胃を切ったあとの食事|配食のふれ愛 太子店 健康コラム

胃がなくなると何が起きるか

胃は、食べ物をためて、少しずつ腸へ送る貯蔵庫です。手術で胃を切除(または全摘)すると、この機能が失われます。

  • 一度に多く食べられない。すぐに苦しくなる
  • 食べ物が急に腸へ流れる。ダンピング症候群
  • 吸収が落ちる。鉄、ビタミンB12、カルシウムが不足しやすい
  • 体重が落ちる。手術後1年で10〜15%減ることも珍しくありません

ダンピング症候群

種類いつ症状対策
早期ダンピング食後30分以内動悸、冷や汗、めまい、腹痛、下痢1回量を減らす。ゆっくり食べる。食事中の水分を控えめに。食後20〜30分横になる
後期ダンピング食後2〜3時間低血糖症状(冷や汗、ふるえ、脱力、意識がぼんやり)糖質を一度に多く摂らない。間食を入れる。症状が出たらすぐに糖分(あめ、ジュース)を摂る

後期ダンピングに備えて、あめや小さなジュースを常に持ち歩いてください。外出中に起きると危険です。

食べ方の基本

  1. 1日5〜6回に分ける。3食+間食2〜3回。分食そのものです
  2. 1回の量は、以前の半分から。体が慣れるにつれて増やします
  3. 1食に30分かける。よく噛む。胃の代わりに口で細かくします
  4. 食事中の水分は控えめに。食間に飲む
  5. 食後は座ったまま、または軽く横になる。ただし逆流がある方は上半身を起こす
  6. 甘いものを空腹時に大量に摂らない。

不足しやすい栄養素

栄養素なぜ不足するか補い方
鉄胃酸が減り、吸収が落ちる赤身肉、レバー、ビタミンCと一緒に。葉酸とビタミンB12
ビタミンB12胃から出る内因子がないと吸収できない食事では補えず、注射が必要になる場合があります。主治医に確認
カルシウム・ビタミンD吸収低下。骨がもろくなる乳製品、小魚。骨粗しょう症
たんぱく質絶対量が入らない1回量が少ないぶん、密度を上げる

ビタミンB12の不足は手術から数年後に現れます。「もう落ち着いたから大丈夫」と通院をやめないでください。定期的な血液検査が必要です。

体重が落ちるのを放置しない

術後の体重減少はある程度避けられませんが、落ち続けるのは別です。週1回、同じ条件で体重を測り、記録してください。

  • 1か月で2kg以上減った
  • 術前体重の20%以上減った
  • 食べられる量が減り続けている

これらがあれば主治医と管理栄養士に相談を。栄養補助食品の導入や、消化酵素の処方が検討されます。

少量で栄養を確保する具体策は一度に食べられないとき、がん治療中の食事はがん治療中の食事をご覧ください。

1日5〜6回の食事をどう回すか

胃を切ったあとは、1回に入る量が限られます。3食では必要な量に届かないため、回数を増やす必要があります。しかし「1日6回食べる」と言われても、実際にどう組めばよいかが分かりません。具体的な形を示します。

朝7時に食事、10時に間食、12時に食事、15時に間食、18時に食事、20時に軽く。これが基本の形です。間食は菓子ではなく、栄養の入るものにしてください。おにぎり半分、バナナ、ヨーグルト、豆乳、チーズ、蒸しパン、カステラ。間食は「おやつ」ではなく「4回目の食事」だと考えると、選ぶものが変わります。

用意する手間を減らすため、日持ちして そのまま食べられるものを常備してください。ヨーグルト、チーズ、豆乳、栄養補助食品、缶詰、レトルトのおかゆ。作らないと食べられない形にすると、回数が続きません。

水分は、食事と一緒に大量に取らないでください。胃の代わりになる部分がすぐいっぱいになり、食べられる量が減ります。食事のあいだは少なめにして、食間にしっかり取るのが基本です。

そして、食後30分は横にならずに座って過ごしてください。急に流れ込むことで起きる症状を減らせます。ただし、食後に強い だるさや冷や汗が出る場合は、横になって足を上げたほうがよいこともあります。症状のパターンは人によって違うので、自分の場合を主治医と確かめてください。

数か月後・数年後に出てくる問題

手術の直後だけでなく、時間がたってから出てくる問題があります。これを知らないと、原因が分からないまま体調が落ちていきます。

1つめが貧血です。胃を切ると鉄の吸収が落ち、さらにビタミンB12を吸収する仕組みが失われます。ビタミンB12の不足は、数年たってから出てくることがあります。だるい、息切れがする、手足がしびれる、物忘れが増えた。これらを年齢のせいにせず、定期的に血液検査を受けてください。不足していれば注射などで補えます。

2つめが骨です。カルシウムとビタミンDの吸収が落ちるため、骨がもろくなります。転んだときに折れやすくなるので、乳製品、小魚、大豆製品、緑黄色野菜を意識して取り、日光にも当たってください。骨の検査を受けておくと、状態が分かります。

3つめが体重です。手術後に減った体重が、そのまま戻らないことがよくあります。「手術したのだから痩せて当然」と受け入れてしまうと、そこから徐々に落ち続けます。月に1回体重を量り、記録してください。落ち続けているなら、栄養の相談が必要です。

4つめが下痢と便秘です。腸の動きが変わるため、便通が不安定になります。食物繊維の取り方、水分、油の量を調整すると落ち着くことがあります。長引くときは主治医に相談してください。

いずれの問題も、定期的な受診と血液検査で早く見つかります。症状が出てから慌てるより、決まった間隔で確かめる形にしておくほうが確実です。

つらい時期をしのぐための道具

手術のあとの数か月は、作ることも食べることも負担が大きい時期です。この時期を根性でしのごうとすると、体重が落ちて回復が遅れます。使えるものを使ってください。

市販の栄養補助食品は、少量で必要な栄養が入るように作られています。飲むタイプ、ゼリータイプ、粉末を混ぜるタイプがあり、1本で200kcal前後、たんぱく質が10g前後入るものが一般的です。食事で足りないぶんを、間食としてこれで埋めるのが最も確実な方法です。薬局やインターネットで買えますし、医師の指示があれば処方されることもあります。

調理の手間を減らす道具も役に立ちます。おかゆのレトルト、やわらかく調理された市販の惣菜、缶詰、冷凍の煮物。手術のあとは、作る側も疲れています。作る負担が食事の回数を決めてしまうため、手間を減らすことがそのまま栄養につながります。

配食サービスも選択肢になります。1日1食でも任せられれば、そのぶんの手間が消えます。少量で栄養が入るように作られた献立や、やわらかく調理された献立を選べる事業者もあります。量が多すぎる場合は、残して次の食事に回す、あるいは半分ずつ2回に分ける、という使い方もできます。事業者の比べ方は配食サービスの確認12項目にまとめています。

家族が見ておくべきところ

ご本人は、食べられないことを言い出しにくいことがあります。心配をかけたくない、せっかく作ってもらったのに残せない。こうした遠慮から、実際より食べているように見せることがあります。家族が見ておくべきところを挙げます。

1つめが体重です。月に1回、同じ条件で量って記録してください。手術後3〜6か月は体重が落ちやすい時期で、ここで止められるかどうかが、その後を左右します。落ち続けているなら、主治医か栄養士に相談する時期です。

2つめが食べ残しです。作った量ではなく、実際に食べた量を見ます。毎回半分残しているなら、量が多すぎるか、食べにくい形になっています。少なく盛って、足りなければ足すという出し方に変えると、心理的な負担も減ります。

3つめが食後の様子です。冷や汗、動悸、だるさ、めまい、腹痛。食後30分以内、あるいは2〜3時間後に出る症状は、食べ方の調整で減らせることがあります。いつ、どんな症状が出るかを記録して受診に持っていってください。

4つめが顔色と元気です。貧血が進むと、顔色が悪くなり、階段で息切れするようになります。本人は「歳のせい」と言いますが、血液検査ですぐ分かることです。

そして、食べることを急かさないでください。時間がかかるのは当然で、急がせると余計に食べられなくなります。ゆっくり食べられる環境を作ることが、家族にできる最も大きな手助けです。

外食と行事の場面をどう扱うか

手術のあと、外での食事を避けるようになる方が多くいます。食べられる量が少ないこと、時間がかかること、途中で具合が悪くなるかもしれないこと。どれも理由としては分かります。しかし、外に出る機会が減ると、生活そのものが縮みます。

乗り切り方があります。まず、量が調整できる店を選ぶことです。定食より、小皿で頼める店、取り分けられる店のほうが向いています。残すことを前もって伝えておけば、気まずくなりません。

次に、時間に余裕を持つことです。急いで食べると症状が出やすくなります。混雑する時間を外し、ゆっくり座れる店を選んでください。

そして、食後すぐに動かないことです。食べてすぐ歩き出すと、具合が悪くなることがあります。食後30分ほど座って過ごせる場所を、あらかじめ決めておいてください。

行事の席では、周囲に一言伝えておくと楽になります。「胃を手術したので、少しずつしか食べられません」と言っておけば、勧められて困ることがなくなります。言わないままだと、食べないことを気にされ、かえって居心地が悪くなります。

持ち歩くものも決めておいてください。具合が悪くなったときのための飴やビスケット、水。低血糖のような症状が出たときに、すぐ口に入れられるものがあると安心です。何を持つかは、症状のパターンによって違うので、主治医に確かめてください。

術後の年月に応じて見直す

手術のあとの食事は、時期によって考え方が変わります。同じ形をずっと続けるものではありません。

手術の直後は、少量ずつ、消化のよいものからです。この時期の指導は、病院で受けているはずです。この段階を守らずに急ぐと、つらい症状が出て、食べること自体が怖くなります。

数か月たつと、体が慣れてきて、食べられるものが増えていきます。この時期に、いつまでも制限したままにしている方がいます。食べられる幅が戻っているのに、怖くて広げられないという状態です。主治医に確かめて、少しずつ広げてください。

数年たってから出てくる問題もあります。貧血、骨の弱り、体重が戻らない。これらは、手術から時間がたってから表面化します。定期の検査を受け続けてください。

そして、高齢になってからは、また別の配慮が要ります。噛む力や飲み込む力が落ちてくると、術後の食べ方とあわせて考える必要が出てきます。そのときどきの状態に合わせて、方針を組み直してください。

制限のある食事を、毎日ひとりで組み立てない

配食のふれ愛 太子店では、カロリー調整食・たんぱく調整食をはじめ、栄養バランスに配慮した食事を管理栄養士の献立でお届けしています。主治医から受けている指示をお伝えいただければ、どのコースが合うかを一緒に確かめます。まずは無料試食からお試しください。

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関連用語

たんぱく質

筋肉・臓器・免疫をつくる栄養素。高齢者は不足しやすくなります。

鉄分

赤血球のヘモグロビンをつくるミネラル。不足すると貧血になります。

低栄養

エネルギーとたんぱく質が不足した状態。高齢者の要介護化の入口になります。

カルシウム

骨と歯をつくる主要ミネラル。不足が続くと骨密度が下がります。

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