スギ花粉ではなく、シラカンバやハンノキの季節に思い当たる人へ
りんごや桃を食べたときに口の中や唇、喉の奥がかゆくなる・ヒリヒリする。飲み込んでしまえば治まる。こうした症状は口腔アレルギー症候群(OAS)と呼ばれます。
原因は、花粉に含まれるタンパク質と、果物・野菜に含まれるタンパク質の構造がよく似ていることです。花粉症で体が花粉のタンパクを覚えると、似た形をした果物のタンパクにも反応してしまいます。これを交差反応と呼び、この型は花粉‐食物アレルギー症候群(PFAS)とも言われます。
| 花粉 | 飛ぶ時期 | 反応しやすい食品 |
|---|---|---|
| ハンノキ・シラカンバ | 1〜5月 | りんご、桃、さくらんぼ、なし、いちご、大豆(豆乳)、キウイ |
| スギ・ヒノキ | 2〜4月 | トマト |
| イネ科(カモガヤなど) | 5〜8月 | メロン、すいか、トマト、オレンジ、じゃがいも |
| ブタクサ | 8〜10月 | メロン、すいか、きゅうり、ズッキーニ、バナナ |
| ヨモギ | 8〜10月 | セロリ、にんじん、マンゴー、スパイス類 |
ハンノキ・シラカンバはバラ科の果物(りんご・桃・さくらんぼ・なし)と結びつきが強く、日本でも報告例が多い組み合わせです。豆乳で口の中が腫れたという訴えも、ハンノキ花粉との交差反応であることがあります。
OASの原因になるタンパクは熱と消化に弱いという特徴があります。このため、生では症状が出るのに、加熱すれば食べられることが多くあります。
缶詰の果物も加熱されているため症状が出にくくなります。高齢者向けには、生果物をコンポートや缶詰に置き換えることで、食物繊維とビタミンを保ちながら症状を避けられます。飲み込みが弱い方には、やわらかい点でも都合がよい形です。
OASは口の中だけで治まることが大半ですが、全身症状に進む例が確かにあります。特に次の場合は注意してください。
これらがあればアナフィラキシーの入口です。ためらわず受診してください。
花粉症そのものと食事の関係は腸内細菌と食事で扱っています。
口の中だけに症状が出るこの反応は、花粉症を持つ方に多く見られます。花粉のたんぱく質と、果物や野菜のたんぱく質の形が似ているために起こります。どの花粉に反応するかで、症状が出る食品がおおよそ決まります。
| 花粉 | 症状が出やすい食品 |
|---|---|
| しらかんば、はんのき | りんご、もも、さくらんぼ、なし、キウイ、大豆(豆乳) |
| すぎ、ひのき | トマト |
| いね科 | メロン、すいか、トマト、オレンジ |
| ぶたくさ、よもぎ | メロン、すいか、きゅうり、バナナ、セロリ、にんじん |
| ラテックス(ゴム) | バナナ、アボカド、くり、キウイ |
豆乳で起きる例は見落とされがちです。健康のために飲み始めた豆乳で、口の中がいがいがする。しらかんばの花粉症を持つ方に起きることがあります。豆腐や納豆では出ないのに豆乳では出る、という形が特徴です。
この反応の原因になるたんぱく質は熱に弱いため、加熱すると食べられるようになることが多くあります。生のりんごでは口がかゆくなるのに、焼きりんごやジャムでは何ともない、という方がいます。
使える形にすると、次のようになります。
これは高齢の方にとって都合のよい話です。もともと生の果物は噛みにくく、加熱したもののほうが食べやすいためです。無理に生で食べる必要はありません。ただし、加熱すれば必ず大丈夫とは限らないので、初めて試すときは少量からにしてください。
口の中だけで治まることがほとんどですが、まれに全身の症状に進むことがあります。とくに次の場合は注意してください。
これらに当てはまるときは、口腔アレルギー症候群として片づけず、受診してください。「いつもは口だけだから」という経験は、次回の保証になりません。のどの症状は詰まりにつながるため、高齢の方ではとくに危険です。見分け方はアナフィラキシーの見分けと対応にまとめています。
果物を避けると、ビタミンC、カリウム、食物繊維、そして水分が減ります。高齢の方では、果物が水分をとる大事な入口になっていることが多く、避けたとたんに水分不足に傾くことがあります。
埋め方は次のとおりです。
柑橘類が駄目な場合でも、加熱した果物や缶詰が使えることが多いので、まず「形を変えて食べられないか」を試してから、代わりを探してください。果物は食事の楽しみでもあり、なくすと食欲全体が落ちることがあります。
この反応には、季節の波があります。原因となる花粉が飛んでいる時期は、体が敏感になっているため、同じ果物でも症状が強く出ることがあります。逆に、花粉の季節が終わると食べられるようになる方もいます。
そのため、「去年の春は駄目だったのに、秋は平気だった」という経験が起こります。これを「治った」と受け取ると、次の春に強い症状が出ます。季節で変わるものだと知っておくだけで、判断を誤らずに済みます。
対策としては、花粉の季節には生の果物を控えめにし、加熱したものに切り替えるのが現実的です。しらかんばやはんのきに反応する方なら春先、ぶたくさやよもぎに反応する方なら秋口が要注意の時期になります。カレンダーに印を付けておくと、家族も気をつけられます。
花粉症そのものの治療を受けることで、食べたときの症状が軽くなる場合もあります。鼻の症状で耳鼻科にかかっているなら、食べものでも口がかゆくなることを伝えてください。花粉症と食物の症状を別々の医師に別々に話していると、つながりに気づかれません。同じ話として伝えることが大事です。
口の中だけの症状は、周囲に軽く見られがちです。「かゆいだけでしょう」と受け取られると、対応が後回しになります。伝えるときは、避けたい食品と、その理由をはっきり分けて言ってください。
言い方の例を挙げます。「生のりんごとももで、口の中と のどがかゆくなります。加熱したものは食べられます。ただし、のどの症状が強く出たことがあるので、生では出さないでください」。この言い方であれば、避ける範囲と、食べられる範囲と、危険の程度の3つが同時に伝わります。
果物は、施設ではデザートとして毎日のように出ます。献立表に「果物」とだけ書かれていて、種類が分からないことがあります。この場合は、種類を書いてもらうか、その日の朝に確かめる仕組みを作ってください。「果物」の中身は日によって変わります。
配食の場合も同じです。デザートが付くコースでは、果物が入ることがあります。加熱したものなら食べられるのであれば、コンポートやゼリーに替えられないかを聞いてください。替えられないなら、その日はご家族が別のものを用意する形になります。伝え方を紙にまとめる方法はアレルギーの伝え方に書いています。
この反応が分かったとき、果物をすべてやめてしまう方がいます。しかし、反応するのは特定の果物であって、すべてではありません。しらかんばの花粉に反応する方であれば、りんごやももで症状が出ても、みかんやぶどう、いちごでは何ともない、ということがよくあります。
どの果物が駄目かをはっきりさせて、それ以外は普通に食べてください。果物は水分と食物繊維とカリウムを同時に取れる、高齢の方にとって使い勝手のよい食品です。まるごとやめると、そのぶんを他で埋めるのが手間になります。
加熱すれば食べられることが多いという性質も、うまく使ってください。りんごを薄く切って電子レンジで温めるだけで、症状が出なくなる方がいます。しかも加熱したりんごはやわらかく、噛む力が落ちた方でも食べやすくなります。缶詰のもも、コンポートにしたなし、煮たりんご。これらは食べやすさの面でも都合がよく、避ける必要が消えたうえに食べやすくなるという二重の利点があります。
ただし、初めて試すときは少量からにしてください。加熱で必ず大丈夫になるとは限りません。ひとくち食べて15分待ち、何もなければもう少し食べる。この進め方であれば、万一のときも軽く済みます。のどの症状が出た経験がある方は、自己判断で試さず、医師に確かめてください。
果物や野菜で口の中がかゆくなる方のうち、一部にはゴム製品との関わりがあります。知らないままだと、思わぬ場面でつながります。
天然ゴムの成分と、いくつかの果物の成分が似ているために、両方に反応することがあると言われています。関わりが指摘されている食品として、バナナ、アボカド、栗、キウイなどが挙げられます。
介護の場面では、ゴム手袋が日常的に使われます。手袋、絆創膏、血圧計の帯、チューブ類。医療と介護の現場には、ゴム製品が多くあります。これらで皮膚がかゆくなったことがある方は、医師に伝えてください。
逆に、こうした食品で症状が出る方は、手術や検査の前に必ず伝えてください。医療の現場では、代わりの材質のものが用意されています。言わなければ、通常のゴム製品が使われます。
関わりがあるかどうかは、検査と診察で確かめられます。心当たりがあるなら、自己判断せずに受診してください。該当しないことのほうが多いのですが、該当する場合は知っておく価値の大きい情報です。
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