管理栄養士が教える「高齢者のお弁当」の理想形|配食のふれ愛 太子店 健康コラム

理想のお弁当の栄養バランス — 3:1:2の法則

管理栄養士が推奨する高齢者向けお弁当の基本構成は、主食(ごはん):主菜(メインのおかず):副菜(野菜のおかず)= 3:1:2の容積比です。この比率は、厚生労働省と農林水産省が策定した「食事バランスガイド」の考え方に基づいています。

お弁当箱の中身の理想構成

区分容積の目安役割食材の例
主食約50%(3/6)エネルギー源(炭水化物)ごはん、おかゆ
主菜約17%(1/6)体をつくる(たんぱく質)肉、魚、卵、大豆製品
副菜約33%(2/6)体を整える(ビタミン・ミネラル・食物繊維)野菜、きのこ、海藻

高齢者の場合は、筋肉量の維持のためにたんぱく質を意識的に増やす必要があるため、主菜の割合をやや多め(1.5/6程度)にすることも有効です。一方、ごはんの量は体格や活動量に合わせて調整します。

1食の栄養目安 — カロリー・たんぱく質・塩分

日本人の食事摂取基準(2020年版)をもとに、65歳以上の高齢者の1食あたりの栄養目安を算出すると、以下のようになります。

1食あたりの栄養目標値

栄養素1食の目安(男性)1食の目安(女性)備考
エネルギー550〜700kcal450〜600kcal1日1,800〜2,100kcalの1/3
たんぱく質20g以上17g以上1日60g(男性)/50g(女性)の1/3
食塩相当量2.5g未満2.2g未満1日7.5g(男性)/6.5g(女性)の1/3
食物繊維7g以上6g以上1日21g以上の1/3
カルシウム250mg以上220mg以上1日750mg(男性)/650mg(女性)の1/3

ここで重要なのは、お弁当1食で完璧を目指す必要はないということです。朝食で乳製品を摂ってカルシウムを補い、間食でフルーツを食べてビタミンCを摂るなど、1日トータルでバランスを取る視点が大切です。

「15品目」を目指す多品目摂取の考え方

厚生労働省が推進する「健康日本21」では、1日に摂る食品の種類を増やすことが推奨されています。目安として1日30品目という数字が知られていますが、現在は品目数よりも食品群のバランスが重視されています。

現実的な目標として、1食で10〜15品目の食材を使うことを意識すると、自然と多様な栄養素が摂取できます。

15品目を達成するための工夫

  • 主菜に複数の食材:鶏肉の野菜あんかけ(鶏肉+にんじん+たまねぎ+しいたけ+ピーマン)で5品目
  • 副菜を2〜3品:ほうれん草のおひたし(2品目)+ひじきの煮物(ひじき+大豆+こんにゃく+にんじんで4品目)
  • 汁物を活用:味噌汁に豆腐・わかめ・ねぎを入れれば4品目追加
  • ごはんに一工夫:白ごはんにちりめんじゃこやごまを混ぜるだけで品目数が増える

当店の7メニュー体系と栄養設計

配食のふれ愛 太子店では、お客様の体格・嗜好・疾患に合わせた7種類のメニュー体系をご用意しています。すべてのメニューは管理栄養士が栄養計算を行い、1食で必要な栄養素がバランスよく摂れるよう設計されています。

メニュー体系と栄養特性

メニュー特徴こんな方におすすめ
普通食(ごはん付き)バランスの整った標準メニュー。1食約550kcal一般的な高齢者の方
普通食(おかずのみ)ごはんは自分で用意したい方向けごはんの量を調整したい方
小町量を控えめにした小容器メニュー食が細い方、小柄な方
小町・大小容器で量はしっかり小容器が良いが量は欲しい方
糖質カロリー調整食糖質とカロリーを控えめに設計糖質やカロリーが気になる方
たんぱく質調整食たんぱく質と塩分を調整たんぱく質や塩分を控えたい方
ムース食舌でつぶせるやわらかさ嚥下機能が低下した方

どのメニューも、管理栄養士が品目数・栄養バランス・食べやすさを考慮して設計しています。ご自身の体の状態や嗜好に合わせて、最適なメニューをお選びください。迷った場合は、お気軽にご相談いただければ管理栄養士がアドバイスいたします。

冷めても食べやすいかどうか

弁当は、作ってから食べるまでに時間が空きます。この前提が、献立の作り方を変えます。

脂の多い料理は、冷めると口当たりが重くなります。高齢の方には、食べ進めにくくなる原因になります。脂の量と種類を選ぶ必要があります。

そして、時間が経つと水分が出る食材があります。ほかのおかずに移り、味も食感も変わります。下ごしらえの段階で対処しておくものです。

硬くなりやすい食材もあります。加熱してから時間が経つと、噛み切りにくくなるものがあります。切り方や下処理で違いが出ます。

作り立てを前提にした献立を、そのまま弁当にすることはできません。弁当には弁当の設計が要ります。ここが、家庭の食事との大きな違いです。

一食で完結させる必要がある

家庭の食事なら、一日の中で調整できます。弁当は、そうはいきません。

その一食だけを食べる方がいます。ほかの食事が十分でない場合、この一食が一日の大半になります。足りない栄養素があれば、そのまま不足します。

ですから、一食の中で組み立てる必要があります。主食、主菜、副菜。この3つがそろっていることが、最低の条件になります。

そして、体をつくる材料を必ず入れてください。これが最も不足しやすく、不足すると筋肉が落ちます。高齢の方にとって、最も影響の大きい栄養素です。

野菜も、一食分をきちんと入れてください。付け合わせ程度では足りません。副菜として、独立した品数が必要です。

見た目が食欲を左右する

栄養が整っていても、食べてもらえなければ意味がありません。

色の数を意識してください。茶色ばかりの弁当は、食欲を落とします。緑、赤、黄、白を意識して入れると、見た目が変わります。

そして、詰め方にも影響があります。ぎゅうぎゅうに詰めると、量が多く見えて手が止まります。少なく見せる工夫が、食べる量を増やすことがあります。

ふたを開けたときの印象が、その一食を決めます。高齢の方は、量が多いと感じた時点で食べる気を失うことがあります。器の大きさも含めて考えてください。

季節を感じる食材が入っていると、会話が生まれます。「もう筍が出たのか」という一言が、食事の時間を変えます。栄養以外の役割です。

量を減らすなら中身を濃くする

食べられる量が減った方に、量を減らした弁当を出すだけでは足りません。

量が減れば、入る栄養も減ります。同じ内容で半分にすると、栄養も半分になります。これが、少量にした弁当の落とし穴です。

少ない量で必要な分が入る形にする必要があります。油や乳製品を使って、少量でも熱量が入るようにする。体をつくる材料の割合を高くする。

そして、食べやすさも上げる必要があります。やわらかく、まとまりやすく、飲み込みやすい形。量が減っている方ほど、噛む力も落ちていることがあります。

合う形は、状態によって変わります。迷ったら、医師か管理栄養士に相談してください。自己判断で量だけを減らさないでください。

主食の量を勝手に減らさない

ごはんを減らす方が多くいますが、注意が要ります。

体を動かす燃料が足りないと、体をつくる材料が燃料として使われます。結果として、筋肉が落ちます。おかずをしっかり食べていても、この形になります。

体重が減っている方は、特に注意してください。「食べすぎないように」という意識が、逆に体力を落としていることがあります。若い頃の常識が当てはまりません。

そして、量を調整する必要がある方もいます。医師から指示を受けている場合は、その指示が優先されます。自己判断で増減しないでください。

迷ったら、体重の動きを見てください。減り続けているなら、足りていません。週に一度、同じ条件で測ってください。

塩分の調整は味の設計から

塩を減らすだけでは、食べてもらえません。

だしの効いた料理は、塩が少なくても物足りなさが出にくくなります。だしの質が、そのまま減塩の余地になります。ここに手間をかける価値があります。

そして、酸味や香りを使う方法があります。酢、柑橘、香味野菜、香辛料。味に輪郭が出て、薄さを感じにくくなります。

すべてのおかずを薄くしないことも工夫の一つです。一品だけしっかり味をつけ、ほかを控える。全体の量を抑えながら、満足感が残ります。

調整が必要な方は、医師の指示に従ってください。目標の量は、状態によって異なります。一律の数字では決められません。

同じ献立が続かないようにする

毎日届くものだからこそ、繰り返しが問題になります。

同じものが続くと、食べる気が落ちます。味の記憶が残っているうちに同じものが出ると、手が止まります。間隔を空ける設計が要ります。

そして、栄養の面でも偏りが出ます。使う食材が限られると、入る栄養素も限られます。食材の種類を広く取ることが、偏りを防ぎます。

調理法を変えるだけでも、印象が変わります。焼く、煮る、蒸す、和える。同じ食材でも、別のものとして食べられます。

季節の食材を入れると、自然に変化が生まれます。旬のものは、味も栄養も良く、値段も落ち着きます。献立の骨組みにできます。

食べ残しから分かること

残されたものは、次の献立を決める材料になります。

いつも同じおかずが残るなら、理由があります。硬い、味が濃い、匂いが苦手、量が多い。本人に聞けば分かることがあります。

そして、ごはんだけが残る場合は、噛む力や飲み込む力が落ちている可能性があります。形を変えれば食べられることがあります。相談する合図です。

全体的に残る量が増えてきたら、体調の変化を疑ってください。食欲の低下は、多くの不調の最初の合図です。続くようなら受診を勧めてください。

手渡しで届く形なら、この変化に気づけます。置いていく形では、残したかどうかも分かりません。ここが、見守りとしての役割になります。

家族が確かめておくとよいこと

頼む側として、確かめておく点があります。

栄養の設計を誰が行っているか。管理栄養士が関わっているかどうかを確かめてください。献立の根拠が変わります。

そして、対応できる形の種類を確かめてください。やわらかいもの、刻んだもの、飲み込みやすくしたもの。状態が変わったときに、切り替えられるかが重要です。

アレルギーへの対応も確かめてください。どこまで対応できるか、表示はどうなっているか。命に関わる部分です。

まず試してみることをお勧めします。説明を読むより、実際に食べてみるほうが分かります。本人の反応が、最も確かな判断材料です。

弁当だけで完結させない

最後に、届く弁当をどう位置づけるかという話をします。

一日一食を届けても、残る二食があります。そこが崩れていれば、全体としては足りません。ほかの食事の状況も見てください。

朝は簡単なもので済ませている方が多くいます。ここに体をつくる材料が入っていないことがよくあります。卵、牛乳、ヨーグルト、納豆。置いておくだけで足せます。

そして、水分の確保も忘れないでください。食事から入る分が減ると、水分も減ります。汁物や飲み物を、意識して足してください。

足りない部分は、ケアマネジャーや管理栄養士に相談してください。弁当を軸にして、残りをどう埋めるかという考え方が現実的です。

高齢者向けのお弁当を選ぶとき、どこを見るか

「高齢者向けのお弁当」を探している方から、いちばんよく訊かれるのが 「どれを見て決めればいいのか分からない」という話です。 栄養成分表示は必ずどこかに書いてあります。見る順番を決めておくと早く済みます。

見るところ目安外れているときに起きること
エネルギー1食 400〜600kcal低すぎると体重が落ちる。高すぎると血糖と体重が上がる
たんぱく質1食 20g前後足りないと筋肉が落ちる。高齢者に必要なたんぱく質量
食塩相当量1食 2.0〜2.5g3gを超える弁当が続くと、1日の目標(男性7.5g・女性6.5g未満)を守れない
品目数1食 12〜15品目少ないとビタミン・ミネラルが特定のものに偏る
かたさ普通食で噛めるか、刻みやムースが要るか合っていないと残す。嚥下食とは?
届き方手渡しか置き配か、安否確認が付くかひとり暮らしでは、食事より先にここが効く

当店の弁当は、この6つを毎月の献立表に全部書いて配っています。 エネルギーとたんぱく質と食塩相当量は日ごとに載せているので、 主治医や管理栄養士に見せてそのまま相談していただけます。 比べ方をもう少し詳しく決めたい方は 配食サービスを選ぶときの確認12項目冷凍宅配食と当日調理、どちらを選ぶかをご覧ください。

60代・70代・80代で、見るところが変わります

同じ「高齢者向け」でも、60代の方と80代の方では困っていることが違います。 年齢で線を引く話ではありませんが、変わり目の目印にはなります。

時期いちばんの課題弁当で優先すること
60代働いている方が多く、血圧・血糖・脂質が気になり始める食塩と主食の量。量より中身を整える。高齢者の高血圧と食事血糖値スパイク
70代筋肉と体重が落ち始める。フレイルの分かれ目たんぱく質を確保する。減らす食事から足す食事へ切り替える。フレイルとは?
80代以降噛む力・飲み込む力が落ち、一度に食べられる量が減るかたさと一口の大きさ。少量でも栄養が入る形へ。低栄養とその対策

60代までは「減らす」ことが健康につながりますが、70代を過ぎると 同じつもりで減らし続けることが危なくなります。 体重が落ちてきたら、塩分や糖質より先に総量とたんぱく質を見てください。 持病で制限がある方は、その指示のほうが優先します (高齢者の慢性腎臓病(CKD)と食事療法)。

手づくりと宅配、どちらを選ぶか

宅配弁当を売っている立場で言うのも変ですが、 作れるうちは作ったほうがよいと考えています。 判断の材料になるよう、実際のところを並べます。

手づくり宅配弁当
1食あたりの材料費200〜350円ほど500〜700円ほど(当店の普通食は税込600円前後)
かかる手間買い物・調理・片づけで1日1〜2時間受け取るだけ
栄養の計算自分で組む。品目数が偏りやすい管理栄養士が組む。数字が表示される
好みへの合わせやすさ自由献立は決まっている(アレルギー除去は対応可)
安否の確認なし手渡しなら毎日顔を見る

費用だけを見れば手づくりが安く済みます。ただ、 買い物に行けなくなった・作るのが億劫になった・同じおかずが続くようになった、 というときは、材料費の差より食べなくなることの損のほうが大きくなります。 毎日でなく週に2〜3回だけ頼むという使い方をされる方も多く、 当店でもそれで構いません。所得によっては自治体の助成が使えることもあります (配食サービスの費用と自治体の助成)。 作りすぎて余らせている方は食べ残しと作りすぎも合わせてご覧ください。

毎日のお弁当で「理想の栄養バランス」を

配食のふれ愛のお弁当は、主食・主菜・副菜のバランスを管理栄養士が毎食チェックし、1食で10品目以上の食材を使用しています。カロリー・たんぱく質・塩分を適正に管理しながら、飽きのこないバラエティ豊かな献立をお届けします。

メニュー詳細を見る 無料試食を申し込む

関連用語

管理栄養士

栄養学の専門知識を持つ国家資格者。献立の栄養計算や個人に合わせた栄養指導を行う。

たんぱく質

筋肉・臓器・血液をつくる三大栄養素。高齢者は毎食20g以上の摂取が理想。

食事摂取基準

厚生労働省が策定する日本人の栄養素摂取の基準値。5年ごとに改定される。

関連コラム

高齢者に必要なたんぱく質 — 1日どれくらい摂ればいい?

たんぱく質の推奨量と効率的な摂り方を、食材の含有量とともに具体的に解説します。

高齢者の高血圧と食事

高齢者の高血圧の特徴と食事での管理法。DASH食、減塩のコツ、カリウム摂取、血圧を上げない献立の工夫を管理栄養士が解説。南河内地域の高齢者に向けた実践的な減塩メニューを紹介します。

配食サービスの確認12項目

配食サービスを2〜3社比べるときに、何を聞き、どこを見るか。厚生労働省のガイドラインをふまえた12項目のチェックリストと、栄養表示の読み方、解約条件の確かめ方、自治体助成の調べ方、試食での見どころをまとめます。