褥瘡(床ずれ)と栄養|配食のふれ愛 太子店 健康コラム

低栄養が最大の危険因子

褥瘡(床ずれ)は、圧迫によって皮膚と皮下の組織が壊れる状態です。予防と治療では体位変換やマットレスが強調されますが、低栄養は独立した危険因子です。

理由は3つあります。

  • やせると骨が出る。皮下脂肪と筋肉というクッションが失われ、骨の突出部に圧が集中します
  • 皮膚が弱くなる。たんぱく質が足りないと皮膚が薄く、破れやすくなります
  • 治らない。傷を修復する材料そのものが不足します

必要な栄養素

栄養素役割食品
たんぱく質皮膚・肉芽の材料。最重要肉、魚、卵、大豆製品、乳製品
エネルギー不足するとたんぱく質が燃やされてしまうごはん、パン、油脂
亜鉛細胞分裂とコラーゲン合成。不足すると治りが遅い牡蠣、赤身肉、レバー、うなぎ、大豆
ビタミンCコラーゲンを作るのに必須ピーマン、ブロッコリー、いも、柑橘
ビタミンA皮膚と粘膜の維持レバー、緑黄色野菜、卵
鉄酸素を傷へ運ぶ赤身肉、レバー、あさり
アルギニン創傷治癒を促す。褥瘡用の補助食品に含まれる肉、魚、大豆、ナッツ
水分皮膚の水分保持、循環—

順位をつけるなら、エネルギーとたんぱく質が土台です。ここが足りていないのに亜鉛のサプリだけ足しても意味がありません。

どれくらい必要か

褥瘡がある方の必要量は、健康な方より多くなります。学会のガイドラインでは次のような目安が示されています。

  • エネルギー:体重1kgあたり30kcal以上
  • たんぱく質:体重1kgあたり1.2〜1.5g

体重50kgなら1500kcal、たんぱく質60〜75gです。ただし腎機能が低下している方では、たんぱく質量に制限がかかります。必ず主治医・管理栄養士の指示に従ってください。

食べられないときの補い方

褥瘡がある方は、そもそも食が細いことが多いのが実情です。

  • 褥瘡用の栄養補助食品を使う。亜鉛・アルギニン・コラーゲンペプチドを配合したゼリーや飲料があります
  • 少量高栄養に切り替える。分食と補食
  • 粉ミルク・スキムミルクを料理に混ぜる。たんぱく質と亜鉛が同時に入ります
  • 食事形態を落とす。噛めないことが原因なら、そこを解決する

補助食品は薬局や通販で買えますが、導入前に管理栄養士か主治医に相談してください。腎臓病や糖尿病がある方では成分の確認が要ります。

同時に進めること

  • 体位変換(2時間おきが目安。マットレスによって間隔は変わります)
  • 体圧分散マットレス(介護保険の福祉用具貸与の対象)
  • 皮膚の清潔と保湿。おむつ内の湿潤を避ける
  • ずれ・摩擦を減らす(ギャッチアップの角度、移乗のしかた)
  • 訪問看護・皮膚排泄ケア認定看護師の関わり

マットレスや体位変換の用具は介護保険で借りられます。何が対象になるかはケアマネジャーと福祉用具専門相談員に確かめてください。詳しくは下の「介護のことをもっと詳しく」からご覧いただけます。

必要な量を実際の食事に置き換える

床ずれを治すには、普段より多くのエネルギーとたんぱく質が要ります。傷を埋めるための材料が要るからです。しかし、必要量を数字で言われても、実際の献立に落とし込めなければ意味がありません。体重50kgの方を例に、具体的な形にしてみます。

たんぱく質を1日60〜75g取るとすると、朝に卵1個と納豆1パックと牛乳1杯で約20g、昼に魚の切り身1切れと豆腐半丁で約25g、夜に肉70gと副菜で約20g。これでおよそ65gになります。3食すべてに主菜を欠かさないことが、この量に届くための条件です。朝食がパンと茶だけ、という日が続くと、まず届きません。

エネルギーは1日1,500〜1,800kcalが目安になりますが、食が細い方はここに届きません。その場合、間食で補います。1回200kcalの間食を2回入れれば400kcalが足せます。カステラ、プリン、アイスクリーム、チーズ、栄養補助食品。床ずれがある時期は、間食を制限するのではなく、むしろ足す時期です。

そして、食べられないときは無理をせず、栄養補助食品に頼ってください。少量で高いエネルギーとたんぱく質が入るように作られており、傷の治りに関わる成分を強化した製品もあります。医師の指示があれば処方される場合もあるので、受診のときに相談してください。「食事で取るのが理想」という考えにこだわって量が足りないより、補助食品で足りているほうがよい結果になります。

傷の治りに関わる栄養素

たんぱく質とエネルギーが土台ですが、それだけでは足りません。傷を治す過程には、いくつかの栄養素が関わります。どれか一つを大量に取れば治るというものではなく、全体がそろっていることが条件になります。

亜鉛は、細胞が新しく作られるときに必要になります。不足すると傷が治りにくくなり、味も分かりにくくなります。かき、赤身の肉、レバー、大豆製品、ナッツに多く含まれます。高齢の方では不足しやすく、床ずれがある方ではとくに注意されます。味が分からなくなったという訴えは、亜鉛不足を疑う手がかりになります。

ビタミンCは、傷をふさぐ組織を作るときに必要です。野菜と果物から取れますが、水に溶けやすく熱に弱いため、生で食べられるものを組み合わせると効率がよくなります。じゃがいもやさつまいものビタミンCは加熱に強いという性質があるため、高齢の方でも取りやすい食材です。

鉄は、酸素を傷まで運ぶために要ります。不足すれば、材料があっても届きません。赤身の肉、あさり、小松菜、ひじきなどから取り、ビタミンCと一緒に食べると吸収が上がります。これらをサプリメントでまとめて取ろうとする方がいますが、腎臓の状態や飲んでいる薬との兼ね合いがあるため、必ず主治医に確かめてください。

食事以外に同時に進めること

栄養だけで床ずれが治るわけではありません。同時に進めるべきことがあります。栄養の話に集中しすぎて、ほかが抜けると治りません。

まず、圧を分散することです。同じ場所に圧がかかり続けるかぎり、栄養がいくら足りていても傷はふさがりません。体位を変える、体圧分散のマットレスやクッションを使う、車いすの座り方を見直す。福祉用具の相談窓口やケアマネジャーに相談すれば、使える道具を教えてもらえます。介護保険を使って借りられるものもあります。

次に、皮膚を清潔で乾いた状態に保つことです。汗、尿、便で湿った状態が続くと、皮膚がふやけて傷ができやすくなります。おむつを使っている方では、交換の間隔と、皮膚を保護する方法を訪問看護師に相談してください。

そして、水分です。脱水になると皮膚の状態が悪くなり、血のめぐりも落ちます。1日1,200mL前後を目安に取ってください。ただし、心臓や腎臓の状態によっては制限がある方がいます。指示がある場合はそちらを優先してください。

これらは、家族だけで抱え込むものではありません。訪問看護、訪問診療、栄養指導、福祉用具。使える制度と専門職があります。床ずれができたということ自体が、支援を増やす必要があるという合図です。ケアマネジャーに現状を伝えて、体制を見直してください。

食べられない方への補い方

床ずれがある方の多くは、そもそも食べる量が落ちています。食べられないから栄養が足りず、栄養が足りないから治らない。この循環を断つには、食べられない理由を一つずつ確かめる必要があります。

口の中に問題はないか。入れ歯が合わない、口内炎がある、口が乾いている、痛みがある。これらは食べる量を大きく左右します。口の状態を確かめずに栄養の話だけをしても、量は増えません。歯科の訪問診療を受けられる地域もあります。

飲み込みにくさはないか。むせる、時間がかかる、食後に痰が増える。飲み込みに不安があると、本人は無意識に量を減らします。評価を受けて、安全に食べられる形を確かめてください。形を変えるだけで量が戻ることがあります。

薬の影響はないか。食欲を落とす薬、口を乾かす薬、吐き気を起こす薬があります。飲んでいるものをすべてお薬手帳で医師に見せて、減らせるものがないかを相談してください。

体の姿勢はどうか。ベッドで寝たまま食べていると、飲み込みにくく、量も入りません。できるかぎり座った姿勢に近づけるだけで、食べられる量が変わります。背上げの角度、クッションの当て方、テーブルの高さ。訪問看護師や理学療法士に見てもらうと、具体的な形が決まります。

治り方を数字で確かめる

栄養を整えても、治っているかどうかが分からなければ、続ける気力が続きません。目に見える形で確かめる方法があります。

まず、傷そのものです。大きさ、深さ、色、しみ出す液の量。訪問看護師や医師が記録していることが多いので、その内容を家族も共有してください。週単位で少しずつ小さくなっているなら、方向は合っています。2週間まったく変化がないなら、栄養か、圧の分散か、どちらかが足りていません。

次に、体重です。落ち続けているあいだは、傷を治す材料が足りていません。週に1回量って記録し、横ばいか増えているかを確かめてください。ベッドから起きられない方でも、訪問時に体重計付きのリフトや、腕の周囲を測る方法で追える場合があります。方法については訪問看護師に相談してください。

そして、血液検査です。栄養状態を表す項目を定期的に見ることで、食事が足りているかが分かります。数値が上がってこないなら、食べているつもりでも量が届いていないということです。この場合は、記録を持って栄養士に相談する段階になります。感覚ではなく数字で判断すると、無駄な回り道が減ります。

予防のほうが治療よりはるかに楽

床ずれは、できてから治すより、できる前に防ぐほうがはるかに簡単です。そして、予防の中心もやはり栄養です。低栄養の状態にある方は、皮膚が薄くなり、少しの圧で傷ができます。

危ない状態を挙げます。体重が落ちてきた。食事の量が減った。半年で体重の5%以上が落ちた。寝ている時間が長くなった。自分で寝返りが打てなくなった。おむつを使うようになった。むくみがある。これらが重なっている方は、まだ傷ができていなくても予防に入る段階です。

予防としてやることは、治療のときと同じです。たんぱく質とエネルギーを確保し、水分を取り、圧を分散し、皮膚を清潔に保つ。違うのは、傷がないぶん、必要な量が少なくて済むということです。だからこそ、早く始めるほど楽になります。

そして、体位を変えることの意味を家族が理解しておいてください。同じ姿勢が2時間続くと、皮膚に負担がかかります。介護する側にとっては大変な作業ですが、体圧を分散するマットレスやクッションを使えば、その間隔を延ばせる場合があります。道具に頼ることは手抜きではありません。介護保険で借りられるものがあるので、ケアマネジャーに相談してください。人の手だけで支え続けようとすると、介護する側が先に倒れます。

制限のある食事を、毎日ひとりで組み立てない

配食のふれ愛 太子店では、カロリー調整食・たんぱく調整食をはじめ、栄養バランスに配慮した食事を管理栄養士の献立でお届けしています。主治医から受けている指示をお伝えいただければ、どのコースが合うかを一緒に確かめます。まずは無料試食からお試しください。

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関連用語

低栄養

エネルギーとたんぱく質が不足した状態。高齢者の要介護化の入口になります。

たんぱく質

筋肉・臓器・免疫をつくる栄養素。高齢者は不足しやすくなります。

亜鉛

味蕾の再生や免疫にかかわるミネラル。不足すると味覚が鈍ります。

鉄分

赤血球のヘモグロビンをつくるミネラル。不足すると貧血になります。

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