必要量がミリグラム以下。だからこそ、摂りすぎが起きやすい
カルシウム、鉄、亜鉛はよく知られていますが、体にはほかにも必要な微量ミネラルがあります。必要量はごくわずかですが、不足すると特有の症状が出ます。
| ミネラル | 働き | 多い食品 |
|---|---|---|
| セレン | 抗酸化酵素の材料。甲状腺ホルモンの代謝 | かつお、まぐろ、いわし、卵、玄米 |
| 銅 | 鉄の利用を助ける。骨と血管の結合組織を作る | レバー、いか、たこ、ごま、ナッツ、ココア |
| マンガン | 骨の形成、酵素の働き | 玄米、大豆、のり、しょうが、栗 |
| クロム | インスリンの働きを助ける | ひじき、あおのり、レバー、卵 |
| ヨウ素 | 甲状腺ホルモンの材料 | 昆布、わかめ、魚介類 |
| モリブデン | 酵素の働き | 大豆、レバー、穀類 |
これらは普通に食事をしていれば不足しません。日本の食卓は魚介、海藻、大豆、玄米を含むため、微量ミネラルの供給は比較的良好です。
最後の項目は実際に起きています。亜鉛が味覚に効くと聞いてサプリを長期に飲み、銅欠乏による貧血や神経症状を起こすという例があります。
必要量が少ない栄養素は、サプリメントで簡単に上限を超えます。
| ミネラル | 摂りすぎたときの症状 |
|---|---|
| セレン | 脱毛、爪の変形、吐き気、神経障害。上限と必要量の差が小さい |
| ヨウ素 | 甲状腺機能の異常。日本では昆布の摂りすぎで起きます(甲状腺と食事) |
| 銅 | 吐き気、肝機能障害 |
| 亜鉛 | 銅欠乏、貧血、免疫の低下 |
| 鉄 | 便秘、吐き気。過剰蓄積は臓器を傷めます |
セレンは特に注意が要ります。推奨量は30μg程度、上限は450μg程度で、幅が狭い栄養素です。海外製のサプリメントには高用量のものがあります。
微量ミネラルへの対応は単純です。
特定のミネラルのサプリメントを、医師の指示なく長期に飲まないでください。血液検査で不足が確認された場合を除き、必要ありません。
サプリメントとの付き合い方、亜鉛と味覚障害もご覧ください。
微量の栄養素の中で、高齢の方に関わりが深いものの一つが亜鉛です。
不足すると、味を感じにくくなることがあると言われています。味が薄く感じる、何を食べてもおいしくない。こうした変化から、食事の量が減っていくことがあります。本人は「年のせい」と考え、周囲も気づきません。
ただし、味を感じにくくなる原因はほかにもあります。薬の影響、口の中の乾燥、口の中の汚れ、鼻の問題、加齢による変化。亜鉛の不足と決めつけて、サプリメントで様子を見るのは適切ではありません。
血液の検査で確かめられる項目です。気になるなら、医師に相談して測ってもらってください。不足が確かめられれば、治療の対象になります。
食品では、牡蠣、赤身の肉、レバー、卵、チーズ、大豆製品に含まれるとされています。動物性の食品を食べない生活が続いている方では、不足しやすくなります。肉が噛みにくくなった方には、ひき肉や卵が現実的な選択肢です。
鉄については、他の栄養素と違う注意が必要です。
貧血を指摘されたとき、市販の鉄剤を自分で買って飲み始める方がいます。これは避けてください。貧血の原因が鉄の不足とは限らず、別の病気が隠れていることがあるためです。
とくに、体のどこかから出血が続いている場合があります。胃や腸からの出血は、気づかないうちに進みます。鉄を足して数値だけ戻すと、本当の原因の発見が遅れます。
そして、鉄は取りすぎると体に負担がかかると言われています。水に溶けて出ていくものと違い、余った分は体に残ります。必要のない方が飲み続けることには、害があります。
まず、医療機関で原因を調べてもらってください。必要であれば、適切な量が処方されます。食品では、赤身の肉、レバー、貝類、緑の葉物、大豆製品に含まれるとされています。
微量の栄養素については、不足より取りすぎのほうが問題になる場面があります。
食品から取る場合、極端な量になることはまずありません。問題が起きるのは、ほとんどがサプリメントを使った場合です。一度に多く入り、しかも続けやすいという性質があります。
複数の製品を併用していると、合計が見えなくなります。総合的な製品と単一の製品、さらに強化された食品。それぞれは表示された量でも、重なると多くなります。
そして、微量の栄養素は互いに影響し合うと言われています。一つを大量に取ると、別のものの吸収が妨げられることがあります。良かれと思った行動が、別の不足を招くということです。
使っている製品は、すべて医師と薬剤師に伝えてください。受診のたびに、お薬手帳と一緒に見せるのが確実です。薬局に持っていけば、確かめてもらえます。
微量の栄養素を一つずつ管理することは、現実的ではありません。方針は単純です。
いろいろな食品を食べることが、最も確実な方法です。主食、主菜、副菜がそろっていれば、極端な不足は起きにくいと考えられます。1食ごとに完璧である必要はなく、1週間で見て偏っていなければ十分です。
そして、精製されていない食品を時々入れると、幅が広がります。雑穀、大豆製品、海藻、ナッツ、種実類。ただし、硬いものは高齢の方には危険な場合があるため、形に注意してください。
逆に、同じものばかり食べる生活が最も危険です。菓子パンだけ、うどんだけ、おかゆと漬物だけ。こうした食生活が続いている方では、複数の栄養素が同時に足りていません。
変えられない事情があるなら、外部の力を使ってください。配食、通所での食事、家族の支援。知識より、仕組みのほうが結果につながります。
一般的な食生活では問題になりにくいものですが、条件がそろうと不足が起きます。
まず、食べる量が減っている方です。体重が落ちている、食事を残すようになった。この場合、微量の栄養素だけでなく、すべてが足りていません。
次に、消化や吸収に問題がある方です。胃や腸の手術を受けた方、下痢が続いている方、膵臓に病気がある方。食べていても取り込めていない可能性があります。
そして、必要量が増えている方です。傷や床ずれがある方、感染症にかかっている方、透析を受けている方。通常より多く必要になる状況があります。
該当する方は、自己判断せず、医師と管理栄養士に相談してください。血液の検査で確かめられる項目があります。必要であれば、適切な形で補充が行われます。
食べる量が減っている方に、微量の栄養素の話をしても、実行できません。順番があります。
まず確かめるのは、体重です。半年で2キロから3キロ落ちているなら、栄養が足りていないしるしです。この段階では、微量の栄養素を気にしても効果は出ません。
次に、エネルギーとたんぱく質を確保することです。ごはん、肉、魚、卵、豆腐、乳製品。ここが土台になります。少量でエネルギーが取れるよう、油や乳製品を足す工夫があります。
そのうえで、食品の種類を増やしてください。順番を逆にしないでください。野菜や海藻ばかり増やして主菜が減ると、かえって状態が悪くなります。
量が戻らない場合は、原因を探る必要があります。歯や入れ歯、飲み込み、薬、気持ちの落ち込み。いずれも食事の工夫では解決しません。医師とケアマネジャーに相談してください。
足りているかどうかを感覚で判断するのは困難です。確かめる手段を知っておいてください。
血液の検査で測れる項目があります。ただし、すべてが通常の健康診断に含まれているわけではありません。気になる項目があれば、医師に相談してください。
そして、症状から自己診断しないでください。だるい、味が分からない、爪や髪の状態が変わった。これらは、多くの原因で起こります。栄養の不足と決めつけると、別の病気の発見が遅れます。
相談するときは、1週間分の食事を書き出して持っていくと話が早く進みます。何を食べていないかが分かれば、何が足りていないかの見当がつきます。
そして、複数の薬を飲んでいる方は、お薬手帳も持っていってください。薬が栄養の吸収に影響していることがあります。この確認は、薬剤師に頼むこともできます。
微量の栄養素は、宣伝で取り上げられやすい題材です。判断の基準を持っておいてください。
「現代人は必ず不足している」という言い方は、疑ってください。不足しているかどうかは、その方の食事と体の状態によります。全員に当てはまる話ではありません。
そして、「多いほど良い」も成り立ちません。微量の栄養素には適切な範囲があり、超えると害が出るものがあります。この点が、他の栄養素と大きく違うところです。
高価な製品を勧められたら、その場で決めないでください。家族に相談する、医師に聞く、消費生活センターに問い合わせる。時間を置くだけで、判断は変わります。
離れて暮らす家族は、届いている荷物や請求書に目を向けてください。定期購入の契約になっていることがあります。本人が困っていることに気づいていない場合もあります。
離れて暮らす家族が、栄養の状態を知る手がかりがあります。専門的な知識は要りません。
まず、体重です。会うたびに測ってもらう、あるいは本人に記録してもらう。落ちていれば、何かが起きています。数字は、話を聞くより確実です。
次に、冷蔵庫と台所です。何が入っているか、賞味期限が切れたものが残っていないか、調理した形跡があるか。本人に聞くより、ここに実態が表れます。
そして、ごみです。菓子パンの袋、インスタント麺の容器ばかりが出ていれば、食事の内容が偏っています。責めるのではなく、代わりになるものを用意することを考えてください。
気になることがあれば、ケアマネジャーか地域包括支援センターに相談してください。本人が受け入れやすい形で、支援につなげる方法があります。家族だけで抱え込まないでください。
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