってから初めて症状が出る方もいます。長年食べてきたのだから大丈夫、という思い込みが判断を遅らせます。
年齢が上がると、症状が典型から外れることがあります。じんましんが出ないまま、腹痛や吐き気だけ、あるいは急に力が抜けてふらつく、という形で現れることがあります。食後まもなく起きること、そばを食べたときに繰り返し起きることの2つがそろうなら、年齢のせいで片づけないでください。
疑いがあるときは、そばを避けたうえで受診してください。避けずに試して確かめるのは危険です。そばは微量で強い症状が出うるアレルゲンで、前回が軽かったから次も軽いという保証がありません。対応の流れはアナフィラキシーの見分けと対応にまとめています。
そばの除去を伝えるときは、「そばを出さない」だけでは足りません。共用の経路まで含めて伝える必要があります。
配食の場合は、厨房でそばを扱わない事業者であれば、そもそもの経路が消えます。「そばを扱っていますか」という質問は、除去のしやすさを見分けるうえで有効です。扱っていない事業者なら、あとは原材料の確認だけで済みます。
そばを避ける方にとって、外食は経路が多い場面です。そば屋を外すのは当然として、実際に気をつけるべきなのはそば屋以外の店です。うどん屋の多くはそばも出しますし、和食の店では季節のメニューにそばが入ります。定食屋のそばがきや、居酒屋のそば団子といった、名前から想像しにくいものもあります。
店を選ぶときは、入る前に確かめてください。入ってから席についてしまうと、断りにくくなります。電話で「そばを扱っていますか」と聞くだけで、多くの店は答えてくれます。扱っていないと分かれば、そのあとは通常の原材料確認だけで済みます。扱っている店を選ぶなら、麺類そのものを避け、ゆで釜と関係のない料理を選ぶことになります。焼き魚定食や煮物であれば、釜も湯も通りません。
ただし、揚げものは注意が必要です。天ぷらそばを出す店では、天ぷらを揚げた油の中にそばの成分が入り込んでいるとは限りませんが、天かすがそばのつゆに触れたものである場合や、天かすを別の料理に使う場合があります。うどんやそばの店で揚げものを頼むときは、一言確かめてください。
もう一つ、そば湯があります。そば屋ではそば湯が自動的に出されることがあり、湯呑に注がれた状態で運ばれてきます。同席した方のぶんであっても、こぼれたり、湯呑を取り違えたりすれば口に入ります。ご本人と同席する方も、そば湯を頼まないという取り決めをしておくと確実です。
そばアレルギーは、ご本人が気をつけていても、周囲が知らなければ守れません。共有すべきことは3つあります。
1つめは、そばを扱う場面のリストです。年越しそば、法事の膳、行事食、寒い時期の麺の日。これらは毎年繰り返されるので、いつ来るかが分かっています。カレンダーに印を付けておき、その週になったら献立を確かめる。この程度の備えで、大半の事故は防げます。
2つめは、湯と器具の共用を避ける段取りです。家庭でそばをゆでる日は、ご本人のぶんを先に別の鍋で作り、ふたをして避難させます。ざる、菜箸、どんぶりも分けます。とくにざるは、そばのぬめりが残りやすく、洗い残しが起きやすい道具です。分けられないなら、その日はご本人に麺を出さないという選択もあります。
3つめは、寝具と身の回りのものです。そば殻の枕は、宿泊先や施設でいまだに使われていることがあります。ショートステイや入院のときは、寝具の中身を確かめてください。持参できるなら、使い慣れた枕を持っていくのが確実です。
そして、これらをご本人以外の誰かが把握していることが大事です。本人の体調が悪いとき、あるいは認知の機能が落ちてきたとき、確かめる役はご家族や職員に移ります。そのときに引き継げるよう、紙にして残しておいてください。書き方はアレルギーの伝え方にまとめています。
そばを避けることで栄養が足りなくなる、ということはまずありません。そばに含まれるルチンやビタミンB群は、他の食品からも取れます。麺類が食べたいのであれば、うどん、そうめん、中華麺、米粉麺、ビーフンと選択肢は豊富です。小麦も避けている場合でも、米粉麺やビーフンが使えます。
むしろ気をつけたいのは、そばを避けることで麺類そのものを敬遠してしまう場合です。高齢の方にとって麺類は、噛む力が落ちても食べやすく、汁と一緒に水分も取れる、便利な献立です。これをまるごと外すと、食べられる献立の型が一つ減ります。そば以外の麺は積極的に使ってください。
ただし、麺類だけで食事を済ませると、たんぱく質が足りません。うどん1杯のたんぱく質は7g前後で、1食に必要な15〜20gには届きません。卵、肉、練り製品、豆腐、油揚げなどを必ず足してください。練り製品を使う場合は、原材料にそばが入っていないかの確認は要りませんが、えびが入っていることがあるため、他のアレルギーがある方は確かめてください。
そばを扱わない環境が作れれば、日々の確認はかなり楽になります。家庭でそば粉を置かない、そばをゆでない、そば茶を買わない。この3つを決めておくだけで、家の中では確認の必要がほとんどなくなります。あとは外食と、いただきものと、施設の食事に気をつければ済みます。
普段の生活は整えられていても、旅行や外泊のときに事故が起きやすくなります。事前の備えが要ります。
宿の食事は、予約の時点で伝えてください。当日に言っても、すでに仕込みが済んでいて対応できないことがあります。予約時、そして前日の確認電話の2回伝えるのが確実です。
そして、宿によっては対応できない場合があります。断られたら、別の宿を探してください。無理に受けてもらっても、厨房の実態が伴わなければ危険です。断ってくれる宿のほうが誠実だと考えてください。
移動中の食事にも注意が要ります。駅や高速道路の店では、そばを扱う店が多くあります。調理場が共通の店では、避けたほうがよい場合があります。食べるものを持参するのが最も確実です。
そして、行き先の医療機関を調べておいてください。症状が出たときに、どこに行けばよいかが分かっていると、対応が早くなります。薬を処方されている方は、必ず持参し、家族も置き場所を知っておいてください。
かむ力・飲み込む力に合わせて形や硬さを調整した食事の総称です。
調理器具・揚げ油・製造ラインを通じたアレルゲンの混入を、家庭と配食のそれぞれの場面で整理します。ゼロにできない前提でどう線を引くかを解説します。
アナフィラキシーの初期症状、救急車を呼ぶ判断、待つあいだの姿勢を整理します。高齢者は循環の予備力が低く重症化しやすいという点を踏まえて解説します。
食物アレルギーは子どもだけのものではありません。高齢になってから発症する場合の特徴、原因になりやすい食品、受診すべき目安を管理栄養士が解説します。
介護保険や事業所探し、福祉用具の選び方は、同じ株式会社京谷商会が運営する情報サイトにまとめています。
介護の窓口(kaigoinfo.com)の記事。どこに何を相談すればよいかを窓口別に整理しています。
介護の窓口の記事。持病やアレルギーを把握してくれる医師がいると、緊急時の判断が早くなります。