毎日その家の前を通る仕事の人が、いちばん先に気づく
多くの市区町村が、地域を回る民間事業者と見守りに関する協定を結んでいます。業務のなかで高齢者の異変に気づいたとき、市区町村や地域包括支援センターへ通報する、という取り決めです。
参加している業種の例です。
共通するのは定期的にその家を訪ねる点です。新聞がたまる、郵便受けがあふれる、いつもと様子が違う。日常の業務のなかでしか分からない情報があります。
この流れが働くために、市区町村側が「その家に高齢者が一人で住んでいる」ことを把握している必要があります。把握されていないと、通報を受けても確認先がありません。
次のものは、申請しなければ登録されません。該当するものは市区町村の窓口で手続きしてください。
| 登録 | 目的 | 窓口 |
|---|---|---|
| 一人暮らし高齢者の名簿 | 見守り・災害時の把握 | 市区町村の高齢福祉担当 |
| 避難行動要支援者名簿 | 災害時に支援が必要な人として登録 | 同上 |
| 個別避難計画 | 誰がどう避難を手伝うかを決めておく | 同上 |
| 認知症高齢者の事前登録 | 行方不明時に警察・関係機関で情報を共有 | 市区町村・警察 |
| 救急医療情報キット | 救急隊に持病と連絡先を伝える | 地域包括支援センター |
避難行動要支援者名簿への登録は、災害対策基本法に基づく制度です。個別避難計画の作成も自治体の努力義務とされています。「まだ元気だから」と後回しにされがちですが、登録しておいて損はありません。
配食のふれ愛 太子店は、毎日決まった時間にお客様のお宅を訪ねる立場にあります。お弁当をお渡しする数分のなかで、いつもと違う様子に気づいたときは、あらかじめ伺っているご家族・ケアマネジャーへご連絡しています。
この仕組みが働くには、連絡先が最新であることが不可欠です。ご家族の電話番号や住所が変わったときは、必ずお知らせください。
連絡体制の整え方は緊急時の連絡体制を、災害時の備えは高齢者の防災と食料の備えをご覧ください。
地域によって顔ぶれは異なりますが、共通する業種があります。
毎日か、それに近い頻度で回る事業者です。新聞の配達、郵便、宅配、配食。決まった時間に同じ家を訪れるため、変化に気づきやすい立場にあります。
そして、定期的に訪れる事業者です。電気やガス、水道の検針、生活協同組合の配達。月に一度でも、前回との違いが分かります。
店舗を構える事業者が加わっている地域もあります。薬局、金融機関、商店。来なくなったことや、様子の変化に気づく立場です。
どの事業者が参加しているかは、市町村のホームページに載っていることがあります。知っておくと、どこに気づいてもらえるかが分かります。
過度に期待すると、備えが足りなくなります。
気づけるのは、訪れた瞬間だけです。訪問と訪問の間に何が起きても、分かりません。週に一度の配達なら、最大で6日の空白があります。
そして、玄関先で分かることに限られます。家の中の様子、体調の細かい変化は見えません。応答があれば、そこで終わります。
置き配の形では、人と会いません。手渡しでなければ、安否の確認にはなりません。この点は、契約の内容を確かめてください。
ですから、これは補助の仕組みです。これだけに頼る形にしないでください。家族の連絡や、決まった訪問と組み合わせてください。
連絡が入ったあと、どう動くかを知っておいてください。
まず、家族に連絡が入ります。登録されている連絡先が使われます。ここがつながらないと、次の段階に進みます。
市町村や地域包括支援センターが、状況を確かめます。ケアマネジャーが関わっている場合は、そちらにも連絡が回ります。誰かが訪問して、直接確かめる流れになります。
そして、命に関わると判断される場合は、救急や警察が動きます。室内に入る必要があるときは、この段階です。鍵がなければ、扉を壊すことになります。
この流れが速く回るかどうかは、登録された情報が正しいかで決まります。古い電話番号のままでは、そこで止まります。
心配されることの多い点です。整理しておきます。
通報の内容は、決められた窓口にだけ伝わります。近所に広まる仕組みではありません。関わる人には守秘の義務が課されます。
そして、事業者が個人の情報を受け取るわけではありません。気づいたことを伝える側であり、名簿を持つ立場ではありません。ここを誤解している方がいます。
市町村が持つ名簿については、本人の同意を得て作られるものがあります。誰に共有されるかが、あらかじめ決められています。説明を受けてから判断してください。
不安がある場合は、市町村の窓口で確かめてください。どこまでが誰に伝わるかを、書面で示してもらえます。
災害時や緊急時に備えた名簿があります。
一人で避難することが難しい方を、あらかじめ登録しておく仕組みです。高齢、障害、要介護といった条件が設けられています。市町村が作ります。
登録すると、地域の関係者に情報が共有されます。自治会、民生委員、消防など。誰に共有されるかは、市町村によって異なります。
そして、共有には本人の同意が要る場合があります。同意しない選択もできます。ただし、その場合は災害時に情報が届きません。
迷ったときは、共有される範囲を確かめてから決めてください。登録しておくほうが、いざというときに助けが届きやすくなります。
事業者の網とは別に、住民同士の目があります。
自治会や町内会が、見守りの活動を行っている地域があります。声かけ、訪問、集まりの開催。参加していない世帯には、届きません。
回覧板を回す関係も、確認の機会になります。手渡しの形なら、顔を合わせます。玄関に置く形が増えていますが、渡す形を残している地域もあります。
そして、隣の家との関係が、最も早く気づける手段です。灯りがつかない、新聞がたまっている、車が動いていない。毎日見ている人にしか分かりません。
離れて暮らす家族は、帰省のときに挨拶しておいてください。連絡先を渡すだけで、関係ができます。それが、最も費用のかからない備えです。
網が働くかどうかは、気づいた人が動きやすいかで決まります。
迷わせないでください。どこに連絡すればよいかが分からなければ、多くの人は何もしません。連絡先が明確であることが、最初の条件です。
そして、間違いを責めない空気が必要です。「何もなかった」で終わるほうが、はるかに良い結果です。空振りを責められると、次から誰も連絡しなくなります。
お礼を伝えることも忘れないでください。無償で気にかけてもらう関係は、負担が一方的になると続きません。帰省のときに顔を出す、それだけでも違います。
事業者に対しても同じです。本業の合間に見てもらっています。過度な要求は、仕組みそのものを弱めます。
一つに頼ると、それが働かなかったときに止まります。
種類の違うものを重ねてください。毎日来るもの、週に一度のもの、月に一度のもの。間隔が違うほど、空白が埋まります。
そして、気づく場所も分けてください。玄関先で気づくもの、家の中で気づくもの、外出先で気づくもの。同じ場所ばかり見ていても、抜けます。
気づいたことが集まる先を、一つに決めてください。ケアマネジャー、地域包括支援センター、家族。ばらばらに気づいても、つながらなければ意味がありません。
組み合わせ方は見守りの種類と選び方にまとめています。費用のかからないものから積み上げてください。
今日からできることを挙げておきます。
一つめ。市町村に、どんな見守りの仕組みがあるかを聞いてください。地域包括支援センターに電話をすれば、まとめて教えてもらえます。介護の認定がなくても相談できます。
二つめ。連絡先を1枚の紙にまとめ、本人の家の冷蔵庫に貼ってください。家族、かかりつけ医、ケアマネジャー、近所の方。気づいた人が見る場所です。
三つめ。近所の方と、一度顔を合わせてください。存在を知られていることが、すべての前提になります。
この3つで、網の土台ができます。費用はかかりません。そのうえで、足りない部分を仕組みで補ってください。
地域の網が、最も分かりやすく働く場面です。
あらかじめ登録しておく仕組みを設けている市町村があります。特徴や写真、連絡先を届け出ておく形です。いなくなったときに、関係する先へ一斉に情報が流れます。
そして、事業者や住民に協力を求める仕組みもあります。配達や巡回の途中で、気にかけてもらえます。行動の範囲が広い立場の人ほど、見つける機会があります。
持ち物に、連絡先を記しておく方法もあります。靴、衣類、鞄。保護された際に、身元がすぐ分かる形にしておいてください。
登録できる仕組みがあるかどうかは、地域包括支援センターで確かめてください。起きてからでは、間に合いません。元気なうちに済ませておく手続きです。
仕組みがあっても、届かないことがあります。理由は共通しています。
誰にも知られていなかった。近所付き合いがなく、どの事業者も出入りしていない。この状態では、網に入っていません。
連絡先が古かった。気づいた人が電話をかけても、つながりませんでした。更新されていない情報は、無いのと同じです。
そして、気づいていたが、連絡しなかった。大ごとにしたくない、勘違いだったら困る。ためらいが、時間を奪います。
この3つを潰しておいてください。知られていること、連絡先が正しいこと、迷わず連絡してよいと伝わっていること。仕組みより先に、この土台が要ります。
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