暗いところで見えにくい。それは目の老化だけとは限らない
ビタミンAには2つの主要な働きがあります。
高齢者では、夜間の見えにくさ、目の乾燥、口や鼻の粘膜の乾燥、風邪をひきやすいといった形で不足が現れます。
| 形 | 含む食品 | 特徴 |
|---|---|---|
| レチノール(動物性) | レバー、うなぎ、卵黄、バター、チーズ | そのままビタミンAとして働く。摂りすぎに注意 |
| β-カロテン(植物性) | にんじん、かぼちゃ、ほうれん草、小松菜、モロヘイヤ、春菊 | 体内で必要な分だけビタミンAに変わる。摂りすぎの心配がない |
この違いは実際に重要です。レバーは1食で1日の必要量の何倍も含みます。週1回程度なら問題ありませんが、毎日食べたり、サプリメントで摂ったりすると過剰症の危険があります。
一方、β-カロテンは体が必要な分だけ変換するため、にんじんやかぼちゃをいくら食べても過剰にはなりません(皮膚が黄色くなることはありますが、害はなく食べるのをやめれば戻ります)。
ビタミンAもβ-カロテンも脂溶性です。油と一緒でないと吸収されません。
生野菜サラダをノンオイルドレッシングで食べると、β-カロテンはほとんど吸収されません。少量でよいので油を使ってください。
レチノールを長期に過剰摂取すると、次のことが起きます。
耐容上限量は成人で1日2,700μgRAEです。サプリメントで補う必要はほとんどありません。推奨量(男性850μgRAE、女性650μgRAE程度)は、緑黄色野菜を毎日食べていれば満たせます。
暗いところで見えにくい、視界がかすむ、まぶしいといった症状は、ビタミンA不足だけでなく白内障、緑内障、加齢黄斑変性など治療が必要な病気の可能性があります。
「栄養で治そう」とする前に、まず眼科を受診してください。見えにくさは転倒と閉じこもりに直結します。
目の健康には、β-カロテンのほか抗酸化成分(ルテイン、ゼアキサンチン)も関わります。免疫全般は熱が出たあとの食事をご覧ください。
この栄養素は、日本の一般的な食生活を送っていれば、極端に足りなくなることは多くありません。ただし、状況によっては話が変わります。
まず、食べる量そのものが減っている場合です。1日に口に入る総量が減れば、含まれるものも比例して減ります。体重が落ちている方では、この栄養素だけでなく、複数のものが同時に足りていないと考えるべきです。
次に、脂質を極端に減らしている場合です。この栄養素は油に溶ける性質があり、油と一緒でなければ吸収されにくいものです。健康のためと考えて油をほとんど使わない食事にしていると、食べていても取り込めていないことがあります。
そして、脂肪の消化や吸収に問題がある方です。膵臓の病気、胆のうを取った方、腸の病気がある方。これらの場合、油に溶ける栄養素全般が吸収されにくくなると言われています。該当する方は、医師に確かめてください。
食事が偏っている場合も同様です。主食と汁ものだけ、菓子パンと甘いものだけ。こうした食生活が続いている方では、緑黄色の野菜も、レバーも、卵も、乳製品も口に入っていません。まず全体の内容を見てください。
この栄養素を取ろうとすると、緑黄色野菜という言葉が必ず出てきます。実際に食卓に載せる形を考えます。
にんじん、かぼちゃ、ほうれん草、小松菜、モロヘイヤ。いずれもやわらかく調理でき、高齢の方の食卓に載せやすい食材です。にんじんとかぼちゃは煮ればやわらかくなり、甘みもあって食べやすい部類に入ります。
油と一緒に取ることが要点です。炒める、揚げる、ごま油をかける、マヨネーズで和える。油を使うことで吸収が上がるうえ、少量でエネルギーが取れるという利点もあります。食が細い方には、この点が特に重要です。
作り置きが使えます。かぼちゃの煮物、にんじんのきんぴら、ほうれん草のおひたし。まとめて作って冷蔵しておけば、毎食少しずつ使えます。毎回作る必要はありません。
冷凍の野菜も選択肢です。下ごしらえが済んでおり、必要な分だけ使えます。買い物に行くのが大変な方、包丁を使うのが難しくなってきた方には、現実的な方法です。栄養の面でも、大きく劣るものではありません。
この栄養素を多く含む食品として、レバーが挙げられます。ただし、扱いには注意が要ります。
レバーに含まれる量は、他の食品と桁が違います。少量でも、1日の目安を大きく超えることがあります。体に良いからと毎日食べる、という使い方には向きません。
とくに、油に溶ける性質があるため、余った分は体にたまります。水に溶けるものと違い、尿として出ていきません。長期間にわたって多く取り続けると、害が出ると言われています。
頭痛、吐き気、皮膚がむける、骨や関節の痛み。これらは、取りすぎたときに現れるとされる症状です。ただし、他の原因でも起こるため、自己判断はできません。心当たりがあれば受診してください。
週に1回程度であれば、問題になることは考えにくいものです。鉄も同時に取れる食品であり、適量であれば有用です。量を守って使ってください。サプリメントを併用している場合は、合計の量に注意が要ります。
この栄養素には、体への入り方が2通りあります。この違いが、安全性の考え方に関わります。
動物性の食品に含まれる形は、そのまま働きます。レバー、うなぎ、卵、乳製品、バター。効率よく取れる反面、取りすぎの心配があるのはこちらです。
植物性の食品に含まれる形は、体の中で必要な分だけ変換されると言われています。にんじん、かぼちゃ、緑の葉物。そのため、野菜から取りすぎて害が出ることは、通常は考えにくいとされています。
ただし、極端に大量に取り続けると、皮膚が黄色くなることがあります。これは病気ではなく、量を減らせば戻るとされています。にんじんジュースを毎日大量に飲む、といった場合に起こります。
日常の食事では、野菜からの分を中心に考えるのが安全です。動物性の食品は、量を控えめに、週に何度かという形で使ってください。この使い分けを覚えておけば、大きく間違えることはありません。
この栄養素については、特定の状況で注意が必要です。家族に該当する方がいれば、知っておいてください。
妊娠の可能性がある方が、動物性の形を大量に取ることには注意が呼びかけられています。サプリメントで大量に取る場合が問題になります。この記事は高齢の方の食事を扱っていますが、家庭で同じサプリメントを使う場合には関わってきます。
そして、皮膚科などで処方される薬の中に、この栄養素に関係する成分を含むものがあります。その薬を使っている方が、サプリメントを併用すると、量が過剰になることがあります。使っている薬は、すべて医師と薬剤師に伝えてください。
複数のサプリメントを使っている方も注意が要ります。総合的な製品と単一の製品を併用すると、合計で思わぬ量になります。製品の表示を見て、重複していないか確かめてください。
迷ったときは、使っている製品を薬局に持っていってください。薬剤師が、薬との組み合わせや量を確かめてくれます。これは無料でできることが多く、電話で相談できる薬局もあります。
目が見えにくくなったとき、栄養の問題だと考える方がいます。しかし、多くの場合は別の原因です。
白内障、緑内障、加齢による網膜の変化、糖尿病による目の合併症。いずれも、食事では治りません。そして、いずれも早く見つけて治療すれば、進行を抑えられる可能性があります。
とくに緑内障は、初期には自覚症状がほとんど出ないと言われています。気づいたときには、視野がかなり失われていることがあります。年に一度、眼科で診てもらう習慣に意味があります。
そして、見えにくさは転倒に直結します。段差が見えない、床のものが見えない、暗いところで足元が分からない。骨折して寝たきりになる引き金として、視力の低下は大きな要因です。
眼鏡が合っていないことも多くあります。何年も同じ眼鏡を使っていませんか。作り直すだけで生活の質が変わることがあります。栄養の話より、まずこちらを確かめてください。
この栄養素は、粘膜を保つ働きに関わるとされます。ただし、高齢の方の口の乾きには、別の原因が多く関わっています。
最も多いのは、薬の影響です。血圧の薬、アレルギーの薬、精神科で出される薬、頻尿の薬。多くの薬に、口が乾くという作用があります。複数の薬を飲んでいる方では、この影響が重なります。お薬手帳を持って、薬剤師に相談してください。
次に、水分の不足です。高齢の方は喉の渇きを感じにくく、水分が足りていないことが多いものです。こまめに少量ずつ取ることが基本になります。
そして、口を動かさないことです。会話が減る、噛む回数が減ると、唾液が出にくくなると言われています。人と話す機会を持つこと、しっかり噛める状態を保つことが、結果として口の乾きを和らげます。
口が乾くと、食べにくくなり、飲み込みにくくなり、虫歯や口の中の炎症も起きやすくなります。放置せず、歯科か医師に相談してください。口の手入れについては口腔ケアの手順にまとめています。
ここまで一つの栄養素について述べてきましたが、最後に位置づけを確かめておきます。
特定の栄養素を意識して増やすより、いろいろな食品を食べるほうが確実です。主食、主菜、副菜がそろっていれば、大きく偏ることはありません。1食ごとに完璧である必要はなく、1週間で見て偏っていなければ十分です。
そして、高齢の方にとって最も大きな問題は、特定の栄養素の不足ではなく、食べる量そのものの減少です。体重が落ちている、食事を残すようになった、好きだったものを食べなくなった。これらのほうが、はるかに重い問題です。
量が減った原因を探ってください。歯や入れ歯、飲み込み、薬、気持ちの落ち込み、買い物や調理の負担。原因によって、対処がまったく違います。
作るのが負担になっているなら、外部の力を使う選択肢があります。配食、通所での食事、家族による支援。栄養素の知識を増やすより、毎日の食事が確保される仕組みを作るほうが、結果につながります。
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