膵炎のあとの食事|配食のふれ愛 太子店 健康コラム

膵臓は消化液を作る臓器

膵臓は、脂質・たんぱく質・糖質を分解する消化酵素を出しています。炎症が起きると、この酵素が膵臓自身を消化してしまいます。脂質を摂ると膵臓が働くため、回復期には脂質を制限します。

また、膵臓はインスリンも作ります。慢性膵炎が進むと糖尿病を併発することがあります。

急性膵炎の回復期:段階的に戻す

段階内容脂質の目安
絶食期入院中。点滴のみ0
流動食重湯、くず湯、スープほぼ0
三分・五分粥脂質をほとんど使わない調理1日10〜20g
全粥・軟菜白身魚、鶏ささみ、豆腐1日20〜30g
普通食へ症状がなければ徐々に1日30〜40g

進める速さは主治医の指示によります。痛みが戻ったら1段階下げる、という判断も医療機関で行われます。

脂質を減らす具体策

控える使える
揚げ物、天ぷら、フライ煮る、蒸す、ゆでる、網焼き
豚バラ、牛カルビ、鶏皮、ひき肉(脂多め)鶏ささみ、鶏むね(皮なし)、白身魚、赤身のヒレ
バター、生クリーム、マヨネーズだし、酢、しょうゆ、香味野菜
ラーメン、カレールウ、シチューうどん、そうめん、和風の煮物
洋菓子、チョコ、スナック和菓子、ゼリー、果物
アルコール(厳禁)水、麦茶

アルコールは慢性膵炎の最大の原因であり、再発の引き金です。量の問題ではなく、やめることが求められます。禁酒が難しい場合は、その旨を主治医に伝えてください。専門の相談先があります。

慢性膵炎:やせていくのを止める

慢性膵炎が進むと、消化酵素が足りず、食べたものを吸収できなくなります。次の症状が出ます。

  • 脂肪便:白っぽい、水に浮く、脂が浮く、においが強い
  • 下痢が続く
  • 体重が減る
  • 脂溶性ビタミン(A・D・E・K)の不足

この段階では膵消化酵素薬が処方されます。薬を飲んだうえで、脂質を極端に減らしすぎない方針に変わることがあります。制限しすぎるとやせが進み、かえって危険だからです。

MCTオイル(中鎖脂肪酸)は膵酵素なしでも吸収されるため、エネルギー源として使われることがあります。導入は主治医・管理栄養士の指示のもとで。

食べ方

  • 1日4〜6回に分ける。一度に膵臓を働かせない
  • よく噛む。消化の負担を減らす
  • 熱すぎ・冷たすぎを避ける
  • 刺激物(唐辛子、カフェイン、炭酸)を控える
  • 体重を毎週記録する

糖尿病を併発した場合は高齢者の血糖値スパイクを防ぐ食べ方もあわせてご覧ください。ただし、膵性糖尿病は低血糖を起こしやすく、通常の糖尿病食とは扱いが異なります。必ず主治医の指示に従ってください。

脂質を1日何gに抑えるか、どう数えるか

膵炎のあとの食事では、脂質の量が中心になります。回復の段階によって、1日20g程度から始めて、30g、40gと戻していくのが一般的な進め方です。しかし、20gや30gがどれくらいの量なのかは、数えたことがないと分かりません。

目安を挙げます。サラダ油大さじ1で約12g、バター大さじ1で約10g、豚バラ肉100gで約35g、豚ヒレ肉100gで約4g、さば1切れで約12g、たら1切れで約0.2g、卵1個で約5g、木綿豆腐半丁で約5g、牛乳コップ1杯で約8g。肉は部位で10倍近く違い、魚も種類で大きく違います。

ここから分かるのは、脂質を抑えるうえで最も効くのが、肉の部位と魚の種類を選ぶことだという点です。ヒレ、もも、ささみ、鶏むね(皮なし)。魚なら、たら、かれい、たい、ひらめ、まぐろの赤身。これらを選べば、油を使う余地が残ります。

調理法も同じくらい効きます。揚げる、炒めるをやめて、ゆでる、蒸す、煮る、網焼きにするだけで、使う油がほぼゼロになります。フッ素樹脂加工のフライパンを使えば、油を引かずに焼けます。

逆に、見落とされやすいのが加工食品です。菓子パン、洋菓子、スナック菓子、インスタント麺、ドレッシング、マヨネーズ。これらは一度で1日分の脂質を超えることがあります。成分表示の脂質の欄を見る習慣をつけてください。

慢性膵炎でやせていくのを止める

慢性の段階では、脂質を減らすことと、体重を保つことが同時に求められます。この2つは相反するように見えるため、多くの方がやせていきます。

脂質を制限すると、エネルギーが足りなくなります。脂質は1gで9kcalと効率がよく、これを削るとその分を糖質とたんぱく質で埋める必要があります。ごはんの量を減らさない、いも類を使う、間食を入れる。この3つで埋めてください。

膵臓から出る消化酵素を補う薬が処方されている場合は、指示どおりに飲んでください。飲むことで脂質の消化が助けられ、下痢が減り、栄養が体に入るようになります。薬を飲み忘れると、食べても吸収されずに出ていきます。食事のたびに飲むものなので、食卓に置いておくと忘れにくくなります。

脂肪便が出ていないかも見てください。便が水に浮く、油が浮く、色が薄い、においが強い。これらは脂質が消化されずに出ているサインです。この状態が続いていると、いくら食べても体重は増えません。主治医に伝えて、薬の量を相談してください。

そして、酒は完全にやめてください。慢性膵炎では、少量でも進行の原因になります。ここは量の問題ではなく、やめるかどうかの問題です。禁煙も同じく勧められます。やめられないときは、専門の外来に相談する道があります。

体重と栄養状態を追いかける

膵炎のあとは、体重が落ちやすく、栄養が不足しやすい状態が続きます。感覚では分からないので、数字で追ってください。

まず体重を、週に1回、同じ条件で量ります。落ちているなら、1日のエネルギーが足りていません。食べる回数を増やす、間食を入れる、栄養補助食品を使う。この順で足していきます。

次に、血液検査の結果を見ます。栄養状態を表す項目、貧血の項目、そして脂溶性のビタミンに関わる項目です。脂質の吸収が落ちると、脂に溶けるビタミン(A・D・E・K)が不足します。ビタミンDが不足すれば骨がもろくなり、Kが不足すれば血が止まりにくくなります。これらは自覚症状が出るころには進んでいます。

血糖にも注意が要ります。膵臓はインスリンを作る臓器でもあるため、炎症が繰り返されると血糖の管理が難しくなることがあります。のどが渇く、尿が増える、体重が落ちる。こうした変化があれば受診してください。

そして、食事の内容を一人で決めないでください。脂質を制限しながら体重を保つ組み立ては、専門的な調整が必要です。管理栄養士による栄養指導を受けられるかどうか、主治医に確かめてください。医師の指示があれば保険で受けられる場合があります。

回復期に何をどの順で戻すか

急性の炎症が落ち着いたあと、食事をどう戻していくかは、多くの方が不安に思うところです。医療機関では段階的に進めますが、退院したあとは自分で判断する場面が増えます。順番を知っておくと迷いません。

基本は、糖質から始めて、たんぱく質を加え、脂質を最後に戻すという順です。おかゆ、うどん、パン、いもといった糖質は、膵臓に出す指示がいちばん少ない食品です。次に、脂の少ないたんぱく質を加えます。白身魚、鶏むね肉(皮なし)、豆腐、卵白、脱脂乳。ここまでで、栄養の骨組みができます。脂質は最後で、しかもいちばんゆっくり戻します。

戻す速さは、症状を見ながら決めます。おなかの痛み、背中の痛み、吐き気、下痢、脂肪便。これらが出たら、そこで一段階戻してください。症状が出ないところまで下げて、しばらく続けてから、また少しずつ上げる。この繰り返しで、自分の限度が見えてきます。

ここで焦らないことが大事です。早く元の食事に戻したい気持ちは分かりますが、一度に戻すと炎症が再燃することがあります。再燃すればまた入院になり、結果として遠回りになります。数週間から数か月をかけて戻すのが普通だと考えてください。そして、戻す過程は主治医と共有してください。自分だけで判断すると、行きすぎたときに気づけません。

食事の記録が診断の材料になる

膵炎のあとの食事調整では、記録が大きな助けになります。何を食べたときに症状が出たかが分かれば、避けるべきものが具体的になります。記録がないと、「脂っこいものはだめらしい」という漠然とした理解のまま、必要以上に食事を狭めることになります。

書くのは4つです。食べたもの、量、時刻、そして症状が出たかどうか。症状が出たときは、どんな症状が、何時間後に、どれくらい続いたかも書きます。細かく書く必要はなく、手帳やカレンダーの余白で十分です。続けることのほうが、詳しく書くことより大事です。

記録がたまると、傾向が見えてきます。同じ揚げものでも、量が少なければ大丈夫だった。朝は平気だが夜はだめだった。体調の悪い日に出やすい。こうした個別の傾向は、一般的な説明では分かりません。自分の限度は、自分の記録からしか分かりません。

そして、この記録を受診のときに持っていってください。医師は、症状の話を聞くときに、いつ、何を食べたかを知りたがります。記憶で答えると曖昧になりますが、記録があれば正確に伝わります。薬の量を調整するときの材料にもなります。「調子が悪いです」だけでは、どこをどう変えればよいかが決まりません。

家族と周囲に協力してもらう

脂質を制限する食事は、家族と同じ献立にしにくいという問題があります。別々に作れば手間が倍になり、同じにすれば家族が物足りなくなります。長く続けるには、無理のない形を見つける必要があります。

現実的なのは、基本を脂の少ない形で作り、家族のぶんにだけあとから足すという方法です。煮物や蒸しものを全員ぶん作り、家族の皿にだけ油やマヨネーズを添える。鍋を全員で囲み、たれを分ける。焼き魚を出し、家族にはバターを添える。ベースを共通にすることで、作る手間がほぼ変わらなくなります。

また、酒をやめることについても、周囲の理解が要ります。付き合いの席で断り続けるのは、思っている以上に負担がかかります。「医者に止められている」と最初に一度伝えておけば、そのあとは楽になります。家族が代わりに説明してくれると、さらに助かります。

家族の側にも知っておいてほしいことがあります。脂質の制限は、好き嫌いや我慢の問題ではなく、症状に直結するということです。「少しくらい大丈夫でしょう」と勧めることが、実際の再燃につながります。勧めないことが、いちばんの協力になります。そのうえで、食べられるもので工夫した料理を出してもらえれば、食事の楽しみが保てます。

制限のある食事を、毎日ひとりで組み立てない

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エネルギーとたんぱく質が不足した状態。高齢者の要介護化の入口になります。

糖尿病

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